• 検索結果がありません。

ファロー四徴症および心室中隔欠損症における肝臓の組織学的検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ファロー四徴症および心室中隔欠損症における肝臓の組織学的検討"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

原 著 (東女医大誌第55巻 第10・11号 頁

926~934

昭和60年11

)

フアロー四徴症および心室中隔欠損症における肝臓の組織学的検討

東京女子医科大学第三病理学教室〔主任.梶田 昭教授〉

佐 藤

昭 人

アキ ト (受付昭和60年7月10日〕

Patho-histology of the

Li

ver in Congenital Heart Disease Akito SATO

M.D.

Department of Pathology (Director: Prof. Akira KA]IT A) Tokyo Women's Medical College

The author examined histologically the liver of121autopsied cases of tetralogy of Fallot (TOF) and 111 cases of ventricular septal defect (VSD).

Cases of TOF consisted of101post-operative and20 non-operative cases, and those of VSD, 43 post -operative and 68 non-operative cases.

The liver in non-operative TOF cases showed very frequently acute and/or chronic congestion that was expressed by the di1ated sinusoids, the fullness of red blood corpusc1es in sinusoids and the fibrosis of sinusoidal wal1. In cases above two years old

the fibrosis of sinusoidal wall was more prominent

and the connective tissue often increased around the central veins. Moreover, the chronic congestive changes were especially conspicuous in cases accompanied with atrial septal defect. The hepatic changes in non-operative VSD cases were mainly of congestion too. Several of older cases showed the necrosis of centrolobular or midzonal area, and other several cases revealed fibrosis or necrosis of portal area. All cases, having moderate or severe fibrosis of sinusoidal wall, showed hyper -tensive changes of pulmonary artery in the lung.

Comparing TOF cases with VSD cases above one year old

the dilation of sinusoid was severer in cases of VSD than those of TOF. The post-operative cases in both group showed congestion just as non-operative cases, but the dilation of sinusoids and the hepatic parenchymal necrosis were severer in post-operative than in non -operative cases, and congestive cirrhosis was the finding only observed in several post-operative cases. はじめに 先天性心疾患における心臓の形成異常は,大・ 小循環の諸臓器の状態に深刻な作用を及ぼすもの で,これらの臓器の変貌はときに患者の予後にも 重大な影響を与えると予想されるが,これについ ての病理学的な基礎資料は比較的少ない.今回, 著者は代表的な先天性心疾患としてフアロー四徴 症,心室中隔欠損症を選び,肝臓の組織学的変化 を指標として, これらの疾患における循環体制の 特徴を求め,併せて手術的侵襲の影響を検討した. 材 料 お よ び 方 法 東京女子医科大学第二病理学教室において行な われたフアロー四徴症(以下TOF)121例(うち 非手術例20例〉と心室中隔欠損症(以下VSD)111 例(うち非手術例68例〉の剖検例について,非手 術例を中心に臨床・剖検記録や保存臓器を調査す ると共に,全例の肝標本(主としてマッソン・ト リグローム染色〉について検鏡,その病理組織学 的変化を検討した.さらに非手術例については肺 標本も検鏡し,心・肺の変化との関係についても 考察した.

(2)

926-結 果 1.年齢および性 年齢分布および性分布は表1,

2

にそれぞれ示 す.非手術例では

TOF

は全例

6

カ月以上であり, それに対して

VSD

6

カ月以下の症例が半数近 くを占めている.残存率を図

1

に示すが

TOF

に くらべ

VSD

の方が早期に死亡しやすいことが明 らかに示されている.手術例との比較では両群と も手術例の方が一般に年齢層が高い.性分布につ いては

TOF

VSD

とも著しい偏りはみられない.

2

.

非手術例における肝変化 表1 TOF, VSDの年齢分布 <28日 28日6 6月一1年 1年5年 >5年 TOF(non-ope)

。 。

3 10 7 TOF(post-ope)

1 1 29 70 VSD(non-ope) 6 25 22 9 6 VSD(post-ope)

6 4 12 21 表2 TOF, VSDの性分布 Female Male 8 0 7 7 F h J U 内 ︿ U 唱 E 4 0 山 町 AJAU VAny ︾ 八 n v m . ハ 可 句 。 t -t n g n 剖 nvnUAvnu nDAnp ︹ ︹ ( ︹ F F D D O O S S T T V V の F h ' E A 司t A n h U 1irD つ d q , , U 残存率(%) 20% 9% 7%

o

2 3 4 5 6 7 8 9 10 生存期間(年) 図1 TOFおよびVSD(非手術例〉の残存率 a)

TOF

(表

3)

全般に類洞の拡張〔写真1),類洞内の赤血球充 満(写真2),類洞壁の線維化(写真3)などの急 性および慢性のうっ血による変化が中心であり, これらはほぼ全年齢層に認められるが, とくに類 洞壁の線維化は2年以上の例に目立ち,しばしば 軽度 中等度の中心静脈周囲の線維化を伴ってい る.また小葉中心に高度の出血を伴う肝細胞の壊 死〔写真4)が2例に認められる.しかしうっ血 性の肝硬変を示す所見はなかった.グリソン鞘領 域についてはグリソン鞘周聞の出血を伴う壊死と 線維化を伴う壊死がそれぞれ

1

例ずつ存在する が,それも軽度であり全般に変化は少ない.その 他,脂肪化が全年齢層に多くみられる.

h

)

VSD

(表

3)

TOF

と同様に類洞の拡張,類洞内の赤血球充 満,類洞壁の線維化などのうっ血による変化が目 立ち,類洞壁の線維化は年長例により多くみられ る.また小葉中心や中間帯を中心とする壊死が8 例に認められるが,これらの多くは年長例で,類 洞の拡張や類洞壁の線維化も高度の場合が多い. しかし

TOF

と同様, うっ血性の硬変像は認めら れなかった.グリソン鞘領域については

5

例に主 としてグリソン鞘周聞の肝細胞の壊死があり,そ のうち

4

例では線維化を伴っている.その他,脂 肪化(写真 5) が全年齢層に目立ち,脂肪肝の形 態をとっている例もある. 2カ月以内の症例には 髄外造血(写真 6) がよくみられる. c)両群の比較 類洞の拡張,類洞内の赤血球充満,類洞壁の線 維化,肝細胞の壊死,脂肪化の頻度についてカイ 2乗検定を行なったが明らかな有意差は認められ 表3 TOF, VSDの非手術例における肝変化の頻度 TOFC20例) VSD(68例) 類洞の拡張 19 66 類洞内の赤血球充満 14 39 類洞壁の線維化 11 22 肝細胞の壊死 4 13 髄外造血

6 脂 肪 化 16 59

(3)

-927-表4 TOF, VSD( 1歳以上〉の肝変化の比較 TOFCl7例u) 類洞の拡張 類洞内の赤血球充満 類洞壁の線維化 肝細胞の壊死 脂胞化 ( )内は高度のものを表わす < カイ2乗 p<0.05 16 (4) 13 (6) 10 (2) 4 (2) 14 (5) VSD(15例〕 15 く (10) 10 (2) 10 (3) 6 (3) 15 (4) なかった.しかし両群聞で年齢分布の差が大きく, この影響も考えられるため両群の

1

年以上の症例

CTOF 1

7

例,

VSD 1

5

例〉に限って,さらにカイ

2

乗検定を行なうと,

VSD

の方が類洞の拡張がより 高度であった〔表

4)

.

3

.

非手術例の肺の特徴 a)

TOF

全般にうっ血や出血の所見が多くみられるが, 好中球の肺胞内渉出を主とする肺炎は 4例のみに みられる.間質の変化としては肺胞壁への細胞浸 潤が大部分の例にみられるが,軽度の場合が多く, 肺胞上皮の腫大・増生,硝子膜の形成などを伴う 典型的な間質性肺炎は 2例のみにみられ,肺線維 症の形を示すものは

1

例のみで,これらはいずれ も

2

8

年以上の年長例である.その他コレステロー ル肉芽腫が1例にみられる.血管の変化としては 中膜筋の萎縮や外膜の謬原線維増生が一般に多 く,また中膜筋の肥大を伴わない内膜の増生(写 真7)も目立ち, これはとくに年長例に高度で内 腔を閉塞しているものも存在する.肺変化と肝変 化との聞には明らかな関連性はみられなかった.

b

)

VSD

うっ血,出血,浮腫などが目立ち,肺胞壁への 細胞浸潤もほとんどの例にみられたが,いわゆる 実質性の肺炎は

1

4

例,典型的な間質性肺炎

6

例, 肺線維症は3例に認められ,肺線維症はいずれも 20年以上の3症例である また無気肺も多くみら れ, コレステロール肉芽腫(写真8)が 4例(う ち3例は20年以上の症例〉にみられる.血管では 動脈の中膜肥大や内膜の増生(写真 9) などの肺 高血圧性の変化が

1

5

日以上の症例に多数みられ, とくに, 20年以上の3例には内腔の閉塞やplex -iform lesionなどがみられる. 肺の変化と肝の変化との関連性については肺内 動脈枝の高血圧性変化(内膜の増生,中膜筋の肥 大〉と肝類洞壁の線維化および類洞の拡張との関 係を表5に示す.類洞の線維化が中等度以上の症 例のすべてに内膜の増生や中膜筋の肥大が種々の 程度にみられ,逆に内膜の増生や中膜筋の肥大が ない症例はすべて類洞の線維化が軽度かほとんど みられない.なお,類洞の拡張の強さと内膜の増 生および中膜筋の肥大の程度とは関連性は少ない ようである.

4

.

非手術例の心の特徴 a)

TOF

まず肺動脈については狭窄を示すもの(1

0

例〉 と閉鎖を示すもの (10例〉の二つに分かれ,前者 は

2

年以上,後者は

1

年以下に多く,一般に狭窄 を示す例の方が生存期聞が長い.なお,狭窄はほ 表5 VSDにおける肝変化と肺内動脈枝の高血圧性変化との対比 内膜の増生 中膜筋の肥大 な し 軽 度 中等度 高 度 な し 軽 度 中等度 高 度 類 洞 なし 軽度 10 24 11 1 6 7 30 3 <T) 中等度

4 9 3

1 10 5 線 市イ世七 高 度

3 3

。 。

1 4 1 類 洞 なし 軽度

2

。 。 。 。

2

の 中等度 6 21 16 1 3 4 32 5 拡 張 高 度 4 8 7 3 3 5 10 4

(4)

-928-とんどが漏斗部と弁口部の両方にみられる.心室 中隔の欠損はほとんどが高位欠損で約半数が径

1

cm以上の大欠損である.心房中隔は卵円孔開存 が多くみられたが,二次孔欠損が存在するいわゆ るフアロー五徴症が

4

例にみられる.各心腔をみ ると右房は種々の程度の拡張がみられたが一般に 軽度であり,右心室の肥大はほとんどの例で高度 である.左房は全般に小さく,左室も低形成を示 す例が比較的目立つ. 心の状態と肝変化との関係についてはフアロー 五徴症の

4

例(これらの肺動脈はいずれも閉鎖〉 は年齢を間わず,類洞の拡張や類洞壁の線維化が 目立つ.またブアロー五徴症以外の肺動脈閉鎖を 示す例は狭窄を示す例にくらべ,類洞壁の線維化 が軽度であるが, これは年齢の差による影響が大 きいと思われる.各心腔との関係では右房の拡張 が強い例ではすべてに類洞の拡張や類洞壁の線維 化がみられる.

b

)

VSD

心室中隔の欠損の部位は膜様部あるいは膜様部 直下がもっとも多く,次いでsupracristalに多く みられる.大きさは細L、ゾンデが通る程度の欠損 から機能的には単心室に近い径約4cmの大欠損 まで様々である.心房中隔は半数以上に卵円子L開 存がみられ,完全な二次孔欠損が

5

例にみられる. 各心腔は種々の程度で肥大や拡張が存在したが, 右心房は軽度の拡張,右心室は中等度の肥大と軽 度の拡張,左心房は軽度の拡張,左心室は軽度の 肥大および拡張がもっとも多い. 心の状態と肝変化については

VSD

の部位や大 きさとの相関は少ないが,年長例(

2

年以上)

9

例のうち類洞の拡張が高度でなく,類洞壁の線維 化がほとんどみられない

3

例は

VSD

がし、ずれも 最大径0.5cm以下の小さいものである.心房中隔 欠損の有無や各心腔の変化との関連性は明らかで ない 5.手術例と非手術例の肝変化の比較(表6) 手術例も非手術例と同様,

VSD

TOF

ともうっ 血による変化が主であるが,カイ 2乗検定を行な うと,

TOF

で手術例の方が類洞の拡張が高度であ り,肝細胞の壊死(写真10,11)が多くみられる. また

VSD

でも手術例の方が類洞の拡張が高度で あり,類洞壁の線維化や肝細胞の壊死が多く,か っ高度で、ある.なお手術例ではいわゆるうっ血性 の肝硬変(写真12) の像も数例に認められる. 考 察 心・血管系の奇形は大・小循環系に大きな影響 を与えることは周知の事実であるが,近年,外科 表 6 TOF, VSDにおける手術例と非手術例の肝変化の比較 TOF(non-ope) TOF(post-ope) 20例 類洞の拡張 19 (4) 類洞内の赤血球充満 14 (6) 類洞壁の線維化 11 (2) 肝細胞の壊死 4 (2) 髄外造血

(0) 脂肪化 16 (5) ( )内は高度のものを表わす < カイ2乗 p<0.05 くく:ヵイ 2乗 pく0.01 101例 101 ぐく (79) 85 (43) 53 (13) < 48 (22)

(0) 85 (12) 929 VSD(non-ope) VSD(post-ope) 68例 43例 66 42 (23) く (26) 39 33 (10) (10) 22 < 23 (6) < (11) 13 くく 19 (7) く (12) 6

(2) (0) 59 36 (21) (7)

(5)

的治療の修飾が加えられることが多く,いわゆる 自然死例の剖検を見る機会は減少の傾向にある. しかし自然死例の循環体制を検討することは先天 性心疾患の病態の把握に必須であり,また治療の 前提になるとも考えられる.そのような観点から 肺を中心に数多くの研究がなされてきたのであ る 著者は大循環系の臓器の中で心臓に位置的に隣 接し,心臓とくに右心の状態を最も反映すると考 えられる肝臓の変化を中心に,代表的な先天性心 疾患である

TOF

VSD

について検討し考察を 加えた. l.年齢,残存率,性 年齢および残存率については,先天性心疾患は 全般に早期に淘汰がおこる,いわゆる初期故障1) のパターンをとり,かつて著者ら2)が示したよう に,大動脈縮窄,肺静脈還流異常,大血管転位な どでこの傾向が著しい.今回の

TOF

および

VSD

においても同様の傾向をとっている.ただ

TOF

VSD

の両群を比較すると

VSD

の方が乳児期の 死亡がはるかに多く,これは先天性心疾患の中で 肺動脈流が多いと考えられる群が,肺動脈流が少 ないとみなされる群にくらべ,乳児期の死亡が多 いという報告1)を支持する結果である.なお非手 術例にくらべ手術例の方が年齢が高L、が,これは 乳児期の破綻を免がれた,年長の例が手術対象と して選ばれているためと思われる.男女比につい ては今回の症例では差は少なかったが,

VSD

につ いてやや女性に多いとし、う報告3)もある.

2

.

TOF. VSD

(非手術例)の肝変化について 先天性心疾患における肝臓の変化は,急性の心 不全やショックに伴う変化と,高度で長期持続す る心不全に伴う変化が主体である. 前者は一般に炎症細胞の浸潤を伴わない小葉中 心性の壊死や種々の程度のうっ血および出血が主 な所見であり4) またこの場合の肝細胞の壊死は, 先天性心疾患の中でも,大動脈縮窄症と左心低形 成症候群の乳児によくみられ,肝内の血流あるい は酸素の減少によっておこると考えられる肝細胞 の壊死刑)と同様のものであろう. 後者はうっ血および出血を伴う小葉中心性の肝 930 細胞壊死や中心静脈周閤・類洞壁などの線維化が 主な所見で, これらの変化は,人為的に作成した 慢性の

p

a

s

s

i

v

e

な肝うっ血でも明らかにされてい る九なお,この場合の肝細胞壊死は成人の弁膜症 や肺性心のときにみられるものと類似の性格と思 われる. 著者の症例でみられる肝変化は,

TOF

VSD

と も類洞の拡張,類洞内の赤血球充満,類洞壁の線 維化が主であり,年長例には中心静脈周囲の線維 化などもみられる.さらに小葉中心性の肝細胞壊 死が

TOF

VSD

の両群にみられたが,これらは類 洞の拡張や類洞壁の線維化が高度のものに伴うこ とが多い.このような点から著者の例でみられた 肝変化は長期持続した右心不全によるものが主体 であると考えられる.なお,グリソン鞘領域の壊 死も数例にみられるが, これらは小葉中心性の壊 死に伴わず単独にみられ,原因としては薬剤や感 染なども考えられるが詳細は不明である. 両群の肝変化を比較すると,髄外造血が

VSD

のみにみられたが,これは

VSD

例が含む乳児の 症例に限られている.一方,年齢差を少なくする ために行なった, 1年以上の症例のみの比較では,

VSD

の方が類洞の拡張がより高度であった.類洞 の拡張は静脈圧の克進の程度とその持続時間の積 に比例するB)といわれ,右心系への遷延性の負担 とその不全の指標になる9)と理解されている.

VSD

は初期には欠損口を通じて左心室から右 心室への短絡があり,肺動脈への血流もスムーズ であるが,それが長期持続すると,肺血管抵抗の 増加,右心系への負荷の増大,短絡方向の逆転な どがみられ,いわゆる

E

i

s

e

n

m

e

n

g

e

r

化をきたし, 非常に右心不全をおこしやすくなる.

TOF

は心室中隔の欠損を通して,常に右室から 左室への短絡流があり,このため右室圧の上昇に もかかわらず,右房・肝系への慢性うっ血を来す ことが比較的少ないのではないかと考えられる.

3

.

TOF.VSD

(非手術例)の肺変化,肺変化と 肝変化との関係について 肺は小循環系の主役であり,心臓と密接に結び ついているために変化も多彩であるが,著者の症 例でもっとも目立ったのは

TOF

VSD

とも,うっ

(6)

佐 藤 論 文 付 図

I

写真l 類洞の拡張作6969,3月,男, TOF, non-ope) 写真3 類洞壁の線維化非(6969,3月,男, TOF, non -ope) 写真5 高度の脂肪化岸(9828,1歳,女, VSD, non -ope) -931-写真2 類洞内の赤血球充満(再2872,9歳,男, TOF, non-ope) 写真4 小葉中心性の出血性壊死 岸(4462,33歳,男, TOF, non-ope) 写真6 髄外造血 (#6226,3日,男, VSD, non-ope)

(7)

佐 藤 論 文 付 図

I

I

写真7 肺内動脈枝の内膜増生体4462,33歳,男,TOF, non-ope) 写真9 肺内動脈枝の中膜筋肥大と内膜増生 (岸4670, 11月,女, VSD, non-ope) 写真11 中心静脈を結ぶ線維化体5026,6歳,女, TOF, ope) 932-写真8 肺のコレステローノレ肉芽腫(岸4856,22歳,女, VSD, non-ope) 写真10 小葉中心性の壊死 (再7764,4歳,男, TOF, ope) 写真12 グリソン鞘や中心静脈を結ぶ線維化 (再6666, 39歳,男, VSD,ope)

(8)

血および出血,肺胞壁への細胞浸潤で、あり,これ らの変化は先天性心疾患の剖検例に一般によくみ られる川ものである.これに対して,好中球の肺胞 腔への渉出を伴う,いわゆる実質性肺炎は意外に 少なかったが,先天性心疾思の非手術例において, 肺惨出に細菌の証明される例が少なし、9)ことを反 映してし、るのであろう.また硝子膜形成や肺胞上 皮の腫大・増生を伴う典型的な間質性肺炎や肺線 維症も比較的少なく,ほとんど年長例にみられた. その他,無気肺がとくにVSDvこ多くみられたが, これは肺動脈の著しい拡張により,気管支が圧迫 されておこる二次性の変化が含まれると考えられ る.またコレステリン様の物質とそれに伴う巨細 胞の出現をみる肉芽腫性の変化がVSDvこ4例, TOFに1例みられた.そのうちVSDの3例は肺 線維症や肺内動脈枝の高度の高血圧性変化を伴っ ており,

G

l

a

n

c

y

ら11)の述べた,肺高血圧の症例に みられる

c

h

o

l

e

s

t

e

r

o

l

-

e

s

t

e

rg

r

a

n

u

l

o

m

a

と同様の ものと考えられる.血管の変化としては,まず TOFでは,中膜筋の萎縮や内膜の不均等な増生 (一部では内腔が閉塞〉がみられるが, これはとく に年長例により高度であることより,先天的な要 素に加え,長期にわたる肺内血流の減少などの血 行動態の異常がその成立に関係しているのかもし れない.次にVSDでは肺高血圧性変化が主で,

H

e

a

t

h

a

n

d

Edwards

の分類12)で

G

r

a

d

e

1-3

が一 般的であったが,内膜増生による内腔の閉塞や

p

l

e

x

i

f

o

r

m

l

e

s

i

o

n

など

G

r

a

d

e4

に相当する所見は 年長例にとくに多くみられた.また中膜筋の肥大 は新生児期の例にもみられたが, これは生理的な 要素も大きい13) 肝と肺の関係では, VSDにおけ る肺内動脈枝の内膜の増生や中膜筋の肥大が肝類 洞壁の線維化と関連性があるが,このことはVSD における肝の慢性うっ血性変化が肺高血圧症の指 標になりうることを示している. 4.心の状態と肝変化との関係について 心と肝の関係では, フアロー五徴症で肝のうっ 血性変化が強かったが, これは年齢を問わずこの 傾向がみられるため加齢による影響とは考えにく い.ふつう TOFに心房中隔欠損が加わると,血液 は圧の関係で右房から左房へ抜け,右房の負荷は 933 軽減すると考えられるが, この点で肝の所見と矛 盾している.TOFの左心系は棺対的に低形成であ り,その理由として左心への血流の減少が考えら れている叫.フアロー五徴症では左心低形成の傾 向がより強く,TOFにくらべ左房への血流がそれ 程増加しているとは考えにくい.さらに今回の フアロー五徴症例の肺動脈はすべて弁口閉鎖であ り,その成立は単に典型的なTOFに心房中隔欠 損が加わっただけのものではないという印象をう ける.なお, TOFで右心房の拡張の強い例には, 必ず慢性の肝うっ血の所見を伴っている.VSDに ついては欠損口が小さければ左室から右室への血 流が少なく,また肺高血圧もおこしにくいため右 心系への負荷が軽く,肝のうっ血性変化も軽いこ とが予想されるが,著者の症例中,年長例 (2年 以上〉で肝のうっ血性変化が少ない例はすべて欠 損口も小さく, このことが明らかに示された.

5

.

手術例と非手術例との肝変化の比較 手術例と非手術例との肝変化の差は年齢の差が 1つの要因であろうが,同じような年齢でも一般 に非手術例より手術例の方に, うっ血性の変化が より高度であり,肝細胞壊死も多くみられており, その理由として手術前は,肝臓は心奇形に対して, それなりのつり合いを保っていたが,手術により 血行動態が急変し,そのつり合いがくずれたこと や,術前の肝機能が正常な例に関心術を施した場 合,その肝臓に高率に壊死が認められるという報 告1めがあり,手術や麻酔そのものによる侵襲をう けたことなどがあげられる. 結 論 著者は剖検例によってフアロー四徴症,心室中 隔欠損症における肝変化の組織学的検討を行な い,次の結論を得た. 1)フアロー 4徴症(非手術例〕の肝変化 類洞の拡張,類洞内の赤血球充満,類洞壁の線 維化など,急性・慢性のうっ血性変化が中心で、あ るが, とくに類洞壁の線維化は,生後2年以上の 例に目立ち,しばしば中心静脈周囲の線維化を伴 う.肺所見と肝所見との相関については,はっき りした傾向が見られなかった.心房中隔欠損を伴 う5徴型の4例では,いずれも類洞の拡張,類洞

(9)

壁の線維化が目立つ.肺動脈流出路の閉鎖を示す 例は,狭窄例に比べて慢性肝うっ血の変化がむし ろ軽度であったが, これは前者がより早期に死亡 するためと思われる.右心房の拡張が強い例では, 肝うっ血の変化も著しい傾向が認められた. 2) 心室中隔欠損(非手術例〉の肝変化 この場合も,急性・慢性のうっ血性変化が主で あるが,年長例を中心に,小葉中心なし、し中間帯 の壊死を示すものが少数あり,またグリソン域に 肝細胞壊死,線維化を伴うものがあった.類洞の 線維化が中等度以上の症例では,例外なく,肺内 動脈枝の内膜増生,中膜筋肥大など,肺高血圧性 変化が種々の程度に見られ,VSDにおける肝の慢 性うっ血性変化は肺高血圧症の指標になりうるこ とを示している.中隔欠損の位置,大きさと肝変 化との直接の関連は見出せなかったが 2年以上 生存例で肝うっ血の変化が軽度に止まった3例で は,欠損孔がいずれも最大径O.5cm以下であっ た.生存1年以上の例に限ると, TOF, VSD,両群 の間で, VSDにおいて類洞の拡張がより高度で あった. 3) 手術例においても,両群とも変化の中心は うっ血によるが,手術例において類洞の拡張や肝 細胞壊死が有意に高度であった.また手術例では, 非手術例には認められなかったうっ血性肝硬変の 像も数例で認められた. 本稿を終えるにあたり,ご指導,ご校聞を賜りまし た梶田昭教授に深甚なる謝意を表します. 〔本稿の要旨は,第74回日本病理学会総会において 発表した.) 文 献 1)梶田 昭・ほか.先天性心疾患における寿命の問 題剖検例の統計的考察.東女医大誌 37 800 -807 (1967) 2)佐藤昭人・ほか 剖検よりみた先天性心疾患の白 然歴. 日病会誌 72 180(1983) 3) Hoffman

J.I.E.

et al.: The natural history of ventricular septal defects in infancy. Am J 934ー Cardiol 16 634-653 (1965)

4)Roderick, N.M.M., Peter, P.A. and Peter, J. S.: Pathology of the liver. 323 -325. Churchill Livingstone, Edinburgh London and N ew Y ork (1979)

5)Weinberg

A.G.

et al.: The liver in con. genital heart disease. E妊ectsof infantile coarc. tation of the aorta and the hypoplastic left heart syndrome in infancy. Am

J

Dis Child 119 390-394 (1970) 6)Shiraki,区., et al.: Hepatic cell necrosis in the newborn. A pathologic study of 147 cases, with paticular reference to congenital heart disease. Am

J

Dis Child 119 395-400 (1979) 7)Bolton, C., et al.: The pathological occur. rences in the liver in experimental venous stagnation.J Pathol 34 701-709 (1931) 8)Guyton

A.C.

et al.: The systemic venous

system in cardiac failure.

J

Chronic Dis 9 465 -475 (1959)

9)益子幸子・先天性心疾患の自然史に関する病理解 剖学的研究.東女医大誌 42183 -196 (1972) 10)Itoh, H., et al.: Pulmonary changes in con

genital heart disease of childhood. Histo. metrical and histological studies. Acta Pathol Jpn 27 59-74 (1977) 11) Glancy

D.L.

et al.: Pulmonary paren. chymal cholesterol-ester granulomas in patients with pulmonary hypertension. Am J お1:ed45 198-210 (1968) 12) Heath

D.

et al.: The pathology of hyperten -sive pulmonary vascular disease. A description of six grades of structural changes in the pulmonary arteries with special reference to congenital cardiac septal defects. Circulation 18 533-547 (1958) 13) Honda, T., et al.: Histometrical study of the pulmonary arteries in normal postnatal development and in patients with ventricular septal defect. Tohoku J Exp Med 102 403-412 (1970) 14) Nagao, G.,I. et al.:Cardiovascular anoma-lies associated with tetralogy of Fallot. Am J Cardiol 20 206-215 (1967) 15)田村浩一・ほか 関心術後MOF症例に対する臨 床病理学的検討.臨床胸部外科 4289-295 (1984-5)

参照

関連したドキュメント

肝臓に発生する炎症性偽腫瘍の全てが IgG4 関連疾患 なのだろうか.肝臓には IgG4 関連疾患以外の炎症性偽 腫瘍も発生する.われわれは,肝の炎症性偽腫瘍は

心臓核医学に心機能に関する標準はすべての機能検査の基礎となる重要な観

Approach to the fabric handle of silk Dechine zone in regard to the primary hands KOSHI and FUKURAMI... Approach to the fabric handle of silk Dechine zone in the case of

にて優れることが報告された 5, 6) .しかし,同症例の中 でも巨脾症例になると PLS は HALS と比較して有意に

信心辮口無窄症一〇例・心筋磁性一〇例・血管疾患︵狡心症ノ有無二關セズ︶四例︒動脈瘤︵胸部動脈︶一例︒腎臓疾患

「橋中心髄鞘崩壊症」は、学術的に汎用されている用語である「浸透圧性脱髄症候群」に変更し、11.1.4 を参照先 に追記しました。また、 8.22 及び 9.1.3 も同様に変更しました。その他、

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

 我が国における肝硬変の原因としては,C型 やB型といった肝炎ウイルスによるものが最も 多い(図