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バーチャルコーポレーションのビジネスモデル-香川大学学術情報リポジトリ

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香 川 大 学 経 済 論 叢 第 72巻 第 3号 1999年 12月 209-314

バーチャルコーポレーション

のビジネスモデル

原 田

* 松 岡 輝 美

し は じ め に きたるべき 21世紀の到来を直近に控えて,各企業における経営戦略や組織戦 略については,次世代型企業モデノレの確立へ向けてより強い企業の実現や,自 社の生き残りを担保するために,次第に企業間関係や組織間関係を重視する傾 向を強めている。このことは,すなわち21世紀においては組織や企業の壁を超 えていかなる相手といかなる手を組むのか,そしていかにすれば最も生産性の 高い組み方ができるのかがポイントになることを意味している。そうなると, 次第に企業と企業そして組織と組織をつなぐプラグアビリティやコネクタビリ ティといった連結能力が重視されてくる。 言い換えれば,連結によって現実世界にある多様な境界を超えて新たなパ リコーをつくりだし,そしてそのバリューによって企業が強い競争力をもてる 仕組みが期待されてくる。なお,著者においては特に以前からこうした能力を 追求する経営についてはコラボレーション経営やコーディネート経営という概 念に基づいた主張を行っている。また,このような経営を実践するには,例え ばバーチャJレ空間上で資源と人材を連結してより大きな付加価値と効率性を実 現しうるバーチャルコーポレーションという概念が,まさに21世紀にむけた新 しい経営を模索する強力な戦略としておおいに期待されている。 このバーチャノレコーポレーションとかバーチャノレ企業連合とよばれている企

*

岡山商科大学商学部専任諮師。

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仏 │ -210ー 香川大学経済論叢 1024 業形態が,まさにプラグアビリティを駆使する典型的なコーディネート企業で ある。言い換えれば,これは個々のプロジェクトの目的に応じてそのコアコン ピタンスを結集すべく複数の企業が仮想空間上で提携するある種のネットワー ク体と考えられる。そこにおいては,とりわけ情報ネットワークを活用するこ とで,第1にいかに自社のコアコンビタンスを強化するか,第2にいかにグロー パルに資源と人材を連結し活用するか,というような経営の実践が鍵になって いる。 また,このバーチャ/レコーポレーションについては,最初は単なる未来学者 の夢想にすぎなかったのだが,次第に経営理論としての可能性が高まることに なり,現在ではもはや企業経営者にとって

1

つの経済的必然にもなっている。 こうした観点に立脚して,特に本稿においてはバーチヤ/レコーポレーションが 一体いかにして実現しうるのか,またバーチャル化の戦略的運営方法について は一体どんなものがあるのか,さらにはバーチャノレコーポレーションに特徴的 な新しい組織間関係の捉え方は一体どんなものか,というような観点からのア プローチを

f

子ってみる。 具体的には,第1はバーチャルコーポレーションのイメージ,第2はパーチャ リゼーションの戦略展開,第3は組織間関係論のニューパラダイム,第4は流 通企業におけるコーディネート戦略,第

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における成功の法則,第

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はネットワークパワーのビジネスモデノレ,第

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はアライアンスの戦略的導入方法,第8はバーチャノレコーポレーションのビジ ネスモデルという

8

点についての論述である。 II.バーチャノレコーポレーションのイメージ ここでは,まず本稿で取り上げるバーチャJレコーポレーションの概括的なイ メージについて理解を深めることにする。このバーチャノレコーポレーションと は,文字通り仮想的な場における企業連合である。そして,このバーチャルコー ポレーションの最大の特徴とは,リアJレな企業がいわばリジッドでクローズド な空間概念を基軸に成立しているのに対し,むしろオープン志向のテンポラ

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1025 バーチャノレコーポレーションのビジネスモテγレ 211-リーで多重的な空間概念に依拠していることである。なお,このような性格を もっているため,バーチャノレコーポレーションは柔軟な対応が可能であるし, またスピードの経済への対応も可能になっている。その意味では,きたるべく デジタJレエコノミーにはきわめて適合度の高い組織モデルであると考えられ る。 このような基本認識に基づき,以下においてバーチャルコーポレーションに ついて 4点にわたった考察を試みる(図表1)。 第

1

はバーチャノレコーポレーションの先進事例についてである。ここでは, すでに多くの先進事例があることをのべることで,バーチャyレ化の問題がすで に現実的な・課題であることの理解を深めることにする。 第

2

はバーチャJレなプライベートネットワークについてである。これでは, ノてーチャノレコーポレーションがネットワークにおいて実現されることを示して いる。すなわち,バーチャルコーポレーションが先進的な情報通信システムに よってはじめて可能になったことを示している。 図表 1 イントラネットによる企業組織の SOHO化傾向 イントラネット 伊藤友八郎『バーチャル企業連合』より

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212 香川大学経済論叢 1026 第3はインターネットバーチャル企業連合についてである。これでは,イン ターネットがきたるべきデジタルエコノミーにおける事業創造の場としては主 流になることを示している。ここにおいては,今後期待される多くのインター ネットバーチャルコーポレーションの特徴について言及を行っている。 第4は製造業におけるバーチャノレコーポレーションについてである。昨今, 特に従来では最もクローズドな完結した体制が前提であった製造業がバーチャ ノレ化によって根本的な革新をとげている。そこで,このような傾向をポジティ ブに捉えながら,ここではバーチャル化によって現出する新たなパラダイムに ついての考察を行っている。 バーチャルコーポレーションの先進事例 さて,伊藤友八郎によればバーチャルコーポレ←ションはアメリカのプロバ スケットボールのドリームチームにたとえられることが多い。このバーチャノレ コーポレーションでは,まさに各企業のコアコンピタンスをネットワークで連 結しそして仮想空間上であたかも lつの企業のように振るまうことに,その最 大の特徴がみいだせる。そして,このような特徴をもっているため,このバー チャノレコーポレーションこそがまさに企業版ドリームチームといえる。 したがって当然ながら,このバーチャルコーポレーションのコンセプトはい わばベストオブエブリシングの統合体ということになる。そして,これの実現 によってこそ,バーチャノレコーポレーションはまさにグローパルに通用するコ アコンピタンスを保持できる組織体になり,また真にグローパノレな競争力を 持った企業になることができる。 なお,このようなバーチャルコーポレーションにおける連結とは,例えば

A

社の技術力,

B

社の製造加工技術,

c

社の製品開発力,

D

社のマーケティング 能力,

E

社の資金力,

F

社の流通ネットワークといった形態で,いわば特定の プロジェクトに対して最高のコアをもった企業が結集することにより実現され ている。これによって,従来では,単独ではなしえなかった圧倒的な競争優位 を入手することができ,また同時に狙った市場の制覇も可能になってくる。

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1027 ノTーチャルコーポレーションのビジネスモデル -213 しかしながら,実際には自前主義に拘るばかりに組織が肥大化し,遂には競 争力を失ってしまった企業も多く散見されている。このことから理解できるこ とは,グローパル競争の時代にはいわゆるフルセットでの自前主義に基づいた 経営の遂行が必ずしも環境適応力の観点からは最適な仕組みではないことであ る。むしろ,企業は機能体の観点からフルセットを備えていれば十分であり, そのためすべてを自前主義で行う必要はほとんどなくなっている。 実際には,すべての分野で業界内においてそれ相応の力をもっ自前主義の企 業においては経営資源の投入が分散化しがちであり,そのために集中的な機動 力の発揮が困難な状態なのである。しかし,もしも経営資源を特定の専門分野, 特に自社のコアコンピタンスに集中すれば,その分野で競争優位を獲得するこ とができ,したがってリーディングカンパニーになれる可能性も大きくなる。 じつは,これこそがバーチャノレコーポレーションの経営戦略であり,これによっ ていわばフルセット型の組織をメルトダウンさせてしまう超経営革命にもなる 可能性を秘めている。 例えばすでに半導体業界においては, 1996年には将来をみ通して半導体企業

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社が

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の結成を行っ ている。このことは,国内では東芝,富士通,日本電気,ソニーのように過去 からライバルとして闘ってきた企業の参加をあおぐことで,まさに

LSI

標準化 に的を絞った合従連衡を実現することで共同開発を行うためであった。 実は,この

LSI

についてはこれからバーチャルコーポレーションという形態 でビジネスが行われる最も象徴的なビジネスなのである。それは,バーチャノレ コーポレーションの構築が

LSI

の新製品開発における速い変化に対応するに は不可避な対応策であるからである。 例えば,インテJレにおいては製品開発については複数のラインを同時平行的 に走らせている。すなわち,

A

というラインのなかでは

A

の延長線上に新製品 が発売され, BというラインについてはBの延長線上に新製品が発売されるこ とになり,それが外部に対しては,

A1

B1

A2

B2

A3

B3

とい う順番に新製品として登場していく仕組みをつくりあげている。

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← 214 香川│大学経済論叢 1028 このような考え方に基づくと,製品開発はもしもラインが3つになれば3倍 のスピードになり,そしてラインが 4つになれば4f音になっている。こうして, それぞれ異なるラインをあたかも

1

つの連続したラインのごとく市場に対して 製品を送りこむ。このような対応は,いくらグローパル企業といえインテル以 外では単独の会柾で行うのはまったく不可能なことであり,そのためにこそ複 数の企業連合としての戦略的アライアンスが不可避になる。 その他にも,米国においては顧客サポートを効率化するヘルプデスクサービ スのバーチャノレコーポレーションが特に著名である。このバーチャルコーポ レーションについては,マイクロソフト,ヒューレツト・パッカード,デル・ コンビュータなどの主要コンピュータ通信関連ベンダー

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6

社のアライアンス によりカスタマーサポートコンソーシアムを結成し,これによっていわゆる大 規模なヘルプデスクサービスを提供することを狙っている。 また,日本においては通商産業省の助成によりメーカーと流通

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社による エレクトリックコマースの商品画像システム推進協議会が発足しており,これ によって商品画像情報の共有サービスの提供をめざしている。ここにおいては, メーカーからは花王や資生堂,卸問屋からは明治屋や菱食,小売業からはグ、イ エーやジャスコなどの11社が幹事となり,そして日本電気が情報システム面の サポートを行う体制が構築されることになった。この商品画像の情報の共有化 によれすべての小売り情報がバーチャルなネットワークの中で動くことにな り,まさにバーチャルな流通空間というものが構築される。

2

バーチャルなプライベートネットワーク 昨今,インターネットが企業ユーザーの業務ネットワークとしての安全性, 信頼性,確実性を高められる高度な機能を実現させたことにより,バーチャノレ コーポレーションの構築はすでに技術的に可能になっている。その典型的な ネットワークが,

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Network)

というインターネット上の 仮想的なWANなのである。これは,一言でいえば伊藤友八郎によるとまさに インターネットのイントラ化に他ならない。

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1029 バーチャルコーポレーションのビジネスモデル -215-この

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では,インターネット上の複数の拠点をいわば閉鎖性のあるイン トラネットとして扱い,不正アクセスを完全に排除する仕組みをもっている。 すなわち,このシステムは

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のオプションとして標準化し たセキュリティプロトコノレ

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セキュリティ)を実装したものである。 そして,このシステムがバーチャlレコーポレーションの専用ネットワークとし て活用できるため,バーチャルコーポレーションに参加する企業や専門家が自 分たちだけの共同イントラネットで情報共有ができるのである。 なお,

VPN

の事例としては,すでに

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インターナショナノレが

VISA

オン ライン・ブオー・メンノてー・フィナンシャル・インスティテューションズとい うインターネット利用の会員企業むけ情報共有システムが稼働している。この システムはいわば機密性の高いセールス情報をインターネット上で受発信する ためのセキュリティ機能を備えている

VPN

システムといえる。 また,日産自動車においては, 1998年には専用パックボーンネットワークと

VPN

により国内外のグループ企業を網羅する高度情報通信ネットワークを構 築を完了している。このことは,日産の800社以上の部品メーカーやディー ラー,そして欧米現地法人などの

LAN

を日産の各拠点、に接続してネットワー クのグローパル化の推進を狙ったものであった。 このような

VPN

の利用形態は業種によって多様であるが,しかし会員用に 限定した課金システムなどがでてくると,カード決済のセキュリティを考慮し なければならなくなる。そのためには,ユーザー登録されたクレジット番号と 引き換えにそれぞれに会員IDを与え,その上で利用者トはその暗号鍵ソフトを 自分の

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ブラウザに組み込んで使う,いわば認証方式の導入によりセ キュリティを確保することができる。 さて,バーチャノレコーポレーションにおいては,参加企業それぞれのコアコ ンピタンスが間違いなく目的のプロジェクトごとに連携されることが,当然な がら前提条件になっている。このことは,言い換えればメンバーの能力を結合 したコラボレーションの形成でもある。バーチャJレコーポレーションにおいて は,どの企業のまたどのセクションに属しているかなどについてはまったく意

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216 香川大学経済論叢 1030 味がない。すなわち,そこでは各個人が自分の専門能力を生かせるプロジェク トに参加し,全体があたかも

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つの企業であるかのようなバーチャノレな帝

ι

織活 動が展開されている。 これからは,こうしたあらゆる境界を超える動きに対応して,いわば能力の ある個人を適材適所に動かせる企業だけがコアコンピタンスを結集することが 可能になる。言い換えれば,これからの企業組織は組織に固定された機能にビ ジネスのやり方をあわせるのではなく,仕事が求めるビジネススタイルに組織 の方をあわせながら,ケースパイケースで柔軟にシステム形態をかえていくこ とになる。そして,これを現実のものとするのが,まさにインターネットの高 性能化によって可能になった

VPN

であれまたそこにおいて自在な組織化が 可能なバーチャルコーポレーションが形成されるのである。 さて,プロジェクトごとにいくつかのバーチャルコーポレーションを作り, そこでl人ひとりの能力と経営資源を発揮させるには,既存の企業組織につい て根本的な革新を行わなければならない。同時に,組織を変革するには同時に 必ずやビジネスプロセスの改革が伴うことになる。また,昨今のドラスチック に変化するマーケットにおいては,プロジェクト単位でのスピーディーなフッ トワークを要求している。だからこそ,ネットワークの黄金期をむかえた今こ そ,そのパフォーマンスに応えうる新しいビジネスモデノレとして,

VPN

によっ てもたらされるバーチャルコーポレーションをあげることができる。 このバーチャノレコーポレーションにおいて重要なことは,いかに優れたネッ トワークを構築するか,しかもいかにオープンなネットワークを構築するかと いうことである。現在,じつにこのバーチャルコーポレーションに代表される ノてーチャノレコミュニティのように,多様なバーチャル組織がネットワーク上に 構築されつつある。そして,そこにおいてはネットワーク聞の競争こそが,今 後のバーチャノレコーポレーションにおける競争戦略になってくる。 そこで,このプライベートネットワーク上にいわば企業版ドリームチームを のせることで,他のプライベートネットワークと闘っていくことになる。その ために,まず企業内のネットワークを整備し,そしてそのイントラネットを拡

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1031 ノてーチャルコーポレーションのビジネスモデル -217 大することが不可欠になる。そして,イントラネットのセキュリティをもちな がらも,企業と企業を連結させることでヱクストラネットへと発展させること がおおいに期待されている。 3 インターネットバーチャル企業連合 伊藤友八郎によれば,バーチヤ/レコーポレーションはある種の独立した企業 というよりは,むしろ広い関係構造の中において常に形をかえていく企業活動 の集合体と考えるべきものである。しかし,現在ではITの活用が進展し,その 急激な浸透と多様な展開の中で,バーチャルコーポレーションはもはやまった く珍しい存在ではなくなっている。特に,ビジネスプロセスにおけるネットワー ク化とデジタノレ化の急速な進展は,経営環境に対してまさに革命的ともいえる 状況変化を現出させている。 こうした潮流における対応としては,第

1

にインターネット上にバーチャノレ ビジネスとしてのサイトを構築する,第2にリアノレビジネスをバーチャルにつ なぐという 2つのアプローチのいずれかを選択することがある。そして,そ こにおいては情報やナレッジの共有化が最大の課題になっている。すなわち, これまでは情報の差別化によってビジネス戦略の差別化を行ってきたが,これ からは情報の共有化によって新たな付加価値の創造を行うことで競争状況を乗 り切っていくという,まさに今までとまったく逆のアプローチが必要になって いる。したがって,いつでも,どこでも,誰でもが自在に情報が入手できる環 境を整え,その上で知的生産性の向上を追求していくことが要請されている。 さて,今日では経済社会については情報ネットワークを抜きにして次世代の 展望を行うことは困難である。実際に,米国の製造業については情報ネットワー ク技術を駆使することによって復活することができたのである。また,情報ネッ トワークの進展は企業や産業界に革命的ともいえるような,まったく新しい企 業経営やビジネス活動や組織形態の可能性をつくりはじめてもいる。すなわち, 情報ネットワークを進展させることにより,多くの企業や産業界において地球 規模でのアウトソーシングを活用することを可能にさせ,結果的に企業経営やビ

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-218ー 香川大学経済論叢 1032 ジネス活動や組織形態に対してきわめてダイナミックな革新を現出させている。 ノてーチャノレコーポレーションは従来の企業組織とまったく異なり,物理的な 時間や空間の壁を容易に超えることができる。例えば,プロジヱクトを推進する 場合でも,これに参画する個々の企業を物理的に1ケ所に集める必要はなしま た土地や建物や設備に新たな投資をする必要もまったくない。それでも,ビジネ ス活動に専門的なスキルやノウハウを持った人材を世界中から集めることが可 能であり,そこにおいては余分な機能や組織や人材をもっ必要もまったくない。 ノてーチャノレコーポレーションを具体的に実践していくには, まず企業活動そ のもののバーチャル化に取り組まなければならない。実際に,企業活動におけ るバーチャノレ化は,すでに研究開発や設計,施策,加工などの分野において行 われている。例えば,製品開発でのコンカレントエンジニアリングの導入など がパーチャノレ企業連合であると考えることができる。そして,このバーチャル 企業連合としてのコンカレントエンジニアリングの確立により,企業は大幅に 開発期間を短縮しコストの削減が可能になり,また同時に品質や生産性の向上 も実現できる。 4 製造業におけるバーチャルコーポレーション 野口恒によれば,現在まさに製造業で取組まれているバーチャJレファクト リーやバーチャル生産システムは,単に設計や開発や施策だけではなく工場に おける生産活動までもバーチャル化を推進するものと考えられている。さて, この生産のバーチャル化とは情報ネットワーク時代のモノづくりのあり方を示 すものである。これは,じつはネットワークの世界へ消費者を組み入れ相互の インタラクションを利用するという,いわば消費者の参加による新たなモノづ くりの可能性を提供するものである。 すなわち,情報ネットワークが企業と消費者とを結びつけ,結果的に相互の (1) コンカレントエンジニアリング:研究開発や設計施策生産の各部門の担当者が,最初 の計画段階から同じ土俵に立って同じ目標を目指して最終製品を仕あげることである。 すなわち,物理的な時間や空間の壁を超えて,それぞれの担当者がコンピュータネット ワーク上のバーチャルな世界で協働しながら同時に進行する方法である。

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1033 バーチャルコーポレーションのビジネスモデル -219ー インタラクションによるモノづくりの創造性を刺激するバーチャルな1つの場 を提供している。そして,このネットワークの発展はもはや個別の企業内だけ ではなく企業の壁や国境の壁を超えたバーチャノレ世界を創造し,グローパルな ノ'{-チャルな製造企業の連合が容易に構築される段階になっている。 さて,生産のバーチャル化についての注目すべき点としては,単に情報ネッ トワークを介して消費者のイメージ情報や想像力をモノづくりにいかせるだけ でなく,今や急速に空洞化しつつある熟練工の知恵や技能を知識デー夕、ぺース として蓄積することでモノづくりのプロセスに組み込んだ活用ができることが あげられる。この情報ネットワークにおいては,例えば熟練工が長年培ったモ ノづくりの知恵や技能やノウハウを獲得するプロセスを,コンピュータによる シミュレーション技術を使用することで追体験することができる。すなわち, 情報ネットワークは,現場の若い従業員たちにトレーニングや教育を行うバー チャノレな空間を提供することになる。 情報ネットワークの急速な進展によって,こうした企業活動のバーチャル化 は今後もますます加速されていくと考えられ,情報ネットワーク時代にいきる 企業にとって,バーチャノレ化は企業が成長発展していく上で不可欠になってく る。そこで,このような観点から,以下においてバーチャノレ化が製造業に与え る影響について考察を行ってみる。具体的には,第lはモノに対する価値尺度 の転換,第2は顧客参加のモノづくり,第

3

は中小企業空調化の克服,第4は モデリングとシミュレーションの重視,第

5

はバーチャノレとリアルとの相互互 換という

5

点についてである。 (1) モノに対する価値尺度の転換 さて,従来モノに対する価値尺度は,価格,品質,性能という 3点であった。 しかし,最近の消費者は次第にモノの価値をこうした経済性だけでは評価しな くなってきている。それは,このモノの価値がどの程度地域や社会の生活や文 化と結びついているか,また地球環境保護に配慮するなど消費者の心に触れ共 感をよぶような商品であるかが評価対象になったからである。 そこで,このような消費者のモノに対する価値尺度の転換を考えるに際して,

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220~ 香川大学経済論叢 1034 それを分析する方法論やツールとしてバーチヤノレ生産システムの必要性が高 まってきた。特に,そこでの価値尺度として重要なものは時間である。バーチャ ル生産システムの最大の特徴は物理的な時間と空間の壁を超えていることであ り,そこにおいてはコンピュータを利用することで多様な検証や評価を事前に 行うことができる。 ところで,社会や文化や地球環境や共感といったモノに対する新しい価値尺 度を検討するには,じつは膨大な時間やコストや手間が必要となる。このよう に,実際にモノを使って検証や評価を行うためには技術的にもコスト的にも限 界が生じている。そこで,コンピュータを利用してそれらをバーチャノレに処理 することが有用になってくる。このようなことから,コンビュータのモデリン グ,シミュレーション,評価技術などを使用したバーチャル生産システムは新 しい価値尺度を検討するための1つの有効な方法論であり,また 1つのツール なのである。 (2) 顧客参加のモノづくり 情報ネットワーク時代のモノづくりは,企業と顧客との境界が消失していく ことに大きな特色をみいだせる。すなわち,企業と顧客はネットワークを介し インタラクティブに情報交換しながら,ともにモノづくりを行っている。かの トアラーは,いわゆるプロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者) の融合したものをプロシューマーと命名したが,このプロシューマーが情報 ネットワーク時代においてはダイレクトにモノづくりに参加してくる。 さて,和歌山県にある島精機製作所はニット製造をコンピュータ化している 世界の

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割のシェアを占める優良企業の

1

つである。この島精機製作所では, 絵画や写真をデジタノレ情報に変換して入力することで図柄や色を再現できる編 み機を開発している。なおこれを利用すれば例えば顧客の顔の入ったセーター も簡単に編むことができる。 同社のトータルファッションシステムにおいては,多くのデザイン,柄,色 について,例えば色では 1,677色もの多くの色をモニターしながらデザ、インシ ミュレーションしたものを,それぞれ大画面のハイビジョンにより等身大のカ

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1035 バーチャルコーポレーションのビジネスモデル -221 ラー映像に映しだすことができる。したがって,顧客はその画面をみながら好 きなデザインや色や柄を選び,自在に組みあわせることが可能になっている。 また,福井市の繊維メーカーのセーレンでは,顧客がコンピュータと対話し ながら自分だけの服をつくることができるパーソナルオーダーシステムを開発 している。このように,ファッション産業では今や限りなく顧客ニーズに対応 すべくパーソナルオーダ一生産に次第に近づいている。 さて,ファッション業界では,今やパリやミラノやニューヨークで流行して いるファッションが通信衛生やコンピュータネットワtークを使って

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時間以内 に日本で現物生産できる時代に入ってきている。新製品を開発する場合でも, 製品の企画,開発,設計,施策といった上流工程の仕事はすべてコンビュータ 内のバーチャルな世界で行われている。従来は,こうした仕事にじつに

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カ月 もついやしていたのが,それが今では概ね

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週間以内に短縮することになった。 しかも,顧客は自分で設計し自ら生産にも参加できるため,メーカーはそれだ け顧客から共感をよび満足度の高い商品をつくることができる。 衣料品専門庖のユナイテッド・アローズでは,国内外の衣料品や雑貨のブラ ンドと独自ブランドを組み合わせて販売し,単一ブランドではあきたらない流 行の半歩先をいく若者の指示を圧倒的に受けている。そして,このユナイテツ ド・アローズにおける販売力の強さはじつは庖頭での情報収集力にある。すな わち,販売員が来庖者の生の声を記録し,商品や企画や仕入れの参考にしてい る。なお,このことは顧客の感性をいちはやく捕えることで製品化に結びつけ るためである。 また,自動車産業においては設計室と顧客をコンピュータネットワークで結 ぶことで,顧客にバーチャルな市場体験を共有してもらうことができる。また, これによる効果は実際にきわめて絶大なものである。すなわち,コンピュータ ネットワークを結んで有機的に組み合わせることで,それまで顧客一人ひとり の中にバラバラにあった車に対する多様なイメージ情報や体験情報をまさに車 のデザインや設計にいかすことができる。それは,これらの情報が間違いなく 顧客のイマジネーションを創造的に刺激するからである。

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222ー 香川大学経済論叢 1036 このように,バーチャル生産システムはコンピュータネットワークを介して 多くの人たちのアイデアや情報や知恵を集合し組みあわせ,そして新しいモノ の創造を可能にするいわばコレクティブブレインパワーを発揮する。今では, 多くの企業に導入されているグループウェアやコラボレーションの展開など は,じつはそうしたコレクティブブレインパワーをフルに活用した方法と考え ることができる。 (3) 中小企業空洞化の克服 東大阪市,八尾市,大東市を中心とする東大阪地域は高度な技能や技術力と 製品開発力をもっ中小企業が集積した日本を代表するモノづくりの町である。 ここでは,町工場の経営者自身が金型の製作,金属・機械の加工技術にかけて は誰にも負けないと自負するベテランの職人ばかりである。これらの町工場は 相互に技能,技術,納期,価格,品質などを競争しあいながら,同時に緊密な ネットワークを形成することで情報交換し,また仕事の配分や部品材料の融通 を行っている。これによって,どんな大手メーカーの難しい高精度な精密加工 の要求にも短期間,高品質,低価格で応えられる個性的な専門加工集団を形成 することができた。 ところで,パフツレ経済の崩壊を挟んで,中小製造業の工場数は転廃業によっ て急速な減少をみせている。その直接的な理由は円高不況による受注の減少, 海外への生産移転による受注減少,受注先からの厳しい値下げ要求,安い輸入 品の高税などによる経営の行き詰まりなどがあげられる。しかし何よりも,経 営者の跡継ぎ難やベテラン技能者の高齢化,製造業離れによる新規採用の難し さなどが最大の要因である。 実は,日本の中小企業にはきわめて高い専門能力や技術をもっところが少な くなしむしろ世界最高水準で、あったりもする場合も多い。例えば,東大阪市 だけでも中小企業ながら,自社独自に開発した固有技術を武器にシェアトップ を誇る企業が

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社以上も存在している。 また,中小企業にとっては国際化やグローパル化は必ずしも工場の海外進出 を意味していない。それは,固有技術や専門技能をインターネットのようなグ

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1037 バーチャルコーポレーションのビジネスモデル -223-ローパルでオープンな情報ネットワークを介してダイレクトに世界中に発信で きれば,中小企業でも海外企業との技術交流や提携や生産委託ジョイントペン チャーの実現へむけたきっかけになるからである。 優れた固有技術や独自の得意技術をもった中小製造業やベンチャー企業こそ が,じつはバーチャル生産システムやバーチャルコーポレーションを実現して いく上で最も重要な構成要素になりうる。バーチャノレコーポレーションの活動 を構成する個々の機能単位としては,大企業よりも機動力がありかっ柔軟性に 富んだ中小企業やベンチャー企業の方がより適している。そして,こうした世界 中にある複数の企業が情報ネットワークで緩やかに結合されることで,次第に ノTーチャルな協業体制か構築され新しい企業活動や生産活動が行われていく。 すなわち,モノづくりにおいて世界トップレベノレの秘術技能ノウハウを持つ 日本の中小製造業においては,このような方法によって世界的な産業ネット ワークに食い込ん、でいくことが可能である。なお,これによって中小企業は独 自のグローパノレ化を推進していくことが,我が国の産業界における空洞化を克 服する方法でもある。 (4) モデリングとシミュレーションの重干見 ノTーチャル生産システムでト鍵を握っているものは,まずもってモデリング技 術であるといえる。例えば,設計生産の対象となる製品をコンピュータのなか でどのように表現するか,工場の中の多様な機械設備やロボットをどう表現す るか,成形加工や生産活動全体をいかに表現するかというようなことがモデリ ング技術である。 岩田一晃によれば,バーチャル生産システムにおいては第1に企業ビジネス モデル・生産管理モデノレ,第2に仮想、設備モデル,第 3にプロセスモデノレ,第 4にプロダクトライフサイクルモデルという 4つのモデルがあげられる。これ までは,モノづくりの世界では剛体信仰という考え方が厳然と存在していた。 すなわち,大量生産や大量販売や大量廃棄のモノづくりを支えてきた基本的な 考え方がまさに間体信仰の発想なのであった。 しかし,これからのモノづくりの主流は人間環境社会への関わりを考慮する

(16)

-224ー 香川大学経済論叢 1038 こともあれ次第に堅いものから柔らかいものへ,すなわち剛構造から柔構造 へと転換していくことになる。ところが,堅いものと柔らかいもの,すなわち 剛構造と柔構造を考慮してモデリング技術を考えてみると,柔らかいものや柔 構造のものをコンビュータのなかで一体どう表現するかはかなり難しい問題で ある。特に,人間のような柔らかいものや複雑なものの存在や動きをどうモデ ルイじするかはなおさらのことである。 ノfーチャル生産システムにおけるモデリングやシミュレーション,評価と いった一連のプロセスについては,現実の設計,施策,加工工程と緊密にリン クしながら,データをインタラクティブにフィードパックすることで行われて いく。したがって,モデルができあがったら,次はそのモデルを用いていかに シミュレーションするかという問題になる。このシミュレーション技術は,実 際の工場で行われている設計,成形加工,試作,物流,管理などをコンピュー タの中で仮想的に解析し評価実験するものである。すなわち, CAD (Computer Aided Design)

CAM (Computer Aided Manufacturing)

V AE (Video Analy -sis Engine),データベース,エキスパートシステム,コンビュータグラフィク ス,バーチャルリアリティなどの最新技術を駆使したコンピュータシミュレー ションを駆使して,事前に概ね問題点を解決することができる。これによって 不良修整にかかる時間や経費のロスやリスクを削減することができ,結果的に 製品の開発期間を大幅に短縮することが可能になる。 (5) バーチャノレとリアノレの相互互換 さて,中小製造業を中心に熟練工の技能の解体と空洞化が指摘されているが, 彼らの優れた知恵、や知識や技能を今後どのように継承していくかは,日本の製 造業にとってきわめて大切な問題である。実際に,何十年と体で覚えた熟練工 の成形加工技術は素晴らしいもので,彼らはミクロンオーダーの精密加工を五 感でやってのけている。この熟練工といわれる人たちが体で覚えた素晴らしい 知恵や知識や技能をコンピュータモデルとして残せる方法論は,人間のモデル (2) VAE:ビデオによる作業の監視,分析等をもちいて加工を行うこと。

(17)

1039 ノTーチャルコーポレーションのビジネスモデル 225 イ七へと繋がる問題である。そして,バーチャノレ生産システムこそがそのための 方法論やツールを提供するものとして重要な役割を持っている。 このバーチャノレ生産システムは, いわゆる無人化生産や無人化工場を目指す ものではなし むしろ逆に人間の創造的な知恵や知識や能力を引きだしてリア Yレな世界でのモノづくりに生かすことに意味を見い出すべきものである。 この ように, 21世紀のモノづくりはバーチャノレな世界とリアノレな世界が相互に互換 し影響し合うことで最適なモノをつくりだしていく。こうして,バーチャル・リ アルの相互互換システムが次第に生産システムの主流を占めていくことになる。 III.パーチャリゼーションの戦略展開 それでは, グローパノレに存在する資源や人材や知を連結するバーチャル化に 向けて,具体的にどのような戦略を発展させていかなければならないのであろ うか。 ここでは,以下のような

4

点について若干の考察を試みる。 第1は多元主義志向のパーチャリゼーションについての考察である。これは, 多様な柾会に適合的な組織形態とは, まさに従来のようなリジッドなものでは ないことを主張したものである。すなわち, これからは柔軟な変化対応や意図 的なゆらぎの創出が大切になることを強調している。 第

2

はパーチャリゼーションのマネジメント視座についての考察である。 バーチャノレコーポレーションにおいては,企業と従業員との関係や企業と顧客 との関係がまったく従来のものとは異なっている。 そこで, それへの対応が不 可欠になり, そのため組織におけるバーチャル化への対応を行うためのマネジ メントの視座について論じたものである。 第3はコアアウトソーシングの戦略転換についての考察である。 これは, ア (3 ) コアアウトソーシング:著者の提言するアウトソーシングの戦略的な概念である。従 来のアウトソーシングについては,企業がコアコンビタンスをもちえない部分を外部の 専門家に業務委託するという消極的なアウトソーシングとは対極にたつ概念である。す なわち,コアこそを外部に求めるべきで,これによって常に競争力のある資源やノウハウ を維持し続けようという考え方である。この概念に立脚すると,コアを自社に持たないコ アレスカンパニーが十分に成立することになる。

(18)

226ー 香川大学経済論叢 1040 ウトソーシングをいわばパーチャリゼーションの観点から捉えることである。 そこで,ここでは単にコアコンビタンスでないものを外部化するという単純な アウトソーシングからの脱却が要請されてくる。このような観点から,コアを も外部に積極的に求めるという,いわばバーチャノレコーポレーションとしての コアアウトソーシングの提示を

1

7

うことにした。 第

4

はベストオプヱブリシングについての考察である。パーチャリゼーショ ンのもつメリットは,じつは資源を外部に求めるにことよりベストのものを揃 えられることである。この観点に立脚すれば,

SOHO

・テレワークはベストオ プエブリシングを個人のレベノレで獲得できるものとしておおいに期待がかけら れる。なお,この

SOHO

・テレワークについては大企業においてもまさに組織 活性化の観点から積極的な活用が可能である。 多元主義志向のパーチャリゼーション 前述したように,バーチャルコーポレーションの最も適切なコンセプトはド リームチームである。しかも,これは多様な会社や多様な文化に生活していた 人たちを束ねて

1

つの強いものをつくりあげていくことであるため,そこにお ける重要なテーマは高桑郁太郎によれば多元主義ということになる。じつは, 多様な文化を持った人材やファンクションを束ねて仕事を行うことは,価値観 が多元化してくることを意味している。したがって,バーチヤノレコーポレーショ ンは多元主義に支えられてビジネスの展開を行うことになる。そういう意味で は,バーチャルコーポレーションはオープン化の方向性の中で捉えるべき

1

つ の企業の組織化のための方法論であると考えられる。 この多元主義によってバーチャルコーポレーションを構築するにあたって重 要なことは,新しいイノベーティブなものは過去の経験の蓄積や過去の経験の 延長線上にはうまれないという価値観が存在している点にある。すなわち,そ れは改善のなかからはけっして改革は生まれないからである。 多様な血がまさに

1

つの集団のなかに創発的にぶつかりあうことで,今まで 経験しなかった新しいものが,外からみているとまさに突然変異のように登場

(19)

1041 バーチヤ/レコーポレーションのビジネスモデル -227-してくる。これによってこそ,イノベーティブな会社が生まれ,イノベーティ ブな事業が生まれ,そして今までとは異なった価値観がうまれ,新しいビジネ スが生まれてくる。そういう意味では,創発的なバリュー創造のメカニズムを 構築することが,まさにバーチャル化の組織戦略であると考えることができる。 ところで,バーチャノレコーポレーションという営みについては,じつは意図 された変化や揺らぎのマネジメントである。産業形態のよりよい未来創造への ホメオスタシスのマネジメントがまさに,バーチャノレコーポレーションにおけ るマネジメントである。そこでのイノベーションの秘訣は,まさに外部の優秀 な研究者に対しでも企業機密の漏洩を恐れることなしむしろ積極的に組織を 解放することにより外部から結集させた頭脳を柔軟に活用することにある。 システムの安定した恒常性はシステム内のサブシステム間相互の働きあいに もみられ,しかもそれらのサブシステムの働きにおける恒常性は相互調節され ている。そして,あたかも全体のシステムが常に一定状態を保っているかのよ うに振る舞うというクロード・ベルナーノレやキャノンのホメオスタシス概念に ついては,いわゆるバーチャルコーポレーションの概念に対してある重要な意 味を付与していると考えられる。なお,このホメオスタシス概念に立脚すると, ノfーチャノレコーポレーションとは現在から未来への産業システムの恒常性を生 みだす柔軟な変化やゆらぎという示唆の獲得が可能になっている。 例えば,ベノレ研究所における想像力の源泉についてはきわめて徹底したプ ルーラリズムが採用されている。多様な存在,原理

l

,方法が柔軟に共存しあえ る思考回路の世界で,この研究所ではあらゆる民族の研究者が相互補完しあっ て1つの世界を形成している。このように,人は知らず知らずのうちに1つの 発想や

1

つの研究方法に固執する我流の完成を生みだすことで自らを縛りつげ ている。そして,多元主義,すなわち様々な人種や民族,言語,イデオロギー, (4 ) ホメオスタシス:キャノンが定義づけた概念で,均一の均衡状態という意味である。生 体の基本的な特徴を,内部環境の定常性の求めたCベルナー1レの考え方を発展させたも のである。 (5 ) ブルーラリズム多元論(多元主義)のことである。多様な質的存在,終章的存在を受 け入れ様々な認識方法や倫理的概念を許容する哲学的立場をいう。

(20)

228- 香川大学経済論叢 1042 風習,皮膚の色,精神,肉体の際をまず認めあい,そして相互に補完しあい, 柔軟に生かしあうという思考回路がバーチャルコーポレーションの思考回路で ある。 さて,ベル研究所においては異端,異能,異種,変種への包容力こそが想像 力のエネルギー源であると考えられている。それは,未来は現在の延長線上に はうまれることはできず,また改善や改良からは改革を生みだすことは不可能 である。すなわち,改善とは部分に対して,また改良とは同一種に対してのみ 有効な方法であるため,ともにけっして改革をもたらしてはいない。なぜなら ば,未来は現在にとって呉種,すなわちかわり種であり,突然変異の情報遺伝 子をもって生みでされるからである。 独創的な業績は,いずれの分野であれ先人の指示にしたがって忠実に働く組 織人によってでなく,むしろ知性にあふれた個性的な人聞によってなされてい る。ここで重要なことは,まさに創造的な業績が正当に批判されるような環境 が存在することが,そのような業績を生みだす土台になっていることである。 このような創造的な考え方が触発されるような環境は,個性的な人聞が多くい なければ醸成されるものではない。それは,個性的な業績の評価については個 性的な人聞にしか行えないからである。 さて,生きているシステムの個体群はけっして均一な個体の集まりではない。 多様な個体差をもった個体質が相互に作用することで集団を形成している。そ して,この個体差が新しい環境の中で優勢や劣勢に作用して,まさに優勢に働 いた変わり種が次世代を産み増やすことにより個体群を進化へと導いていく。 今,個体群=産業界あるいは自社というような視座に立脚すれば,バーチャ ノレコーポレーションは意図された戦略的なかわり種ということになる。そして, 場合によっては競争相手をも,さらには顧客をも取り込むバーチャノレコーポ レーションが,まさに変わり種ぶりを発揮することにより次世代の産業が生み だされていく。

(21)

1043 バーチャルコーポレーションのビジネスモデル -229 2 パーチャリゼーションのマネジメント 企業がバーチャル化し,企業の壁を超えた企業間連携が普通に行われるよう になると,企業経営におけるマネジメントの視座も根本的な転換が要請されて くる。それらの要請とは,第

1

には企業に働くワーカーが従来とは異なりナレツ ジワーカーになることへの対応,第

2

には顧客がビジネスシステムに完全にビ ノレトインされてくることへの対応である。そこ、で,ここでは以下のような

2

点, すなわち第1は変化するワーカーの企業観,そして第2は変化する顧客との関 係について,特に高桑郁太郎に依拠しながら若干の考察を試みることにする。 (1) 変化するワーカーの企業観 さて,それでは一体ノTーチャルな組織で働く人聞はいかにマネジメントされ るのであろうか。バーチャルコーポレーションにおけるマネジメントの中心は 個人本位主義の企業経営に立脚したものである。なお,これにはマネジメント の視座が組織から個人へと大幅に転換するという点に特徴がみいだせる。 もしも,企業システムを人がよりよい自己を実現するための道具であると考 えるならば,企業は個人のいわば踊り場ということになる。また,一方優れた 踊り手はどんな舞台でも輝くことができる。すなわち,一流の人間については どこの舞台に行ってもその舞台にあった踊りを行うことができる。 パフツレ以降においては,ヘッドハンティングにより終身雇用制や年功序列に とらわれず,個人が自分自身をより高く評価してくれる企業へと業種聞の異動 を行うことも珍しいことではなくなった。また,不況期に行われる容赦ない大 量のリストラクチャリングによって,ワーカーはもはや会社を-'E!.就職すれば 定年まで働く場であるとは考えなくなっていく。すなわち,能力のある者は複 数の会社を乗り換え,あるいは独立して起業の道を選んで成長していくことが 普通になってきた。すなわち,これからはもはや器を選ばないという考え方が 新しい時代の価値観になってくる。 さて,個人が自己実現できる組織は,一人ひとりが仕事の主人公でいられる 組織であり,そこにおいては個人とはまさに組織から完全に解放され自律的な 存在となる。そのためには,企業は起業化精神をもっ自立型人聞を外部との接

(22)

230--- 香川大学経済論叢 1044 点、で活用するような仕組みを構築することが不可欠である。じつは,その最適 解の

1

つがバーチャルコーポレーションであるといえる。 この企業と企業や企業と顧客との接点で相互補完しあいながらあたかも

1

つ の生命体システムのように振るまうバーチャルコーポレーションの目的とは, まさに独自の方向性を生みだして未来を創造することにある。そして,そのシ ステムは相互補完型システムであり,その組織については期間つきの柔軟な可 変型ネットワーク組織である。なお,その主役については全体組織ではなくま さにそこで活き々きと働く個人なのである。 ノてーチャノレコーポレーションから創造性が生みだされるためには,一方では 創造するテーマの自由ゃうちこめる自由な環境である個人が実力を発揮できる 条件が用意されていることが不可欠であるが,他方では契約制や成果主義の評 価制度である自己責任の制度も不可欠である。また,同時にマネジメント上で も個人を覚醒させるようなアプローチを行う必要が生じてくる。 そこで,そういう状況下において個人がバーチャルコーポレーションで働く 場合に求められるワーカーの資質は一体いかなるものであるかを考えてみる。 まず,自分に対しては第1に自分の仕事については第一人者となること,第2 に現状維持に満足しないこと,第

3

にコミュニケーションに努めることである。 悶僚に対しては分担の壁を超えることである。まず,上司に対しては第

1

に自 分の意見を持ち進んでト提言する,第

2

に任された仕事の判断は自らがくだすこ とである。また,部下に対しては第1に信頼し仕事を任せる,第2に部下を育 てる,第

3

に率直に議論することである。 そこでは,個人にとって自立と自律が要請されるという前提において個人本 位主義の企業経営が目指されている。そして,それは自分が決定をくだすこと に対して自己責任をとる時代の到来を示している。すなわち,これは我々はい よいよ自立と自律の時代を経験することを意味している。

(

2

)

変化する顧客との関係 さて,企業内外における組織の壁を越えたコラボレーションはもちろん重要 なテーマとなるが,これからは特に会社と個人,会社と顧客,会社とマーケツ

(23)

1045 ノfーチャルコーポレーションのビジネスモデル -231-トの関係が重要になってくる。従来では,企業にとって顧客はビジネスの対象 であってパートナーにはならなかったが,顧客と一体となって価値をつくりあ げていくという視点から戦略を捉え直すことが重要である。顧客起点の流通シ ステムや顧客起点の製造計画というものが,これからの産業にとっては必要で あり,顧客の力によって製品開発をし顧客の力によって商品を流通させること が大切になってくる。 このように,個人がイニシアチプをもった社会が可能性として考えられるが, 企業の中においても個人があって企業があるそして社会においても個人があっ て社会があるという具合に,いわばシステムが次第に変化していく過渡期にあ るといえる。 さて,シャープやソニーや花王では消費者の意見を商品開発に結び、つけてい るが,時代は企業に対して顧客とのインターフェースの新しいありょうを強く 求めている。それは,一人ひとりの個人が生活現場で真に主人公でいられるよ うに,また空間や時間の中で主体的存在でいられるように,ハイテクノロジー が個人にとっての関数になるからである。 顧客現場でモノづくりを行うという視座は,じつは同時に企業が生き残るた めのマネジメントの視座でもある。バーチャルコーポレーションにおける製品 や市場のマネジメントは,まさに顧客からの静脈経路と顧客への動脈経路とか らなっている。このように,自社と顧客で構成されるバーチャルコーポレーショ ンの強みとは,自社と顧客との聞に迅速な刺激反応の関係が生まれることであ る。 3 コアアウトソーシングの戦略展開 企業がバーチャル化しそのため企業関連携が重視されてくると,アウトソー シングを多面的に展開することが可能になる。なお,ここでいうところのアウ トソーシングとは,単にコスト削減のためのアウトソーシングであるとか,コ アコンピタンスを軸にコア以外の部分をアウトソーシングするなど従来型のア ウトソーシングではない。

(24)

-232- 香川!大学経済論叢 1046 大切な点とは,バーチャルコーポレーションの概念を十分理解した上で,ア ウトソーシングを戦略的に発展させた形態で導入することである。それは,じ つはいつでも,どこでも外部にコアコンビタンスの発揮できる資源を育成して, これらの外部の資源をプラグアビリティ発想で効果的にネットワーキングする システムの構築を行うことである。これについては,著者は前述したように従 来のアウトソーシング概念と区別するためコアアウトソーシングという新しい 概念の提示を行っている。 このような戦略的なアウトソーシングの視点に立脚すると,内外の中核資源 をネットワークするコーディネート力やプロデユース力がコアコンピタンスと して重要なものとなる。特に,ネットワークをフルに活用しでもたざる経営を 実践する先進的な企業にとっては,コアコンピタンスに関するパラダイムの転 換が不可欠である。すなわち,自社のコア以外の部分をアウトソースするとい うバウンダリーアウトソーシングの発想を超えて,自社のコアを常に鮮度のよ い状態で維持するために外部資源を自らのイニシアティブによってグローパノレ に連結させ,そして内部化するいわゆるネットワークインの発想をもつことが 重要になる。 こうした新たな発想に立脚して,第1に外部化による内部化の促進,第2に 非所有でありながら機能的には所有する形態がうまれてくる。そこにおいては, たとえ自社がまったくのコアレスであったとしても,編集力そのものを武器に したプロデユース企業など新たな形態の企業も台頭してくる。 4 ベスト・オブ・エブリシングの実現 さて,バーチャJレ化の展開はSOHO・テレワークを可能にしており,同時に ノTーチヤノレコーポレーションの形成を促進している。その意味では, SOHO・ テレワークはバーチャル化の進展と切っても切り離せない関係にある。この SOHO・テレワークの最大のメリットは,伊藤友八郎によればベストオブエブ リシングを獲得できることである。なお,このSOHO・テレワークについては はじめに組織ありきではなくはじめに仕事ありきという,まさに次世代型のビ

(25)

s

i

1047 バーチャルコーポレーションのビジネスモデル 233 ジネスシステムである機能主義に徹底したプロジェクト対応に最適な方法論で ある。 そこで,このような観点から,以下においてベストオブエブリシングを獲得 する方法論として

SOHO.

テレワークについて言及を行ってみる。具体的には, 第

1

には

SOHO

・テレワークのワークスタイノレとしてのノマド型ワークスタイ ノレの特徴,第

2

には

SOHO

・テレワークが契機になった企業組織におけるデザ イン革命の 2点についてである。 (1) ノマド型ワークスタイルの特徴 ノtーチャルコーポレーション化の波は,企業と個人との関係についても従来 とは異なった関係を現出させている。昨今,注目されている

SOHO

・テレワー クについても,著者はこのようなコンテキストで捉えることが大切であると考 えている。そこで,ここでは特にパ!ーチャリゼーションの観点から

SOHO

・テ レワークについて若干の考察を加えてみる。 さて,情報ネットワーク技術の発展により,働く場を限定しない柔軟なワー クスタイルが独立起業家の聞で普及しつつある。そのため,会社と個人の生活, ビジネスと個人の生活との壁は次第に低くなってきている。すなわち,第lに 自宅をワークプレイスとしたり,第2に自宅の近くのサテライトオフィスが ワークプレイスになったり,第3にモパイルという概念になってくると,まさ に場所に規定されずに仕事を行うことが可能になる。 このように,生活と仕事との垣根がほとんどなくなり,まさに

SOHO

におい てワークするテレワークの時代が到来することを予見している。こうなると, ワーカーは一日 24時聞を自己の責任でスケジューリングし,そして自ら管理し ていくことになる。そして,いつ,どこで,一体何時間働いたかではなしま さにアウトプットだけが問われることになる。したがって,ワーカーはけっし て管理されることのないデマネジメントの時代が到来するわけである。 こうした

SOHO

・テレワークの傾向については,単に中小のベンチャー企業 や個人だけではなく,同時に大企業においてさえ急速な進展をみせている。実 際に,大企業においてもイントラネットの構築を行っていれば,これは組織が

(26)

-234 香川大学経済論叢 1048 図表2 バーチャル化にむけたビジョン構築プロセス

一 一

ω

ピーター・M・セング『最強組織の法則』より すでに

SOHO

化していると考えられる。このように,組織がいわば細胞分裂を 行っていき, またその細胞分裂した組織が次第にノマド化していくことで, ま さに組織のバーチャlレ化が飛躍的に進行することが予見できる。 そして,結果 的にはノマド化した組織がネットワークで統合される状況が誕生しはじめてい る。なお, これこそが組織形態におけるバーチャル化の未来の発展方向を示唆 したモデルであると思われる (図表

2

)

(2) 企業組織におけるデザイン革命 などがおおいに期待されてくる。 前述したように,

SOHO

・テレワークが本格的に到来するとノマド型の組織 これを契機にして従来 しかし大切なことは, の組織デザ、インの方法論を時代に適合させるべく根本的に革新させることであ る。そこで, ここにおいては

SOHO.

テレワークが現出させた次世代型の組織 デザインについて若干の考察を加えてみる。 さて,企業組織の最適化をデザインする場合には一般的には以下の2つの方 法が考えられる。第

1

は,市場の変化に対応して組織構造を改変していく方法 である。例えば,牢固とした縦割りの組織を持つ大企業においては, このよう な漸進的な方法が最もやりやすい方法である。具体的には,事業部門の統廃合 を通じた組織の再編や市場ニーズと産業構造の変化に対する最適化の試みなど

(27)

1049 バーチャルコーポレーションのビジネスモデル -235 がそうである。 第2は, BPRを進めながらビジネスプロセスの最適化を図る方法である。こ れは,言い換えれば組織構造の機能的な革新を意味している。また,これは, じつははじめに組織ありきではなくむしろプロジェクトを俊毎文にたちあげ,そ れを実現するための組織化なのである。したがって,これは社内の経営資源を 横断的に組織化するだけではなく,社外のリソースを積極的にアウトソーシン グで活用する戦略であると考えられる。 当然ながら,ここにおいてはプロジェクトに対してのベスト対応を狙った最 適化をめざすことになる。そして,ここでは企業の低織そのものがプロジェク ト化し,ネットワーク上での柔軟で暫定的な構造に進化することになる。なお, このような進化を促すことはバーチャルコーポレーションの組織戦略に他なら ない。そして,それぞれのバーチャルな

r

J3.j織が特定のプロジェクトに連結され ると,結果的に新しい企業統合としてのバーチャルコーポレーションが誕生し てくる。 また,このような状況下で特に大企業の組織デザインについては,例えば組 織自体が小規模化すなわち SOHO化していくような状況においては,求心力 を働かせていく発想から遠心力を武器にすることにより付加価値を高めていく 発想へ逆転させていくことが大切になる。 今,まさに大企業が行っている分社化やカンパニー制度についても,じつは こうしたコンテクストの中における企業の対応と考えることが大切になってい る。そして,事業部長をカンパニープレジデントあるいは執行役員と呼んだり するのは,エンパワーメントの視点から可能な限り小さな単位でビジネスを展 開する方向性を志向するからである。したがって,このような動向についても 組織のSOHO化という潮流の中で捉えるべきである。 さて,アメリカにおいては何らかの形で在宅勤務をしている人は

3

人に一人 にものぽる。もともと, SOHOとはIT先端商品市場での急成長ユーザ一層を あらわす言葉でもあり,アメリカではその購買力についてももはや大企業の購 買力よりスケールの大きな市場となっている。そこで, SOHOはコンピュータ

(28)

-236' 香川大学経済論叢 1050 やその関連機器や周辺設備の商品展示会や見本市においても主要テーマの

1

つ になっている。 なお,

SOHO

ワーカーにおいてはいわゆるナレツジワーカーである場合が多 く,単にITに詳しいだけでなくそれらを積極的に活用して新しい事業に挑戦 している場合が多くなっている。このことを可能にしたのが,じつはインター ネット,イントラネット,エクストラネットの発展に伴うネットワーキングの 普及である。また,各メーカーの価格競争による商品の低価格化が進展したこ とが

SOHO

の高機能化に拍車をかけている。 現在では,この

SOHO

ビジネスにおいてはすでに間接費や固定費のコスト 削減が限界に達している大企業と互角に競争ができている。このような潮流は まさに企業組織のありかたに一大変革を迫るとともに,同時に働く人のビジネ ススタイルを多様化させ,結果的に一人ひとりの人生やいき方が投影されたラ イフスタイルまでを変革する契機をもたらしている。 さて,グローパルでかつローカルなネットワーク環境の整備は,コミュニケー ションにおける時間や空間,距離,規模,コストの制約を解放した。したがっ て,そのような制約で保たれてきた組織的権力や統制を弱体化していき,ワー カーの自由度を増幅させることになった。そこでは,創造的アイデアと情熱さ えあれば,まったく組織の規模に関係なくグローパJレ市場を相手にした新しい 事業を企画することができる。 このように,ネットワークの発展は個人の能力発揮の機会を飛躍的に拡大さ せたわけである。そして,皮肉にも組織の肥大化に悩む大企業のリストラクチャ リングがそのような流れの後押しを行っている。すなわち,組織のスリム化と アウトソーシングの加速が,業務機能の一部を脱皮的に

SOHO

化する動きと してあらわれることは間違いない。

I

V

.

組織間関係論のニューパラダイム さて,組織におけるパーチャリゼーションが組織概念の多様なニューパラ夕、 イムを現出している。そこで,ここでは特に組織間関係に焦点を絞りながら,

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