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博 士 論 文 等 内 容 の 要 旨
申 請 者 氏 名 岡 本 詩 穂 里
論 文 題 目 陶 芸 に お け る グ ラ デ ー シ ョ ン 表 現 の 探 究 ― 「 積 彩 階 調 」 技 法 の 開 発 と 制 作 ―
陶 芸 に お け る グ ラ デ ー シ ョ ン の 制 作 方 法 は 、 釉 薬 ・ 絵 付 け ・ 染 付 な ど 様 々 で あ る が 、 筆 者 が 陶 芸 の 世 界 に 入 っ て 以 来 、 研 究 と 制 作 を 重 ね て い る 練 込 み 技 法 を 用 い て グ ラ デ ー シ ョ ン を 制 作 す る 。 釉 薬 で も 着 色 で も 出 せ な い 独 特 の グ ラ デ ー シ ョ ン を 作 る こ と が で き 、 そ の グ ラ デ ー シ ョ ン に 魅 力 を 感 じ た か ら で あ る 。 こ の 技 法 は ロ ク ロ 成 形 ・ タ タ ラ 成 形 ・ 手 び ね り 等 の 多 く の 成 形 方 法 に 応 用 範 囲 が 広 い の で 、 ま だ 多 く の 可 能 性 が 秘 め ら れ て い る と 思 っ て い る 。
本 論 文 で は 『 陶 土 と 顔 料 の 割 合 ( 調 合 ) を 徐 々 に 変 え た 色 粘 土 を 積 み 重 ね て グ ラ デ ー シ ョ ン を 作 る 』 こ と が 陶 芸 界 で は あ ま り 見 ら れ な い 試 み で あ る こ と に 注 目 し 、 自 身 の 制 作 で も 新 た な 練 込 み 表 現 を 確 立 で き な い か と 探 究 す る 。筆 者 は こ の 、色 土 と 顔 料 の 割 合( 調 合 ) を 徐 々 に 変 え た 色 粘 土 を 積 み 重 ね て グ ラ デ ー シ ョ ン を 作 る 行 為 を「 積 彩 階 調 」と 名 付 け た 。
筆 者 は 複 数 の 色 ま た は 異 な る 土 を 混 ぜ て 一 つ の 作 品 を 作 る こ と が 、 「 練 込 み 」で あ る と 考 え て い る 。 た だ し 、 完 全 に 混 ざ り き り 、 練 込 み 模 様 が 見 え な く な っ た も の は 「 混 ぜ 土 」 で あ り 、 そ の 土 を 使 っ て 制 作 し て も 練 込 み 作 品 で は な い 。 つ ま り 練 込 み 模 様 の 識 別 が 可 能 か 否 か が 、 練 込 み 作 品 の 線 引 き で あ る と 考 え て い る 。
以 上 の 点 を 踏 ま え る と 、 本 技 法 は 練 込 み 技 法 に 分 類 さ れ る 。 し か し 本 技 法 は 、 色 土 と 顔 料 の 割 合 ( 調 合 ) を 緻 密 に 変 化 さ せ る こ と で 、 練 込 み 模 様 を 見 せ な い こ と が で き る 。 一 般 的 な 練 込 み 模 様 を 生 か し た 練 込 み 作 品 と は 異 な り 、 「 練 込 み 模 様 が 見 え な い 練 込 み 作 品 」と 言 う 二 律 背 反 で 意 外 な 部 分 に 面 白 さ と 新 し さ が 生 ま れ る の で は な い か と 考 え る 。
グ ラ デ ー シ ョ ン は 徐 々 の 変 化 や 漸 次 的 移 行 ( 少 し ず つ 変 わ る こ と ) を 意 味 す る 。 そ の 中 で 陶 芸 に お け る グ ラ デ ー シ ョ ン は 、 ① 複 数 の 個 体 に 徐 々 に 変 化 を 付 け 全 体 と し て 動 き の 変 化 を 表 す も の 、 ② 影 の 濃 淡 、 ③ 備 前 焼 な ど に 見 ら れ る 自 然 降 灰 釉 の 密 度 の 変 化 、 ④ 焼 成 に よ る 色 の 変 化 、 ⑤ 釉 薬 な ど に よ る 色 彩 の 変 化 な ど が あ る 。 本 論 文 で は 動 き や 陰 影 な ど の グ ラ デ ー シ ョ ン は 除 き 、 連 な っ て い る 色 彩 の 変 化 を グ ラ デ ー シ ョ ン と し て い る 。
本 論 文 は 以 下 の 内 容 か ら 構 成 さ れ て い る 。 序 章 で は 本 研 究 の 動 機 に つ い て 述 べ た 。
第 1 章 で は 、練 込 み( 練 上 )技 法 の 歴 史 に つ い て 展 望 し た 。特 に 松 井 康 成 が 構 築 し た「 同
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根 異 色 」 法 に よ っ て 、 練 込 み 技 法 は 格 段 に 拡 大 し 、 今 日 に 連 な っ て い る こ と を 述 べ た 。 第 2 章 で は 、筆 者 の 開 発 し た「 積 彩 階 調 」の 制 作 に つ い て 述 べ た 。つ ま り 、 「 1 節 色 の 調 合 」 で は 、 具 体 的 な 積 彩 階 調 の 制 作 方 法 を 記 載 し た 。「 2 節 形 の 比 較 」 で は 、「 積 彩 階 調 」 を 使 い 様 々 な 形 を 制 作 し た 結 果 を 論 述 し た 。 そ の 結 果 、 本 研 究 で は 、 筆 者 が 「 ト ゲ ト ゲ 」 と 呼 ん で い る 形 が 、「 積 彩 階 調 」 と 一 番 相 性 が 良 い と 結 論 づ け た 。「 ト ゲ ト ゲ 」 は 、 形 だ け で も イ ン パ ク ト が あ り 、 先 端 に 行 く ほ ど 細 く な る 形 が 、 徐 々 に 変 化 す る グ ラ デ ー シ ョ ン に 注 目 を 集 め る か ら で あ る 。 写 真 1 と 写 真 2 は 筆 者 の 初 期 の ト ゲ ト ゲ 作 品 で あ る 。
写 真 1 ト ゲ ト ゲ 基 本 形 1 写 真 2 ト ゲ ト ゲ 基 本 形 2
「 ト ゲ ト ゲ 」 を 作 る と き に 参 考 に し て い る 形 の 正 式 名 称 は 「 星 形 小 十 二 面 体 」( Small stellated dodecahedron)と 呼 ば れ て い る 形( 写 真 1)と「 星 形 大 十 二 面 体 」 ( Great stellated dodecahedron) と 呼 ば れ て い る 形 ( 写 真 2 ) の 2 種 類 で あ る 。 星 形 正 多 面 体 と 呼 ば れ る 形 で 、1619 年 に ド イ ツ の 数 学 者 ヨ ハ ネ ス ・ ケ プ ラ ー が 発 見 し た 。本 研 究 で 筆 者 は 、こ の 星 形 多 面 体 を 基 に 作 っ た 作 品 を 「 ト ゲ ト ゲ 」 と 総 称 し て い る 。
「 第 3 章 ト ゲ ト ゲ の 制 作 」 で は 、 ト ゲ ト ゲ の 制 作 過 程 、 土 の 実 験 、 表 面 の 仕 上 げ 方 法
に つ い て 論 じ た 。 「 1 節 ト ゲ ト ゲ の 制 作 過 程 」で は 、 「 積 彩 階 調 」を 用 い た「 ト ゲ ト ゲ 」の
基 礎 的 な 制 作 方 法 を 記 載 し た 。 「 2 節 土 の 実 験 」で は 、砥 部 土 、さ つ ま 特 白 土 、古 信 楽 土 、
白 信 楽 土 の 4 種 類 の 土 を 用 い て ト ゲ ト ゲ を 制 作 し 、 顔 料 の 発 色 と 、 耐 火 度 の 相 違 を 検 討 し
た 。 土 の 種 類 は 全 国 さ ま ざ ま で あ り 、 顔 料 の 発 色 の 違 い や 耐 火 度 の 違 い な ど 結 果 も さ ま ざ
ま で あ っ た 。 例 え ば 、 古 信 楽 土 は 耐 火 度 が 高 く 、 大 き い 作 品 を 作 る こ と に 適 し て い る が 、
顔 料 の 発 色 が そ れ ほ ど 鮮 明 で は な い 、 ま た 磁 器 土 で あ る 砥 部 土 は 、 顔 料 の 発 色 は 鮮 や か で
あ る が 、 成 形 が 困 難 で あ る こ と が 判 明 し た 。 従 っ て 、 様 々 な 土 の 中 か ら 自 分 の 制 作 に 適 し
た 土 を 見 つ け 出 す こ と も 重 要 で あ る 。
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「 第 4 章 ト ゲ ト ゲ 制 作 の 応 用 」 で は 、 第 2 章 ・ 第 3 章 で 行 っ た 実 験 を 基 に 制 作 を 行 っ た 結 果 を 記 載 し た 。 「 1 節 積 彩 階 調 の 完 成 形 」で は 、一 つ の 作 品 の 中 で 赤 色 か ら 黄 色 の グ ラ デ ー シ ョ ン を 制 作 し た 。 筆 者 の 意 図 し た 「 練 込 み 模 様 の 見 え な い 練 込 み 作 品 」 を 作 る こ と が で き た 。 し か し な が ら 色 土 の 使 い 方 が 単 調 す ぎ て 着 色 の よ う に 見 え て し ま っ た こ と か ら 、土 の 配 置 な ど を 工 夫 す れ ば 、面 白 味 が 出 て く る と 考 え ら れ た 。 「 2 節 多 様 な 形 の 開 発 」 で は 、 星 形 小 十 二 面 体 や 正 二 十 面 体 な ど か ら 独 自 の ア レ ン ジ を 加 え て オ リ ジ ナ ル の 形 を 形 成 し た ( 写 真 3 )。 同 時 に 、「 積 彩 階 調 」 の よ り 良 い 演 出 方 法 を 考 察 し た 。 つ ま り 、 ト ゲ ト ゲ の 基 本 形 は 、 同 じ 長 さ の ト ゲ が 同 じ よ う な グ ラ デ ー シ ョ ン で 構 成 さ れ て い た 。 応 用 形 で は 、 一 つ の 作 品 の 中 に ト ゲ の 長 さ の 違 い 、 グ ラ デ ー シ ョ ン の 違 い な ど の 要 素 を 含 め た 。 こ れ に よ っ て 基 本 形 と は 異 な る 多 様 な イ ン パ ク ト を 与 え る こ と が で き た 。
写 真 3 ト ゲ ト ゲ 応 用 形 体
「 3 節 制 作 発 表 」 で は 2016 年 8 月 30 日 ~ 9 月 4 日 ま で 倉 敷 中 央 画 廊 で 開 催 し た 「 岡 本 詩 穂 里 作 陶 展 」 の 概 要 に つ い て ま と め 、 来 場 者 か ら の コ メ ン ト を 分 析 し た 。
こ の 「 ト ゲ ト ゲ 」 シ リ ー ズ は 、 公 募 展 な ど で も 評 価 を 得 ら れ 社 会 に イ ン パ ク ト を 与 え る こ と が で き た 。 写 真 4 は 第 4 回 新 県 美 展 ( 第 68 回 広 島 県 美 術 展 , 2016) の 入 選 作 品 で あ る 。写 真 5 は 、第 56 回 日 本 ク ラ フ ト 展( 2016)の 入 選 作 品 で あ る 。写 真 6 は 京 都 花 鳥 美 術 館 奨 学 金 2016 の 優 秀 賞 作 品 で あ る 。そ の 他 、読 売 テ レ ビ「 情 報 ラ イ ブ ミ ヤ ネ 屋 」の セ ッ ト オ ブ ジ ェ に 採 用 さ れ た ( 2015)。
写 真 4 Pop star 写 真 5 Black shooting star 写 真 6 ペ ン タ ゴ ン フ ラ ワ ー
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