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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 高 谷 健 二

     学位論文題名

Molecular Design of Mechanism −Based Glycosyltransferase Inhibitors:

    Dynamic Inhibitors for Human タ 1 , 4 ― Galactosyltransferase

(作 用 メ カ ニ ズ ム に 基 づ ぃ た新 規 糖 転 移 酵 素 阻害 剤の分 子設 計:

     ヒ ト グ 1 , 4 ― ガ ラ ク ト ー ス 転 移 酵 素 の 動 的 阻 害 剤 )

学位論文内容の要旨

    近 年、 様々な疾患と糖 鎖との関連が報告されるよ うになり、糖鎖関連医薬の開 発が注目 さ れて いる 。例えば、癌細 胞上に見られるシアル酸含 有糖鎖の増加が、転移能、浸 潤能に大 き く関 わっ ていることが報 告されている。またインフ ルエンザウイルスを初め、様 々なウイ ル ス、 細菌 が糖鎖を足がか りに感染する等の知見も得 られるに至り、糖鎖生合成酵 素阻害薬 等 によ り糖 鎖構造制御が可 能になれば、癌、炎症、感 染症といった疾患の効果的な 治療法と なること が期待される。

    糖 転移 酵素は、ゴルジ 装置内において、糖鎖生合 成の中心を担っている酵素で ある。糖 転移酵素 の―つであるp1,4‐ガラクトース転移酵素(以下pGalT)は、UDP‑ガラクトースを糖ド ナ ーと し、 糖アクセプター であるN‑アセチルグルコサ ミンにガラクトースをーつ転 移する反 応 を触 媒す る。その調達し やすさから、糖転移酵素の 基質認識機構、及び阻害薬合 成研究の モ デル とし て よく 研究 され てき た 。近 年に なり 、Boumeら、Qasbaらのグループに よって、

相 次い でウ シ由来pGalTの 結晶構造が報告された。Qasbaらの報告によると、この酵 素はUDP‑

ガ ラク トー スの結合によっ て、大小二つのループが構 造変化を起こし、それによっ て糖アク セプター 結合部位が形成されるという ものであった。中でも、小ループに存在するTrp314は、

直 接UDP‑ガ ラクトースと結 合し、大ループの構造変化 を促すために重要であると考 えられ、

実際にalallineやglycincに変異をか けたミュータントでは活性が 著しく減少することが確認 されてい る。

    申 請者 は このT叩314の 動き に 着目し、この1坤と 相互作用する分子を近傍に配 置するこ と でそ の動 きを止めること が出来れば、酵素は構造変 化することが出来なくなり、 活性が阻 害される のではないかと考えた。そこ でまず、UDP.ガラクトース をべース構造とし適切な長 さを持っ りンカーによって、1ゆ,CyS,Metと選択的に反応する性 質を持っブロモメチルナフ タ レン を1坤近 傍に 配 置出 来る よう に設計したアフイ ニティーラベル化合物laを、 有機化学 的 手法 によ り 合成 した 。次 に合 成 した化合物1aを、ヒ ト由来8GalT(ウシ由来酵素T中314は ヒト由来 酵素ではT叩310に相当)をタ ーゲットとして反応させて 、ESI‐MS法によって実際に ラ ベリ ング が 可能 であ るか 確認 し た所 、化 合物1aの添 加量 依存的なTrp310のラベ ル化が確 認 さ れ た 。 次 に 、 ラ ベ ル 化 し たpG甜Tを ト リ プ シ ン消 化し 、MALDITOFMS法 によ って 解 析     一305−

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し た 所 、 化 合 物1a添 加 な し の コ ン ト ロ ー ル と 比 較 し て 、 新 し い ピ ーク(m/z 3273.149)の 出 現 を 確 認 し た 。 さ ら に こ の ピ ー ク に つ い てMALDI TOF/TOF MS解 析 を 行 っ た 所 、 目 的 と す る Trp310に 化 合 物la由 来 の ナ フ タ レ ン が 共 有 結 合 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 こ の 結 果 に よ っ て 、 適 切 な 距 離 、 位 置 に ナ フ タ レ ン を 配 置 す れ ば 、Trp310残 基 と ナ フ タレ ン を 特 異 的に 相 互 作 用 さ せ る こ と が 可 能 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 ま た 化 合 物laの 安 定 型 類 縁 体lbが 比 較 的 強 い 阻 害 活 性 を 示 し た こ と か ら 、 次 に 、Trp310の 動 き を 妨 害 す る 同 様 のコ ン セ プ ト によ る 種 々 の 動 的 拮 抗 阻 害 剤 の 分 子 設 計 に 着 手 し た 。

    UDP‑ガ ラ ク ト ー ス を べ ー ス と し ナ フ タ レ ン を 含 有 す る6種 の 化 合 物 を 合 成 し て 、 阻 害 活 性 を 検 討 し た 結 果 、 化 合 物2が 最 も 強 い 阻 害 活 性 を 示 す こ と が 確 認 さ れ た 。 こ の 化 合 物2に つ い て 、 タ ン パ ク 質 ‐ リ ガ ンド 間 の 相 互 作 用を 温 和 な 環 境で 検 出 す る こと が 可 能 なCold Spray Ionization MS (CSI‑MS)法 を 用 い て 解 析 し た と こ ろ 、 化 合 物2の 結 合 に より3GalTは 、 も は や 糖 ア ク セ プ タ ー 結 合 能 を 保 持 し な い こ と が 示さ れ た 。 さ らに 、UDPーガ ラ ク ト ー ス、 及 び 化 合 物2の 結 合 に よ るpGaITの 構 造 変 化 の 推 移 を 円 二 色 性 ス ペ ク ト ル に よ っ て 観 察 し た 。 そ の 結 果 、 化 合 物2は 通 常 の 構 造 変 化 で 見 ら れ る も の と は 大 き く 異 な る ス ペ ク ト ル を 与 え る こ と が 確 認 さ れ た 。CSI‑MSの 実 験 結 果 と あ わ せ る と 、 化 合 物2は 末 端 ナ フ タ レ ン がTrp310と 相 互 作 用 す る こ と に よ り 、 動 的 な 触 媒 反 応 メ カ ニ ズ ム を 阻 害 し て い る も の と 結 論 し た 。

compound2

A model of bovine [3GalT complexed with compound 2       Yellow: Trp314   Green: Largeloop        ‑ 306 ‑

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学位論文審査の要旨 主査   教授   西村紳一郎 副 査    教授    河野敬 一 副査   助教授   出村   誠 副査   助教授   門出健次

     学位論文題名

Molecular Design of Mechanism −Based GlycosyltransfraSeInhibitorS :     DynamiCInhibitorSforHuman01 , 4 ― GalaCtOSyltranSferaSe    ( 作用 メ カニズムに 基づぃた新規 糖転移酵素阻 害剤の分子設計 :      ヒ ト タ 1 , 4 − ガ ラ ク ト ー ス 転 移 酵 素 の 動 的 阻 害 剤 )

  生体の糖鎖合成における中心的酵素である糖転移酵素の阻害剤は、癌、炎症、ウイルス感染と いった様々な疾病に対する薬剤として期待され、研究が盛んに行われている。本研究において申 請者は、動的な立体構造情報を基にした糖転移酵素阻害剤の設計と合成、及び阻害剤としての作 用メカニズムの解明を行った。その中で特に糖転移反応に必須である基質結合による酵素の構造 変化に着目し、その構造変化そのものを阻害するという極めてユニークな前例のないゴンセプト に基づく阻害剤設計に成功している。ヒトpi,4−ガラクトース転移酵素([3Gal―T)は、小ループ上の トリプトファン(Trp) 310の基質へのアクセスを契機とする大きな構造変化が酵素反応のために必 要であるが、このTrp310の基質へのアクセスを抑える不可逆的、及び可逆的阻害剤を設計し、最 終的に現在最も強カな阻害作用を有する化合物を発見するに至った。加えてそれらがTrp310と直 接相互作用することで酵素の構造変化を制御していることを種々の最新型質量分析法を用いて証 明した。

  第1章では研究背景として、糖転移酵素と様々な疾患との関係、糖転移酵素阻害剤研究開発の 現状、及び糖転移酵素の構造レベルでの特徴を概説している。

  第2章では、Trp310に対するアフイニティーラベル試薬(不可逆結合型阻害剤)の設計と合成、

及びpGal一Tへのラベル化部位の解析を行っている。Trpの求核性を利用するラベル化剤としてブ ロモメチルナフタレンを用いているが、本研究はこのようなハロメチルアリール基をTrpに対す る選択的アフイニティーラベル試薬として用いた初の試みである。立体構造情報を基に、適切な     −307−

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距離を有するりンカーを介してブロモメチルナフタレンをTrp310に対して提示した試薬を設計、

合成し、それが設計通りにTrp310と直接結 合することをMALDI―TOF MS及びMS/MS解析を用いて 証明している。

  

第3章では、 第2章で得られた基本骨格分 子を基にその周辺化合物を種々合成し、さらに強カ な阻害作用を示す化合物を発見している。より柔軟性の高い分子がより強い阻害作用を示すとい う極めて興味深い結果が得られている。また近年開発されたColdーSpray―Ionization MS (CSI‑MS) 及び円二色性スペクトル分析を用いることで、得られた阻害剤がpGal‑Tの活性発現に必須の構造 変化を阻害する機能を有することを証明している。

  

4

章では、第

1

章から第3章までの研究を総括している。

  

動的な立体構造情報を基に設計した複雑な構造を持つ特異的阻害剤を有機化学的手法によって

    

合成し、さらにその阻害剤の性質と作用機序を考察するために様々なアプローチにより論理的検 証を行っており、研究を進める上で基盤となる有機合成技術、分析技術等を幅広く修得している。

  

以上のように、高谷氏は初めて動的な立体構造情報を基に糖転移酵素阻害剤を構築し、さらに

pGal

―Tと同様に一般的に構造変化を必要とする糖転移酵素に対して広く適用し得る新規阻害剤設 計コンセプトを提案した。この研究成果は糖転移酵素阻害剤のみならず、広く生理活性物質の分 子設計に波及効果を与え、医薬品の開発等にも貢献するものである。よって申請者は北海道大学 博士(理学)の学位を授与されるに充分の資格があるものと認める。

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参照

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