基
礎 論文
JVRSJ
Vol.
2
No.1,1997
姿 勢 制御
に
及
ぼ
す 視
覚
刺 激
の
運
動 軌 道
パ
ラ
メ
ー
タ
の
影 響
吉
澤 達 也
*1
*2
近 江 政
雄
*2
鈴木良
次
*2Effectoforbitalparameters inyisuatsceneof orbital mo ▼ement onpostura 且sway
Tat
・・y・Y
・・hizawa
*1 *2,
M・ ・a・Ohmi *2
・nd、Ry
。ji
.Suzuki
*2Abstract
−
Visual
illfoT
’
mationis
used
for
postural
controt
in
realwo1
・
ldand
is
consistent
with
the information
froln
oIher sensory systems,
However,
in
virt岨l
cnvironment,
it isdifficult
topresent
the complcteinformation
which we can get wi ‘h
sensory systems in real world.
The
information
fromsomatosensory and vestibular scnsory systems
is
not perfectly consistent wi しh the visualinformation
.
in
this study,
wc clarify the effec しof visualinformation
on postural sway in the environment whereis
onlypresented thc visual information
.
We used visual scene of orbiIal movements of a railroadline
in
whichvisua [inforEnation isalways inconsisLent with the
information
from
somatosensory and vestibular sensory systems.
For the conしro[ofpostural
swayill
thcse environments , visua ]information wasdominant
than1he
information
from
somatosensory and vestibular sensory sysしems.
Keywords
’ρ・ ∫ごU厂α’∫W ・y,
v’∫照i
inf
・nnation,
リestib〃ar・sens・り・system,
跏 ∫8 (〜fpresence
,
vir鰡 ’ reat め1レection1 .
は じ めに 現実 空間におい て我々 は、
自己 の位 置 や 状 態 を 正 し く認 識 す る た め に視覚
情 報や自己受容 器 性 情 報 を 利 用 して い る。 外 界 との相互作用 に よっ て行 動 す る 我々 に とっ て自己受容 器 か らの情 報の利 用 は き わ め て重 要で あ る。
た と え ば、
歩 行 や 電車で の移 動 の知 覚は自己受容 器 か らの運 動感 覚と 視覚 系の情 報か ら 成り立 っ てい る。 そ し て、
そ の時の姿 勢 状 態の制 御 に は こ れ らの 情 報が利 用 され てい る[1
],
[2],
[3
]。
Edwards
[1
]は姿
勢 保持に おい て視覚
情 報が身 体 動揺 を 減 少するこ とに役立 っ てい るこ と を 報告してい る。Lee
andAronson
[3
]は 前 庭系情 報 (静 止 してい るとい う 情 報)と矛 盾 す る 視 覚 情 報 が 提 示 さ れ た と き に 姿勢の 調整が困難に な るこ とを報 告してい る
。
ま た、
視 覚 刺 激に よっ て誘 導され る動 揺 病と身体 動 揺が関 係して い る こ とも報 告されて い る[4
].
さ ら に、
視 覚情報 と前 庭 系 情 報との相互作用 につ い ては自 己誘 導 運 動 感 覚の立場か らも多 くの研 究が行われ て い る[
5
],
[6
]。 Wong and Frost [5
]は視 覚 情 報と前庭 系 情報との 葛 藤に よ り自己誘 導運動 感 覚が生 起す る ま で
*1 :∫児看
,
団cGi 凵 Visio既 Research Unit,
団cGill University*2:金 沢 Lk 大学 人 間1
−
iij報シ ス テム研 究 所*1:PI
.
esen [ adCiress : McGiil Vision Research Unit,
McGiIl Un1V巳rsit }Ln
,
b.
,
KanazawaIns itute Technologyの潜 時が 生み出さ れ るとい う仮 説 をたて た
。
彼らは視 覚刺 激 提示 時に前 庭 系 情 報 を与 えるこ と によ り
、
こ れ らの 問の葛 藤が 減少 す ると
、
潜 時が短 くなることを報告してい る。
Melcher
andHenn[
6]
も 自己誘導
運動 感 覚が 生 起するまで の潜 時に つ い て研 究 をし、
視覚刺 激の加 速 度 が5deg
/szの と き潜 時が最も短 くな ること を報 告してい る。 ま た、Lestienne
ら[
7]
は自 己誘 導運動 感 覚と姿 勢 制 御が密接な関 係を持つ と考 え、
自己の運動 感覚の他 覚 的 評価 法として姿勢 制御 状 態を計 測し てい る。一
方、
現在仮想 現 実感シス テム で は視覚
情報を利 用 して、
臨 場感のあ る仮 想 空 間 を提供する 試 み が行 わ れてい る。 広 瀬 ら[8
]は前 庭 感 覚ディ スプレイ を 提 案し、
仮想 空 間に おける移動の感 覚の表 現を試み てい る が、
前 庭 系 情 報 が 十 分に提供で き ない と き は、
視覚情報と前庭系 情報 との間 に 矛 盾 が 生 じ るこ とが ある。
その 場 合 臨 場 感の 乏しい移 動 感 覚しか 提 供で きなくな る。
その た め、
移 動 感 覚の提 供におい て視 覚 情 報と前庭 系 情報が どの ような相互作 用 をしてい る のか を明 らか にする ことは臨 場 感のある仮想 空間 の提 供に とっ て も重 要である。そこで 本 研 究 で は視
覚
情報 と前 庭系情報の相 互作 用 を姿勢 制 御の観
点 か ら 明 ら か にすること を 目 的 と し、
常に前庭 系 情 報 と視 覚 情 報が矛 盾 する場 合、
ど の ような姿 勢 制 御を行 うの か を心理学 実験に よ り検 討した。H本バ
ー
チャル リア リ テイ学 会 論文集 Vo1.
2,
ND,
1,
1997こ こ では
、
特に視 覚 刺激 と して軌道運動 時 (直進 運 動か ら円運 動 〉の 実 写映 像 を 用い て軌 道運動の パ ラ メー
タを系 統 的に 変え、
身体動 揺に視覚刺激の ど の ようなパ ラ メー
タが影 響す るのか、
ま たは視 覚 刺 激は影 響し ない の か明 ら かにするこ とを試 みた。
2,
実 験 察 後 約30
秒 間椅 子に座っ て休 憩した。
1セッ シ ョ ン は19
試 行か ら なり、一
日2
セッ シ ョン 行った。 各試 行の 刺 激パ ラ メー
タ は ラン ダム に設 定さ れ た。各
被 験 者とも15
セッ シ ョン繰 り返 した。被 験 者には
、
緊 張せずに、
手、
足、
頭 を 含 め身体 を動か さ ない ように両 足 を 閉 じて直 立 してい る こ と (ロ ン ベ ル グ姿 勢 )が 教 示 さ れ た。
2.
1 実 験 装 置 と 視覚 刺 激被 験 者 は 暗幕で覆 わ れ た 高 さ 約
3m、
奥 行 き 約4,5m、
幅約3m
の部 屋 に置 か れ た 視 角4ge
×70
“
の リ ヤ プロジェ ク タ (ECP
.
RETRO1100 [1D,
ELECTROHOME
)の 画 面を 視 距離 1.
5mで観 察し た。 プロ ジェ ク タ画 面の 平均 輝度は約 10cd /mZである。 被 験 者の身体の動 揺 量 は 頭
、
背pl]
、
両 足首の4
カ所に固定 し た赤 外 光LED の位 置を 背 後 か ら
3
次元 運 動 計測 器 (OPTOTRAK 3020
,Nor
しhern
Digital
)で言1
.
測 す ること に よっ て得ら れた。 各
LED
の位 置は25Hz
でサン プ リン グ した。
被 験 者に提 示 さ れ た 映 像 は 以 下の よ う な 軌 道 運 動 を する電車の先 頭車両の窓 か ら 撮影さ れ た もの で あ り、
プロ ジェ ク タ画 面の 中 心に は線路 が位置 してい る。
映 像 中に は線路 を巾 心に建 物や山などの 背 景 物 が存 在 してい る。 視 野の中心 と周辺の下半 分には ほ とん ど線 路の映 像が提 示さ れ、
周辺部の上 半 分には 上 記の背景 物 が存 在してい る。 映像中における線 路の水平方向の変位 量 (視角 ) を直進 時で の位 置 か らの変位 と して計 測 し た。 この 変 位 量 は プロ ジェ ク タ画 面 上で 高 さの1
/2
の 位 置 で 計 測 した。
カー
ブにお け る線路の バ ンク に よる水 平 方 向の 変位 量の 変 動は線 路11]fi
’
の1
%未 満で あ り、 バ ン クの 傾 きは6
°
未 満で あ る (遠 心力により電車 がバ ン ク の傾斜 と は反 対 方 向に傾 くの でバ ンクの傾 斜に よ る映 像 全体の傾 きは ほとんど相 殺され る)。 被 験 者が一
試 行におい て観 察 する映 像で は電 車が 約10
秒間の直 線運動 (前 進 )の 後、
ある曲率の カー
ブを等 速円 運動 をする、
ただ し、一
試 行 中に カー
ブ は一
つ だけで あ る。 軌 道 運 動の 速度と曲率 半 径の組 み合 わ せで19 通 り (た だ し、1
名の被験者は16
通 り) の映像を用い た。 各 試 行の前には被 験 者の初 期 位 置を得るた めに、 格子パ ター
ン を直立 し て観 察してい る ときの各 身 体 部 位の 位置 を計 測し た。 2,
2 被験者被験者は 成人男性
AI 、TN 、
HA
の3
名(
21〜
22 歳)の 大 学生で、
心 理学実 験 は 未 経 験であ り、
本 実 験の 目的は知ら さ れてい ない 。2 .3
手 続き 被 験 者は リヤ プロ ジェ ク タ に提示 さ れ た 映像を直 立 し た状 態で約20
秒か ら1
分 間 観察 する。 各 試 行の 前には 必 ず、
身体の 初 期 位 置 を6
秒 間 計測し た。
観3 ,
実験結 果 図1 、 2
に被験 者AI
の 身体 動 揺 量の時 間変 化の一
例 を 示 す 。 各 図 中の実 線は背 中の動 揺 量で、
身体 の正 中線に対 する前 額 平 行 面上の左 右 方 向の揺れ角 を 示 す。
身体が右に傾い た ときは正の値 を、
左に傾 い た と き は負
の値
と なる。 破 線は観 察した映 像中に お ける線 路の水 平 方 向の変 位 量 (視 角 )である。 線 路 が左 にカー
ブする と正の 値、
右 にカー
ブする と負 0 432104 塗 弓94
(8
」評
◎)
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3
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註
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図ユ 身 体 動 揺の時 系 列デー
タ (曲率が小 さい映 像の場 合 )Fig
.
1Time series of the postural sway in the吉 澤
・
近 江・
鈴 木 :姿 勢 制 御に及ぼす 視 覚 刺 激の運 動 軌道パ ラ メー
タ の影 響 0 4 3 2 1 0 1 2 3(
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0 10 20 30 40 50Time
(s) 身 体 動 揺の 時系列 デー
タ (曲率が大きい 映 像の場 ・募
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.
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.
↑588
・
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’
25E・
3D8
−
3・幕
)
Flg
.
2Time series of the postural sway in thescerle with a large curvature
.
の値と な る
。
図1B
は電 車の移動
速 度が図1A
の3
倍の場合である。
図2
は図1
より 曲率半 径の 小 さ な カー
ブの映 像が提示 され た ときの 時系列デー
タで あ る。 各 図の時系 列デー
タ は15
セ ッシ ョ ン の デー
タ を 加算 平 均した値で あ る。
破 線は線 路の移 動量であ り、
曲 率 半径が大きい カー
ブの 場 合は移 動 量は少な く、
曲率 半 径が小さ な 場 合 は 移動量が大 き くなる(付 録を参 照 )。 ま た、
変位 量 が0
以外の値で一
定の時 は円軌 道になっ てい る 場 合 で あ る。
こ れ らの 図 を見る と線 路の 変 位
、
及 び電 車の移動 速 度に応じ て身 体 が 傾い て い る こ とが わ かる。
同様 の 時 系 列デー
タが他の刺 激条 件で も確 認され た。
ま た、
他の2
人の被験者の 場 合 も 同様の傾向
を 示 した。
そこ で、
こ れ らの デー
タ よ り以 下の解 析 を行った。まず
、
提示 さ れ た映 像の 中で等
速円 運動が実 際に 起 きた と きに生 じ る遠 心 力 方 向の加速 度 に 対 す る身 体動揺 量の関 係を検 討した。
前 庭 器 官は 加速 度 検 出 器で あ り、
実 際に電車に乗っ て い る と き カー
ブで は 遠 心 力 を知覚 し、
姿 勢 制 御に 利用 し てい る。 視 覚 刺 激が実際の運動 時と一
致し、
前 庭 系 情 報が矛 盾 する 場 合(
こ こ で は静止 状 態とい う情 報 )に、
こ の シ ス テム の 影響を受け な け れ ば、
加 速 度に 関係 な く身 体 動 揺が起こ る ことになる。 図3A 、
B 、
C
に各 被験 者の加速 度に対する身体 動 揺 量を示 す。 縦軸の身体 動揺 量 は 線 路 が 円 軌 道で ある時の身体の傾倒量の平均値で あ り、
横軸は実際 に電車が カー
ブを通 過 すると きに生 じ る遠 心力 方向
の 加速度
の対数
値である。 加 速 度は カー
ブ の曲 率 半 径 と カー
ブの通 過速 度よ り得ら れ た。 図 中の 実 線は 図 中にプロ ッ ト さ れ た点に 対 す る 回帰 直線である。 図3A
、
B
、
C
の グ ラフは同 じ傾向 を示してお り、
加 速 度 が 増加す ると身 体 動揺 量 も 増 加してい る。3
人の被 験 者の 中で被 験 者AI
は全 体 的に身 体 動 揺 量 が最 も多 く、
被 験 者HA
は最も少ない こと が分かる。 これ ら 図3A
、
B 、
C
で示 したデー
タ に対して相 関 分析を行っ た結 果 、 被 験 者AI
は 有 意水 準5
% で無 相 関の 検 定におい て 相 関があ り、
被験 者HA 、
TN
は有 意 水 準1
%で無 相 関の検 定に おい て相関 があっ た。 こ の こと か ら前 庭 器官
か らの 情報が実 際の 運動 時と矛 盾 してい る場合で も視覚
刺激か ら加 速 度 を計 算で きるような情 報 (測 度、
例え ば 速度や 曲率 )
を 抽出 し、
姿 勢 制 御に利 用してい る こ とが示 唆さ れる。次に
、
プロ ジェ ク タ に 投影
さ れた線 路の位 置の水 平方 向に お ける変位 速 度に対 する身体
動 揺の 関 係 を検
討 す る。 図4A 、
B 、
C
は変 位速度に対する各被 験者の 身体 動 揺の変 化速度を示してい る。 縦 軸は身 体 動揺の変化速度を表し、
横 軸は 線路の 位 置の 水 平 方 向に おける変位速 度を表 す。 こ の変位 速 度は視 覚 刺 激に おけるオ プテ ィ カル フ ロー
の 速 度の水 平 成 分 であ る。 身体 動 揺の変 化 速度は線路 が 円軌 道になっ てか ら電 車が 円軌 道に到 達 する まで の間に身体が動 揺した量を その間の時 間 で割っ た値であ り、
線 路 位 置の変 位速度は その間 に線路 が変 位した量 (視 角 ) を その 間の時 間で割 っ た値である。 図 中の実 線は デー
タか ら計算さ れ た 回帰 直 線である。こ れ らの図を見る と線路位 置の 変 位 速 度が増 加 す ると身体 動揺 もそれ に応 じて増加 してい ること が わ かる
。
図 中に示 した回帰直線とテー
タ点は よ く一
致 してお り、
全ての被 験 者の場 合の相 関 係数は0.
92以 上 で あ り、
オプティ カ ル フロー
の 速度の水平成分 と 身体 動 揺の変 化 速 度の間には 相 関 関 係 が あ るこ とを 示 してい る。4 .
考察
図
1 、 2
では カー
ブ に お ける身体 動揺の方向
は実 際に遠 心 力が働い たときに身体が傾 く方 向と一
致し てい る。 こ れ は、
実 際に円 運 動 してい る ときの興味LI本バ
ー
チャ ル リア リ ティ学 会 論 文 集 Vo1.
2,
No.
1,
1997(
叟評
眉)
〉 “ ≧ °,至
菖 の o ユ(
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〉 弱 駈 509一
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ACCelerati・n (mls2
)100
HA
0,
1
1
10
Accelerati
・n (m !s2 ) 図3
加 速 度に対 する身体 動 揺 量,
100
Fig
.
3Postural
sway as a function of acceler.
ations.
深い 現象と 関係してい る。 カー
ブ を 曲 がる時にバ ス の.
運 転手は遠心力に抗して身体を遠心力の中 心 部へ 傾 け る。
これ に 対 して、
乗 客は遠心力に従っ た ま ま 身体が倒さ れ る が、
乗り慣れ たバ ス ガ イ ドは 運転手0.
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6
−4
−
20246
Velocity ofdisplacement
(degreels
) 図4
線 路 位 置の変 位 速 度に対 する身 体 動 揺の変 化 速 度.
Fig
.
4Velocity Qf postural sway forvelocities of displace 皿ent of orbit
.
と同 じ姿勢 を とるとい わ れてい る[
9
],
[10
]。
Fukuda吉 澤
・
近江・
鈴木 :姿勢 制 御に及ぼす 視 覚 刺 激の運 動 軌 道パ ラメー
タの 影 響 迷 路 反射’
と静 的 迷 路反射に より説 明し、
バ ス ガ イ ド の姿
勢が学 習の結 果と して の動 的迷路反 射に より説 明で きるこ と を報告 して い る。
つ まり、
本 実験の結 果は、
被 験 者が実際 に遠 心 力は働い てい ない がバ ス の乗 客 と同じ運 動を行っ たと考える こ とが で きる。 も し、
運 転手やバ ス ガ イ ドが被験 者にな るとどうな る か ?前 庭 系 情 報と矛 盾し た 視覚
情 報 による姿 勢 制 御に お い て も受 動 的 な 運 動と能動的な運 動に よっ て 身体 動 揺が異な るこ とが 予想され る、,一
方こ れ に 対 して、
被 験 者が観 察してい る 映 像 中 の オブテ ィカル フロー
は、
直進 時は水 平 成 分の大き さ は左右対 称であるが、
円軌 道の 時は遠 心 力 方 向の ほう
が大 き くなるた め、
その成 分に応答し て身 体 動 揺 が 生 じ た と説 明 するこ と ができ る。 こ の よう
な見 地から先行 研 究を参照する と視 覚 刺 激と して幾 何 学 的バ ター
ンを 用い た 身体 動 揺の計 測を行っ た実験 結 果が報 告さ れてい る[7],
[ll
],
[12
]。
Lestienne ら[7
] ’PBerthoz
ら[ll ]の結果 は 視覚パ ター
ン の 移 動 方 向 はそ れ ぞれ異な る が視覚
パ ター
ン が移 動 する方 向に 身体も傾 くこ と を報 告してい る。一
方、
vanAsten ら[
12
]は視 覚パ ター
ン の構 造の違い に対 して身体の 動揺は依 存せず、
身体動 揺は視 覚パ ター
ンが移 動 す る方 向と は 逆に生 じ るこ とを報 告 してい る。図 1
、 2
を見る と線路の位 置 が変 位 する と同 時に 被験者は身
体 動 揺が 生 じてい る。
しか し、
こ の と き 電 車 自 体は円軌 道上 の手 前に位 置 してお り、
実 際に 電車に乗っ てい る と き に は遠心力 方 向には力は働い てい ない 。 つ ま り、
視 覚 情報と前 庭 系 情報に矛 盾が あ ると き には視 覚 情 報の方 が 優 位 に作 用 するとい うことが示 唆 さ れる
。
こ の こと は、
Lee
andArollson〔
3
] に よ る歩 行訓練 過 程にある幼
児の姿
勢 保 持に視 覚 情 撮が利 用さ れて お り、
自己受
容 器 か らの 情 報との間 に 矛盾が ある場合、 視覚 情 報が優 位であ る とい う報 告 や視 覚 情 報と前 庭系
情報 に 矛盾があると きには視 覚情 報の 方が優 位に作 用 する とい うL三sl1皿analld Lee [13]の報 告 と
一
致し てい る。本研 究では視 覚 刺 激と して直進 運動と等 速 円 運 動 時に得るこ とができる映像を 用い た
。
等 速 円運 動は 運動中常に加 速 度が遠心力の方向
に対 して生 じ てお り、
実 際に運 動 をし てい る場合、
前 庭 系は常に活 性 化さ れ てい る。
し か し、
本 研 究で は 視覚 刺 激だけが 変化 する情 報と して提
示さ れ、
前 庭系
に対 して は加 速 度 を得る情 報は与 えら れ てい ない た め、 前 庭系
と 視覚 系の情 報は常に矛盾し た状 態にある。 両者の情 報 が 矛盾 してい ると き に前庭 系か らの「青報が優位 に 利用さ れる とすれば、
視覚刺 激の 系 統 的 変化に対 し ては無関 係な身 体 動揺が得 ら れる はずである。 しか し、 本研究の結 果 (図3
、4 )
で は視覚 刺激の 変 化 に応じ て身 体 動揺 量 も変 化し てお り、
視覚 情 報が優 位 に利 用 されて い ること が示 唆さ れ る。 ただ し、
Lestienlie
ら[7
]やPeterka and Benolken [14
]は身体 動 揺量 は視 覚刺 激の振 幅の増 加に対 して飽和 現 象が 生 じ ること を報告 してい る。
本研 究の実験 条 件の範 囲内で は 顕著な飽和 現象 を観 察 する ことは で きなか った が、
こ の点につ い て は今 後の検 討 課題である。 図3
で は実 際に円 軌 道 中に生 じ る 遠 心 力の 加 速 度 に対 する身体 動 揺量 の 関 係 を 示 して い る が、
視 覚刺 激より純 粋に加 速 度 を抽 出して 姿 勢 制 御に利用し て い るの か、
また は、
加 速 度を計 算で きる ような情 報 (測度、
例 えば速 度や曲率 )を抽出 し、
姿 勢制 御に 利 用 してい る の か は本 実験では明 ら か で は ない。
円 軌 道 中 に観 察さ れる視 覚 刺 激の オプティ カ ル フ ロー
の水平 成分は移 動 速 度が増 加 する と大 き くな る が、
同 時に実際の円軌 道 時の 遠 心 力の 加 速 度 も大 き くな る か らであ る。 自己 誘 導 運 動 感 覚 と姿 勢 制 御に 関す る 先 行 知見 [7
],
L15i
の ように映 像 中の オ プテ ィ カル フロー
により生 じ る の 自己誘 導運動 感 覚に より身 体 動揺 が 生 じた と解釈 する ことも可 能である。 視覚刺 激 より加速 度が直接 抽 出され るか、
ま た は 間接的 に 計算
され、
身体 動 揺に加 速 度が純 粋に影 響して い る の か は今 後 直接的 な実験によ り明 らか に したい。
本研 究で用い た視 覚 刺 激は前進 する電車か ら撮 影 さ れた もの であ り、 映 像に含 ま れる オ プ テ ィカ ル フ ロ
ー
は視野の中心 付近では、 直進 時 は等 方性であ り、
円運 動中 は 非 等 方 性 の 拡 大パ ター
ン で あ る。 Stoffregen [15
]は視 覚 刺 激の提 示さ れ る 網膜位 置 と フロー
の搆 造の関係を姿
勢 制御につ い て調べ、
網 膜 の 中 心部で は直線フロー
で も拡大 型の フロー
で も身 体 動揺 を引 き起こすこ とを報 告 して い る。
本研 究で 用い た映像で円運 動 中の非等 方性の パ ター
ンは等 方 性の拡 大型フロー
と直線フロー
(
遠 心力の方 向 )の 成分が足し合わ され た もので あ り、
後者の フ ロー
に より前額 平衡面 に平 行な方 向の身 体動 揺 が 生 じ た と 考 える こと がで き る。
先に著 者ら
[
16
]は 本研 究と同じ実験条件
で 実 写 映 像全体を画 面の 中心を軸に して0〜13.
86 度左 ま た は 右 に 回転させた と きの 身体動 揺は、
実 写 映 像の 回 転 角に対 して系 統 的な違い は ない が、
円軌 道の 曲 率 半 径 に は依 存 する傾 向が あるこ と を報 告した。 こ れ は、姿
勢 制 御におい て視覚情 報の時 間 的 に変 化 する成 分 が主に利 用 され る こ と を 示唆
して おり、
本 研 究で得 ら れ た映 像中の オブティ カ ル フロー
の速 度の水 平 成 分と身 体 動 揺の 変化 速度の間に は相関が あるとい う 結 果 (図4
)と一
致して い る。 Lestienne ら[7]の 実験 結 果で もmoving visual scene の速 度の対 数に身 体 動 揺 量が比 例するこ とを報告 してい る。 しか し、
先に述べ た よ
う
に この 関係は視 覚 刺 激の振 動 周 波 数が低い 場 合に成 り立ち
、
周 波 数が高 くな る と身 体 動揺 量 は視 覚 刺 激の振 幅の増 加 に対し て飽和 現象が 生 じる [
14
]。 高周波数の場 合、
前 庭器官
か らの情 報や日本バ
ー
チャル リ ア リ テ ィ学 会 論 文 集Vel.
2,
No.
1,
1997 体 性 感 覚の情 報 [17
]が 優位に働 くことにより 身体 動 揺の増 加が抑制 さ れ る た めである[14 ]。 定 速 状 態の移 動 中には視 覚 情 報だけが自己 運 動 知 覚の 手 が か り と なっ てい る。 こ の 意 味で視覚は 運動 感 覚 的 機 能 を持つ と言える。
仮 想 空 間に おい て移 動 感 覚 (自己の 運 動 感覚 )を提 供するた めには定速状 態以外の 場 合 も存在 す る が、
視覚 情報が 自 己の 運動 感 覚に 及 ぼ す 影 響 はLee
andAronson
[3
]やLishman
aud
Lee
[13
]の報 告、
そ して視覚情 報が自己 運 動 知 覚の 手 が か り と して提 供 さ れ た環 境ドで は姿 勢 制 御 に視覚情 報 が 優 位 に働 く とい う本 研究の結 果か ら、
自己受容 器 系 か らの 情 報 よりも 大 きい と言える。5 .
ま と め視 覚 情報と前 庭系 情 報との間に常に矛 盾が存 在 す る 場 合
、
視覚 情報が優 位に利 用され、
視 覚 情 報か ら 移 動 す る 座標 系の軌 道パ ラ メー
タを推 定し、
そ れ に 応 じ た姿 勢制御を行っ てい る こ とが明ら かとなっ た。
こ のこ と は、
仮 想空間に おい て、
視 覚 情 報と前 庭 系 情報との 間に矛盾がある場 合で も、
ある条 件の 範 囲 内で は移 動 感 覚の 生起に視覚 情 報が有 効に働 くこ と を 示唆する もの で あ る。 謝 辞 本 研 究で用 い た 映像に関 する情 報 を御 提 供 戴い た 京成 電 鉄株 式 会社 に感 謝い た します。
本研 究の一
部 は科 学 技 術 庁 総 合研究 「人間の 社 会 的 諸 活 動の 解 明・
支 援に関 する基礎 的研究 」お よ び文部 省 科 学研 究費補 助 金 重点 領域 研究 「人工現実感に関 する基礎 的研 究 」07244
/03
に よっ た。
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183,
1986付録
図
5A
で示さ れ る 円軌道の曲率 半 径 r と線 路の位 置a は次 式で表さ れ る ような関 係がある。
こ こで、
D
は電 車が、
直線 か ら円 軌 道に入っ た ときの電車か ら、
計測点まで の距 離であ り、
次 式で は定数である。 r2≡D
: 十 (r−
a )2,r ≧ a
.
つ ま り、
r=
(
D2
十 a2)/2a
, となり、
r とa は図5B
で表さ れ る ような関係にあ る。 た だ し、D ;50
の場 合で あ る。 プロ ジェ ク タ画 面上の線 路の位 置A
は実 際の線
路の位 置a の定 数 倍 であ る か ら、
r とA
の間に も同 様 な 関係が成り 立っ て い る。
吉滞
・
近江・
鈴 木;姿 勢制 御に及ぼす 視覚刺 激の運動 軌道バ ラ メー
ダの影 響a
円 軌道B
L 2000 1500 1000 500 0012a345 図 5 曲 率 半 径と線 路 位 置の関 係Fig