多径間連続斜張橋を対象とした合成主塔に関する一考察
東海大学 学生会員 ○岡本 裕 東海大学 フェロー会員 中村 俊一 東海大学 石高 純光
1. はじめに
本研究では,多径間連続斜張橋(図1)の主塔に,コンクリート充填鋼管(CFT)を用いた新しい合成主塔 を提案し,静的および耐震検討を行った.この合成主塔は基本的にはサンドイッチ構造(図5)であり,矩形 の二重鋼殻内部にコンクリートを充填したもので,耐力および,じん性にも優れると考えられる.通常,斜張 橋は 2 塔の 3 径間のものが一般的であるが,フランスにある Millau Bridge(ミヨー橋)に代表される多径間 連続斜張橋は景観的にも優れた魅力的な橋梁形式である.しかし,主桁上の活荷重の載荷位置によって主塔や 主桁が複雑な挙動を示すと推定される.そこで,活荷重の載荷パターンおよび主塔高さの違いによる検討を行 う.また,その耐震性についても検討した.
2. 構造緒元
検討するモデルは,橋長が 1400m,支間長を 100m+200m@6+100m とした.主塔(図2)は,高さ 62m の 2 面 吊り H 形主塔とし,矩形鋼管の内部にコンクリートを充填させたコンクリート充填鋼管(図5)を使用した.
また,主塔高さの違いによる挙動を調べるため,主塔下部高さが 15m,50m,100m のモデル(図3)を作成した.
主桁は,全幅員 18.6m の鋼箱桁(SM490Y)とした.(図4)
A1 P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 A2
100,000 200,000 200,000 200,000 200,000 1,400,000 200,000 200,000 200,000 100,000
図 1 一般図 (単位:mm)
15 ,0 00 47 ,00 0
21,800
62, 000
15
,0 00 50,0 00 10 0,00 0
図 2 主塔 (単位:mm) 図 3 主塔の高さ比較 (単位:mm)
2, 20 0
1,000 550 500 3,250 3,250 500 700 500 3,250 3,250 500 5501,000 18,800
50 0
25
25
2,500
2,50 0
図 4 鋼箱桁断面 (単位:mm) 図 5 主塔断面 (単位:mm) キーワード 多径間連続斜張橋,合成主塔,サンドイッチ構造,時刻歴応答
連絡先 〒259-1292 神奈川県平塚市北金目 1117 東海大学 TEL0463-58-1211 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)
‑885‑
Ⅰ‑443
A1 P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 A2 p1
p1 p1
p2
p2
p2 -1000
-500 0 500 1000
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
距離(m)
応答変位(mm)
LC1 LC2LC3
図 6 活荷重載荷パターン 図 7 主桁の活荷重変位
P1主塔
-20 0 20 40 60
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m) 高さ(m)
P2主塔
-20 0 20 40 60
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m)
P3主塔
-20 0 20 40 60
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m)
P4主塔
-20 0 20 40 60
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m) LC1 LC2 LC3
図 8 主塔 P1~P4 基部の曲げモーメント(荷重ケースによる違い)
P1主塔
-120 -80 -40 0 40 80
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m) 高さ(m)
P2主塔
-120 -80 -40 0 40 80
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m)
P3主塔
-120 -80 -40 0 40 80
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m)
P4主塔
-120 -80 -40 0 40 80
-80 -40 0 40 80
曲げモーメント(MN・m) 62m 97m 147m
図 9 主塔 P1~P4 基部の曲げモーメント(主塔高さの違い)
-1500 -1000 -500 0 500 1000 1500
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
経過時間(0.01s/ステップ) 応答変位(mm)
-150 -100 -50 0 50 100 150
-0.003 0 0.003
φ (1/m)
M (MNm)
図 10 主塔 P4 上端の時刻歴応答変位 図 11 主塔 P4 基部の M-φ曲線
3. 解析結果とまとめ
構造解析プログラム FORUM8 を用い,静的構造解析および時刻歴応答解析を実施した.設計地震動には,大 規模地震を想定したレベル 2 地震動,I 種地盤(I-I-2 タイプ)を用いた.活荷重載荷パターンによる静的解 析結果から,交互のスパンに活荷重を載荷するケースが主桁および主塔により大きな曲げモーメントを生じさ せた.また,主塔が高くなるにつれて最大変位が増加,最大曲げモーメントは減少する傾向があった.時刻歴 応答解析より得られた主塔 P4 基部の M-φ曲線図は,エネルギー吸収性能に優れるヒステリシス曲線を示した.
これは,鋼の座屈変形が鋼管内部に満たされたコンクリートによって抑制され,充填コンクリートは鋼管によ り拘束され強度が増すコンファインド効果によるものである.
土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)