NII-Electronic Library Service 『
正
法
眼
蔵
聞
書
抄
』口
語
ー
坐
禅
儀
・坐
禅
箴
e
I
訳
の
試
み
正
法
眼
蔵
第
十
一
坐
禅
儀
伊
藤
秀
憲
参禅
は 坐 禅 な り 。 坐禅
は 静 処 よ ろ し 。 坐 薄 あ つ く し く ぺ し 。 風 煙 を い ら し む る こ と な か れ、 雨露
を も ら し む る こ と な か れ 、容
身
の 地 を 護 持す
べ し 。 か つ て 金 剛 の う へ に 坐 し 、 盤 石 の う へ に 坐 す る 蹤 跡 あ り、 か れ ら み な 草 を あ つ く しぎ
て 坐 せ し な り 。 坐 処あ
き ら か な る べ し 、 昼 夜 く ら か ら ざ れ 。 冬 暖 夏 涼 を そ の 術 と せ り 。 諸縁
を 放捨
し 、 万 事 を 休息
す べ し 。善
也 不 思 量 な り 、 悪 也 不思
量 な り 。 心 意 識 に あ ら ず、念
想 観 に あ ら ず 。 作 仏 を お ん じ ぎ こ し や く ず ね ん 図 す る こ と な か れ 、 坐 臥 を 脱 落 す べ し 。 飲食
を 節 量 す べ し 、 光 陰 を護
惜
す べ し 。 頭 燃 を は ら ふ が ご と く 坐 禅 を こ の む べ し 。 黄梅
山 の 五 祖 、 こ と な る い と な み な し 、 唯 務 坐禅
の み な り 。 坐禅
の 時 、 袈 裟 を か く べ し 、 蒲 団 を しく
べ し 。蒲
団 は 全 跏 に し く に は あ ら ず 、 跏 趺 の 半 よ り は う し ろ に し く な り 。 し か あ れ ば 、 累 足 の し た は 坐 蓐 に あ た れ り 、 脊 骨 の し た は 蒲 団 に て あ る な り 。 こ れ 仏 仏 祖 祖 の 坐禅
の と き 坐 す る 法 な り 。あ
る い は 半 跏 趺 坐 し 、 あ る い は 結 跏 趺 坐 す 。 結 跏 趺 坐 は 、右
の 足 を 左 の も も の う へ に お く、 左 の 足 を 右 の も も の う し ん し へ に お く 。 足 の さ き 、 お の お の も も と ひ と し く す べ し 、参
差 な る こ と を え ざ れ 。 半 跏 趺 坐 は 、 た だ 左 の 足 を 右 の も も の う へ に お く の み な り 。 え さ ん か ん け 衣衫
を 寛繋
し て 、斉
整 な ら し む べ し 。右
手 を 左 の 足 の う へ に お く 、 左 手 を 右 手 の う へ に お く 。 ふ た つ の お ほ ゆ び さ 駒 澤 大 學 佛 教 學 部 研 究 紀 要 第 五 十 二 號 卒 成 六 年 三 月 一 一 一 N工 工一Eleotronlo Llbrary『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 一 一 二 き あ ひ さ さ ふ 。 両 手 か く の ご と く し て 、 身 に ち か づ け て お く な り 。 ふ た つ の お ほ ゆ び の さ し あ は ぜ た る さ ぎ を 、 ほ ぞ に 対 し て お
く
べ し 。 正 身 端 坐 す べ し 。 ひ だ り へ そ ば だ ち 、 みぎ
へ か た ぶ ぎ 、 ま へ に く ぐ ま り 、 う し ろ へあ
ほ の く こ と な か れ 。 か な ら ず ほ ぞ あ ぎ と 耳 と 肩 と 対 し、 鼻 と 臍 と対
す べ し 。舌
は か み の膠
に か く べ し 。息
は 鼻 よ り 通ず
べ し 。 く ち び る ・歯
あ ひ つ く べ し 。 目 は 開 す べ し 、 不 張 ・ 不 微 な る べ し 。 か ん き ご つ ご つ い か ん か く の ご と く 身 心 を と と の へ て 、 欠気
一 息 あ る ぺ し 。 兀 兀 と 坐 定 し て 、 思 量 箇 不 思 量 底 な り、 不思
量 底 如 何 思 量 、 ふ ぜ ん な こ れ 非 思 量 な り 。 こ れ す な は ち 坐 禅 の 法 術 な り 。 坐 禅 は 習 禅 に は あ らず
、大
安 楽 の 法 門 な り、 不染
汚 の 修 証 な り 。 正法
眼 蔵 坐禅
儀 第 十 一 爾 時 寛 元 元 年 癸 卯 冬 十 一 、 在一 一 越 州 吉 田 県吉
峰
精 舎 一 示 衆 。 同 二 年 甲 辰 正 月 廿 日、書
三 写 之 在 二越
州
吉 峰 庵 侍者
寮 相 〔 1 ) 坐 禅 儀 第 十 一 此 帖 無 二 別 子 細 → 只 坐 禅 ス ヘ キ 進 退 威 儀 等 ヲ 委 被 レ 説 丈 、 諸 縁 ヲ 放 捨 シ、 万 事 ヲ 休 息 ス ヘ シ 、 ア ク ヤ 善 文 不 思 量 ナ リ 、 悪 也 不 思 量 文 、 心 意 識 ニ ア ラ ス、 念 想 観 二 非 ス、 作 仏 ヲ 図 ス ル 事 ナ カ レ 、 坐 臥 ヲ 可 二 脱 落 一 ト ァ リ 、 諸 縁 ヲ 放 捨 シ、 ム ハ ラ イ 万 事 ヲ 休 息 ス ヘ シ ト ア レ ハ 、 諸 ノ 縁 務 ヲ 払 ス ナ ケ ス ナ ; リ 事 テ、 万 事 ヲ 抛 テ 可 ; 坐 禅 一 ト 云 ヤ ウ ニ 聞 エ タ カ タ く リ 、 実 二 此 ( 五 〇 二 b ) 分 モ 傍 ニ ナ カ ル ヘ キ ニ ア ラ ネ ト モ 、 一 向 如 レ 此 心 得 レ ハ 、 取 捨 ノ 法 ヤ イ ニ 聞 ユ 、 又 亜 心 ヲ 酬 制 シ 盞 [ ヲ ・ シ ヘ タ ル ニ モ 似 タ坐
禅
儀
第
十
一 丶 こ の 巻 は 特 に と り た て て 論 じ る こ と は な い 。 た だ 坐禅
す る と き の作
法 ・威
儀 等 を く わ し く 説 か れ る の で あ る 。 「 諸 縁 を 放 捨 し 、 万 事 を 休 息 す ぺ し 。 善 也 不 思 量 な り 、 悪 也 不 思 量 な り 。 心 意 識 に あ らず
、 念 想観
に あ ら ず 。作
仏 を 図 す る こ と な か れ 、 坐 臥 は 脱 落 す べ し 」 と あ る 。 「 諸 縁 を 放捨
し、 万 事 を 休 息す
べ し 」 と あ る か ら 、 諸 々 の 世 俗 の 務 め を 払 い 捨 て 、 万 事 を 投げ
捨
て て 坐禅
す べき
で あ る と い う よ う に 受 け 取 ら れ た 。 じ つ に こ の よ う な 意 味 も い ろ い ろ な い わ け で は な い け れ ど も、 一 向 に こ の よ う に 理 解 す れ ば 取捨
の 法 に 受 け取
ら れ る 。 ま た 、 悪 を 禁 じ て、善
を 行 う よ う に し む け て い る よ う で も あ る 。 た だ こ の こ と ば は 、 坐 禅 の 姿 が 「 諸 縁 を 放 捨 し、 万 事 を 休 息 」 し た 姿 で あ り 、 乃 至 「 心 意 識 」 を離
れ 、 「 念 想 観 」 等NII-Electronic Library Service リ 、 只 此 詞 ヲ ハ 、 坐 禅 ノ 姿 力 諸 縁 ヲ 放 捨 シ 万 事 ヲ 休 息 シ タ ル ス カ タ 丈、 乃 至 心 意 識 ヲ 離 レ 念 想 観 等 ヲ 離 タ ル 姿 丈 、 諸 悪 ヲ 置 テ 是 非 ト 制 シ タ ル ニ 非 ス 、 諸 悪 ノ 姿 力 莫 作 丶 ト 心 得 力 如 シ 、 兀 ≧ 坐 定 シ テ 思 量 箇 不 思 量 底 丈 、 不 思 量 底 如 何 思 量 コ レ 非 思 量 文 、 ( 五 〇 三 a ) 此 詞 坐 禅 箴 ノ 時 能 ・ 沙 汰 ア リ 、 仍 略 レ 之、 善 文 不 思 量 、 悪 丈 不 思 量 文 、 心 意 識 ニ ア ラ ス 、 念 想 観 ニ ア ラ サ ル ユ ヘ ニ 如 ド 此 イ ハ ル ・ 丈 、 身 ノ 威 儀 、 意 ノ 止 観 ナ ム ト ハ 非 レ 禅 、 心 外 無 別 法 ト 云 ユ ヘ ニ 、 \ ( 3 … ノ ハ 昌 坐 臥 ヲ 脱 落 ス ヘ シ ト ハ 、 坐 禅 力 坐 臥 ニ ァ ラ サ … 3 ) ル 事 ヲ シ ル ヲ、 脱 落 ス ヘ シ ト 云 文 、 \ ( 4 … 兀 ≧ ト 坐 定 シ テ 、 思 量 箇 不 思 量 底 文 ト ハ 、 坐 禅 シ 定 テ 思 量 ス ヘ キ 事 ア ル ヘ シ ト ニ ハ ア ラ ン ス 、 坐 禅 ノ ト キ ハ 思 量 箇 不 思 量 ( 五 〇 三
b
) … 4 ) 底 ナ ル ヘ シ 、 坐 禅 ハ 習 禅 ニ ハ ア ラ ス 、 大 安 楽 ノ 法 門 文 ト ハ 、 習 禅 ニ ァ ラ ス ト 云 ハ 、 教 二 談 ス ル 禅 定 ノ 儀一 = ア ハ ナ シ ト 云 丈 、 大 安 楽 ト 云 ハ 、 坐 禅 コ ソ 大 安 楽 ナ レ 、 教 二 談 ス ル 楽 ハ 、 イ カ ニ モ 苦黥
灘
藻鸚
驃
欝
潔
纛
ソ ギ 念 想 観 之 測 量 一 ト 云、 コ レ 全 機 ノ 心 ア リ、 坐 禅 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) を 離 れ た 姿 で あ る 〔 こ と を 表 し て い る 〕 。 諸 悪 を置
い て 、 こ れ は 非 であ
る と 禁 じ た の で は な い 。 諸 悪 の 姿 が 莫 作 で あ る と 理 解 す る よ う な も の で あ る 。 丶 「 兀 兀 〔 と 〕 坐 定 し て 、 思 量 箇 不 思 量 底 な り 、 不思
量底
如 何 思 量 、 こ れ 非 思 量 な り 」 。 こ の こ と ば は 坐 禅 箴 の 巻 で 十 分論
議
し て い る か ら 、 こ こ で の 注 釈 は 略 す 。 へ 「善
也 不 思 量 〔 な り 〕 、 悪 也 不 思 量 な り 。 心 意 識 に あ らず
、 念 想 観 に あ ら 」 ざ る ゆ え に 、 こ の よ う に い わ れ る の で あ る 。 〔 『 摩 訶 止 観 』 で 説 く と こ ろ の 〕 「 身 の 威 ( 2 ) 儀 」 「意
の 止 観 」 な ど は 禅 で は な い 。 心 外 無 別 法 と い う の で あ る か ら 〔 身 と 意 ( 心 ) と が 別 で あ る は ず が な い 〕 。 丶 「 坐 臥 を 脱 落 す べ し 」 と は 、 坐 禅 が 「 〔 行 住 〕 坐臥
」 〔 の 坐 〕 で な い こ と を 知 る の を 「 脱 落 す べ し 」 と い う の で あ る 。 丶 「 兀 兀 と 坐 定 し て、 思 量 箇 不 思 量底
な り 」 と は 、 坐禅
し 心 を 定 め て思
量 す べぎ
こ と があ
る はず
で あ る と い う の で は な い 。 坐禅
の と き は 「思
量 箇 不 思 量 底 」 であ
る 。 丶 「 坐禅
は 習禅
に は あ ら ず 、 大 安 楽 の法
門
な り 」 と あ る 。 「習
禅 にあ
ら ず 」 と い う の は、 教 家 で 説 く 禅 定 の こ と で は な い と い う の であ
る 。 「大
安 楽 」 と い う の は 、 「 坐禅
」 が 「 大安
楽 」 で あ る 。 教 家 で 説 く 「 楽 」 は 、 た し か に 苦 に対
し た 楽 で あ る か ら 小 楽 であ
る 。 「 大 安 楽 」 で は な い 。 へ他
の 本 の 坐 禅 儀 に 〈 『 普 勧 坐 禅 儀 』 が こ れ で あ る 〉 「 停 心 意識
之 運 転 、 止 念 想 観 之 測 量 」 ( 心 意 識 の 運 転 を 停 め 、 念 想 観 の 測 量 を 止 め て ) と あ る 。 こ れ は 全機
の 意 味 で あ 一 = 二 N工 工一Eleotronlo Llbrary『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ガ ヤ カ テ 運 転 測 量 等 ナ キ ( 五 〇 四 a ) 全 坐 ナ ル ナ リ、 不 染 汚 ノ 修 証 丈 ト ハ 、 不 期 成 仏、 脱 落 坐 臥 ソ … 5 ) 不 染 汚 ナ ル ヘ キ ユ ヘ ニ 如 レ 此 云 ナ リ、 ( 五 〇 四
b
) ( 6 ) 正 法 眼 蔵第
十
一 坐禅
儀 此 坐 禅 ノ 儀、 委 見一 一 坐 禅 箴 草 子 → 諸 縁 ヲ 放 捨 シ 、 万 事 ヲ 休 息 ス ヘ シ ト ア リ、 心 意 識 ニ ア ラ ス、 念 想 観 ニ ア ラ ス、 作 仏 ヲ 図 ス ル 事 ナ カ レ ( 了 : … 7 ) 坐 臥 ヲ 脱 落 ス ヘ シ ト 云 ブ 、 是 等 ヲ ハ イ カ ニ シ テ 放 捨 シ 、 休 息 シ、 脱 落 ス ヘ キ ソ ト 思 フ 凡 夫 ( 8 ) 見 解 ニ ハ 、 尤 イ ハ レ タ リ 、 タ ・ シ イ マ ス ・ ム ( 7 … ル 所 ノ 坐 禅 力 脱 落一 一 テ ア ル ナ リ 、 坐 禅 力 坐 臥 ニ ァ ラ ヌ イ ハ レ ヲ 相 伝 シ ヌ ル ヲ 脱 落 ス ト 云 へ … 7 ) シ、 当 時、 明 師 東 福 寺 ( 七 = 二 a ) 長 老 聖 一 房 ハ 、 得 旨 後 可 二 坐 禅 一 ト ス ・ ム 、 建 仁 寺 長 老 リ ウ 道 隆 禅 師 ハ 、 為 二 得 旨 一 コ ソ 坐 禅 ヲ ハ ス ・ ム レ 、 得 旨 後 ハ 必 坐 禅 ヲ 不 レ 可 レ 好 云 々 、 此 事 何 モ 不 レ 当 覚 ユ 、 其 故 ハ 江 西 大 寂 禅 師、 南 嶽 大 慧 禅 師 二 参 学 ス ル ニ 、 密 受 心 印 ヨ リ コ ノ カ タ、 ツ ネ ニ 坐 禅 ス ト ア リ 、 是 ハ 得 旨 前 ト モ 、 後 ト モ ミ エ ス、 密 受 心 印 後 ト ア レ ハ 、 得 旨 後 モ 坐 禅 之 条 無 二 異 儀 門 又 作 仏 ヲ モ 不 レ 図 上 ハ 、 る 。 坐 禅 が そ の ま ま二
四 「 運転
・ 測 量 」 等 が な い 全 坐 であ
る の で あ る 。 丶 「 不 染 汚 の修
証 な り 」 と は、 成 仏 を 待 たず
、 であ
ろ う か ら 、 こ の よ う に 言 う の で あ る 。 「 坐 臥 を 脱 落 」 す る の が 「 不染
汚 」正
法
眼
蔵
第
十
一坐
禅
儀
こ の 坐 禅 の 儀 は 、詳
し く は 坐禅
箴 の 巻 にあ
る 。 「 諸 縁 を放
捨 し 、 万 事 を 休 息 す べ し 」 と あ り 、 「 心 意識
に あ ら ず 、 念 想 観 にあ
らず
。作
仏 を 図 す る こ と な か れ 、 坐 臥 を脱
落 す べ し 」 と あ る 。 こ れ ら を ど の よ う に し て 「 放捨
し 」 「 休 息 し 」 「 脱 落 」 す べ き か と 思 う 凡 夫 の 考 え に は 、 確 か に 理 由 が あ る 。 た だ し 、 い ま勧
め る と こ ろ の 坐 禅 が 「 脱 落 」 であ
る 。 坐 禅 が 「 〔行
住 〕 坐 臥 」 〔 の 坐 〕 で な い わ け を 相 伝 し た こ と を 、 「 脱 落 す 」 と い う べ き で あ る 。今
日 、 す ぐ れ た 師 で あ る東
福 寺 住 持 の 聖 一 房 〔 円 爾 弁 円 禅 師 〕 ( 一 二 〇 二 〜 } 二 八 〇 ) は 、 「 得旨
の後
坐 禅 す べ き で あ る 」 と 勧 め る 。建
仁 寺 住 持 の 「 蘭 渓 〕道
隆 禅 師 ( 一 二 = 二 〜 一 二 七 八 ) は 、 「 得 旨 の た め に ( 9 ) 坐 禅 を 勧 め る が 、 得 旨 の 後 は 必ず
し も 坐禅
を 好 ま な く て も よ い 」 と 言 っ て い る 。 こ の こ と は ど れ も 正 し く な い と思
わ れ る 。 そ の わ け は 、 「 江 西 大寂
禅
師 、 〔 ち な み に 〕 南 嶽 大 慧 禅 師 に 参 学 す る に 、 密受
心 印 よ り こ の か た 、 つ ね に 坐 禅 す 」 ( 坐 禅 箴 ) と あ る 。 こ れ は 「 得 旨 前 」 と も 「得
旨 後 」 と も 書 か れ て い な い 。 「 密 受 心 印 後 」 と あ る か ら 「 得 旨 後 」 も 坐 禅 の こ と は そ れ ま で と 異 な る こ と は な い 。 ま た 「 作 仏 を も 図 ら な い 」 ( 作 仏 を 図 す る こ と な か れ ) か ら に は、旨
を 得 よ う と し て 坐禅
す る な ら ば 、 〔 坐 禅 は 旨 を得
る た め の 〕 助 け と な る修
行 法 の 意 味 で あ ろ う 。 両 師NII-Electronic Library Service ヘ ゥ ホ ウ 旨 ヲ 得 厶 ト テ 坐 禅 ス ヘ ク ハ 、 助 法 ノ 義 ナ ル へ ( 10 … シ 、 両 様 イ ツ レ モ 不 レ 当 覚 ユ 、 如 何、 坐 シ 定 テ 思 量 ス ( 七 一 三
b
) ヘ キ 事 ア ル ヘ シ ニ ハ ア … 10 > ラ ス、 坐 禅 ノ 時 力 思 量 箇 不 思 量 底 ナ ル ナ リ 、 ( 阻 舞ト 、 ’
ウ
参
フ ヤ ム 普 勧 坐 禅 儀 二 停 二 心 意 識 之 運 転 「 止 二 念 − 想 観 ー シ か ヲ 之 測 − 量 一 ト 云 フ 、 是 全 機 ノ 心 丈、 坐 禅 ス ル カ ヤ カ テ 運 転 測 量 等 ナ キ 全 坐 ナ ル ナ リ、 不 染 汚 ノ 修 証 文 ト 云 ハ 、 不 期 成 仏、 脱 落 坐 臥 … 11 ) ソ 不 染 汚 ナ ル ヘ キ、 ( 七 一 四 a ) の 坐 禅 は ど ち ら も 正 し く な い と 思 わ れ る 。 ど う で あ ろ う か 。 坐 定 し て 思 量 す る よ う な こ と が あ る べ き で は な い 。 坐 禅 の と き が 「 思 量 箇 不思
量 底 」 で あ る の で あ る 。 『 普 勧 坐 禅儀
』 に 「 停 心 意 識 之 運 転 、 止念
想 観 之 測 量 」 と あ る 。 こ れ は 全 機 の 意 味 であ
る 。 坐 禅す
る の が そ の ま ま 「 運 転 ・ 測 量 」等
が な い 全 坐 であ
る の であ
る 。 「 不 染 汚 の 修 証 な り 」 と い う の は 、成
仏
を 待 たず
、 「 坐 臥 を 脱 落 」す
る の が 「 不 染 汚 」 であ
る は ず で あ る 。 ( 1 ) こ れ は 『 抄 』 か と 思 わ れ る が、 し か し、 『 抄 』 は 先 ず 段 落 ご と の 『 正 法 眼 蔵 』 の 本 文 を 挙 げ て 、 そ の 後 一 字 下 げ て 注 釈 す る と い う ス タ イ ル で あ っ た が 、 こ こ で は 本 文 を 挙 げ て い な い 。 そ れ ほ ど 長 文 で は な い と い う こ と か ら も し れ な い が 、 特 異 な 巻 で あ る 。 ま た、 各 注 釈 の 頭 に 合 点 が 付 い て い る の は 『 聞 書 』 で あ る こ と を 示 す し る し で あ っ た が 、 こ の 注 釈 に は 付 い て い る 。 そ の よ う な こ と か ら 考 え る に、 こ れ は 『 抄 』 で は な く 『 聞 書 』 で は な い で あ ろ う か 。 と こ ろ で 、 第 十 五 光 明 の 『 聞 書 』 の 後、 す な わ ち 『 聞 書 抄 』 巻 八 の 巻 末 に 、 『 正 法 眼 蔵 第 十 一 坐 禅 儀 』 と 題 す る 注 釈 が あ り 、 こ こ で は そ れ も 、 こ の 後 に 収 め た が、 合 点 が な く、 こ れ が 『 抄 』 の よ う な 感 じ も す る が 、 後 で 指 摘 す る よ う に 、 先 の 注 釈 と ほ ぼ 同 文 の 注 釈 も 見 ら れ 、 或 い は こ れ は 、 詮 慧 以 外 の 者 の 『 聞 書 』 で あ ろ う か 。 万 福 寺 本 は こ れ を 『 御 聴 書 』 と し て 収 め る。 (2
) 「 身 の 威 儀 」 「 意 の 止 観 」 と は 、 『 摩 訶 止 観 』 で 説 く と こ ろ の 「 身 の 開 遮 」 「 意 の 止 観 」 を い う の で あ ろ う 。 例 え ば 、 常 坐 三 昧 を 説 く と こ ろ で、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 一 常 坐 者、 出 二 文 殊 説 文 殊 問 両 般 若而 名 為 ; 一 行 三 昧 岨 今 初 明 二 方 法 「 次 明 二 勧 修 鱒 方 法 者 、 身 論 二 開 遮 噛 口 論 二 説 黙 嚇 意 論 二 止 観 明 ( 正 蔵 四 六 ・ 一 一 a 〜b
) こ の 後 、 そ れ ぞ れ に つ い て 詳 説 さ れ る が 、 常 行 三 昧 ・ 半 行 半 坐 三 昧 ( 方 等 三 昧 ・ 法 華 三 昧 ) に つ い て も 同 様 に 説 か れ る 。 (3
) 注 (7
) の 箇 所 と ほ ぼ 同 じ 内 容 で あ る 。 (4
) 注 (10
) の 箇 所 と ほ ぼ 同 文 で あ る 。 『 正 法 眼 蔵 聞 霄 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 一 一 五 N工 工一Eleotronlo Llbrary『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 一 一 六 (
5
) 注 (11
) の 箇 所 と ほ ぼ 同 文 で あ る 。 な お、 文 中 の 「 コ レ 全 機 ノ 心 ア リ 」 は、 注 (11
) の 文 と 対 照 す る こ と に よ っ て 「 コ レ 全 機 ノ 心 ナ リ 」 で あ る こ と が わ か る 。 (6
) こ こ か ら が 第 十 五 光 明 の 『 聞 書 』 の 後 、 す な わ ち 『 聞 書 抄 』 巻 八 の 巻 末 に あ る 注 釈 て 、 万 福 寺 本 は こ れ を 『 御 聴 書 』 と し て 収 め る 。 (7
) 注 (3
) の 箇 所 を 参 照 。 (8
) 「 タ リ 」 で は な く 、 「 ア リ 」 で は な い で あ ろ う か 。 万 福 寺 本 で は、 「 タ 」 の 右 に 「 ア 」 と 書 き 入 れ が あ る ( 『 蒐 成 』 二 二 ・ 一 〇 一b
> 。 訳 で は 「 ア リ 」 と し て 訳 し た 。 (9
) 拙 稿 「 『 正 法 眼 蔵 』 研 究 ノ ー ト ( 一 ) 」 ( 『 曹 洞 宗 研 究 員 研 究 生 研 究 紀 要 』 一 一 号、 一 九 七 九 年 八 月 ) 一 一 〜 一 三 頁 参 照 。 (10
) 注 (4
) の 箇 所 を 参 照 。 (11
) 注 (5
) の 箇 所 を 参 照 。正
法
眼
蔵
第
十
二坐
禅
箴
坐 禅肇
+ 二 箴 .爨
誨謬
、 v \ ( 2 ) 坐 禅 箴、 談 二 十 一 段 一 事、箜
藤舷
覈
鰤覊
嬰
第 二 に嬬
攜
携
図 二 箇 什 麼 一 事、 鮒 弟 } 二 磨 墫 作 鏡 事、 ノ カ ス ル カ モ シ 第 四惣
撚 翻 ツ 奥 ≧ 若 第 五轆
礬
横
の モ シ マ ナ ハし ワ箜
ハ罅
辮
蛍
々 非 ・ 若 学 二 坐 仏 → ζ 非 二 第 七 す ヲ ユ 定 相 一 事、坐
禅
箴
第
十
二 丶 坐 禅 箴、 十 一 段 に 〔分
げ て 〕 説 く こ と 。 丶 第 一 〈 薬 山 弘 道 大 師 と 僧 と の 問 答 。 「 兀 兀 地 思 量 什 麼 」 の こ と 〉 第 二 〈 江 西 と 南 嶽 の 問 答 。 「 箇 の 什 麼 を か 図 す る 」 と い う こ と 〉 第 三 〈 磨 墫 作 鏡 の こ と 〉 第 四 〈 「 人 の 車 に 駕 す る が 如 し 。 車、 若 し 行 か ざ れ ば 」 と い う こ と 〉 第 五 〈 南 嶽 、 「 汝 坐 禅 を 学 ば ん と せ ば 、 こ れ 坐 仏 を 学 す る な り 」 と い う こ と 〉 第 六 〈 若 し 坐 禅 を 学 ば ば、 禅 は 坐 臥 に あ ら ず 」 と い う こ と 〉 第 七 〈 「 若 し 坐 仏 を 学 ば ば、 仏 は 定 相 に あ ら ず 」 と い う こ と 〉NII-Electronic Library Service 第 八
縫
難 即 ノ ジ ゼ バ ク タ ジ メ ルひ 第 九 帯 鍬 { 坐 相 一 非 レ 達 二 其 理 一 事、 第 十 轄 糖 鮮 騨 ( 五 〇 五 a ) 第 + 一 蠍欝
輛 渦第
八 〈 「 汝 若 し 坐 仏 せ ば 、 即 ち 是 れ 殺 仏 な り 」 と い う こ と 〉 第 九 〈 「 若 し 坐 相 に 執 す れ ば、 其 の 理 に 達 す る に あ ら ず 」 と い う こ と 〉 第 十 〈 宏 智 禅 師 の 『 坐 禅 箴 』 の こ と 〉 第 十 一 〈 永 平 和 尚 の 『 坐 禅 箴 』 の こ と 〉 第 一 段 へ ー ) ス ル メ ア ル ウ ニ ス ヲ カ ク ス ノ ヲ ク ソ ガ セ ン ク薬
山 弘 道 大 師 坐 次 、 有 僧 問 、 兀 兀 地 思 二 量什
麼 → 師 云 、 思 二 量箇
不 思 量 底 司 僧 日 、 不 思 量底
如 何 思 量 。 師 云、 非 思 ( 3 ) 量 。 ご つ ご つ ち な に こ 〈 薬 山 弘 道 大 師 、 坐 す る 次 い で、 有 る 僧 問 う 、 兀 兀 地 に 什 麼 を か 思 量 す 。 師 云 く、 箇 の 不 思 量 底 を 思 量 す 。 僧 曰 く 、 不 思 量 底 、 如 何 ん が 思 量 せ ん 。 師 云 く、 非 思 量 。 〉 ど う 大 師 の道
、 か く の ご と く な る を 証 し て 、 兀 坐 を 参 学 す べ し、 兀 坐 正 伝 す べ し 。 兀 坐 の 、 仏 道 に つ た は れ る 参 究 な り 。 此 問 答 ヲ 心 得 ヌ ヘ キ 様 ハ 、 兀 々 地 ト 云 ハ 、 今 ノ 坐 禅 ノ 姿 ヲ 云 文 、 坐 禅 シ テ ハ 何 事 ヲ 思 量 ス ル ソ ト タ ッ ネ タ ル 返 事 二 、 不 思 量 ヲ ( 五 〇 五 コ タ エb
) 思 量 ス ル ソ ト 被 レ 答 タ ル ヲ、 僧 重 テ 又 不 思 量 ヲ ハ ナ ニ ト 思 量 ス ル ソ ト 尋 申 二 付 テ、 師 又 非 思 量 ト 被 レ 答 タ ル ヤ ウ ニ 聞 ユ 、 今 ノ 問 答 更 非 レ 爾、 所 詮 今 ノ 坐 禅 ノ 姿 力 、 思 量 ト モ 不 思 量 ト モ 非 思 量 ト モ イ ハ ル ・ 丈、 此 道 理 ナ ル ユ へ 二 、 思 量 ト ヤ 云 ヘ キ 、 不 思 量 ト ヤ 云 ヘ キ 、 非 思 量 ト ヤ 云 ヘ キ、 ユ ヘ ニ 如 何 ノ 詞 ア ル ナ リ、 以 二 此 道 理 ヲ 一 大 師 ノ 道 如 レ 此 ナ ル ヲ 参 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) こ の 問 答 を き っ と 〔 次 の よ う に 〕 理解
し て し ま う に違
い な い 。 そ れ は 、 「 兀 兀 地 」 と い う の は 、 今 の 坐 禅 の 姿 を い う の で あ る 。 「 坐禅
し て 何 事 を 思 量 す る の で す か 」 と 尋 ね た 返 事 に 、 「 不 思 量 を 思 量 す る の だ 」 と 答 え ら れ た と こ ろ 、 僧 が 重 ね て ま た 「 不 思 量 を ど の よ う に思
量 す る の です
か 」 と尋
ね 申 し 上 げ た の で 、 師 は ま た 「 非 思 量 」 と答
え ら れ た よ う に 受 け 取 ら れ る 、 と 。今
の 問 答 は 決 し て そ う で は な い 。 結 局、今
の 坐禅
の 姿 が 、 「 思 量 」 と も 「 不 思 量 」 と も 「 非 思 量 」 と も 言 わ れ る の で あ る 。 こ の 道 理 であ
る か ら、 「 思 量 」 と 言 う べ き か 、 「 不 思 量 」 と 言 う べ ぎ か 、 「 非 思 量 」 と 言 う べ き か 。 だ か ら 「 如何
」 の こ と ば が あ る の で あ る 。 こ の 道 理 に よ っ て 「大
師 の 道 か く の ご と く な る を 」 「参
学
」 し て 、 「 兀 坐 」 を 「 正 伝 一 一 七 N工 工一Eleotronlo Llbrary『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 学 シ テ 、 六 a ) 兀 坐 ヲ 正 伝 ス ヘ シ ト ハ 云 ま 、 ( 五 〇 す べ し L と い う の で あ る 。 第 一 段 〔 2 ) 兀 兀 地 の 思 量 、 ひ と り に あ ら ず と い へ ど も 、 な る あ り 、 不
思
量 の 皮 肉 骨髄
な る あ り 。 一 一 八 そ れ 薬 山 の道
は 其 一 な り 。 い は ゆ る思
量箇
不 思 量底
な り 。 思 量 の皮
肉 骨 髄 此 詞 ニ ハ ニ ノ 心 ア ル ヘ シ 、 一 ニ ハ 坐 禅 ノ 儀 ヲ ト カ ル ・ コ ト ハ 、 祖 師 等 多 其 儀 ヲ 被 レ 述 タ レ ト モ 、 今 ノ 薬 山 ノ 思 量 箇 不 思 量 底 ノ 詞 、 抜 群 シ タ リ ト 被 レ 讚 タ ル 詞 丈 ト 云 儀 一 、 又 薬 山 ノ 道 ノ 出 現 ス ル ト キ ハ 、 自 余 ノ 祖 師 等 ノ 詞 ハ 皆 薬 山 二 蔵 身 シ 打 取 レ テ、 薬 山 ノ 道 ハ カ リ 丈 ト 云 儀 モ ア リ ヌ ヘ シ 、 イ ハ ユ ル 思 量 箇 ( 五 〇 六 ロ キb
) 不 思 量 底 ナ リ ト ハ 、 此 詞 ノ 古 ヲ 殊 被 レ 挙 文 、 又 思 量 ト 云 フ 事 ハ 心 意 識 二 仰 テ 云 詞 ナ ヲ ホ セ テ リ 、 皮 肉 骨 髄 ハ 身 二 仰 テ 是 ヲ 談 ス 、 シ カ ル ニ 思 量 ノ 皮 肉 骨 髄 ト ァ ル 詞 、 大 二 不 レ 被 二 心 得 「 但 今 ノ 坐 禅 ノ 姿 ヲ ス テ ニ 思 量 ト 談 ス ル 上 ハ 、 坐 禅 ノ 皮 肉 骨 髄一 一 テ ア ル ヘ キ ナ リ 、 今 更 非 レ 可 レ 驚 、 こ の 〔 「薬
山 の 道 は其
一 な り 」 の 〕 こ と ば に は 二 つ の 意 味 が あ る はず
で あ る 。 一 つ に は 、祖
師 等 が 多 く 坐禅
の 儀 を 説 か れ た け れ ど も 、 今 の 薬 山 の 「 思 量 箇 不 思 量 底 」 の こ と ば は、 抜 群 で あ る と 讃 嘆 さ れ た こ と ば で あ る と い う こ と が 一 つ 。 ま た 、 「 薬 山 の 道 」 が 出 現 す る と き は、 そ の 他 の 祖 師 等 の こ と ば は 皆 「薬
山 〔 の道
〕 」 に蔵
身 し 、 す っ か り 見 え な く な っ て 、 「 薬 山 の 道 」 ば か り で あ る と い う こ と もあ
る に ち が い な い 。 「 い は ゆ る 思 量 箇 不 思 量 底 な り 」 と は 、 こ の こ と ぽ の優
れ て い る と こ ろ を 特 に あげ
ら れ る の であ
る 。 ま た 「 思 量 」 と い う こ と は 心 意 識 に 関 連 し て 言 う こ と ば で あ る 。 「皮
肉 骨 髄 」 は 身 に 関連
し て こ れ を 説 く 。 そ う で あ る の に 「 思 量 の 皮 肉 骨 髄 」 と あ る こ と ば は 、 は な は だ 理解
で き な い 。 も っ と も 、今
の 「 坐 禅 」 の 姿 をす
で に 「 思 量 」 と 説 く か ら に は 、 〔 「 思 量 の 皮 肉 骨 髄 」 と は 〕 「 坐 禅 の 皮 肉 骨 髄 」 で あ る は ず で あ る 。 今 更 驚 く べ き こ と で は な い 。 第 一 段 〔 3 )僧
の い ふ 、 不 思 量 底如
何 思 量 。 ま こ と に 不 思 量 底 た と ひ ふ る く と も 、 さ ら に こ れ 如 何 思 量 な り 。NII-Electronic Library Service 不 思 量 底 タ ト ヒ フ ル ク ト モ ト 云 ハ 、 不 思 量 底 ( 五 〇 七 a ) ハ シ ハ ラ ク サ テ 置 ト 云 心 地 文、 其 ハ サ テ ヲ ク、 更 コ レ 如 何 思 量 ト 云 叉 、 不 思 量 底 ノ 道 理 ハ サ テ ヲ ク 、 如 何 思 量 ト 云 ハ 、 不 思 量 卜 云 ヘ キ カ、 思 量 ト 云 ヘ キ カ ノ 道 理 ヲ、 如 何 ト ハ 云 文、 是 則 不 思 量 ニ モ ア タ リ 、 思 量 ニ モ ア タ リ、 如 何 ニ モ ア タ ル 文 、 ( 五 〇 七
b
) 「 不 思 量 底 た と ひ ふ る く と も 」 と い う の は 、 「 不 思 量 底 」 は 暫 く さ て お く と い う意
味 あ い で あ る 。 そ れ は さ て お く 、 「 さ ら に こ れ 如 何 思 量 」 と い う の であ
る 。 「 不 思 量 底 」 の 道 理 は さ て お く 。 「 如 何 思 量 」 と い う の は 、 「 不 思 量 」 と い う べき
か 、 「 思 量 」 と い う べ き か の道
理 を 、 「 如 何 」 ( ど う す る か ) と い う の で あ る 。 こ れ はす
な わ ち 「 不 思 量 」 に も 当 た り、 「 思 量 」 に も 当 た り 、 「 如何
」 ( い か な る ) に も 当 た る の で あ る 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe 第 一 段 ( 4 ) 兀 兀 地 に 思 量 な か ら ん や 、 あ る べ し 、 思 量 あ る べ し 。 ご ん 兀 兀 地 の 向 上 、 な に に よ り て か
通
ぜ ざ る 。 賤近
の 愚 に あ らず
ぽ 、 兀 兀 地 を 問 著す
る 力 量 実 争 兀 ≧ 地 二 思 量 ナ カ ル ヘ キ 、 兀 ≧ 地 ノ 向 上 、 何 ニ ヨ リ テ カ 通 セ サ ル ヘ キ 、 賤 近 ノ 愚 二 非 ハ ト 云 フ ハ 、 今 ノ 仏 祖 ノ 坐 禅 ノ 儀 ニ ク ラ キ 人 ヲ 指 歟 、 兀 ぐ 地 ヲ 問 著 ス ル 力 量 ア ル ヘ シ 、 思 量 ア ル ヘ シ ト ハ 、 仏 祖 ノ 坐 禅 ノ 理 ヲ 参 学 ス ル 人 ヲ 云丶
実 に ど う し て 「 兀 兀 地 ( 坐 禅 ) に 思 量 」 が な い で あ ろ う 。 「 兀 兀 地 の 向 上 、 な に に よ り て か 通 」 じ な い で あ ろ う 。 「 賤 近 の 愚 に あ らず
ば 」 と い う 〔 「 賤近
の 愚 」 と 〕 は 、 今 の 仏 祖 の 坐 禅 の 儀 に 暗 い 人 を 指 す の か 。 「兀
兀 地 を 問著
す
る 力 量 あ る べ し、 思 量 あ る べ し 」 と い う の は 、 仏 祖 の 坐 禅 の 理 を参
学 す る 人 を い う の で あ る 。 第 一 段 ( 5V 大 師 い は く 、 非 思 量 。 思 量 を も ち い る な り 。 れ い ろ う い は ゆ る 非 思 量 を使
用 す る こ と 玲 瓏 な り と い へ ど も 、 非 思 量 ヲ 使 用 ス ル 事 玲 瓏 文 ト 云 ヘ ト モ ( 五 〇 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 不 思 量 底 を 思 量 す る に は 、 か な ら ず 非 「 非 思 量 を使
用 す る こ と玲
瓏
な り と い へ ど も 」 と は 、 「 非 思 量 」 が 「 玲 瓏 」 であ
=
九『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 八 a ) ト ハ 、 非 思 量 ノ 玲 瓏 ナ ル 姿、 ス キ ト ヲ リ テ ヘ タ テ ナ ク 、 残 物 ナ シ ト 云 ヘ ト モ 、 不 思 ( 4 > 量 地 モ 思 量 モ 、 皆 非 思 量 ト 一 ナ ル ユ ヘ ニ 、 必 非 思 量 ヲ 用 文 ト ハ ア ル 文 ト 云 文、 非 思 量、 不 ( 4 ) 思 量 地、 思 量、 此 三 不 レ 可 レ 有 二 差 別 一 文 、 皆 坐 禅 ノ 姿 ヲ 指 ユ ヘ ニ 、 一 二 〇 る 姿 は 、 透 き 通 っ て 隔 て な く 、 残 る も の が な い と い う
げ
れ ど も、 「 不 思 量 底 」 も 「 思 量 」 も、 皆 「 非思
量 」 と 一 つ で あ る か ら 、 必ず
「 非 思 量 をも
ち い る な り 」 とあ
る の で あ る と い う の であ
る 。 「 非 思 量 」 「 不 思 量 底 」 「 思 量 」 の 三 つ は 違 い が あ る はず
が な い の で あ る 。 皆 坐 禅 の 姿 を指
す の であ
る か ら 。 第 一 段 ( 6 ) 非 思 量 に た れ あ り 、 た れ 、 わ れ 我 を保
任
す 。 ( 4V 非 思 量 ニ タ レ ア リ ト 云 ハ 、 不 思 量 地 ト 思 ( 五 〇 八b
) 量 ト ノ ニ ヲ シ ハ ラ ク タ レ ト ハ サ ス ナ ( 4 ) リ 、 タ レ ワ レ ヲ 保 任 ス ト ハ 、 不 思 量 地 ト 思 量 ( 4 ) ト カ 非 思 量 ヲ 保 任 ス ル 文、 不 思 量 地 思 量 ハ タ レ ニ ア タ ル 、 ワ レ ト 云 ハ 非 思 且 里 ニ ア タ ル 文 、 兀 ≧ 地 タ ト ヒ 我】 \ ト モ 、 思 量 ノ ミ ニ ア ラ ス ト 云 ハ 、 兀 ζ 地 ノ ト キ ハ 思 量 ト ハ イ ワ ス 、 只 兀 ≧ 地 ヲ 挙 頭 ス ル ナ リ 、 ( 五 〇 九 a ) 兀 兀 地 た と ひ我
な り と も 、思
量 の み に あ ら ず 、 ニ と う兀
兀 地 を 挙 頭す
る な り 。 「 非 思 量 に た れ あ り 」 と い う の は 、 「 不 思 量 底 」 と 「 思 量 」 と の 二 つ を 暫 く 「 た れ 」 と さ す の で あ る 。 「 た れ わ れ を 保 任 す 」 と は 、 「 不 思 量 底 」 と 「 思 量 」 が 「非
思 量 」 を 保任
す る の であ
る 。 「 不 思 量 底 」 と 「 思 量 」 は 「 た れ 」 に あ た る 。 〔 坐禅
を 行 じ て い る 〕 「 わ れ 」 と い う の は 「 非 思 量 」 に あ た る の で あ る 。 「 兀 兀 地 た と ひ 我 な り と も 、 思 量 の み に あ らず
」 と い う の は 、 「 兀 兀 地 」 の と き は 「 思 量 」 と は 言 わ な い 。 た だ 「 兀 兀 地 を挙
頭
す る ( 挙 げ る ) 」 の で あ る 。 第 一 段 ( 7 ) 兀 兀 地 た と ひ 兀 兀 地 な り と も、 法 量 に あ ら ず、 悟 量 に あ らず
、 兀兀
地 い か で か 兀 兀 地 を 思 量 せ ん 。 え 会 量 に あ ら ざ る な り 。 兀 ぐ 地 ノ カ サ ナ リ タ ル コ ト ハ 、 坐 禅 タ ト ビ 坐 し か あ れ ば す な は ち 、兀
兀 地 は仏
量 にあ
らず
、 〔 「 兀 兀 地 た と ひ 兀 兀 地 な り と も 、 兀 兀 地 い か で か 兀 兀 地 を 思量
せ ん 」 と 、 〕 「 兀NII-Electronic Library Service 樺 丶 ト モ 、 坐 禅 争 坐 禅 ヲ 思 量 セ ム ト 云 詞 丈 、 坐 禅 究 尽 ノ 道 理 如 レ 此 イ ハ ル ・ ナ リ 、 兀 ぐ 地 仏 量 法 量 等 ニ ア ラ サ ル 条 勿 論 事 ナ リ 、 ( 五 〇 九
b
) 兀 地 L が 重 な っ て い る こ と は 、 「 坐禅
た と ひ 坐禅
な り と も、 坐 禅 い か で か 坐 禅 を 思 量 せ ん 」 と い う こ と ば であ
る 。 坐 禅 究 尽 の 道 理 が こ の よ う に 三 口 わ れ る の で あ る 。 「 兀 兀 地 」 が 「 仏 量 」 「 法 量 」 等 で な い こ と 〔 す な わ ち 、 坐 禅 は 、仏
・法
・ 悟 ・ 会 得 に よ っ て 量 る こ と が でき
な い こ と 〕 は勿
論 の こ と で あ る 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe
第 一 段 ( 8 ) じ ぎ げ 薬 山 か
く
の ご と く 単 伝 す る こ と 、 す で に 釈 迦牟
尼 仏 よ り 直 下 三 十 六 代 な り 。 に 釈 迦牟
尼 仏 あ り 。 か く の ご と く 正伝
せ る 、す
で に 思 量 箇 不 思 量 底あ
り 。 薬 山 よ り 向 上 を た つ ぬ る に 、 三 十 六代
釈 尊 与 二 薬 山 噛 向 上 向 下 ノ 代 ≧ ヲ 挙 ス 、 是 ハ 次 第く
二 思 量 箇 不 思 量 底 ノ 道 得 ヲ 正 伝 シ タ ル 様 二 聞 ユ 、 此 義 モ ナ カ ル ヘ キ ニ ア ラ ス、 然 而 如 レ 此 談 ス レ ハ 、 人 与 レ 法 各 別 ナ ル ヤ ウ ニ キ コ ユ 、 釈 尊 ニ ハ 薬 山 蔵 身 シ 、 薬 山 ニ ハ 釈 尊 蔵 身 ス 、 コ ノ 時 ハ ア マ タ 代 ヲ カ サ ヌ ナ ム ト 難 レ 算 歟、 又 思 量 箇 不 思 量 ハ 釈 尊 与 二 薬 山 一 ア タ ル ヘ キ カ 、 釈 尊 与 二 薬 山 一 ノ ァ ハ ヒ 、 思 量 箇 不 思 量 ニ ア タ ル ヘ キ 文 、 ( 五 一 〇 a ) 釈 尊 と 薬 山 の 向 上 向 下 の 代 々 を 挙 げ る 。 こ れ は 次 第 次 第 に 「 思 量 箇 不 思 量 底 」 の 道 得 を 「 正 伝 」 し た よ う に受
け 取 ら れ る 。 こ の 意 昧 も な い は ず で は な い 。 そ う で は あ る が、 こ の よ う に 説 く と 、 人 と法
が そ れ ぞ れ 別 で あ る よ う に 受 け 取 ら れ る 。 釈 尊 に薬
山 は 蔵 身 し 、薬
山 に 釈尊
は 蔵身
す
る 。 こ の とき
は 、 多 く の 代 を か さ ね た な ど と数
え る こ と は 難 し い か 。 ま た 「 思 量 箇 不 思 量 」 は 釈尊
と 薬 山 に 当 た る は ず か 。 釈 尊 と 薬 山 の 関 係 が 「 思 量 箇 不 思 量 」 に 当 た る は ず で あ る 。 〔 薬 山 の 思 量 箇 不 思 量 の 坐禅
と 、 釈 尊 の 坐禅
が 同 じ で あ る 。 〕 第 一 段 ( 9 ) ず さ ん ハ ナ ル コ ト ヲ ヲ バ チ レ更
是 平 穏 地也
〈 功 夫 坐 禅 は、 胸 襟 の 無 事 な し か あ る に 、 近 年 お ろ か な る 杜 撰 い は く 、 功 夫 坐 禅、得
二 胸襟
無 事 一 了 、 る こ と を 紳 鳶 ら ば、 便 ち 是 れ 平 穏 地 な り 〉 。 こ の 慰 鰹 、 な ほ 小 乗 の 学 者 に お よ ぼ ず、 人 天乗
よ り も 劣 な り、 い か で か学
仏 法 の 漢 と い は む 。 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 一 二 一『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 如 レ 文 、 所 詮 胸 ノ 内 二 物 ナ ク、 キ ラ
く
ト ア ル 所 ヲ 便 是 平 穏 地 文 卜 云 丈、 此 見 解 ヲ 如 レ 此 被 レ 嫌 ナ リ 、箜
見骸
在輪
大 一 宋 国K
一 二 二 文 の と お り 。 結 局 、 胸 の 内 に物
( 雑 念 ) が な く 、 光 輝 い て い る と こ ろ を 平 穏 地 也 」 と い う の で あ る 。 こ の考
え を こ の よ う に斥
け ら れ る の で あ る 。 い ん も く ふ う に ん こ う ぶ 恁 麼 の 功 夫 人 お ほ し 、 祖 道 の荒
蕪
か な し む べ し 。 「 便 是 如 レ 文 ( 五 一 〇 b ) 文 の と お り 。 第 一 段 ( 11 ) あ ん ウ モ タ モ タ 又 一類
の 漢 あ り 、 坐 禅辧
道 は 、 こ れ 初 心 晩 学 の要
機
な り、 か な ら ず し も仏
祖 の 行 履 に あ ら ず、行
亦禅
、 坐亦
禅
、 語 ( 5 ) 黙 動 静 体 安 然 〈 行 も 亦 た 禅、 坐 も 亦 た 禅 、 語 黙 動 静 に 体 は 安 然 〉 な り 、 た だ い ま の 功 夫 の み に か か は る こ と な か れ 。 臨 ど う済
の 余 流 と 称 す る と も が ら 、 お ほ く こ の 見 解 な り 。 仏 法 の 正 命 つ た は れ る こ と お ろ そ か な る に よ り て 、 恁麼
道 す る な り 。 坐 禅 ヲ 初 心 晩 学 ノ 要 機 ト 嫌 テ 、 行 モ 禅 坐 モ 禅、 語 黙 動 静 体 安 然 ト 云 事 ヲ 被 レ 嫌 ナ リ、 是 ハ 坐 許 ニ テ モ ア ル マ シ 、 行 モ 住 モ 禅 ナ レ ハ 、 必 坐 シ テ 無 二 其 詮 一 ト 云 心 地 ヲ キ ラ フ ナ リ 、 況 又 今 ノ 我 等 力 行 住 坐 臥 等 ヲ 指 テ 如 レ 此 イ ハ ム イ ヨ く タ ノ ホ カ バ 、 又 弥 沙 汰 外 事 文、 已 下 如 レ 文、 ( 五 一 一 a ) 坐 禅 を 「 初 心 晩 学 の 要 機 ( 大 切 で 肝 要 な こ と ) 」 と 斥 け て、 「 行 亦 禅 、 坐 亦 禅 、語
黙 動 静体
安
然 」 と 言 う の を、 〔 道 元 和 尚 は 〕 斥 け ら れ る の で あ る 。 こ れ は 、 坐 ば か り で あ る べ き で な い 、 行 も 住 も 禅 で あ る か ら、 坐 っ て も 必 ず し も そ の か い が な い と い う 考 え を 斥 け る の で あ る 。 ま し て や 、 ま た今
の 我 々 の 行 住 坐 臥 を 指 し て、 こ の よ う に 言 う の は 、 ま た 、 ま す ま す 問 題 外 の こ と で あ る 。 以 下 は 文 の と お り 。 第 一 段 ( 12 ) な に か こ れ 初 心 、 い つ れ か 初 心 に あ ら ざ る 、 初 心 い つ れ の と こ ろ に か お く 。 し る べ し 、学
道 の さ だ ま れ る 参 究 にNII-Electronic Library Service は 、 坐
禅
辧 道 す る な り 。 此 詞 ハ 坐 禅 ハ 初 心 晩 学 ノ 要 機 文 ト 云 詞 ヲ 被 レ 釈 ナ リ、 抑 初 心 ト ハ イ カ ナ ル ヲ 可 レ 云 、 更 法 界 唯 心 ト モ 三 界 唯 心 ト モ 談 セ ム 時 ノ 初 心 ハ 、 何 ノ 所 二 置 ヘ キ ソ、 何 力 初 心 ニ ア ラ サ ル 、 初 心 ト 談 セ ム 時 ハ 法 界 悉 初 心 ナ ル ヘ シ、 更 初 心 ノ 置 所 ア ル ヘ カ ラ ス、 ( 五=
b
) 第 一 段 ( 13 ) そ の 榜 様 の 宗 旨 は 、 今 ノ 坐 禅、 作 仏 ヲ 不 ノ 求 行 仏 ア リ 、 行 仏 更 非 二 作 仏 一 道 理 ナ ル ヘ シ 、 作 仏 ノ 公 按 見 成 丈 、 行 仏 ノ 公 按 現 成 ナ ル ヘ シ 、 こ の こ と ぽ は、 坐 禅 は 「 初 心 晩 学 の要
機 な り 」 と い う こ と ば を 注 釈 さ れ る の であ
る 。 そ も そ も 「 初 心 」 と は ど の よ う な こ と を 言 う べ き か 。更
に 、 「 法 界 唯 心 」 と も 「 三界
唯 心 」 と も 説 く と き の 「 初 心 」 は 、 何 処 に お く べ き か 。 何 が 「 初 心 」 で な い の か 。 「 初 心 」 と 説 く と き は 、 法 界 が 悉 く 「初
心 」 で あ ろ う 。決
し て 「 初 心 」 の 置 く と こ ろ が あ る はず
が な い 。 げ ん じ よ う 作 仏 を も と め ざ る 行 仏 あ り 。 行仏
さ ら に 作仏
に あ ら ざ る が ゆ え に 、 公案
見 成 な り 。今
の 坐 禅 は 、 「作
仏 を も と め ざ る 行 仏 あ り 。 行 仏 さ ら に 作 仏 に あ ら ざ る 」 道 理 で あ ろ う 。 作 仏 の 「 公案
現 成 」 で あ り 、 行 仏 の 「公
案 現 成 」 で あ ろ う 。 第 一 段 ( 越 ) ら ろ う た は 身 仏 さ ら に 作 仏 に あ らず
、 仏 二 成 ト 云 ヘ ハ 、 カ ナ ラ ス 先 身 ヲ サ シ イ タ ス ナ リ、 身 仏 ト 云 ハ ム 時 ハ 、 一 向 身 仏 ナ ル ヘ ホ ヵ シ、 身 仏 外 二 余 仏 ア ル ヘ カ ラ ス 、 身 仏 ヲ 作 仏 ス ト 不 レ 可 F 思、 蘿 籠 打 破 ト ハ 、 今 サ キ ニ 云 、 行 仏 作 仏 身 仏 等 ノ ク サー
ト ア ル 詞 共 ヲ 打 破 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 )蘿
籠
打 破 す れ ば 、坐
仏 さ ら に作
仏
を さ へず
。 仏 に 成 る と 言 え ば 、 必ず
ま ず 身 を 差 し 出 す の で あ る 。 「身
仏 」 ( 身 で 仏 を 実 現 す る こ と 、 す な わ ち 坐 禅 の 姿 ) と い う と き は 、す
ぺ て身
仏 で あ ろ う 。 身 仏 以 外 に 他 の 仏 が い る は ず が な い 。 「 身 仏 」 〔 であ
る の 〕 を 〔更
に 〕 「 作 仏 」 す る と 思 っ て は い け な い 。 「 蘿 籠 打 破 」 と は 、今
前 に 言 っ た 、 「行
仏 」 「 作 仏 」 「 身 仏 」 等 の い ろ い ろ と あ = 一 三 N工 工一Eleotronlo Llbrary『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 ロ 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ツ レ ハ 、 坐 ( 五 一 二 a ) 仏 サ ラ ニ 作 仏 ス ト 云 ヘ ト モ 、 サ ラ ニ サ エ ス ト 云 ナ リ 、 所 詮 此 心 地 ハ 、 至 極 解 脱 ノ 理 ニ イ タ リ ヌ レ ハ 、 身 力 作 仏 ス ル ト 云 モ 、 何 ト 云 詞 モ 、 サ エ ヌ ナ リ ト 云 丈 、 第 一 段 ( 15 ) ぱ ん ニ 正 当 恁 麼 の と
き
、 千 古 万古
、 た に壑
に み つ 量 あ る な り 。 一 二 四 る こ と ば を 「 打 破 」 し た の で 、 「 坐 仏 さ ら に 作 仏 」 す る と い う け れ ど も、 〔 坐 仏 が 作 仏 の 〕 決 し て 邪 魔 を し な い ( さ へ ず ) と い う の で あ る 。 結 局 こ の 意 味 あ い は 、 こ の 上 も な い 解 脱 の 理 に 至 っ た ら 、 身 が 作仏
す る と い う の も 、 ど う い う こ と ば も 、 〔作
仏
の 〕 邪 魔 を し な い と い う の で あ る 。 と も に も と よ り ほ と け に い り、魔
に い る ち か ら あ り 、進
歩
退 歩 、 み ぞ し た し く 溝 に み ち 、 此 蘿 籠 打 破 ノ 正 当 恁 麼 ノ 時 ハ 、 仏 二 入 、 魔 二 入 ト 云 、 魔 モ 進 モ 退 モ 皆 円 満 ぐ 足 ノ 儀 ま、 故 溝 ニ ミ チ 壑 ニ ミ ツ 量 ア リ ト ハ 云 文、 ( 五 一 二 b ) こ の 「蘿
籠 打 破 」 の 「 正当
恁 麼 の と き 」 は 、 「 ほ と け に い り 魔 に い る 」 と い う 。 「 魔 」も
「 進 」 も 「 退 」 も 皆 円 満 ・ 満 足 の 意 味 であ
る 。 だ か ら 「溝
に み ち 、 壑 に み つ 量 あ り 」 と い う の で あ る 。 第 二 段 ( 1 ) 江 西 大寂
禅 師 、 ち な み に 南 嶽 大慧
禅 師 に 参 学 す る に 、 密 受 心印
よ り こ の か た 、 つ ね に 坐禅
す 。 ハ ス ル ノ ヲ カ ( 6 ) な に ず の と こ ろ に ゆ き て と ふ、 大 徳 、 坐 禅 図 二 箇 什 麼 「 〈 大 徳、 坐 禅 は 箇 の 什 麼 を か 図 す る 〉 。 こ の 間 、 し つ か に 功 夫 参 究す
べ し 。 ( 7 ) 此 功 夫 参 学 ス ヘ シ ト 云 言 モ 、 不 審 ナ キ ニ ア ラ ス 、 其 故 ハ 、 汝 力 坐 禅 シ テ ハ 何 事 ヲ バ カ ル ソ ト 尋 ヌ ル 言、 ア ナ カ チ ニ 不 審 ナ ル ヘ シ ト モ 覚 ( 7 ) ヌ ヲ、 此 聞 能 工 功 夫 参 学 ス ヘ シ ト ア リ、 知 ヌ 、 我 等 力 心 得 タ ル 問 ノ 言 ニ テ ナ シ ト 云 事 南 嶽 、あ
る と き 大 寂 こ の 「 功 夫 参 究 す べ し 」 と い う こ と ば も 、疑
問 が な い の で は な い 。 そ の わ け は 、 「 汝 が 坐 禅 し て 、 ど の よ う な こ と を 企 て る の か 」 と 尋 ね る 言葉
は 、 必 ず し も疑
う べ き で あ る と も 思 わ れ な い の を、 「 こ の 間 」 を十
分 「 功 夫参
究 す べ し 」 と あ る 。 〔 こ の こ と か ら 〕知
っ た 。 〔 南 嶽 の こ と ば は 〕我
々 が 理 解 し て い る 問 い の こ とNII-Electronic Library Service ヲ 、 ( 五 = 二 a ) ば で は な い と い う こ を 。 第 二 段 ( 2 ) ず か く げ ず ど り そ の ゆ え は 、 坐 禅 よ り 向 上 に あ る べ ぎ 図 の あ る か 、 坐
禅
よ り 格 外 に 図 す べ き 道 の い ま だ し き か 、 ざ る か 、 当 時 坐禅
せ る に 、 い か な る 図 か 現 成 す る と 問著
す る か 、審
細 に功
夫 す べ し 。 此 図 箇 什 麼 ノ 言 ヲ 如 レ 此 被 レ 釈 文 、 打 任 図 ト 云 言 ヲ 心 得 ル ハ 、 物 ヲ 一 置 テ コ レ ヲ ツ ス ル ソ 、 是 ヲ バ カ ル ソ ナ ト 云 フ 、 是 ハ ス テ ニ 坐 禅 ヲ 以 テ 図 ト 仕 フ 上 ハ 、 別 ノ 物 二 非 ス 、 今 ノ 図 ハ 坐 禅 ナ ル ヘ シ 、 図 箇 什 麼 ノ 言 、 例 ノ 不 審 ノ 詞 ニ ア ラ ス 、 自 二 坐 禅 一 向 上 二 可 レ 有 図 ノ ア ル カ ○ 当 時 ( 五 = 二 b ) 坐 禅 セ ル ニ 、 イ カ ナ ル 図 力 現 成 ス ル ト 問 著 ス ル カ ト 云 言 ト モ カ 、 図 箇 什 麼 ノ 言 ニ ハ ア タ ル ナ リ 、 所 詮 是 等 皆 坐 禅 ノ 道 理 ナ ル ヘ シ 、 第 二 段 〔 3 ) 彫 龍 を 愛 す る よ り 、す
べ て 図す
べ か ら こ の 「 図 箇什
麼 」 ( 箇 の 什 麼 を か 図 す る ) の こ と ば を こ の よ う に 注 釈 さ れ る の であ
ず る 。 普 通 一 般 に 「 図 」 と い う こ と ば を 理 解 す る の は 、 物 を 一 つ置
い て 、 こ れ を 図 は かす
る ぞ 、 こ れ を 図 る ぞ等
言 う 。 こ れ は 、 既 に 「 坐禅
」 を 「 図 」 と つ か う か ら に は 、 〔 「 坐 禅 」 と 「 図 」 と は 〕 別 の物
で は な い 。 こ こ の 「 図 」 は 「 坐 禅 」 で あ ろ う 。 「 図箇
什
麼 」 の こ と ぽ は 、 い つも
の 疑 問 の こ と ば で は な い 。 「 坐 禅 よ り 向 上 に あ る べき
図 の あ る か 、 … … 当 時 坐 禅 せ る に 、 い か な る 図 が 現 成 す る と 問 著 す る か 」 と い う こ と ば が 、 「 図 箇 什麼
」 の こ と ば に あ た る の であ
る 。結
局
こ れ ら は皆
坐禅
の 道 理 で あ ろ う 。 す す み て真
龍 を 愛 す べ し 、 彫 龍 ・真
龍
と も に 雲 雨 の 能 あ る こ と 、 学習
す べ し 。 ユ 是 ハ ァ マ リ ニ 龍 ヲ 愛 テ 絵 ニ モ カ キ 、 木 ニ モ 作 モ チ ア ソ ヒ コ も ロ サ ン テ、 イ ク ラ モ 龍 ヲ 翫 ケ リ 、 コ ノ 志 ニ コ タ ヘ テ 、 マ コ ト ノ 龍 力 現 タ リ ケ ル 時、 恐 怖 シ テ ハ シ リ 去 ヌ 、 是 喩 ヲ 今 被・ 一 引 出 一 丶 、 コ レ ハ 坐 『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) こ れ は 〔葉
公
が 〕あ
ま り に龍
を愛
し て 絵 に も 画き
、 木 に も 彫 っ て 、 たく
さ ん 龍 〔 8 ) を賞
翫 し た 。 こ の気
持 ち に応
え て 、 本 当 の 龍 が現
れ た 時 、 恐 れ て 走 り 去 っ た 。 こ の 喩 え を 、 こ こ に 引 き 出 さ れ る の で あ る 。 こ れ は 坐禅
と 作仏
と の 関 係 を 、 こ の 一 二 五 N工 工一Eleotronlo Llbrary『 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 』 且 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 禅 与 二 作 仏 一 ノ ア ハ ヒ ヲ 、 此 真 龍 彫 龍 二 被 レ 喩 丈、 其 故 ハ 坐 禅 ハ 今 ノ 作 業 、 此 作 業 ノ カ ニ ヨ リ テ 成 仏 得 道 ス ( 五 一 四 a ) 卜、 打 任 テ ハ 心 得 ニ 丈 、 今 ノ 坐 禅 非 F 爾、 禅 坐 作 仏 只 差 別 不 レ 可 〆 有 、 禅 坐 ヲ ハ 彫 龍 ニ タ ト へ 、 作 仏 ヲ ハ 真 龍 ニ タ ト ブ 、 詮 ハ 彫 龍 モ 真 龍 モ 一 ナ リ ト 心 得 ル 、 仏 祖 相 伝 ノ 坐 禅 ノ 道 理 ナ ル ヘ シ 、 作 仏 ヲ マ タ サ ル 坐 禅 ナ ル カ ユ ヘ ニ 、 彫 龍 真 龍旧 共 二 雲 雨 ノ 能 ア ル コ ト ヲ 学 習 ス ヘ シ ト 被 レ 決 文、 ( 五 一 四
b
) = 一 六 「 真龍
」 と 「 彫 龍 」 に よ っ て 喩 え ら れ る の で あ る 。 そ の 訳 は 、 坐 禅 は現
在 の 行 為 で あ り 、 こ の 行 為 の 力 に よ っ て 成 仏得
道 す る と 、 普 通 } 般 に は 理 解 す る の で あ る 。 今 の 坐禅
は そ う で は な い 。 坐禅
と 作 仏 と は 決 し て 違 い が あ る は ず が な い 。 坐 禅 を 「 彫 龍 」 に 喩 え 、 作 仏 を 「真
龍
」 に喩
え る 。 結 局 は 「 彫 龍 」 も 「真
龍
」 も 一 つ で あ る と 理解
す る の が 、 仏 祖 相 伝 の 坐禅
の 道 理 で あ ろ う 。 作 仏 を ま た な い 坐 禅 で あ る か ら 、 「 彫 龍 ・真
龍 と も に 雲 雨 の 能 あ る こ と 、 学 習す
べ し 」 と決
着 さ れ る の で あ る 。 第 二 段 ( 4 ) 遠 を 貴 す る こ と な か れ、 遠 を 賤 す る こ と な か れ 、 遠 に 慣 熟 な る ぺ し 。 近 を 賤 す る こ と な か れ 、 近 を 貴 す る こ と な か れ、近
に 慣 熟 な る べ し 。 目 を か ろ くす
る こ と な か れ 、 目 を お も く す る こ と な か れ、 耳 を お も く す る こ と な か れ 、 耳 ( 9 ) を か ろ く す る こ と な か れ 、 耳 目 を し て 聡 明 な ら し む べ し 。 遠 ハ 作 仏 ニ ア タ リ、 近 ハ 坐 禅 ニ ア タ ル ヘ キ カ、 遠 近 共 二 作 仏 丈 坐 禅 丈 、 何 ヲ 貴 シ 何 ヲ 賤 ヘ キ 道 理 ア ル ヘ カ ラ ス ト 文 、 又 目 ヲ カ ロ ク ス ル 事 ナ カ レ 、 目 ヲ ・ モ ク ス ル 事 ナ カ レ ト 云 ハ 、 世 問 ニ モ 千 聞 ハ 一 見 ニ シ カ ス ト テ 、 目 ヲ 重 ス ル 事 モ ァ リ 、 又 一 見 ヨ リ モ 、 耳 ニ テ 聞 コ ソ シ タ シ ケ レ ナ ム ト 云 儀 モ ア ル カ 、 是 等 皆 一 ヲ 用 レ ハ 一 ハ ス テ ラ ル ・ 道 理 ア リ、 今 ノ 坐 禅 作 仏 ノ ア ハ ヒ 、 偬 テ 一 ヲ 用 、 一 ヲ ス ツ ル ト 云 勝 劣 取 捨 ノ キ ニ ア ラ ス 、 故 一 ヲ 重 ク シ 一 ヲ 軽 「 遠 」 は 作 仏 に 当 た り、 「 近 」 は 坐 禅 に 当 た る はず
か 。 「 遠 ・ 近 」 と も に 作 仏 で あ り 、 坐禅
で あ る 。何
を 「貴
」 い と し 、何
を 「 賤 」 し い とす
べき
道 理 〔 な ど 〕 あ る は ず が な い と い う の で あ る 。 ま た 「 目 を か ろ く す る こ と な か れ 、 目 を お も く す る こ と な か れ 」 と い う の は 、 世 間 で も 、 「 千 聞 は 一 見 に し か ず 」 と 言 っ て 、 目 を重
く す る こ と も あ る 。 ま た 一 見 よ り も 耳 で 聞く
こ と の ほ う が 親 し い と い う こ と も あ る か 。 こ れ ら に は 皆、 一 つ を用
い れ ば、 一 つ は捨
て ら れ る 道 理 が あ る 。今
の 坐禅
・ 作 仏 の 関 係 は 、 決 し て 一 つ を 用 い 、 一 つ を 捨 て る と い う 勝 劣 ・ 取捨
の 意 味 で は な い 。 だ か ら 一 つ を 重 く し、 一 つ を 軽 くす
る こ と が あ る はず
が な い 。 坐 禅 も 法NII-Electronic Library Service ス ル 事 不 レ 可 レ 有 、 坐 禅 モ 法 界 ヲ 尽 シ 、 作 仏 モ 法 界 ( 五 一 五 a ) ヲ 尽 ス 、 以 二 此 道 理 ハ 耳 目 ヲ シ テ 聡 明 ナ ラ シ ム ヘ シ ト ハ 云 ま 、 界 を 尽 く し 、 作 仏 も 法 界 を 尽 く す 。 む べ し 」 と い う の で あ る 。 こ の 道 珱 を
も
っ て 、 「 耳 目 を し て聡
明 な ら し 第 二 段 ( 5 ) ス ル ヲ ( 6 ) ず 江 西 い は く 、 図 二 作 仏 一 〈 作 仏 を 図 す る 〉 。 こ の道
、 あ き ら め達
す べ し 。作
仏 と 道 取 す る は 、 い か に あ る べき
ぞ 。 ほ と げ に 作 仏 せ ら る る を作
仏 と 道取
す
る か 、 ほ と け を 作 仏 す る を 作 仏 と 道 取す
る か 、 ほ と け の 一 面 出 ・ 両 面出
す る を 作仏
と 道 取 す る か 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe
江 西 南 嶽 二 大 徳 坐 禅 図 二 箇 什 塵 一 ト 被 レ 問 テ 図 二 作 仏 層 ト 被 レ 答 、 是 ハ 無 二 風 情 一 仏 ト ナ ラ ム ス ル 事 ヲ 図 ス ル ソ ト 被 レ 答 タ ル ヤ ウ ニ 聞 ユ 、 非 レ 蘇 、 此 図 カ ヤ カ テ 作 仏 ニ テ ア ル 文 、 ( 五 一 五