博士(工学)設樂守良 学位論文題名
旋回噴流式攪拌法とオゾンを用いた 高 速 汚 水 処 理 技 術 の 開 発
学位論文内容の要旨
これまで我が国は、科学技術の進歩により産業を発展させ、豊かな物質社会を築い てきた。しかしながら.急速な経済成長に伴い、環境汚染等の新たな問題が数多く発生 してきており、環境汚染の中でも水質汚濁は、環境汚染物質が河川や湖沼に排出され 水質が汚濁されると、その河川等を上水道の原水として利用している場合には人間の 生活に重大な支障を来たす等、発生すると極めて重大な影響があるため、水質汚濁防 止 法 や 下 水 道 法 ・ 浄 化 槽 法 等 に よ り 排 水 が 厳 し く 規 制 さ れ て い る 。 しかしながら、人間の生活に伴って生じる生活雑排水については、下水道法及び浄 化槽法により対策が十分にとられているが、汚水を排出する施設を設置する工場やレ ストラン、畜産業・漁業関連等の事業場において、水質汚濁防止法が適用になるのが 排水量50M3/日以上の工場・事業場についてであり、排水量50M3/日未満の小規模工 場・事業場においては自主規制によるのみで、対策が不十分であるというのが実状で ある。小規模工場・事業場でも導入可能な、高効率・低コストな汚水処理技術が実用 化されれぱ、地域水質汚染問題の解決にっながるだけでなく、設計施工に伴う、設備 工事・電気工事・土木工事・建築工事等の建設需要や、システム機器の補修・メンテナ ンス業務等、地域密着型の新規需要・雇用が発生し、環境関連の地域産業クラスター 形成が期待でき、その社会的意義は大きいと考えられる。
オゾンは極めて強カな酸化カと反応性に富んだ性質を有し、有機物の分解の他、殺 菌、脱臭、脱色等、優れた特長を持ち、オゾンの反応効率を高めて、設備・運転コス トの低コスト化を図ることができれぱ、汚水処理分野における適用範囲は大きく広が る。
本研究では、旋回噴流式攪拌法とオゾンを利用した高速汚水処理技術の開発を目的 として、まず水単層及び水ー油系二層成層液体における気液二相旋回噴流の発生領域 に加えて、基本特性すなわち、周期、振幅、旋回開始時間、旋回終了時間、均一混合・
時間等について調査した。さらに難分解性有機廃水である搾乳施設洗浄雑排水、ダイ オキシン含有洗煙排水、下水処理場から発生する有機性汚泥、及ぴ学校給食センター から排出される油含有汚水をサンプルとして、気液二相旋回噴流とオゾンによる処理 プロセスを用いた処理を行い、汚水処理技術としての適用の可能性について調査した。
第1章の緒論では、我が国の水質汚濁に関する課題及び北海道における水質汚染状 況、そしてその技術的改善をめざす社会的意義について述ベ、技術的改善に向けた汚 水処理プロセスを提案し、その概要を記した。
第2章では、気液二相旋回噴流を用いた処理プロセス設計のために必要な基本デー タの取得を目的として、水と空気の気液二相噴流によるモデル実験を行い、旋回の発 生 条 件 、 旋 回 開 始 時 間 、 周 期 、 振 幅 等 の 基 本 特 性 に つ い て 調 査 し た 。 第3章では、気液二相噴流に誘起される、円筒容器内のシリコンオイルと水の二層 液体の、旋回発生条件及ぴ基本特性について調査し、気液二相旋回噴流を用いたプロ セスが、油含有等の高粘性汚水の浄化処理に対しても適用可能かどうかについて調査 した。
第4章では、水と空気の気液二相噴流によるモデル実験により、円筒容器内単層液 体の均一混合時間について調査を行い、気液二相旋回噴流における反応槽内の攪拌混 合効率に関する基本情報を得た。
第5章では、搾乳施設から排出される難分解性有機廃水をサンプルとして、旋回噴 流式攪拌法とオゾンを用いた処理プロセスによる、BODヨ、CODXn、色度、NH4一N等の変 化について調査した。また多孔板を用いて直接反応槽内にオゾンを導入する、従来型 プ ロ セ ス に つ い て も 調 査 を 行 い 、 旋 回 噴 流 式 攪 拌 法 と 比 較 し た 。 第6章では、旋回噴流式攪拌法とオゾンを用いた処理プロセスによる洗煙排水中ダ イオキシン処理について調査し、本技術の適用範囲の広がりについての知見を得た。
第7章では、主として第3章で得られた結果に基づき、学校給食センターから排出 される油含有汚水をサンプルとして、汚水とオゾンによる気液二相旋回噴流を用いた 浄化処 理試験を行い、油含有汚水に対する処理プロセスとしての評価を行った。
第8章では、気液二相旋回噴流の汚泥処理プロセスへの適用について調査を行った。
また反応に使われなかった未利用オゾン濃度のモニタリング等により、従来のオゾン 曝気プロセスと比較して、気液二相旋回噴流を用いた汚泥処理プロセスの有効性につ いて検討した。
第9章 で は 、 本 研 究 を 総 括 し 、 さ ら に 今 後 の 展 望 に つ い て 言 及 し た 。 結果として、旋回噴流式攪拌法を用いてオゾン利用の高効率化を図ることにより、
高効率汚水処理技術として適用できることを明らかにした。
学位論文審査の要旨
主,査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
井 口 学 工 藤 昌行 高 橋 英明 大 参 達也
学 位 論 文 題 名
旋回噴流式攪拌法とオゾンを用いた 高 速 汚 水 処 理 技 術 の 開 発
これ ま で 我が 国 は 、科 学 技 術の 進 歩 によ り 産 業を 発 展 さ せ、 豊 か な物 質 社 会を 築 いて き た 。し か し なが ら 急 速な 経 済 成長 に 伴 い、 環 境 汚染 等 の 新 たな 問 題 が数 多 く 発生 して き て おり 、 環 境汚 染 の 中で も 水 質汚 濁 は 、環 境 汚 染物 質 が 河 川や 湖 沼 に排 出 さ れ水 質が 汚 濁 され る と 、そ の 河 川等 を 上 水道 の 原 水と し て 利用 し て い る場 合 に は人 間 の 生活 に重 大 な 支障 を 来 たす 等 、 発生 す る と極 め て 重大 な 影 響が あ る た め、 水 質 汚濁 防 止 法や 下水 道 法 ・浄 化 槽 法等 に よ り排 水 が 厳し く 規 制さ れ て いる 。
しか し な がら 、 人 間の 生 活 に伴 っ て 生じ る 生 活雑 排 水 に つい て は 、下 水 道 法及 び 浄化 槽 法 によ り 対 策が 十 分 にと ら れ てい る が 、汚 水 を 排出 す る 施 設を 設 置 する 工 場 やレ スト ラ ン 、畜 産 業 ・漁 業 関 連等 の 事 業場 に お いて 、 水 質汚 濁 防 止 法が 適 用 にな る の が排 水量 50rや ノ 日 以上 の 工 場・ 事 業 場に ついて であり、 排水量50M3/日未 満の小規 模工場 ・事業場 に お いて は 自 主規 制 に よる の み で、 対 策 が不 十 分 であ る と い うの が 実 状で あ る 。小 規模 工 場 ・事 業 場 でも 導 入 可能 な 、 高効 率 ・ 低コ ス ト な汚 水 処 理 技術 が 実 用化 さ れ れぱ 、地 域 水 質汚 染 問 題の 解 決 にっ な がる だけで なく、設 計施工に 伴う、 設備工事 ・電気 工事・土 木 工 事・ 建 築 工事 等 の 建設 需 要 や、 シ ス テム 機 器 の補 修 ・ メ ンテ ナ ン ス業 務 等 、地 域密 着 型 の新 規 需 要・ 雇 用 が発 生 し 、環 境 関 連の 地 域 産業 ク ラ ス ター 形 成 が期 待 で き、 その 社 会 的意 義 は 大き い と 考え ら れ る。
オゾ ン は 極め て 強 カな 酸 化 カと反 応性に 富んだ性 質を有 し、有機 物の分解 の他、 殺菌、
脱 臭 、脱 色 等 、優 れ た 特長 を 持 ち、 オ ゾ ンの 反 応 効率 を 高 め て、 設 備 ・運 転 コ スト の低 コ ス ト 化 を 図 る こ と が で き れ ぱ 、 汚 水 処 理 分 野 に お け る 適 用 範 囲 は 大 き く 広 が る 。 本研 究 で は、 旋 回 噴流 式 攪 拌法 と オ ゾン を 利 用し た 高 速 汚水 処 理 技術 の 開 発を 目 的と し て 、ま ず 水 単層 及 び 水ー 油 系 二層 成 層 液体 に お ける 気 液 二 相旋 回 噴 流の 発 生 領域 に加 え て 、基 本 特 性す な わ ち、 周 期 、振 幅 、 旋回 開 始 時間 、 旋 回 終了 時 間 、均 一 混 合時 間等 に つ いて 調 査 した 。 さ らに 難 分 解性 有 機 廃水 で あ る搾 乳 施 設 洗浄 雑 排 水、 ダ イ オキ シン 含 有 洗煙 排 水 、下 水 処 理場 か ら 発生 す る 有機 性 汚 泥、 及 び 学 校給 食 セ ンタ ー か ら排 出さ
れる油含有汚水をサンプルとして、気液二相旋回噴流とオゾンによる処理プロセスを用 い た 処 理 を 行 い 、 汚 水 処 理 技 術 と し て の 適 用 の 可 能 性 に つ い て 調 査 し た 。 第1章の緒論では、我が国の水質汚濁に関する課題及び北海道における水質汚染状況、
そしてその技術的改善をめざす社会的意義について述べ、技術的改善に向けた汚水処理 プロセスを提案し、その概要を記した。
第2章 では、気 液二相旋 回噴流を用いた処理プロセス設計のために必要な基本データ の取得を目的として、水と空気の気液二相噴流によるモデル実験を行い、旋回の発生条 件 、 旋 回 開 始 時 間 、 周 期 、 振 幅 等 の 基 本 特 性 に つ い て 調 査 し た 。 第3章 では、気 液二相噴 流に誘起される、円筒容器内のシリコンオイルと水の二層,
液体の、旋回発生条件及び基本特性にっいて調査し、気液二相旋回噴流を用いたプロセ スが、油含有等の高粘性汚水の浄化処理に対しても適用可能かどうかについて調査した。
第4章 では、水 と空気の 気液二相噴流によるモデル実験により、円筒容器内単層液体 の均一混合時間について調査を行い、気液二相旋回噴流における反応槽内の攪拌混合効 率に関する基本情報を得た。
第5章 では、搾 乳施設か ら排出される難分解性有機廃水をサンプルとして、旋回噴流 式攪 拌法とオ ゾンを用 いた処理 プロセス による、BODs、CODHn、色度、N4N等の変化に ついて調査した。また多孔板を用いて直接反応槽内にオゾンを導入する、従来型プロセ スについても調査を行い、旋回噴流式攪拌法と比較した。
第6章 では、旋 回噴流式 攪拌法とオゾンを用いた処理プロセスによる洗煙排水中ダイ オ キ シン 処 理 につ い て調 査 し、 本技術の 適用範囲の 広がりに ついての 知見を得 た。
第7章 では、主 として第3章で得ら れた結果 に基づき、学校給食センターから排出さ れる油含有汚水をサンフシレとして、汚水とオゾンによる気液二相旋回噴流を用いた浄化 処 理 試 験 を 行 い 、 油 含 有 汚 水 に 対 す る 処 理 プ ロ セ ス と し て の 評 価 を 行 っ た 。 第8章 では、気 液二相旋 回噴流の汚泥処理プロセスへの適用について調査を行った。
また反応に使われなかった未利用オゾン濃度のモニタリング等により、従来のオゾン曝 気プロセスと比較して、気液二相旋回噴流を用いた汚泥処理プロセスの有効性について 検討した。
第9章 で は 、 本 研 究 を 総 括 し 、 さ ら に 今 後 の 展 望 に つ い て 言 及 し た 。 結果として、旋回噴流式攪拌法を用いてオゾン利用の高効率化を図ることにより、高 効率汚水処理技術として適用できることを明らかにした。
これを要するに、著者は、旋回噴流式攪拌法を用いてオゾン利用の高効率化に関する 新知見を得たものであり、材料工学ならびに環境工学に対して貢献するところ大なるも のがある。よって著者は、北海道大学(工学)の学位を授与される資格あるものと認め る。