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癌性胸膜炎に対する全胸膜肺切除の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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癌性胸膜炎に対する全胸膜肺切除

の1列

国立療養所 富士病院 呼吸器外科 大沢宏 霜多広 中原和樹 堤正夫 石原重樹 石川創二    はじめに  癌性胸膜炎に対する手術療法の成績は悪く手術症例の多くは予後不良である が、一部では長期生存例の報告もあり、その手術適応については未だ多くの議 論のあるところである。今回われわれは、1癌性胸膜炎例に対し胸膜肺全適術 を施行し術後良好に経過しているのでその症例報告と、当院における癌性胸膜 炎の手術例を検討しその意義、適応にっき考察を加えたので報告する。    症例  症例は53才女性、主訴は咳嫌、喀疾、呼吸困難。既往歴は25才で虫垂炎、 52、53才に大腸ポリープでポリペクトミーをされる。家族歴は特記すぺき

ことなし。現病歴は、94年5月ユ0日頃より咳轍、喀疾出現、5月15日呼

吸困難出現したため、救急センターへ搬送されるが、軽快したため帰宅。5月 17日近医を受診したところ、左胸水を認めたため入院となり、ドレナージを 施行された。胸水細胞診を数回施行されたが悪性所見は認めなかった。しかし、 胸水中CEAが150.2と高値であったため、癌性胸膜炎を疑われ当院に紹介さ れ入院となる。職業は調理師で喫煙歴はない。    入院時現症  体重52.Okg、身長154.7cm。貧血、黄疸なく、頸部リンパ節は触知せず。胸部 では聴診上左肺野で呼吸音減弱が認められた。  血液生化学的所見では白血球11600CRP18.4と炎症所見を認め、 GOT,

GPTも軽度上昇していた。腫瘍マーカーはCEA, SLXが高値であった。

 胸水細胞診はクラス2であったが、胸水中の腫瘍マーカーはCEAをはじめ

TPA, SLX, NSE, CA50で高値を示した(表1)。

 胸部X線では左胸水、左下葉無気肺および胸膜の肥厚が認められた(図1)。 胸部CTでは左下葉S10に腫瘍陰影があり、左下葉の無気肺、胸水貯留および 一10一

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胸膜肥厚を認めた。縦隔リンパ節#3,4,5,6,7の腫脹を認めた(図2)。 気管支鏡所見は左下幹がB6分岐直後より壁外性の圧迫により狭窄しており、肺 底幹B8,B9,B10が閉塞していた。閉塞部位よりTBLBでadeno carcinomaが 検出された。エコー下肺胸膜生検では壁側胸膜下のリンパ管内に浸潤するcarc inomaが見られ、癌性胸膜炎と診断した。全身の検索で明らかな遠隔転移は無

く、術前のTNM分類はT4N2MOStagelllBと判断した。

 本人、家族と十分な話合いの末、手術を希望されたため、8月3日左胸膜肺 全摘術を施行した。術中所見では、壁側胸膜は肺尖部を除き著名に肥厚してお り、特に下葉は強固に癒着していた。しかし、Extra pleura1の剥離はそれほ ど難しくはなかった。胸膜肺全摘後、心膜、横隔膜剥離面、及び胸壁にOK−

432を計50KE局注した。

 摘出標本では、肺尖部を除き肥厚した胸膜で覆われており。割面ではcarcin omaが胸膜を破り、胸腔内に破綻したと思われる部位が見られた(図3)。  病理所見では、adenocarcinomaのpapillary typeで砂粒体を伴っていた。肺 胸膜内へ癌の浸潤が見られ、肥厚した壁即胸膜内にもわずかに癌の浸潤を認め たが壁側胸膜を越えてはいなかった(図4)。  術後左胸腔内にOK−432を計50KE注入し、 ChemotherapyとしてCDDP100mg,VDS6

mg,を2クール行った。血中のCEAは正常化、胸水中のCEAは0となり、

術後4カ月経過した現在再発の兆候もなく良好に経過している。    考察  1977年から1993年にかけて当院で行われた癌性胸膜炎の手術例を示す(表2) 。平均年齢は56.9才で全例adeno carcinomaであった。3年以上の長期生存例

は現在のところなく、N1の症例3のみが1年9カ月経った現在でも生存中で

ある。平均生存期間は現時点では11.8カ月である。  本邦における癌性胸膜炎手術例の平均生存期間は7カ月から9カ月でありD、 因子別では術前、術後ともN因子が増加するほど予後は不良で、術前の悪性胸 水およびcN3では長期生存例はなく、手術適応はないという報告がほとんど である1・2・3・4・5・ 6・ 7・ 8)。  しかし、一口に癌性胸膜炎といっても手術後長期生存例もあることから癌性 胸膜炎にもいろいろあると考える。すなわち、肺胸膜より胸腔内に破綻、剥落 した遊離癌細胞の胸膜付着、着床によるもの、癌が血流あるいはリンパ流を伝 わって胸膜脈管層に着床したもの、原発巣から転移した肺門リンパ節によりリ

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ンパ流がブロックされ胸膜下リンパ管への逆流を生じたため癌が胸膜下に広が り癌性胸膜炎に移行したものであり1)、剥落した遊離癌細胞が着床して生じた 癌性胸膜炎の中でも早期のものであれば根治性があると思われる。当院では癌 性胸膜炎の手術条件として(表3)のように考えている。  また、今回あげた適応以外にも癌性胸膜炎に対して胸膜肺全摘を行うことで 結果的にsalvage surgeryとなる。予想される胸壁浸潤に対する落痛から回避 すること、あるいは持続する喀疾、血疲から免れることにより生存期間は内科 療法と変わらなくてもquality of lifeは良い場合があると考える。    結語  癌性胸膜炎に対し全胸膜肺切除を施行し術良好に経過しているので、当院に おける癌性胸膜炎手術例と本邦における癌性胸膜炎に対する外科療法の成績を 含めて考察した。癌性胸膜炎の手術適応の決定には慎重を要し、現時点では癌 性胸膜炎症例では、術前の悪性胸水を除き、開胸時の播腫を含むcT4, cN

O∼2,cMo∼1(M1は切除予定肺のPM)までを手術適応と考える。

   文献       ’ 1)永井完治、日吉晴久、劉 栄森、他:胸膜播種を認めた肺癌切除症例の検討.  日胸外会誌 38:222∼226,1990 2)斉藤 誠、平栗俊介、瓜生和人、他:T4肺癌の診断と治療成績.日呼外会  誌7:782∼788,1993 3)薄田勝男、斉藤泰紀、遠藤千顕、他:T4肺癌の外科治療成績と手術適応.  胸部外科 44:359∼368,1991 4)木村 誠、谷 一浩、竹内義広、他:術後遠隔成績からみた肺腺癌外科治療  の検討.胸部外科 43:2∼9,1990 5)清水淳三、渡辺洋宇、小田 誠、他:T4進行肺癌に対する外科治療成績の  検討.肺癌 30:827∼832,1990 6)佐川元保、斉藤泰紀、高橋里美、他:切除例の予後からみた肺癌TNM分類  の妥当性と問題点.肺癌 30:333∼339,1990 7)酒井忠昭、池田高明、菊地功次、他:原発性肺癌による癌性胸膜炎にたいす  る胸膜肺全別術の適応.肺癌 26:637∼641,1986 8)大岩孝司、斉藤博明:癌性胸膜炎を伴った原発性肺癌に対する胸膜肺全別術  の臨床的検討.肺癌 26:259∼265 一12一

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(血液生化学) 0血N 冒BC     11600 RBC  416万 Hb    11.4 肌    36,6 Plt  43万 O生化学 TP    6.8 ALB   3.? GOT    74 6PT   140 ALP   458 LDH   315 Na    141 ×    3.6 Cl    104 BUN   12.5 Cetn   O.5 CRP  18.4 ↑ ↑ ↑ ↑ 表1. 検査所見 O腫瘍マーカー CεA SCC AFP CA19−9 TPA NSE SLX CA125 CA50 15.1 ↑ O.8 2.4  9 103.4 8.1 97 ↑ 16  5 0血液ガス分析 pH PO2 pCO2 HCO3 BE O2SAT 7.500 67.4 30.9 24.1 2.7 95.0 (胸水) O性状 O胸水中ADA  〃 0細胞診 0リバルタ反応: ビアkilン酸  血性  (+)  20.0  19400 : class II 0胸水中腫瘍マーカー CEA      188.2 ↑ TPA       6067 ↑ SLX   499↑ NSE      28.6 ↑ CA50       216  ↑ 表2.当院における癌性胸膜炎の手術例(1977∼1993) 症例  組織型 TNM(Stage) 術式 154才♂ adeno. 268才♂ adeno. T4N2Ml(IV)  (PM) T4N2HO(III B) 362才♂ adeno. T4NIMO(mB) 443才♂ adeno. T4N2MO(III B) 死因(術後月数) 右全胸膜肺切除  脳転移(4.6カ月)  右中下葉切除 +胸膜下部合併切除  右下葉切除 +胸膜下部合併切除  右全胸膜肺切除 再発  (6.6カ月) 生存  (1年3カ月) 再燃  (1年3カ月) 表3.癌性胸膜炎の手術条件 1)肺内原発の肺癌で肺胸膜より胸腔内へ破綻、剥落した癌性胸膜   炎に限る。 2)胸壁胸膜全周に及ばない。 3)術前の悪性胸水は除く。 4)N因子がNO∼2であること。 5)遠隔転移がないこと。 (切除予定肺のPMは可能) 6)全身状態が良好なこと。 7)若年層に属すること。

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図1 図2 ・㌦メ芯、’““’〉噺㌶臓鞍・1・竺宮箒 ・’

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図4 図3 一14一

参照

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