香川県企業の
2
0世紀末における情報処理
環境と情報通信環境について
1 . は じ め に
今 井 慈 郎 *
田 井 伸 雄 * *
合 田 武 勝 * * *
高 津 義 典 *
ITパフツレの崩壊と新聞紙上で報道され,昨今のマスコミ報道の中には,既に IT時代は終駕したような記述さえ見掛ける場合がある。果たしてIT化とはい かなる社会現象であり,それは社会活動,とりわけ,個人活動や企業活動にど のような変化をもたらしたのだろうか。一般論を展開するには能力の点でも, 知識の点でも不安を禁じえないが,IT
化という現象を,個人活動,企業活動を 問わず「対費用効果の向上を志向する『庶民の知恵、』の発露」と捉えることで, IT化と呼ばれる現象の中で,情報処理および情報通信に関する環境がどのよう に変化してきたかを具体的に把握することは今後の個人活動・企業活動を考究 する上で重要であり,主として情報関連の社会動向を考察する際のパックボー ンとなりうる。 ここでは,IT
をI
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h
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(,情報関連技術)という総称と捉え る代わりに,より明確に,I
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and T
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(情*
香川大学工学部 牢 * 糊香川県企業振興公社経済研究情報センター(現,糊かがわ産業支援財団)***
側香川産業頭脳化センター-186- 香川大学経済論議 570
報処理および情報通信)の略記と捉えている。これは,
IT
ではなくICT(
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-mation
&Communication T
e
c
h
n
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l
o
g
y
)
と明記すべきだとする知見(情報処理 学会長尾真会長)の延長上にある。本稿では,IT
技術という表記を「情報処理 および情報通信に関する技術」としており,情報処理および情報通信に関する 環境が,まさに車の両輪であり,両者のバランスが保たれることで,より対費 用効果の高い企業活動(個人活動も含む)が達成できるという立場で論じてい る。 問題はこのような趣旨に合致した,IT
化の状況を把握するアップトゥデート な情報を知何にすれば入手することができるかという点にあった。幸い,過日, 岡香川県企業振興公社経済研究情報センター(以下では「経済研究情報セン ター」とのみ略記)が香川県企業を対象に実施した'
I
T
化に関する調査」アン ケートは,香川県企業の2
0
世紀末における情報処理環境と情報通信環境につい て様々な側面を浮き彫りにしている。すなわち,情報処理・情報通信環境の導 入状況,業種別の導入状況の差異,および利活用の現状などを示すと共に,よ り定量的に分析することで,今後の進むべき方向性までも読み解くことも可能 であろうと思われる。 本稿では,第一報として,アンケート結果を基に,香川県企業が業務の効率 化を図る上で,情報処理環境・情報通信環境をどのように整えつつあるかを紹 介し,その特徴を定量的に分析すると同時に,現状から類推される今後の傾向 を議論したい。以下では,アンケートの概要,その集計結果,現状の定量的分 析および情報処理環境・情報通信環境の現状から見たIT
化の実情を記述する。2
.
アンケート調査の概要
本節では,香川県企業に対して実施されたアンケートの調査票内容を示し, 情報処理環境・情報通信環境の現状を把握する上での効果を議論したい。まず, 経済研究情報センターが実施したアンケートを以下に示す。[
I
T
化に関する調査票] 1) 御社ではパソコンを従業員に対してどの程度配備していますか。(該当する番号に
O
印をお願いします。) (回答) ①8割以上 ② 5 割以上 ~8 割未満 ③ 3 割以上 ~5 割未満 ④3割未満 ⑤今後配備する計画がある ⑥配備計画なし 2) 主にどのような業務にパソコンを使用していますか。(該当する番号にO
印 をお願いします。) (回答) ①文章作成 ②表計算 ③会計処理 ④製図設計 ⑤ホームページ作成 ⑥顧客管理 ⑦在庫管理 ⑧販売管理 ⑨ そ の 他 ( 3) それぞれのパソコンは, LANで接続されていますか。(該当する番号にO
印をお願いします。) (回答) ①接続している ②接続の計画あり ③接続していない4
)
イントラネットのソフト(ロータスノーツ,マイクロソフトエクスチェン ジ等)を導入していますか。(該当する番号にO
印をお願いします。) (回答) ①導入している ②導入の計画あり ③導入していない 5) インターネットの利用状況について(
1
)
インターネットに接続していますか。(該当する番号にO
印をお願いしま す。) (回答) ①接続している ②接続の計画あり ③接続していない(
2
)
自社ホームページを開設していますか。(該当する番号にO
印と主な用途 をお願いします。) (回答) ①開設している(用途; )②開設計画あり ③開設していない (3) インターネットメールを活用していますか。(該当する番号にO
印と主な 用途をお願いします。)ー -188ー 香川大学経済論叢 572 (回答) ① 活 用 し て い る ( 用 途 ② 活 用 計 画 あ り ③活用していない
6
)
携帯電話.PHS
を従業員に対してどの程度配備していますか。(該当する番 号にO
印をお願いします。) (回答) ①8割以上 ② 5 割以上 ~8 割未満 ③ 3 割以上 ~5 割未満 ④3割未満 ⑤今後配備する計画がある ⑥配備計画なし 7) 今後,当情報センターが講習会開催,国・県の産業施策等の情報をメーノレ 配信する場合,メーノレ配信をご希望されますか。(該当する番号にO
印と,ご 希望のときはメールアドレスをお願いします。) (回答) ①希望する # メールアドレス( ②ない 8) 御社の資本金等をお教えください。 資本金: 万円,業種: ,従業員数: 人 次に,各設問によってどのような情報が取得できるかについてコメントし, 分析の可能性についても言及する。調査票の問1)および問6
)
では,IT
化の進捗 が把握でき,香川県企業でのIT
化の傾向を分析する上での全体的指標となり うる。香川県という地方の立地条件などを内包するものの,より分析を進める ことで,業種別・従業員数別のIT
化の今後動向を予想する定量的指標ともなり うる。調査票の問 2)は複数回答により,パソコンを用いた業務内容の調査であ り,IT
化の内容に踏み込んだ調査となっている。香川県企業におけるIT
化の 現状として,業種別にどのような業務内容にパソコンを利用しているかを分析 し,事業規模に応じてどのような人材を必要とし,新人教育(新卒も含めて)お よび人材開発の一端としての再教育などを議論する上でも重要な情報入手のス タートポイントとなる。また,産業創出という点では,どのようなニーズが存 在し,ソリューションとしてどのような技術を提供できるかの検討が可能とな る。調査票の問3)および問4)では,パソコンを単体としてではなく,情報通信環境である LANを介して統合し,戦略的情報管理のための機器として使用す るかどうかの動向調査としての意味を持つと思われる。回答選択肢である 'LAN接続しているJ'LAN接続の計画がある」などを業種ごと,従業員数規 模ごとに分析することで,
IT
化の実体をより正確に把握することが可能であろ う。特に,イントラネット導入の動向調査が可能な点(現状把握が可能な点)で は有意義である。しかし,イントラネットへの必要性をより正確に把握する意 味では,イントラネットアプリの利用状況やその満足度などの調査も今後は望 まれよう。調査票の問5
)
では,インターネット接続状況およびホームページ(
H
P
)
開設と電子メイル利用を中心としたインターネット利用状況の現状分析 が可能である。今後の展開として,回線速度の現状と増強計画(満足度と容量拡 大の提案),サービスプロパイディング(希望状況と提案型ビジネスの可否な ど),サーバ設置(希望状況と導入ビジネスの紹介)など,現状のニーズとシーズ を分析することで,地方に根ざしたビジネスチャンスの提供など情報発掘の可 能性も視野に入れるべきであろう。調査票の問7
)
では,どのような情報をメイ リングリストで入手したいかの動向調査への第一歩と捉え,経済研究情報セン ターから入手可能な電子媒体の情報内容の紹介および新規のメイリングリスト 開設の指針と捕らえることができる。調査票の問8)では,業種および従業員規 模(資本金を含む)に応じて各企業のIT化状況を定量的に把握でき,より分析 を進めることで,IT
化状況に関する業種間の違いや同一業種の企業規模聞の違 いなどを定量評価する上での判断指針となIりうる。3
.
アンケート調査の集計結果
アンケート対象企業としては,香川県に本社あるいは支庖などがあるほぽ総 ての企業であり,アンケート配布先は約2
,5
0
0
社となっている。実際の回答は その2
割の5
0
1
社から得られている。回収率そのものは議論しないが,5
0
0
社を 超える規模のアンケート調査が可能となった点は評価できょう。 表1
には,今回のアンケートに回答があった香川県企業の業種別内訳の一覧 を示している。①製造業,②建設業,③卸小売飲食業,④サービス業の順で回-190 香 川 大 学 経 済 論 叢 574 答数が多いが,これは香川県企業の業種分布をほぼ反映した内容となっている。 業種に関する回答がないアンケート結果が一定数含まれているため,業種未回 答」という項目を各表に用意している。アンケートの回答件数の多い,①製造 業,②建設業,③卸小売飲食業,④サービス業の次において, それ以外の「電 カガス等J'金融保険」および「不動産」などの業種との区別を行っている。 表2-1および表2-2に,調査票の問1)'従業員に対するパソコン配備率」 および「今後の配備計画の有無」の回答結果一覧を示す。 ちなみに今後の配備 計画は,配備状況の多寡によらず,配備計画の有無を調査したものであるが, アンケートでの説明不足のためか,回答結果が予定したものとならなかった(回 答数が非常に少ない)。 そのため, あくまでも参考資料の域をでない。 表3に調査票の問 2) ,パソコンの業務目的別使途」の回答結果一覧を示す。 表1 回答結果の業種別件数 中小企業 大企業・その他 小計 民 業
。
。 。
林 業。
。 。
漁 業。
。 。
鉱 業。
。 。
建 談 業 98 18 116 製 造 業 154 20 174 電 力 ガ ス 等 2 1 3 運 輸 通 信 21 1 22 卸 小 売 飲 食 i8 9 87 金 融 保 険 業 5 6 万 動 産 業 8。
8 サ ー ビ ス 業 53 6 59 そ の 也イ。
。 。
12 14 26 言十 431 70 501表 2ー 1 調査票の問 1)r従業員に対するパソコン配備率」の回答結果 表2-2 調査票の問1)r今後のパソコン配備計画の有無」の回答結果 表3 調査票の問 2) rパソコンの業務目的別使途」の回答結果 複数回答が可能であるため,割合の項目は排他的ではなしあくまでもパソコ ンの使用目的を明示させる程度の意味である。 表4に調査票の問3),-パソコンのLAN接続状況」の回答結果一覧を示す。 これは,表6のインターネット接続状況と組み合わせることで,より多元的な 分析が可能となる。 表
5
に調査票の問4
)
,-イントラネットソフトウェアの導入状況」の回答結果~192 香川大学経済論叢 576 表4 調査票の問3)rパソコンのLAN接続状況」の回答結果 表5 調査票の問4)rイントラネットソフトウェアの導入状況」の回答結果 建設業 製造業運輸通信卸小売飲食 サービス 電力ガス等 金融蝦険 不動産 合計 割合 ①導入している 31 68 7 36 19 10 4 11171 353% ②導入の計画あり 8 14 2 4 4
o
I 34 6.8% ③導入していない 73 86 13 42 33 11 2 7 I 268 53.5%e
無回答 4 6 5 3 4。 。
o
I 22 44% 表Bー1 調査棄の問5ー1)rインターネット接続状況」の回答結果 建設業 製造業運輸通信卸小売飲食 サ}ピス 竜カガス等 金融保険 不動産 合計 割合 ①接続している 99 147 16 63 46 22 5 7 I 408 814% ②接続の計画あり 4 3 9 l。
o
I 26 52% ③接続していない 13 14 3 12 11。
1 I 57 11 4% @無回答。
4。
。
01 10 20% L一一一一一一 表6- 2 調査葉の問5-2)r自社HPの開設状況」の回答結果 表6- 3 調査察の問5- 3) rインターネットメールの活用状況」の回答結果一覧を示す。今回のアンケートの中でもこの回答結果を分析することで,
IT
化 の今後を予想する上でも貴重となる情報のいくつかが読取れるのではないかと 思われる。 表6-1
に,調査票の問5
-1) rインターネット接続状況」の,表6-2
に 調査票の間5-2)
r自社HP
の開設状況Jの,そして表6-3
に調査票の問5
-3)
rインターネットメールの活用状況」のそれぞれの回答結果一覧を示す。 表7-1
に, 調査票の問6
)
r従業員に対する携帯電話・PHS
配備率」の回 答結果を,表7-2
に調査票の間6
)
r今後の携帯電話・PHS
配備計画の有無」 の回答結果をそれぞれ示す。ここでも,今後の配備計画は,配備状況の多寡に よらず,配備計画の有無を調査したものであるが,アンケートでの説明不足の ためか,回答結果が予定したものとならなかった(回答数が少ない)。あくまで も参考資料として挙げるにとどめている。 表7ー 1 調査票の問 6)r従業員に対する携帯電話・PHS配備率」の回答結果 無回答。
4110%4
.
香川県企業の
2
0
世紀末素描
本節では,前i
節で述べたアンケートの回答結果に基づき,調査票の設問ごと にコメントを加え,客観的な評価を試みる。194ー 香川大学経済論叢 578 ι1 調査票の間1)および問 6)の調査結果について まず r従業員に対するパソコン配備率」についてコメントする。 r8割以上 の配備」と r
3
割未満の配備」が上位を占め,既に配備している中でも緩やか な両極化が進んでいることを示唆している。 r5 割以上~8 割未満J r 3割以上 ~5 割未満」の中間的配備状況が少ない理由を次のように考察した。すなわち,・
1つの考えとして,対費用効果が悪いという観点からすれば理解できる結 果ではないだろうか。特に,一度電子化(計算機可読性の文書を作成)すれ ば,再利用は容易であり,結果として投入した費用のコストが相対的に還 元される。コスト性能比の向上が期待できる点を考慮すれば 8割以上の 配備を進めてIT化のマス効果を目指す企業と,数台は導入したが大勢を 占めるに至らず情報機器が無用の長物的存在になりつつある企業との両極 化(意識格差の顕在化)はむしろ自然の成り行きと思われる。・
一方,時系列的に分析するならば r3
割未満の配備」状況という初期段階 から始めて r3 割以上 ~5 割未満J r 5 割以上 ~8 割未満」の中間的配備 状況をすばやく経過して, r 8割以上の配備」という投資効果が顕著に表れ る段階に到達した企業も少なくない(全体の1
/
4
程度)という状況が読み取 れる。これは地方でありながら四国四県の窓口的立地条件を良く反映して いると思われる。その意味では全体の1/3程度が, r 3割未満の配備」状況 という初期段階であるという数字は, IT化元年と見なされる 20世紀末で の実体を如実に表しているとも言える。 などである。 調査票の問6)である「従業員に対する携帯電話・PHS配備率」に対する調査 結果が極めて酷似している点に注目したい。IT
化とは情報処理技術と情報通信 技術の融合した複合化技術の浸透を示しているとの立場で考察するとこの調査 結果は特筆すべき事項である。両技術を代表する機器として,パソコンと携帯 電話・PHSを例示しており,このように両者が酷似した配備率を持っていると いう調査結果を得ると,香川県のIT
化はすこぶ、るバランス良く進展している と考えられる。情報処理機器であるパソコンと情報通信機器である携帯電話・PHS
の融合が進むことにより,一人のユーザが情報処理機能と情報通信機能を 複合的・相補的に活用するという,既に潜在していた傾向が,今後は顕在化し ていくと思われる。換言すれば本稿で考える意味でのIT化が進捗すれば,メー カおよびキャリアなどの企業にとっての戦略的ターゲットが増大し,サード パーティのビジネスチャンスが広がり,そして教育機関の扱うべき対象として の重要性が高まると思われる。 4..2 調査票の間2)および間3)の調査結果について 調査票の問2)である「パソコンの業務目的別使途Jの調査結果では以下のよ うな評価が可能である。すなわち,文章作成,表計算,会計処理などの定常的 業務にパソコン利用の多数が占められているのは全国的傾向であり,香川県企 業も同様の傾向を有している。一方,販売管理,顧客管理,在庫管理などデー タベース的利用はスキノレを要するものの,人材を確保して一度立ち上げると利 用効果も高く,パソコン利用の中核を形成する。本来,データベース利用上で は操作性の差異が少ない販売管理,顧客管理および在庫管理において,在庫管 理が比較的少ないのは後述するように製造業が必ずしもパソコン利用に積極的 ではないという香川県企業の現状を反映していると思われる。これは製図設計 に対する利用状況があまり多くないという事実とも符合している。一方,HP
作 成が少ないのは外部委託が多いか,ホームページ開設自体の件数が少ないかの 現状を表している。香川県企業においては,全国レベルと比較しでもHP
作成 のニーズも少なしまた社外の委託先も比較的多いという状況が読み取れる。 調査票の問3)である「パソコンのLAN接続状況」の調査結果では,次のよ うな評価が可能である。既に全体の2/3程度が業務ノfソコンをLAN接続して いる状況はIT化の進捗状況が順調であることを示している。接続計画中と回 答したものが既に0..6割程度であり, LAN接続自体がある程度充足状況に 至った状態にあると判断できるかもしれない。一方,調査票(5-1)より 8割以上 がインターネット接続を行っているという現状からすれば,情報共有の有効性 が高いレベルで実現されているとは言えないだろう。すなわち,導入されてい~196~ 香川大学経済論叢 580 る機種のほとんどがWindowsPCと仮定すれば, LAN接続によって始めて情 報共有(例えばプリンタの共有やファイ1レの共有など)が可能となり,パソコン などの複数導入効果が期待できる。しかし,インターネット接続(8L4%)から LAN接続(625%)を差し号│いた2割弱の回答には,これを無視できない割合 と見ればなおさら, LAN接続という技術的ノtリア(初期導入コストおよび運用 コストを含む)が県内企業の一部にせよ存在しているという,香川県企業のIT 化の実態を伺わせている。 4..3 謂査票の問4)および間5)の調査結果について 調査票の問4)では,市販のイントラネットソフトウェア(グループウェアソ フトウェアを含む)の導入状況を照会しており,現状では導入計画を含めて全体 の
1
/
2
にも達していない。理由はいくつか考えられるが,・
メーカおよびディーラがビジネスの主力と考えていること、で,比較的高額 な製品群となっている点 • OSやプログラミング環境などのように一般的でマニュアノレも完備した量 販ソフトウェアではない点・
導入先の業務内容を正確に把握してカスタマイズする個別対応型ソフト ウェアとなっている点・
導入コストのみならず維持コストが高額になるソフトウェアである点・
導入効果を向上させるにはユーザ側の努力に大きく依拠する点 などのイントラネットソフトウェア自体の特徴が影響していると思われる。香 川県企業における IT化調査結果の特徴の1っと言えるかもしれない。一方,こ れをビジネスチャンスとみることもできょう。市場調査ときめ細かいサービス を売り物にした新しいサービスプロパイディングを可能とし,IT
効果を向上さ せたいと希望する企業への働きかけも有効ではないだろうか。人材育成という 観点から見ても,この調査結果からは,いくつかの示唆が得られると思われる。 次に,調査票の問5
)
の「インターネットの利用状況」の調査結果から以下の ような議論が可能である。 5-1)I接続状況」の回答より,接続計画中と回答されたものまで含めると 8,,5割の高い実施率でインターネット接続が重要である との認識を香川県企業が有しているという実態が読み取れる。一般にインター ネット接続後は,ほぽ
100%
がホームページを閲覧するという周知の事実から, 調査の対象をHP
開設および電子メイノレ利用の2
項目に絞って照会している。5
-
3
)
rインターネットメールの利用状況」の回答より,インターネット接続後 の電子メイル利用が8
割以上(673/8L4=0
町8
2
7
)
,計画中までを含めるとほぼ9
割((673+1
L
2
)
/(8L3+5
,2)
=0896)
の回答があった点から電子メイル利 用がインターネット接続の目的の1つであったことが確認できる。メイル利用 を可能とするプロパイダ契約経費やメイル利用に関する人材確保も,HP
開設 と比較すれば,ある程度順調に進んでいることが読取れる。また,5
-
2
)
r自社HP
の開設状況」の回答より,企業独自のホームページを開設している割合は全 体で5割程度,計画中の企業を入れても 7割未満である。確かにインターネッ ト接続を果たしている企業にとってもHP
開設が必ずしも必須事項ではない と見なされている節もある。しかし,IT
化の推進という観点から言えば,今や 企業が広告塔としてのHP
を持たないこと自体が広報を含む企業活動のレベ ノレ低下を招く危険があろう。HP
開設は重要な窓口業務を2
4
時間体制で実現す る不可欠な手段の1っとの見解にも傾注すべきである。現時点での断定は避け るべきであろうが,HP
開設が情報発信と共に注文やアンケート調査にも活用 でき情報取得の窓口ともなる機能を有するという事実を考慮すると,企業に とって今後の懸案事項と位置付けられよう。今回の回答には,HP
開設にせよ, 電子メイル利用にせよ,計画中という回答の割合が共に1
割以上と相対的に大 きな比率である点も特筆すべき特徴である。すなわち,2
0
世紀末の時点、で,HP
開設と電子メイル利用はインターネット接続を果たした企業の目的ではある が,必ずしも容易に達成できないある種のバリア的存在を暗示している。この 点においても人材育成の課題を垣間見ることができょう。 4,.4 調査票の間8)の調査結果について 業種別には,①製造業,②建設業,③卸小売飲食業,④サービス業に分類さ198 香川大学経済論叢 582 れる企業からの回答が,この順に多く得られている。分析においても,これら の業種を中心に行うことになろう。まず,特徴的な状況として,パソコン配備 率について
3
割未満であるのは,①製造業,②建設業,③却小売飲食業,④ サービス業の順に多いが,8
割以上の配備率は見事にこの逆で,①製造業,② 建設業,③卸小売飲食業,④サービス業の順に少なくなっている。この結果, パソコン配備率の観点からはサービス業が相対的に熱心であることが読み取れ る。製造業におけるパソコン配備率が向上すれば,香川県企業のIT
化がより進 展する可能性も高い。しかし,回答企業内の中小企業数においても製造業の占 有率が一番多い状態であり,2
0
世紀末時点でのIT
化が必ずしも容易に進展で きない遠因と見なすことができる。 一方,IT
化という意味でもパソコン配備率と両輪をなす携帯電話・PHS
の配 備率について,業種別に考察すると, 3害j未満であると回答した企業は,①製 造業,②サービス業,③卸小売飲食業,④建設業の順に多い。しかし 8割以 上であると回答した企業は,①建設業,②卸小売飲食業,③サービス業(両者は ほぼ同一割合),④製造業の順に多い。携帯電話.PHS
の配備率に関する観点か らは,建設業の企業の取り組む姿勢に熱心さが伺える。これは各現場と会社本 部との連絡等が最早,電話回線などの有線通信ではなく,携帯電話やPHS
など の無線通信に移行しつつある現状を強く反映していると思われる。香川県企業 としては,製造業に次いで中小企業数が多い建設業であるが,携帯電話.PHS
はパソコンと比較してより安価であり,望みの効果を少ない機能で実現でき, 操作性も画一的であるという特徴が追い風になって導入が進んでいると判断で きょう。これと比較して,パソコン配備には熱心であったサービス業や卸小売 飲食業の企業では建設業の企業に見られるような業種上の特徴が顕著でない。 しかし,製造業では,携帯電話・PHS
配備率においてもパソコン配備率と同様 に,立ち遅れが目立っている点が1
つの特徴となっている。5
.
お わ り に
今回の調査結果(第一報)のまとめとしてコメントする。香川県において,資本金や従業員数による大企業と中小企業との企業間格差が
IT
化においてどの 程度決定的な違いを持っているか,一概には言えない。その点においては今後 も分析を継続する必要がある。また,定量的評価をより正確に行うためには, 得られたデータを再度,綿密に調べ直すことも避けられない。その意味で今回 の分析が表層的に留まった点は否めない。今後の研究課題としたい。 最後に,中小企業の人材確保という点で,一言コメントしたい。人材確保とIT
化の進捗状況が大きく関係していることは全国的傾向である。人材確保とい う動きが,そのままリストラという名の人員整理を招けば,社会不安と共に従 業員の戦意を大きく低下させ,マイナスの効果のみ増大するのは必定である。 特に香川県企業において,製造業や建設業の占める比率を考える時,スキノレを つんだ職人的人材を対象とした人員整理はむしろ企業の財産を散逸するに過ぎ ないと思われる。再教育プランとこれまで培った従業員のスキルを効果的にIT
化と結びつける知恵の活用が,企業を成功へと導くキーコンゼプトであろう。 適切な情報交換と人材確保の支援は,香川大学を始めとする高等教育機関や香 川県産業頭脳化センターなどに課された重要なミッションである。IT
化は生き 残るための知恵であるが,限られたパイの中での競争となれば労力の割に効果 が少ない。むしろ,パイ全体を拡大させるため,新しい分野への展開の原動力 と捉えたい。資材や物流の流通範囲を広げ,人材の確保を図り,産業や経済を 活性化する起爆剤であると位置付けることの方が前向きであろう。 謝 辞 産学連携に情熱を傾け,産業のIT化にも造詣が深く,筆者らをいつも指導し,激励の言葉 を掛けていただく香川大学工学部初代学部長(教授),石川浩先生には本研究をまとめる上で 貴重なコメントをいただいた。企業のIT化を個別具体的に指導し,企業との共同研究の実績 も豊富な香川大学工学部教授,白木渡先生および同助教授,井面仁志先生には,工学部信頼性 工学諮座のメンバーとして,つねに適切なアドバイスと研究協力をいただいている。闘かがわ 産業支援財団総務課課長代理,大康正道氏にはアンケートのとりまとめで協力をいただいた。 関香川産業頭脳化センタ一事業部長,三浦伊知朗氏には本研究をまとめる上で,多くの支援を-200ー 香川大学経済論叢 584 いただいた。同センター丸山久美子氏には,本稿における資料作成などの諸作業で,様々な協 力をいただいた。香川経済同友会事務局長,森真佐男氏ならびに総務課長,瀬川理恵氏には, 本研究を進める上で有効となる悶同友会「情報化委員会」での発表の機会をいただき,ディス カッションを通じた本研究の不備低減にご協力いただいた。一方,経済研究情報センターが実 施したアンケートに真撃に回報された香川県企業の担当者殿には貴重な情報を提供していた だいた。紙面をお借りして,上記の各{立に深く感謝の意を表したい。 参 考 文 献 [ 1 ] '県内企業のIT化に関する実態調査」財団法人香川県企業振興公社経済研究情報セン ター,株式会社香川県産業頭脳化センター,平成13年3月 [ 2 ] 'しこく経済:県内企業 IT化の現状」四国新聞(平成13年4月16日号9面) [ 3 ] 東一民「シリコンバレーのっくり方」中央公論新社(中公新書ラクレ)2001