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福井県鯖江地方の蚊の種類並1こ その季節的浩長について

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(1)

福井県鯖江地方の蚊の種類並1こ その季節的浩長について

第一報 昭和25年度採集の蚊について

金沢大学医学部細菌学教室(主任 谷友次教授)

専:攻生

木  水  英

Hri(ieo Kimizu

(本論文の主旨ほ昭和26年4月3日,第3回日本衛生動物学会で報告したものである.)

内  容  抄  録

 昭和25年6月下旬より9月末日迄の期間中に毎週土 曜日の日没後30分間,人家内で採集人100人に依頼し,

吸虫管により蚊の成虫,雄622匹,雌4110匹を搏獲 し,これを調査研究するに次の成績を得た,

 1)種   類

 アノブエレス属では2種類,イエカ属では9種類,

ヌマカ属では1種類,クロヤブカ属では1種類,ヤブ カ属では4種類,ナガハシ二三では1種類,の6属18 種類に分類することが出来た.

 2)季節的消長

 6月下旬一二に越冬卵,越冬幼虫の羽化による成虫 蚊の発生増加を認め,次いで各種とも月が進むに従い 減少し,9月中旬に入り一・時又増加する.但しオホク ロヤブカは7月上旬より次第に増加し8月下旬に最高 となる.各蚊属とも酷暑申はその前援よりも発生数が 少なく雨後は発生数が多くなる.市街地においては

6,7月はオホクロヤブカを除き各蚊属とも大差はない が,8月コガ タアカイエカが44.8%,9月オホクロヤ ブカが40.8%を占める.水田地においては,6月はアカ イエカが最高にて49.6%,8月11.2%に減少し,コガ タアカイエカが8月54.4%,オホクロヤブカが8月 34,4%となる.山麓地においてはシナハマダラカが他 の地区よりも三期に亘り捕獲数が多く,6月の百分率 は,アカイエカ,コガタアカイエカ,シナハマダラカ,

シPハシイエカの順であるが,7月になり下野属の曲 線が相近づく,山麓地においては,市街地,水田地に 見られる,8月のコガタアカイエカの上昇が見られず,

オホクロヤブカが8月58.8%の高率を示す点におい て,他の地区と異なっている.

 5) アシマダラ冥マカ

 アシマダラヌマカは福井県内においては,今年始め て発見されたものである.

第1章緒   言 第2章 蚊の採集方法

第3章蚊の分類及び捕痩成虫の多少

第4章季節的消長

 第1節重要蚊雌成虫の季節的消長

 第2節 市街地,水田地,山麓地別に見た重要蚊     雌成虫の季節的消長

第5章総括並に考案 第6章結   論

   :交   三

隅1章  緒 蚊科は一般に2亜科に分類せられるが,往々

細蚊科を亜科として取扱い,細蚊亜科Dixine,

( 71 1

(2)

720 木 水

総蚊亜科Chaoborine:及び蚊亜科Culicinaeに 分類せられている,この内細務亜科,総噸亜科 は人家に侵入するが,刺蟹吸血することなく医 学的にも直接関係を有しない.蚊亜科は多数の 刺整吸血種を含み,1,・500種以上の種類が報告 されている,雌成虫は人類及び家畜類より吸血 するのみならず,諸種のVラリア熱病,黄熱病,

デング熱,象皮病,脳炎等の媒介を行なう.家 屋内に侵入する種類は家蚊属及び籔蚊:属に多 く,面諭心血に少なく,後者は主として野外に て当室吸血する.なお人家に侵入する種類は主

として,人家の周囲の人工的溜水に発生し,一 部は家屋内で成虫にて越冬する所謂家屋内種群

に属するものが大部分を占めている.日本内地 の蚊により媒介される疾病をあげれば,三日熱 マラリア(1880,Laveran)は主としてシナハ マダラカが原虫の媒介をなし,実験的1)にはチ ョゥセンハマダラカもあげられている.デング 熱(1907,Ashburn and Craig)はヒトスジシマ

カ2)3),黄熱(1928,Stockes)は我国内にては発 生したことがないがネツタイシマカ,日本脳炎

(流行性脳炎11920,Loewe.日本脳炎;1938,

三田村等)は三田村,北岡等4)が蚊の媒介説を 初めて提唱し,実験的に陽性の結果を得ており,

アカイエカ,コガタアカ■エカを媒介蚊となし,

:更にシナハマダラカ5),ヒトスジシマカ,トウゴ ウヤブカ,ヤマトーヤブカ,オホクロヤブカが何 れも媒介すると云われている.フィラリヤ6)

(1877,:Bancroft)はアカイエカ,ネツfi ・イイエ カ7), トウゴウヤブカ,シナハマダラカ,アシ マダラヌマカが媒介蚊である,

 余は今回福井県のマラリアを調査し研究する にあたり,基礎調査として,福井県鯖江地方産 の蚊の分類とその季節的消長を調査し,蝕にそ の成績を発表報告するものである.福井県の蚊 の分類に関しては,1950年大森8)の発表がある が,その季節的消長については未だ報告を見な

い.

第2章 蚊の採集方法

 昭和25年6月27日より同年9月30日迄の期間 中,鯖江中学校第3学年生徒100名に依頼して,

鯖江町を中心とする東西約10粁,南北約8粁の 範囲内の1町44部落を戸数,面積に比例して採 集人を平等に分散配置し,日没後30分の問,吸 虫管により人家内に侵入する蚊を毎週土曜日に 採集した.市街地は本調査地域の申越に位置す る鯖江町の市街地にて,採集人29名,山麓地は 山際の部落,即ち本調査地域の東西の両端,及 び鯖江町の山際の地域にて採集人36名,水田地 は前2地域を除いた水田に囲まれている部落に て採集人は35名である.蚊の採集方法は,蚊帳

の中に動物叉は人を入れて採集するオFリ法と 静止中の蚊を吸虫管にて採集する方法,叉は刺 心中の雌成虫を捕獲する方法,飛翔中の蚊を昆 虫網にて捕える方法,夜間,光を利用して蚊を 集め採集する方法(light trap),及び蚊の鳴音 を利用して,夜間これと同じ音を出すことによ

り蚊を集め採集する方法等があるが,余は吸虫 管法により一定時間申に出来得る限り多く捕獲 する方法を選び,捕獲した成虫蚊の種の同定に は,山口,:La Casseの「日本及び朝鮮産の蚊の 図鑑,佐々の「蚊を調べる人のために」,及び徳 永の「医用昆虫学,上巻」を参考にした.

第5章  蚊の分類及び捕獲成虫の多少

 成虫蚊の捕獲i実数は雄622匹,雌4,110匹で ある.これ等の蚊の分類並に発生度は第1表の 如くである.即ちアノフェレス属2種類,イエ カ属9種類,ヌマカ属1種類,クロヤブカ属1

種類,ヤブカ属4種類,ナガハシカ属1種類の 6属18種類にて,捕獲i数の多い蚊種:は,シナハ マダラカ,アカイエカ,コガタアカイエカ,シ ロハシイェカ,オホクロヤブカの5種であり,

(3)

第 1表  鯖江地方の蚊族の種類並にその発生度

アノブエレス属

ヌ マ カ 属 クロヤブ二三

属 ナガハシカ属

1

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

12 13

14 15 16 17

18

シナハマダラカ

一口シナハマダラカ        .

ア カ  イ エ カ

コガタアカイエカ

シロハシイエカ

カ ラ ツ イ エ カ セ シ ロ イ エ カ

ハマダラウスカ

ト ラ フカ クィ カ

コガタクロウスカ ミ ツボシイエカ アシマダラヌマカ

オホクロヤブカ

ヒ ト ト ウ ヤ マ ト

キyイ ロ

スジシマカ ゴウヤブカ

  ヤ ブ カ

  ヤブカ

キソバラナガハシカ

A. hyrcanug sinensis A. sineroides

C. pipiens pallenE C. tri taeniorhynchus C. vishnui C. bi taeniorhynchus C. whitmorei C. orientalis C. vlorax C. bayashii C. ,sinensis

M. unifbrmis

Arm. obturbans

Ae. albopictus Ae. togoi Ae. japonicus Ae. vexans nipponii

Trip. bambusa

発生度 冊

二 柵 柵

ヤブカ属は主として昼間に人吸血性を有するた め捕獲数は少なかった.各種雌雄の捕獲実数及 び百分比を採集した月日別に調査するに,第2 表の如くにして,表中「其の他」の欄は捕獲数 の割合に少なかった,エセシナハマダラカ,カ ラツイェカ,セシロイエカ,ハマダラウスカ,

Fラフカクイカ,コガタクロウスカ,ミツボシ jイエカ,アシマダラヌマカ,ヒトスジシVカ,

トウゴウヤブカ,ヤマトヤブカ,キンイロヤブ       第2表

カ,キンバラナガハシカ,を意味している.雄 の雌に対する百分率は総数より見るに約15,1%

であり,6月の最盛期においては,0.3%なる も,9月に入り比率が高くなり,9月末には55.3

%となる.種別による比率は,アカイエカ25.1

%,コガタアカイエカ19.0%,オホクロヤブカ 10.1%,「其の他」9,8%,シナハマダラカ9.1

%にてシロハシイ側面が2.6%にて最:少であ

る.

成虫蚊の雌雄実数比較

シナハマダラカ

アカイエカ

6 9

6 9

採 集

6.27

136

 2 295

7.1

 7 118

52 265

7.8

37 151

67 161

7.15

3 46 19 81

7.2gls,13

2 53 19 94

17

13 26

8.21

8

12

s一D2gr9 1 41b19T,.iN6

1

3 8 1

3 8 2 12

12 30

9.2319.3・1計

1

71 ca 1

49 542 260 1032

6:90/o

9,1

25.1

( 73 ]

(4)

722 木 水

コガタアカイエカ

事      貫

@6

@♀ 239  8 P28

43 P63

19 U1

23 P43 78

16i 22

@  85

23 3 X2 18

13 P4

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@   19.

P147

     ,

Vロハシイエカ

♂♀

100  9 P65

481 237  1

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13 5

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一  一一一r

@2.

オホクロヤブカ

δ♀ 16 113 541 234 743 444  6

P05

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W67 843 968 444

16311α1    622・16 1   1

其1 の  他

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130 330 122 417

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15.1

… %1・・31・・825・3・6・3・2・2・6・4・2・5・6・3・2・327・・28・955・3。

第4章 季節的消長

     第1節重要険嶺成虫の          季節的消長

 蚊の発生が季節的な条件に左右されることは 説明を要しないことであるが,特に気温と降水 量は蚊の発生に非常に関係深く蚊の越冬幼虫が 冬眠より早春の覚醒期に入るには平均気温15℃

において活動を始め,20〜27℃の水温となる に及び其の他の発育条件の良好な状態におい て,アカイエカ卵においては3乃至4日にて一 齊に羽化する,一般に低温、乾燥,飢餓等の不 適当な外界条件により蚊の発生は停止状態とな り,条件が適当になれば直に恢復する.蚊のそ の種類或は個体の系統によって休眠なしに生活 環を完了する同式活動型と発生のある時期に休 眠を起す旧式活動型9)がみとめられている.夏 期の酷暑中に見る休眠(夏眠)においては雌は 吸血,産卵等の生殖栄養環をいとなまないとさ れ,細井10)(1944年)によると冬眠中の幼虫は実 験室内において温度を高め翅化成虫を得ても吸 血し難く,吸血しても卵巣卵が成熟しないと云 っている,Roubaud(1833)によると蚊は同一の 温度と栄養状態に保たれても第4齢期の延長さ れる幼虫が各季節に存在するとしてAnopheles plumbeusについての実験報告があり,休眠個

体はいかなる時期にても偶発的に発生し,幼虫 期の高温や栄養不足はその出現を助長する,

 湿度は局所Nは微気象的に重大な影響を及ぼ すが気候としては蚊の消長と著明な関係は認め

られない,これは湿度が幼虫とは関係なく,成 虫は移動して適当な微気象の場所にひそみ,好 適湿度においてのみ活動するからである.

 降雨は幼虫の発育場所が増加され蚊の季節的 消長に大いに影響するが,然し時に雨滴の刺戟 により幼虫が三々と潜水するため遂に疲労して 溺死し,叉は河川,水田中の増水のため幼虫が 流出し,一時減少を見ることがある.

 1力年間の発生期申の個kの蚊の世代数は種 々の条件により異なるが,Wesenberg−Lund11)

(1920年)によるとデンv一クにおいてはAedes や Mansonia は主に1世代であり, Culcx piPle皿sは3〜4世代を経過すると云われてい る.かくして蚊は早春の覚醒期より気候的変動,

及び環境状況により発生の消長を示しながら夏 期の発生期を終り,外気の気温の低下とともに 減少し週期的な冬眠に入る.

 昭和25年度の余の調査においては,5月初頭 において始めて平均気温が15℃以上となり,

6月20日に20℃に上昇し,蚊の幼虫の発育に

(5)

適当な温度となった,

 6月27日より9月30日迄の蚊の雌成虫の捕獲 実数による消長曲線は第1図の如くである.即 ち6月下旬各帰方の越冬幼虫の翅翼により成虫 の増加を認め,各蚊種とも月が進むに従い減少

し,9月下旬に入り又一一時増加する.

 シナハマダラカ,アカイエカは6月下旬より 7月上旬迄と,7月下旬と9月下旬とに3個の 山を認め,コガタアカイエカは各月の下旬に夫 k山を作り総計4個の山を認め,シロハシイエ カは6月末と7月末とに2個の山を作る.オホ クロヤブカは6月より次第に増加し,8月下旬 に最高となり,9月申旬に再び山を作る.各蚊 属とも酷暑中はその前後の時より発生数が少な く,全般的に見て,雨後4〜5日目において発 生数が多い.(第2表,第1図参照)

 之等の種属の捕獲実数による月別に見たる百 分率は第3表並に第3図の如くである.即ち,

シナハマダラカは6月13.6%,7月18.4%であ るが8月に入り下降し,9月には2.4%となる.

アカイエカは7月が最高にて30.0%,8月に

300

第1図 成蚊(雌)の季節的消長

250

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 6月    7      8      9   10

9.2%となり,9月僅かに増加して18.e%とな る.コガタアカイエカは6月23.9%,7月24.7

%,8月は他の多くの二種:とは反対に51.0%と 第3表  成虫蚊の地域別,月別の採集数及び同百分率

地    域 全  地  域 水  田  地 山  麓  地

6レ181gi計 U図89

!計

617}8トgi計

617182墨  『 一  一     一 一

シナハマダラカ

Aカイ エカ

Rガタアカイエカ Vロハシイ一切 Iホクロヤブ一

? の  他

@   計

136 Q95 Q39 P00

@6

S6 W22

@一

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@  601

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@  389

@   131

@   99

@  2083

?一       一  』       P   一  一 一

26 S6 Q55 W0 Q47

@7

U61 12 X0 P58 R3 Q38 P3 T44

542 P032 P147 U02 U22 P65 S110

45 T3 T8 R0

@0

Q1 Q07

87 10 P92 10 P37 64 P49 38

@8 14

R8  4

U11140

36227344861145

Q71 Q81 Q44

@56

@67

P044 24 P24 W6 R3

@4

P3 Q84

110 Q08 P74 V7 S4 S2 U55

 71 2 Q8 61 P36 94 P2 14 W6 79

@2  9 Q71259

143 S21 S90 P36 Q13 U6 P469

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@ 2

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171 Q01 P84 P63 V9 P9 W17

 9

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33724353 3159

@      分       率 シナハマダラカ

Aカ イ型鋼

Rガタアカイエカ Vロハシイエカ Iホクロヤブカ エ  の  他

13.6 Q9.5 Q3.9 P0.

O.6 S.6

18.4 R0.

Q4.9 P9.4 U.5 S.9

5.2 X.2 T1.0 P6.0 S9.4 P.4

2.4 P8.0 R1.6 U.6 S7.6 Q.6

10.8 Q0.6 Q2.9 P2.0 P2.4

@ 1R.3 22.5 Q6.5 Q9.O P5.0

@ 0

P0.5 17.4 R8.4 R7.4 Q9.8 P.6 V.6

7.0 V.0 S4.8 Q6.6 X.8 Q.8

19.2 Q6.4 W.4 S0.8 S.8 3.6113.0

@ 24.3

@ 25.2

@ 20.1

@  4.

@  6.0 9.6 S9.6 R4.4 P3.2 P.6 T.2

22.0 S1.6 R4.8 P5.4 W.8 W.4

2.8 P1.2 T4.4 S.8 R4.4 O.8

0.8 Q4.4 R7.6 T.6 R1.6 R.6

10.0 Q9.4 R4.3 X.5 P4.9 S.6

20.1 R5.4 Q8.5 P1.1 O.6 R.6

17.1 Q0.1 P8.4 P6.3 P:/

3.61

R.2 Q2.0 P2.0 T8.8 O.4

3.5 U.5 Q1.0 U.0 U2.5

@ 0

15.

Q0.

Q2.

P4.

Q1.1

P.

( 75 ]

(6)

 724 木 水

なり,9月は31.6%となる.シロハシイエカは 7月の山が最も高く19.4%にて,9月6.6%と なる.オホクロヤブカは6月0.6%にて,8月 になり急激に上昇して,49,4%となり,9月47.6

%となる.

   第2節市街地,水田地,山麓地        別に見た重要蚊雌成虫の        季節消長

 市街地(第3表.第2図参照)

 シナハマダラカの捕獲数は145匹にて6月よ り7月に亘り山を作り次第に減少する.アカイ エカは271匹にて,6月末より7月初旬に山を 作り,9月に入り再び小さな山を作る.

 コガタアカイエカは281匹にて,4個の山を 作り月が進むに従い山の高さが低くなる,シロ

ハシ イmカは224匹にて6月末より7月初旬に かけ多く3個の山を作る.オ永クロヤブカは56 匹にて少なく,8月に入っての増加も著明では

ない,

 水田地(第3表,:第2図参照)

→一 昌一一 一@一一一「 卿「

2

 シナハマダラカの捕獲数は143匹にて,市街 地の数と凡ぼ同じである.6月より7月末に亘

り幅広い山を作り,SEに入り著明に減少する.

アカイエカは421匹にて,6月末非常に多く9 月末迄に4個の山を作り月が進むに従い山の高 さが低くなる,シロハシイエカは136匹にて小 さな2個の山を作る.オホクロヤブカは213匹 にて8月に入り著明に増加し2個の山を作る,

 山麓地(第3表,第2図参照)

 シナハマダラカの捕獲数は2・54匹にて,6月,

7月に多く8月に入り著明に減少する.9月の 山も著明ではない.アカイエカは340匹にて6 月末非常に多く,7月中旬著明に減少し1山型 である.コガタアカイエカは376匹にて,6月,

7月に多く,8月に減少し,9月に叉僅かに増 加する2山型である.シロハシィエカは242匹 にて,7月に最:も多く,6月これにつぐ,8月 9月の発生は少なく,2個の山を作る.

 オホクロヤブカは353匹にて,8月中旬にな り著明に増加し,次に一時減少し,9月中旬に

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嶋   叩 万爪,9ヤプウ

(7)

なり再び増加する2山型である,

 地域別,月別に見たる各種属間の百分率は第 3表並に第3図の如くである.即ち市街地にお いては,6月目オホクロヤブカの発生を認めず,

シロハシイエカが15%にて,シナハマダラカ,

アカイエカ,コガタアカイエカは20〜30%で ある.7月になり,アカイエカ,コガタアカイ エカが梢々:増加し,37〜38%となり,8月コガ タアカ イエカ44.8%,9月オホクロヤブカ40.8

%となる.水田地においては6月はアカイエカ 49.6%,コガタアカ イエカ34.4%,オホクロヤブ カ1.6%,7月はシナハマダラカ22.O%,アカイ

エカ41.6%,コガタアカ イエカ34.8%,オホク ロヤブカ8.8%,8月はコガタアカイエカ54.4

%,オホクロヤブカ34.4%,9月はコガタアカ イエカ37.6%,オホクロヤブヵ31 .6%となる.

出麓地においては6月はシナハマダラカ20.1

%,アカイエカ35.4%,オホクロヤブカO.6%,

7月はアカイエカ20.1%,シナハマダラカ,

コガタアカイエカ,オホクロヤブカは16〜18

%,8月はオホクロヤブカ58.8%,コガタアカ イエカ22.0%,9月はオホクロヤブカ62.5%,

コガタアカイエカ21.O%となる.

第 3 図  成虫蚊の地域別,月別にみた百分率

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第5章 総括並に考按

 以上の調査成績を総括,考按するに次の如く

である.

 1.蚊 の 種:類

 昭和25年度の福井県鯖江地方にて目没後人家 内にて採集した蚊の成虫を分類するに,6属18 種類にて,ハマダラカ属はシナハマダラカが殆 んど全部を占め,エセシナハマグラカは数匹に すぎない.シナハマダラカと八八シナハマダラ カとの成虫の区別は,もともと翅の明輝の状態 においてのみ区別され,他は同一にて,エセシ ナハマダラカにおいては前縁脈の明斑が2個,

An脈が1個,シナハvダラカよりは多いとさ

れている点においてのみ区別され,近似種と考 えられるものにて生活環境叉は気象的変化球に より変異するものと思われる.大森等8)の昭和 24年度の福井県下の分類を見るに更に,ヤマト ハマダラカ Anopheles lindesayi japonicns Yamadaが加えられているが,この種は150 m 以上の山間漢流に発生するとされ,本調査地域 は主として平地であるため捕獲されなかったも のと思われる.イエカ属は9種類,ヤブカ属は 4種類,クロヤブカ属は1種類,ヌマカ属は1 種類,ナガハシ呪事は1種類である.ヤブカ属 の捕獲i数が割合に少なかったのは,ヤブカ属は

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昼間に人吸血性を有するためと思考される.ヌ マカ属は余が福井県下において始めて捕獲し報 告するものにて,7月29日雌1匹,8月21日雄1 匹,9月7日雌ユ匹,いずれも市街地の東端部に おいて捕獲せるものにて,この地域には解約3 問,深さ1尺の水流があり,ここより発生した と思われる.術成虫として採集したものではな く,昭和25年12月3日鯖江地方の山麓地の1民 家に隣接する竹藪中の円形容器内にて発見せる 越冬幼虫より,ナガスネカ属に属すると思われ る,1種を飼育し翅化せしめえたが,機種につ いては,「福井県鯖江地方の越冬幼虫より帰化し たOrthopodomyia属に属する1堺町の形態に ついて1」と題して,1951年,衛生動物雑誌に詳 細を発表したから本論文には省略する.

 2.季節的消長

 蚊の発生が季節的な条件により其の種類,発 生数が左右されることは当然のことであるが,

特に気温(水温),降水量は発生に非常に関係が 深い.早春の覚醒期より夏季を経て初冬の冬眠 に入るまで発生に適当な温度において,…時に その数を増加し,以後冬眠迄の間,酷暑中は気 温の上昇,水田の乾燥等々相まって蚊の活動が にぶり,夏眠の状態となり個体の成長,生殖機 能が休止し,降雨による幼虫発生地の水の増加,

及び局所気象の好転と共に再び生活活動が盛ん となる.然し一時の大量の降雨は逆に幼虫の流 出及び雨滴の刺戟により一時蚊の発生が減少す る.9月の気候は凡ぼ6月の状態と同様にて,

蚊の発生に好適となり8月末よりも増加して各 種とも小さな山を作る.蚊の発生の減少原因は 幼虫の発生,発育の不良によるべく,低温,乾 燥,飢餓が幼虫の数の減少に与ることは当然で ある.晩秋,初冬に見る減少は低温による卵の 艀化能力の減退,幼虫の発育の障碍,化蝋,翅 化の不能,成虫の生殖能力の減退にもとつくも のである.蚊の越冬状態はヒトスジシマカでは 卵形にて越冬し,ヤブカ属は幼虫形にて越冬 し,成虫の状態にて越冬するものは,アカイエ カ,シナハマダラカ等であると云われている.

一般に成虫の脂肪体の発育している状態は9月 末に多く見られ,これは休眠の開始を意味する ものであるとは諸学者の一致する意見である,

成虫の雄数が雌数に対する百分率は気温が降下 するに従い高率となるようである.

 今,蚊の季節的消長の諸報告を見るに,台 湾12)では小泉,土持(1925)の大正4年より8箇 年間の調査によると通常,大小4山が見られ,山 田,細井等は漢口にて昭和14年より2箇年間調 査した結果もこれと類似し,北支や満洲などの 成績では玉山型であるとしている.日本では野 村12)(1943)の調査iを綜合すると温暖な地方で は6月末乃至7月頃最高となり,9月初旬頃第 2の山を作る,また比較的寒い地方では7月乃 至8月に亘る1山となるらしいと報告し,昭和 16年言出市での三田村,北岡の調査13)によると 7月下旬より8月上旬に亘り割合に高い山を認 め,4山型を呈し,昭和17年度の調査では6月 下旬より7月半下旬に亘り低い山を認める1山 型であると報告している.:更に東京都における 北岡eg14)ls )16)の動物舎における調査によると,

昭和23年はコガタアカイエカが7月中〜下旬 に,アカイエカは7月下旬に最も多く,シナハ マダラカは7月申旬と9月申旬とに,キンイロ ヤブヵは7月上旬と8月尻声とに2つの増加の 山を認め,昭和24年は,アヵイェヵ,キンィロ ヤブヵ,シナハマダラカの消長曲線は単純なも のではなく,最高の山の他に,いくつもの山を 認め,昭和25年度においては,アカイエカは6

〜8月,コガタアカイエカ,シロハシイエカは 7月末,キンイロヤブカは6月末に多く採集し たと報告しており,倉敷における水川17)の昭和 22年の調査iによると,蚊の数は6月から急激に 増加し,7月末絶頂を極め,その後梢々減少す るが,8月にやや勢をもりかえしてから後は漸 減して,10月になるとずっと少なくなるとな し,福島市における荒18)の昭和23年度の調査に よると,多くの蚊は2山型であり,δ月上旬に 谷を作ると報国している,

 余の昭和25年度の福井県の調査成績を見るに 気象状況は5月に入り始めて平均気温15℃以

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上となり,このときより所謂,蚊の覚醒期が始 まり,6月の平均気温は20℃前後にて,始め て蚊の活動に有効な温度帯となる.7月,8月 は29℃を越すことなく有効温度帯を維持し,

9月下旬17℃となり,,5月下旬の温度と一致 する,降雨量は7月15日より10日間と,8月の 初めより・5日間と8月15日より5日間とは降雨 を見ず,6月20日より10日間と,8月20日より5 日聞の雨期間にかなりの降水量:を見たる他,順

調なる気象を経過したものと思老する.気象の 条件と蚊の発生の消長とは第1図に示した如く にて,6月末より7月上旬が最高にて,7月四 旬より月日が進むに従い減少する.8月申旬に 一時増加し,9月上旬に叉減少し,その間1つ の山を作り,9月下旬に入り再び小さな山を作 る.オホクロヤブカは他の蚊類と異なり6月は 少なく,次第に増加し,8月末に最:高となり一 時減少し,9月に叉1つの山を作る.

第6章  結  昭和25年,福井県鯖江地方の人家内にて,毎

週1回,日没後の30分間,吸虫管を使用し蚊の 成虫me 622匹,雌4,110匹を採集し調査するに 次の如き成績を得た,

 1)分類するに6属18種類にて,アカイエカ,

コガタアカイエカが最:も多く,次にオホクロヤ ブカ,シロハシイエカ,シナハマダラカの順で ある.アシマダラヌマカは昭和25年度に始めて 県下で採集したものである.

 2)雄:雌の個体数の百分率は総数より見 て,15.1%にて,これを月別に見るに6月下旬 O.3%,7月初旬25.3%の値があるが大体7月 より9月上旬迄は10乃至17%にて9月下旬55.3

%の高率を示す.

 5)蚊の発生は全般的に見て6月下旬より7 月中旬迄が最盛期にて,8月上旬,9月上旬,

9月下旬の4つの山が認められた.山の高さは 6月下旬最:高にて月が進むに従い次第に降下す る.シナハマダラカ,アカイエカは6月下旬〜

7月上旬,7月下旬,9月下旬の3つの山を,

コガタアカイエカは各月の下旬に4つの山を,

シロハシイエカは6月下旬と7月下旬において の2つの山を,オホクロヤブカは6月より次第 に増加し,8月申旬に最高の山を作り,9月二 二に叉一度山を作った.

 4)7月上旬の減少は気温の上昇と降水のな かったためと思考され,9月上旬の減少は,日 本各地の蚊の消長に見られる現象にて,7月中

旬より8月申旬迄の酷暑による蚊の生殖,産卵 能ガの減退に影響されるものと思考する.

 5)9月の増加の山は日本内地の各地に見ら れる普通の山にて気温が蚊の生活に適した状態 にもどるためと思考する.

 6)消長曲線より見るに個体数が多く,山の 数の多い,コガタアカイエカ,アカイエカ及び 徐kに増加するオホクロヤブカ等は自然の気象

の変化に対する抵抗力の大きいことを意味し,

これ等に対し,シ四目シイエカ,シナハマダラ カは割合に抵抗力の小なることを意味するもの と思考する.

 7) 月別に見た四川種の個体の百分率は6月,

7月アカイエカ,8月コガタアカイエカ,9月 オホクロヤブカが最高である.

 8)地域別に見ると山麓地が一番蚊の数が多 く,次に水田地,市街地の順にて,シナハマダ ラカ,オホクロヤブカは山麓地に,アカイエカ,

コガタアカイエカは水田;地に,シロハシイエカ は市街地に多い,市街地のオホクロヤブカの数 は他の地域と比較するに極めて少ない.

 9)地域別,月別に見た各子種の個体の百分 率はシナハマダラカは6月,市街地22・・5%,山 麓地20.1%にて他は割合に低率である.アカイ エカ,コガタアカイエカは水田:地において,他 の地域よりも割合に高率にて,アカイエカ29.4

%,コガタアカイエカ34.3%である一一シロハシ イエカは市街地において高率にて20.1%を示

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し,オホクロヤブカは山麓地が高率にて21.1%

である,

 欄筆するに臨み恩師谷教授の御懇篤なる御指導並に 御校閲に対し深甚なる謝意を表す.

1)穴澤顕治=台湾産アノフェレスの種類のマラ リヤ原虫感染に関する実験的研究,台湾医学雑誌 聞1269−285,(1931)  2)石井信太郎=「デ

ング」熱媒介蚊に関する研究,寄生虫学会記事 15=90−94,(1939) 3)森下薫=デング熱の 病源体と媒介者,熱帯医学,1;1,(1943)

4) 三田村篤四郎,北岡正見:自然界の蚊におけ る日本流行性脳炎病毒保有の証明.東京医事新誌,

27= 820−824,(1938)  5) 三田:村篤四郎.北 岡正見富日本流行性脳膜炎病毒で人工的に感染せ

しめたシナハマダラカの伝搬力について,日本医 学及び健康保健3270:350・一351(1g42)

6)佐々學,淺沼靖書蚊を調べる人のために:56

(1948)東京出版株式会社     7)二二器=

Wuchereria bancroftiの仔最MicrofiIaria bancrofti のネツタイイエヵCulex fatigansの体内における 発育に関する知見補遺,熱帯医学,1:509,(1943)

8)大森南三郎:福井県産蚊属について,衛生動 物,2(1);22.(1951)  9)細井輝彦:蚊の

生物学:165.河出書房,東京(1948)   10)

細井輝彦=蚊の生物学:167,河出書房,東京

(1948) 1D細井輝彦:蚊の生物学:177,河 出書房,東京(1948)   12)細井輝彦=蚊の 生物学=172・一一173,河出書房,東京(1948)

13)三田村篤四郎,北岡正見=昭和16年,昭和 17年岡山市における蚊の出現消長とその日本脳炎 病毒保有について,医学通信,266:4・一9(1950)

東京医学通信社. 14)北岡正見:東京附近の 蚊の消長(昭和23年)と動物の好き嫌い.公衆衛 生学雑誌6(3); 138一一一143.(1949)  15)北 岡正見等=昭和24年の東京における蚊の季節的消 長,医学と生物学,16(6):325,(1949) 16)

北岡正見等:昭和25年の東京における蚊の季節的 消長,医学と生物学,19(5); 258一一261,(1951)

17)水川希六=倉敷における蚊の季節的消長,

日新医学,36(9):411−415(1949)  18)荒 善吉=福島市及び其の附近の蚊について,第一報,

医学と生物学,14(5):276,(1948)

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