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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 金    亨 燮      学位 論文 題名

Eff ・ ectofdi ‐( 2 ‐ ethylhexy1 ) Phthalate ( DEHP ) ontestis     andpituitary _ AtoxicologiCalStudy ‐

(フタル酸エステル (DEHP) が精巣および 下垂体に引き起こす影響の毒性学的研究)

学位論文内容の要旨

  ジェ チルヘ キシル フタル 酸(DEHP)は、 プラスチック可塑剤フタル酸エステルのーっであり、精巣 萎縮 、精子 低形成 などを 引き起こ す発癌 性内分 泌撹乱 化学物 質とし て知ら れてい る。DEHP曝館で 発生 する活 性酸素 、germ細胞とSertoli細胞の分離、亜鉛濃度の低下、そしてステロイドホルモン産 生の 異常等 が精巣 毒性の 原因と推 測され ている。しかし、DEHPが精巣のステロイドホルモン、特に testosterone産生や代謝、分泌に対して実際にどのような影響を及ばすのかは報告されていなぃ。ぞ こで 、本研 究では 、DEHPが、1)精巣 のtestosterone合成・代謝、2)testosterone分泌に関与する アラキドン生合成カスケード、に与える影響について明らかにした。また、DEHPがステロイドホルモン 調節 の中枢 である 下垂体細胞に対する影響についても殆ど報告はなぃ。そこで、3)ラット下垂体由 来 のGH3細 胞 を 用 いて 、DEHPが 細胞増 殖やタモ キシフ ェン誘 導アポ 卜ーシ スに及 ばす影 響につ い て検討した。

【第1章】

  DEHP(100、1000mg/kg)を 性成熟前 の4週齢 オズ噺starラッ トに5日聞経口投与し、投与終了2週間 後に 、血液 、肝臓、精巣を採取して、testosteroneの生合成・代謝に関与する酵素cytochrome P450

(CYP) やhydroxysteroid dehydrogen恥eの 活 性 、 タン パ ク やInImA発 現 量の 変 動 を 調ぺ た。

1000mg瓜gDEHP投与で 、精巣 重量は 、これ までの 報告通り 著しく 減少し た。DEHp投与濃度 に伴つ て血中のtestost・cr0鵬レベルが低下したが、精巣においてteStosteroneを合成する17B‐HSDの活性に 有 意 な変 化 は 認 めら れ な か った 。 ー 方 、精 巣 に お けるtestosterone水酸 化 に 関 わるCYP3A2、 のぽ2Cllの酵素活性は有意に増加した。さらにtestosteroneをmhydrotcstDsterone(DHT)に変換する 5a・reduct誌e活性は、DEIロ投与で有意に上昇した。従って、精巣内のtestosteroneクリアランスが DEHP投与ラットでは増加している可能性が考えられた。さらに、testost・er0舶をes知genに変換し、精 子 形 成維 持 に 関与 するCYP19(aromatase)mRNAの発現は 減少し た。以 上の結 果から 、DEIロの 精 巣 毒 性を 引 き 起こ す機構の ひとっ として 、testos缸one代謝酵 素群の 活性の 変動が 考えら れた。

‑ 1245

(2)

【第2章】

  DEHPは 精巣や肝臓などにおいてりン 脂質レベルに影響を与える ことが報告されている。細胞膜の りン脂質の代謝で産生されるアラキドン酸は、精巣においてtestosteroneの産生・分泌を調節すること が報告されている。そこで、DEHPが、精巣機能のホメオスタシスに重要なアラキドン酸カスケードにど のような 影響を及ばすのか検討した。 精巣cytosolic phospholipase A2 (cPLA2)の活性はDEHP投与 で 有 意 に 減 少 し 、 そ の タ ン パ ク 発 現 レ ペ ル も 抑 制 さ れ る こ と が わ か っ た 。DEHP投 与 では 、 cyclooxygenase‑2(COX‑2)発現 に変化はなかったが、12‑lipoxygenase(12‑LOX)の 発現が有意に増 加することが明らかになった。―方、peroxisome prolifera・o卜a甜va侍dreceptorq(PW凧めはアラキド ン酸カス ケードで産生されるエイコサ ノイドや脂肪酸によって活性化され、CrP4Aを介して脂肪酸の 酸化・代 謝を促進することが明らかに なっている。DEHP投与した ラッ卜の精巣ではCYP4Alの有意な 発現増加が観察された。

  従って 、DElロを投与したラットの精巣では、cPL舵の活性及ぴ発現の低下、さらにアラキドン酸の 異 化に 関わる12.LOXとCYP4A1の発現が増加し、その 結果、アラキドン酸作用が低 下することが予 想された 。cPLA2をはじめとするアラキドン酸産生酵素の阻害は、tesめster0鵬産生・分泌を抑制する こ とか ら、DEHPに よるcPu2発現 及び活性の抑制はtesめster0鵬生合成や分泌を抑 制することが考 えられた。

【第3章 】

  雄性ホ ルモンtestosteroneレベルを低下させるDEHPが、雌性ホルモンestrogenのantagonistである タモキシ フェン(TAM)の作用にどのよ うな影響を及ばすかを検討 した。ラット下垂体由来GH3細胞を TAMお よ びDEHPに 曝 鋸 し た。TAMはGH3細 胞に ア ポト ーシ スを 引き 起 こし たが 、TAMとDEHPの同 時処置に より、TAMの引き起こす細胞 生存率減少が回復されるこ とが分かった。同細胞を核染色し たところ 、TAM暴露によって起こるnuclear fragmentationがDEHPとの同時曝露で抑制されていた。フ ローサイ 卜メトリーで分析した結果 、TAMによって増加されたsubGlのpeakがDEHP曝露によって顕著 に減少さ れた。また、casp謎e‐3の 基質であるPARPに関して、TAM曝露では85kD付近のタンパクが増 加 する が、DHロの 同時曝露によっ てPARP活性化が抑制されるこ とが明らかになった。以上 の結果 から、GH3細胞においてTAMによって 引き起こされるアポ卜ーシス がDHロによって阻害されることが 明らかと なった。

  本研究から、DEHPの精巣毒性の原因として、ステロイド合成・代謝およびアラキドン酸カスケード に影響を与えることが考えられた。また、下垂体細胞に関しては、タモキシフェン誘導アポ卜ーシスが DEHPによって抑制されることが明らかとなった。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    藤 田 正 一 副 査    助 教 授    稲 波    修 副 査    助 教 授    片 桐 成二 副査   助教授   石塚真由美

     学位論文題名

Effectofdi ‐(2 ‐ ethylhexyl )Phthalate (DEHP )ontestis     andpituitary ‐ AtoxiC010giCalStudy ー      ( フ タ ル 酸 エ ス テ ル ( DEHP ) が 精 巣 お よ び      下 垂 体 に 引 き 起 こ す 影 響 の 毒 性 学 的 研 究 )

  ジ ェ チ ル ヘ キ シ ル フ タ ル 酸(DEHP)は 、 プ ラ スチ ッ ク 可 塑 剤フ タ ル 酸 エ ス テル の ー っ で あり 、 精 巣 萎 縮 、 精 子 低 形 成 な ど を 引 き 起 こす 発 癌 性 内 分泌 撹 乱 化 学 物質 と し て 知 られ て い る 。 し かし 、DEHP が 精 巣の ス テ ロ イ ドホ ル モ ン 、 特 にtestosterone産 生 や代 謝 、 分 泌 に 対し て実際 にど のよう な影響 を 及 ぼ す の か は 報 告 さ れ て い な ぃ 。こ の こ と を 明ら か に す る ため 、 金 亨 燮 氏は 以 下 の 研 究 を行 っ た 。

  DEHPを 性 成熟 前 の4週 齢オ ス ラッ トに5日間 経口投 与した とこ ろ、精 巣にお けるtestost・er0鵬 水酸化 に 関 わ る 酵素 活 性 は 有 意に 増 加 し た 。さ ら に ぬstosteroncをmhydr0ぬsめs缸弧e(DHT) に変換 する5小 rcductase活 性 は 、DEHP投 与 で有 意 に 上 昇 した 。 従 っ て 、 精巣 内 のtesめstemncク リ アラ ン ス がDEIロ 投 与 ラ ッ 卜で は 増 加 し てい る 可 能 性 が考 え ら れ た 。testosteroncをcs知genに変換 し、 精子形 成維持 に 関 与 す るC1門19(伽matasc)m心qAの 発 現 は減 少 し た 。

  細胞 膜 の り ン 脂質 の 代 謝 で 産生 さ れ る ア ラキド ン酸は 、精 巣にお いてtestosteroneの産 生・分 泌を 調 節 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 。DEHPを 投 与 し た ラ ッ 卜 の 精 巣で は 、cytosohcph粥pholipaseA2

(cPLA2)の 活性 及び発 現の低 下、さ らにアラキドン酸の異化に関わる12‐lipoxyg弧恥e(12‐L(冫X)と CYP4Alの 発 現 が 増 加 し 、 そ の 結 果 、 ア ラ キ ド ン 酸 作 用 が 低 下 す る こ と が 予 想 さ れ た 。

  雄 性ホ ル モ ンtestosteroneレ ベ ル を低下 させるDEHPが、 雌性 ホルモ ンestrogenのantagoIustで ある タ モ キ シ フェ ン(TAM)の 作 用 にど の よう な影 響を及 ばすか を検討 したと ころ 、´rAMによ って引 き起こ さ れ る ア ポ卜 ー シ ス がDEHPに よっ て 阻 害 さ れる こ と が 明 ら かと な っ た 。

本 研 究 で 金 亨 燮 氏 は 、 未 解 明 で あ っ たDEHPの 精 巣 毒 性 の 要 因 と し て 、1) 精 巣 のtestosterone     ―1247―

(4)

合成・代謝、2) testosterone分泌に関与するヱiキドン生合成カスケード、に与える影響を明らかに した 。また 、3)ラ ッ卜下 垂体由 来のGH3細胞を用いて、DEHPが細胞増殖やTAM誘導アポトーシス阻 害作 用があ ることについても明らかにした。よって、審査員一同は、上記学位論文提出者金亨燮氏 の博 士論文 は、北 海道大 学大学 院獣医 学研究科 規程第6条の規 程によ る本研 究科の 行う博士論文 の審査等に合格と認めた。

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