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幌延における堆積岩の特性研究(その2)-電力中央研究所/日本原子力研究開発機構共同研究平成16~20年度成果報告-

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(1)

平成

幌延における堆積岩の特性研究(その2)

−電力中央研究所/日本原子力研究開発機構共同研究

平成 16 ∼ 20 年度成果報告−

7

22

研究報告 : N09016

原 子 力 発 電

(2)
(3)

幌延における堆積岩の特性研究(その2)

-電力中央研究所/日本原子力研究開発機構共同研究

平成

16~20 年度成果報告-

大山 隆弘

*1

木方 建造

*2

鈴木 浩一

*3

中田 英二

*4

田中 姿郎

*4

長谷川 琢磨

*5

中田 弘太郎

*5

長岡 亨

*6

中村 孝道

*7

福島 龍朗

*8

石井 英一

*9

國丸 貴紀

*9

高橋 一晴

*10

濱 克宏

*11

岩月 輝希

*11

杉田 裕

*9

薮内 聡

*9

宮原 重憲

*12 キーワード:スレーキング 化学的風化 コントロールボーリング 地下水年代測定 微生物 Key Words:Slaking Chemical Weathering Controlled Drilling Groundwater Dating Microorganism

Study on Characteristics of Sedimentary Rock at the Horonobe Site(2)

- Report of Collaboration Research between CRIEPI and JAEA -

Takahiro Oyama, Kenzo Kiho, Koichi Suzuki, Eiji Nakata, Shiro Tanaka,

Takuma Hasegawa, Kotaro Nakata, Toru Nagaoka, Takamichi Nakamura,

Tatsuo Fukushima, Eiichi Ishii, Takanori Kunimaru, Kazuharu Takahashi,

Katsuhiro Hama, Teruki Iwatsuki, Yutaka Sugita,

Satoshi Yabuuchi and Shigenori Miyahara

Abstract

CRIEPI (Central Research Institute of Electric Power Industry) and JAEA (Japan Atomic Energy Agency) have been conducting a collaboration research to develop methodology for the characterization of geological environment since FY (平成22 年 3 月 14 日 承認) *1 地球工学研究所 バックエンド研究センター 上席研究員 *2 地球工学研究所 バックエンド研究センター 研究参事・プロジェクト課題責任者 *3 地球工学研究所 地圏科学領域 上席研究員 *4 地球工学研究所 地圏科学領域 主任研究員 *5 地球工学研究所 バックエンド研究センター 主任研究員 *6 環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 主任研究員 *7 環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 特別契約研究員 *8 日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 研究主席 *9 日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 研究員 *10 元日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 *11 日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 副主任研究員 *12 日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 地球工学研究所

(4)

2002. This report describes the results of the collaboration research in mainly from FY 2004 to FY 2008. As the collaboration research, the following research results were obtained.

(1)Study on the slaking property

We discovered the spherical silica (amorphous silica) in siliceous rock (Opalin chert) between the Koetoi and Wakkanai Formation. The permeability of this chert (10-12m/sec) decreases to compare with near depth diatomaceous

mudstone (10-10m/sec). This diatomaceous mudstone dose not rapidly slakes. Excavated disturbed zone(EdZ) at -140m

tunnel was estimated with drilled cores and gas flows from the tunnel wall. (2)Study on the chemical weathering of the sedimentary rock

The weathering property was investigated of mudstone at an outcrop and east shaft. Weathering profile was divided oxidized, dissolved, transition and fresh zone. Oxidation was limited to the vicinity of surface.

(3)Study on the pore water extraction methodology.

Sample preparation under N2 condition before porewater squeezing to prevent oxidation showed that the squeezed

porewater chemistry was affected by the sample storage period before squeezing. (4)Study on exploration method considering the physical property of the rock.

The depth profile of the mechanical and permeability properties can be estimated by the results of physical logging in the borehole and laboratory measurements of core samples.

(5)Study on the applicability of the controlled drilling system to the Horonobe site

The controlled drilling system was applied to the Hokushin site and the Kami-horonobe site in the Horonobe town. At the Kami-horonobe site, the system was applied to drill the Omagari fault and characterize the hydro-geology around the fault. The controlled drilling was successfully done with around 100% of core recovery and hydro-geological characteristics was estimated.

(6) Groundwater dating

The results of estimation of groundwater age by 4He and 36Cl indicate groundwater in Wakkanai layer has been

stagnant from sedimentation of Wakkanai formation. (7) Microbial analyses of sedimentary rocks

To understand the relationship between microbial activity and geochemical conditions, we analyzed the microbial activity and diversity in sedimentary rocks from the east shaft of Horonobe underground research center. In the rocks, the abundance of microbes was lower, revealing simple microbial community. The fundamental data to understand the relationship between microbial activity, diversity and geochemical conditions were obtained.

(Civil Engineering Research Laboratory Rep.No.N09016)

背 景

高レベル放射性廃棄物処分に関わるサイト特性調査・評価技術を高度化するため、

(財)電力中央研究所と(独)日本原子力研究開発機構は平成 14 年度より、堆積岩

を対象とした国内唯一の地下研究施設である幌延深地層研究センターにおいて共同

研究を実施してきた。堆積岩は施設閉鎖時のシール性など優れた性能を持つものの、

軟質な堆積岩では力学特性が劣り、特性変化が生じやすいなどの技術課題もある。

また、地下深部の岩盤の特性研究では、ボーリング調査技術などの開発とともに、

地質・地下水・微生物などの関連分野の連携した研究が必要とされている。

目 的

電力中央研究所で開発した堆積岩に関する調査・評価手法を幌延サイトに適用し、

ボーリングや地下研究施設建設に伴う調査を利用して地下深部の堆積岩の特性を明

らかにするとともに、調査・評価手法の適用性を評価する。

主な成果

平成 16~20 年度の主な成果は以下の通りである。

(5)

(1)堆積岩の続成作用とスレーキング特性: 声問層の珪藻質泥岩のスレーキング

特性を鉱物学的手法により検討し、スレーキングしない性質を持つことが分かった。

東立坑-140m での水平坑道掘削に伴う掘削影響領域(EdZ)の調査のため、防爆仕様の

ボーリングを行い、割れ目分布とガス湧出の状況から掘削影響範囲を推定した。

(2)岩石の化学的風化特性: 地表露頭と東立坑で調査し、地表からの天水の浸透

により、岩石の酸化・溶解と間隙水の置換が生じ、地表から酸化帯、溶解帯、漸移

帯、新鮮部が区分され、氷期後の長期の変化が明らかになった。

(3)岩石間隙水抽出の前処理方法: コア採取後の間隙水の変質を避けるために、

コア採取後の保存期間を短く(数ヶ月以内)することが重要であることが分かった。

(4)岩石の物理特性と探査技術: 室内試験結果と検層データに変換解析法を適用

し、透水係数と一軸圧縮強度について検討した結果、割れ目の少ない声問層ではよ

い相関があったが、割れ目が多い稚内層では相関性が悪いことが分かった。

(5)コントロールボーリング技術の適用性検討: 大曲断層が分布する幌延町上幌

延地区に適用し、孔長 800m の掘削を行い、ほぼ 100%のコアを採取した。各種調査

の結果、①大曲断層の透水性は、周辺岩盤より1オーダー程度低いが、水質は断層

の上・下盤ともに同様であり、②断層下盤を中心に間隙水圧が高いことが判明し、

断層周辺の水理・地化学特性を明らかにすることができた。

(6)地下水年代測定技術の現地適用性検討:

4

He を用いた評価では、稚内層の

地下水年代が 100 万年~750 万年程度を示し、

36

Cl/Cl の値は放射平衡値を示し地下

水年代は 100 万年以上と推定された。これらの値は、地層の堆積年代と整合してお

り、幌延地域の地下水は流動性に乏しく、堆積時からほぼ滞留している可能性が高

いことが明らかとなった。

(7)地質環境と微生物群集の関連性: 東立坑のブロック試料を用いた培養試験と

遺伝子解析の結果、堆積岩の微小間隙中の微生物量は非常に少なく、また活性も小

さいことが明らかとなった。しかし、還元的環境下には鉄還元細菌や硫酸還元細菌

などが検出され、地下の地化学環境と微生物種との関連が示唆された。

なお、コントロールボーリング技術および地下水年代測定技術の現地適用性検討

は経産省資源エネルギー庁からの受託研究「ボーリング技術高度化調査」および「地

下水年代測定技術調査」の一部として実施したものである。

今後の展開

今後、幌延深地層研究センターの工事の進捗に合わせて、地下研究施設の立坑や

調査横坑を利用した原位置での調査・評価技術の開発を推進する。

関連報告書:「幌延における堆積岩の特性研究-電力中央研究所/日本原子力研究開発機構共同研究成果報告-」 N05044(2006.9)

(6)

目 次

1.はじめに···1 2.共同研究の役割分担···3 3.共同研究成果···3 3.1 堆積岩の続成作用と急速スレーキング(浸水崩壊)に関する検討···3 3.1.1 目的···3 3.1.2 続成作用による鉱物・岩石性質変化···5 3.1.3 声問層の急速スレーキング特性··· 10 3.1.4 東立坑-140m 坑内での EdZ 調査 ··· 13 3.1.5 今後の課題と展開··· 19 3.2 岩石の化学的風化・変質特性に関する検討··· 21 3.2.1 目的··· 21 3.2.2 地表付近における珪藻質泥岩の酸化現象の調査··· 21 3.2.3 地下浅部~深部(GL-140m)における珪藻質泥岩および間隙水質の調査 ··· 26 3.2.4 まとめ··· 30 3.2.5 今後の課題と展開··· 31 3.3 間隙水の抽水方法の検討(不活性(窒素)環境下での試料処理) ··· 31 3.3.1 目的··· 31 3.3.2 窒素ガス環境下での試料加工··· 31 3.3.3 抽水結果··· 32 3.3.4 考察··· 33 3.3.5 まとめ··· 34 3.3.6 今後の課題と展開··· 34 3.4 岩石の物理特性を考慮した探査技術の研究―変換解析の適用性検討―··· 34 3.4.1 目的··· 34 3.4.2 基礎理論··· 34 3.4.3 コア試料による試験結果··· 34 3.4.4 物理検層データの変換解析結果··· 37 3.4.5 まとめ··· 37 3.4.6 今後の課題と展開··· 41 3.5 コントロールボーリング現地適用性検討··· 41 3.5.1 目的··· 41 3.5.2 コントロールボーリングシステムの概要··· 41 3.5.3 現地適用性検討··· 42 3.5.4 まとめ··· 46 3.5.5 今後の課題と展開··· 47 3.6 地下水年代測定技術の現地適用性検討··· 47 3.6.1 目的··· 47 3.6.2 岩石間隙水の特性評価手法、間隙水抽出手法の検討··· 49 3.6.3 4He、36Cl/Cl を用いた地下水年代の評価··· 49 3.6.4 まとめ··· 53 3.6.5 今後の課題と展開··· 53 3.7 地下の酸化還元状態と微生物の関連性検討··· 54 3.7.1 目的··· 54 3.7.2 材料と方法··· 54 3.7.3 結果と考察··· 57 3.7.4 まとめ··· 60 3.7.5 今後の課題と展開··· 60 4.おわりに··· 61 謝辞··· 62 引用文献··· 63

(7)

1.はじめに

(財)電力中央研究所(以下、電中研)は、これ まで多数の電力施設を対象とした地点調査や特 性評価を通じて開発した技術を基盤として、高 レベル放射性廃棄物処分に係わる研究・技術開 発を進めており、これまでにサイト特性調査の ための各種技術開発を実施してきている。(独) 日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)は、 高レベル放射性廃棄物処分技術に関する技術開 発、特にサイト特性調査の技術開発を目的とし て、結晶質岩を対象として岐阜県の瑞浪市、堆 積岩を対象として北海道の幌延町においてそれ ぞれ深地層の研究施設を建設している。北海道 幌延町では、平成12 年度より幌延深地層研究計 画が開始され、堆積岩地域の特性を把握するた め、物理探査・ボーリング調査等による地上か らの調査研究、坑道掘削(地下施設建設)時の調 査研究と段階的な研究計画が進められている (太田ほか、2007)。 高レベル放射性廃棄物処分には地質環境特性 に関わる広範囲な調査手法や評価手法の体系化 が必要とされ、このための手法の開発や高度化 が求められている。 堆積岩地域での地層処分に関する研究開発に 関しては、スイス、ベルギー、フランスなどの ヨーロッパ諸国で研究が盛んに進められている。 堆積岩は、遮へい性や、自己シール機能などの 優れた天然バリア特性を持つ一方で、軟質な堆 積岩では結晶質岩などに比較して力学特性が劣 ること、岩盤掘削などの環境変化にともなう特 性変化が激しいことなどが課題と考えられてい る(大山、鈴木、2005)。前述のヨーロッパの3 カ国で研究対象とされている堆積岩は、古第三 紀~中生代ジュラ紀の軟質~中硬質な泥質岩で あり日本の新第三紀~古第三紀の岩石に類似し た特性を持っている。 岩盤の特性評価に係わる調査段階として、① 地上からの調査研究段階、②坑道掘削(地下施設 建設)時の調査研究段階③地下施設での調査研 究 段 階 の 3 段 階 に 分 け ら れ て い る ( 太 田 他 、 2007)。①の地上からの調査研究段階の調査では 地表調査やボーリング調査が主な調査手段とな る。特に地下深部の情報を得るために、各種の 地質条件に対応できるボーリング掘削技術と、 ボーリング掘削により得られた、コア試料や孔 内での検層・試験データを使った研究が重要と なる。②③の坑道掘削(地下施設建設)時や地下 施設での調査研究段階では、掘削された立坑や 水平坑道を使って、実際の地下深部の岩盤の初 期状態と、掘削に伴う岩盤特性の変化に関する 研究が重要となる。 電中研と原子力機構では、堆積岩の各種特性 を調査、評価する手法の開発、高度化を目指し て平成 14 年度より、幌延深地層研究センターに おいて共同研究を開始した(図1-1)。 本報告では、主に①の地上からの調査段階の 成果と、②の坑道掘削に伴う調査研究開発の初 期の段階の調査結果について、平成14~15 年度 の共同研究成果報告(木方ほか、2006)に引き続 き、主に平成16~20 年度研究成果の概要を取り まとめたものである。 主な研究項目は以下の7 項目である。 (1) 堆 積 岩 の 続 成 作 用 と 急 速 ス レ ー キ ン グ (浸水崩壊)に関する検討 (2)岩石の化学的風化特性に関する検討 (3)間隙水の抽水方法の検討(不活性(窒素) 環境下での試料処理) (4)岩石の物理特性を考慮した探査技術の研 究 (5)コントロールボーリング技術の現地適用 性の検討 (6)地下水年代測定技術の現地適用性検討 (7)地下の酸化還元状態と微生物の関連性検 討 なお、(5)コントロールボーリング現地適用性

(8)

図 1-1 高レベル放射性廃棄物処分地層処分計画での、幌延サイトでの共同研究開発の位置づけ

調査段階

概要調査

詳細調査

幌延サイトでの研究・調査項目

H14年度~

・ボーリング調査

コントロールボーリング

・堆積岩の性質とその変化

続成作用、スレーキング、

化学的風化

・物理探査技術

・微生物影響

・地下水年代測定

間隙水抽出

H20年度~

・坑道を利用した岩盤の調査

評価項目

・地質環境長期変動

・地質構造

・地質・地化学環境

・地下水流動

・物質移動特性

・岩盤力学・熱特性

・岩盤応力

・地下施設建設影響評価

本報告書の範囲

鉱物組成 物性値 水質 透水係数

①堆積岩の続成作用と急速スレーキング

②岩石の化学的風化特性

③コア間隙水の抽出法

④岩石の物理特性と探査技術

⑥地下水年代測定技術(経産省受託)

⑦地下の酸化還元状態と微生物の関連性

⑤コントロールボーリング技

術の開発(経産省受託)

(9)

検討に関する研究は、経済産業省資源エネルギ ー庁受託研究「ボーリング技術高度化調査」の 一部として、また、(6)地下水年代測定技術の現 地適用性検討は、同「地下水年代測定技術調査」 の一部として実施したものである。

2.共同研究の役割分担

本共同研究の実施により、原子力機構は電中 研の保有している地層処分に関する技術、ノウ ハウを幌延深地層研究計画に導入し、同計画を 効率良く実施することや研究成果の質を高める ことが可能となる。一方、電中研は、この共同 研究を通じて、保有している地層処分に関する 技術、ノウハウを具体的に原位置試験に適用し て、原子力機構が有する各種特性データとの比 較を通じその適用性を確認し、保有技術やノウ ハウの信頼性を高めることが可能となる(木方 ほか、2006)。 このような観点から、上述の7 つの研究項目 について、表2-1 に示すように役割分担を取り 決め、図2-1 に示すような年度展開で研究を推 進した。

3.共同研究成果

3.1 堆積岩の続成作用と急速スレーキ

ング(浸水崩壊)に関する検討

3.1.1 目的

本研究では、以下3 項目の調査を実施した。 ①続成作用による鉱物・岩石性質変化に関す る調査 ②トンネル周辺での乾燥に伴う坑壁の急速ス レーキング特性に関する調査 ③地下研究施設-140m坑道内での EdZ 調査 ①の続成作用に関する研究は、珪藻質泥岩の シリカ鉱物の鉱物組成や透水性の変化を明らか にすることにより、堆積岩の特性の基礎データ として用いることを想定し、②の急速スレーキ ングに関する研究は、坑内通気や脱ガスにより 坑道周辺に形成された間隙飽和度の低下箇所、 あるいは廃棄体が発する熱による廃棄体周辺の 岩盤の乾燥による影響を推測したものである。 図 2-1 研究の年度展開 H16 H17 H18 H19 H20 ①堆積岩の続成作用と急速スレーキング(浸 水崩壊)に関する検討 ②岩石の化学的風化特性に関する検討 ③コア間隙水の抽出法に関する検討 ④岩石の物理特性を考慮した探査技術の研 究 ⑤コントロールボーリング技術の現地適用性 の検討 ⑥地下水年代測定技術の現地適用性検討 ⑦地下の酸化還元状態と微生物の関連性検 討 H16 H17 H18 H19 H20 ①堆積岩の続成作用と急速スレーキング(浸 水崩壊)に関する検討 ②岩石の化学的風化特性に関する検討 ③コア間隙水の抽出法に関する検討 ④岩石の物理特性を考慮した探査技術の研 究 ⑤コントロールボーリング技術の現地適用性 の検討 ⑥地下水年代測定技術の現地適用性検討 ⑦地下の酸化還元状態と微生物の関連性検 討 本報告書の範囲(主にH16-20年度)

(10)

表 2-1 役割分担 原子力機構 電中研 ①堆積岩の続成作用と急速スレーキング(浸水崩壊)に関する検討 ・コア試料採取(層序区分を考慮) ・鉱物化学分析、室内試験(X線回折、密度、間隙径分、SEM観察) ・ボーリング孔掘削 ・坑内調査 ・続成作用と浸水崩壊に関する検討 ○ ○ ○ ○ ○ ②岩石の化学的風化特性に関する検討 ・露頭および坑壁観察 ・試料採取 ・鉱物化学分析、室内試験 ・風化の評価 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ③コア間隙水の抽出法に関する検討 ・コア試料採取 ・間隙水の抽出方法の検討及び抽出(2方法) ・間隙水の分析 ・地化学特性評価法の検討 ○ ○ ○ ○ ○ ④岩石の物理特性を考慮した探査技術の研究 ・サイト選定 ・ボーリング孔掘削 ・孔内検層およびモニタリング ・室内物理試験(物理、力学、電気特性、透水係数) ・坑壁周辺の緩み評価 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ⑤コントロールボーリング技術の現地適用性の検討 ・コントロールボーリングシステムによる孔井掘削 ・孔内調査及び検層 ・コア試験 ・取得したデータの地質環境モデルへの反映 ・掘削、調査システムの適用性の検討 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ⑥地下水年代測定技術の現地適用性検討 ・コア・ガス採取 ・年代測定(同位体分析) ・地下水流動と年代値との関連検討 ・取得したデータの地質環境モデルへの反映 ・測定技術の適用性の検討 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ⑦地下の酸化還元状態と微生物の関連性検討 ・コア採取 ・微生物群集解析 ・酸可溶鉄分析 ・地下の酸化還元状態と微生物群集の関連検討 ・地下の酸化還元状態の微生物的評価 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 原子力機構 電中研 ①堆積岩の続成作用と急速スレーキング(浸水崩壊)に関する検討 ・コア試料採取(層序区分を考慮) ・鉱物化学分析、室内試験(X線回折、密度、間隙径分、SEM観察) ・ボーリング孔掘削 ・坑内調査 ・続成作用と浸水崩壊に関する検討 ○ ○ ○ ○ ○ ②岩石の化学的風化特性に関する検討 ・露頭および坑壁観察 ・試料採取 ・鉱物化学分析、室内試験 ・風化の評価 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ③コア間隙水の抽出法に関する検討 ・コア試料採取 ・間隙水の抽出方法の検討及び抽出(2方法) ・間隙水の分析 ・地化学特性評価法の検討 ○ ○ ○ ○ ○ ④岩石の物理特性を考慮した探査技術の研究 ・サイト選定 ・ボーリング孔掘削 ・孔内検層およびモニタリング ・室内物理試験(物理、力学、電気特性、透水係数) ・坑壁周辺の緩み評価 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ⑤コントロールボーリング技術の現地適用性の検討 ・コントロールボーリングシステムによる孔井掘削 ・孔内調査及び検層 ・コア試験 ・取得したデータの地質環境モデルへの反映 ・掘削、調査システムの適用性の検討 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ⑥地下水年代測定技術の現地適用性検討 ・コア・ガス採取 ・年代測定(同位体分析) ・地下水流動と年代値との関連検討 ・取得したデータの地質環境モデルへの反映 ・測定技術の適用性の検討 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ⑦地下の酸化還元状態と微生物の関連性検討 ・コア採取 ・微生物群集解析 ・酸可溶鉄分析 ・地下の酸化還元状態と微生物群集の関連検討 ・地下の酸化還元状態の微生物的評価 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

(11)

EDZ に は Excavated Damage Zone(EDZ) と Excavated disturbed Zone(EdZ)の 2 つの意味があ る(たとえばShao et al., 2008; Popp et al.,2008)。 坑道の掘削中に直接ダメージを受けたゾーン、 たとえば坑道周辺で割れ目が生じたゾーンは前 者を指す。一方、掘削後に進む応力再配分、地 盤沈下、空気の侵入、ガスの逸散、間隙水圧の 減少、風化、不飽和帯、さらには周辺の水位の 低下などは、後者に属し、影響範囲は前者に比 べて大きいと考えられる。 一方、本研究のもう一つのテーマである急速 スレーキングとは、堆積岩の乾燥とイオン濃度 の小さい地下水による冠水で岩石が泥・砂状に まで変形するものである(中田ほか、2004;中田 ほか、2006)。処分場閉鎖後に EdZ に沿って天 水が侵入(再冠水)した場合、岩盤や廃棄体の安 定性に大きな影響を与えることになる。たとえ ば、EdZ の地下水移動に関しては、Nakata et al.(2007)は海底下の堆積岩坑道周辺では、陸か ら海底下坑道に沿って幅 200m 前後で陸水が侵 入していることを示している。同様なトンネル 周辺を伝った地下水の移動は芦澤ほか(2008)に より花崗岩地域の例が紹介されている。さらに、 中田ほか(2008)は海底下 800m で広範囲に操業 していた炭鉱において再冠水するまでの時間が 透水係数10-6~10-8m/sec の古第三系で約 2 年で あることを示した。これらの結果はEdZ を介し て天水などの地下水が急速に進入し、坑壁周辺 で急速スレーキングが起こる可能性を示してい る。 以下に幌延地域においてEdZ で生じる事象の 予測のために、3.1.2 で続成作用に関する調査に ついて、硬質な珪質堆積岩が認められたHDB-9 孔の GL-66m 付近と、HDB-11 孔でのオパール CT の面間隔、間隙径分布、SEM 観察の分析結 果(中田ほか、2005)を主体に報告する。3.1.3 で は急速スレーキングに関する調査について、問 寒別地区の声問層で採取した試料について、 3.1.4 では東立坑-140m 坑内での EdZ 調査の調査 概要を紹介する。

3.1.2 続成作用による鉱物・岩石性質

変化

図 3.1-1 に今回の調査で用いた試料の採取位 置を示す。調査はボーリング孔(HDB-9、HDB-11)、 および地表露頭で認められた硬質な珪質堆積岩 を主体に実施した。Iijima and Tada(1981)、福沢 (1985)はこのような硬質な珪質堆積岩は続成作 用の進行に伴う圧密を受けた泥岩から間隙水が 絞りだされたために形成されると推察している。

(1) HDB-9 のオパール質チャート

HDB-9 は幌延深地層研究センターの北約 1km に掘削された長さ 550m の鉛直孔である。おお むね大曲断層の線上に孔口がある。孔口から声 問層と稚内層の漸移帯が分布しており、GL-66m、 68m に幅 10cm 前後の緻密な珪質堆積岩(以下オ パール質チャート)が認められる。このオパール 質チャートの上部5m には幅 10cm の鮫肌状の若 干硬い珪質泥岩が分布している。鮫肌状の珪質 泥岩とオパール質チャートの連続性はこのボー リング孔の情報では明らかでない。 図 3.1-1 試料採取位置図 調査の主体は HDB-9,11 孔である。

(12)

(2) HDB-9 の調査結果

オパール質チャートの典型として、HDB-9 孔 のGL- 60~69m でコアを採取し、XRD と間隙 率、間隙径分布と電子顕微鏡観察等を実施した。 図3.1-2 はシリカ鉱物の d 値とエコーチップ(打 撃型反発強度測定器)による反発度(L 値)の変 化を示している。図に示すようにオパール質チ ャートに含まれるシリカ鉱物は d 値が 4.11~ 4.10Åの続成作用初期に認められるオパール CT からなり、特に間隙率が 30~35%と鮫肌の 珪質泥岩や珪質泥岩と比べて 10%前後小さく なっていることがわかる。図 3.1-3 には間隙径 分布の移り変わりも示した。GL-60~69m の珪 質泥岩はおおむね単一の間隙径からなる。一方 オパール質シリカは珪藻質泥岩に認められる1 μm 前後の大きな間隙がなく、装置の分解能で 検知できる間隙が認められない。図 3.1-4 には GL-66m の硬質な珪質堆積岩の FE-SEM 像を示 した。図はオパール CT の結晶を拡大したもの である。球状のシリカの粒の積み重なりが認め られる。さらにGL-66.45m の硬質な珪質堆積岩 図3.1-2 HDB-9孔に産出するオパール質シリカ 図は左から柱状図,エコーチップの反発度,間隙率, XRDによるオパールCT(101)面の面間隔を示す。 では球状のシリカは板状結晶の一部としてでは 無く岩石の間隙を埋める充填物として認められ る。 図 3.1-5 にはこれまで測定された岩石コアの 透水係数とオパール質チャート(HDB-9 孔)の 透水係数を有効応力との関係で示した。オパー ル質チャートは有効拘束圧が小さく、かつ分布 する深度が浅い(声問層と稚内層の境界)にも関 わらず透水係数が 10-12m/sec と小さく、同じ層 準の堆積岩と比べて 1~2 オーダー小さいこと がわかる。

(3) HDB-11 の特徴

HDB-11 は 幌 延 深 地 層 研 究 セ ン タ ー の 南 約 1km に掘削された長さ 1020m の鉛直孔である。 声問層から増幌層までを掘削する予定の長尺ボ ーリングであったが、稚内層と増幌層境界に認 められる砂質泥岩は確認されなかった。HDB-11 孔の詳細は石井ほか(2008)に詳しく紹介されて いる。石井ほか(2008)には地層は北‐西走行で、 北西に40 度傾斜していること、珪藻質泥岩(声 問層)と珪質泥岩(稚内層)の境界がGL-454m に あり、この上下100m で間隙率が 62%から 40% 前後まで減少していることが示されている。

(4) HDB-11 の調査結果

HDB-11 孔ではおよそ 10m 間隔で XRD、XRF 組成分析、間隙径分布を求めた。また深部の珪 質泥岩に対してFE-SEM 観察を行った。XRF で はノルム計算により鉱物の量比を求めるととも に、XRD のピーク比を用い、シリカ鉱物(オパ ールCT と石英)量比を見積もった。 地表から深さ 1020m の間で構成鉱物の量比 に違いは認められずほとんど同じであった。唯 一 シ リ カ 鉱 物 に 顕 著 な 変 化 が 認 め ら れ た ( 表 3.1-1)。図 3.1-6a にはシリカ鉱物(オパール A、 オパールCT、石英)の量比を示している。シリ カ鉱物は声問層がオパールA からなり、声問層 と稚内層の境界付近のGL-441.3m からオパール CT となっている。石英含有量は深度が増加し

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図 3.1-5 コア透水係数の分布 透水試験はコアを用い,それぞれの試料採取地点の深度に応じた 有効拘束圧で実施された。 オパール質チャートは有効拘束圧が小さいにもかかわらず,透水 係数が小さいことがわかる。 てもほとんど変わらない。図3.1-6b にはシリカ 鉱物の種類とクリストバライト(101)面の面間 隔(以下、d 値)の変化を示している。 オパール CT は声問層と稚内層の境界から深 部に向けて増加し、オパールCT の d 値は 4.12 ÅからGL-1020m に向けて 4.06Åまで減少して いる。声問層と稚内層の境界付近のオパールCT のd 値は 4.12Å~4.11Åを示すが、HDB-9 孔に 認められたような硬質なオパール質チャートは 認められない。 図 3.1-3 HDB-9 孔のオパール質チャートの間隙径分布 オパール質チャートは局所的に声問層と稚内層の境界では幅 10m で珪質岩の変化が認められる。 図 3.1-4 HDB-9 孔のオパール質チャート 深度 66m 付近にシリカ球状体が集合してオパ ール CT が形成されていた。バーは 10nm。

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図3.1-7 には深度 471.85m、750m、1000m で認 め ら れ た オ パ ー ル CT の 形 態 を 示 す 。 深 度 471.85m 付近では円盤状の珪藻の殻の中にフラ ンボイダルパイライト(黄鉄鉱)とともにシリカ 球状体が生成していることがわかる(図 3.1-7a)。 特に珪藻の殻の外の基質はシリカの球状体に充 填されている様子が認められる。深度 750m の オパール CT はこれとは異なり、シリカ球状体 が積み重なり厚さ 30nm の板(ブレード)状がカ ードハウス状に重なっていることがわかる(図 3.1-7b)。一方、深度 1000m ではオパール CT の ブレードは長柱状に変化しており(図 3.1-7c)、 カードハウス状のオパール CT は認められない。 図3.1-8 に間隙径分布を示す。オパール CT の 形態変化と概ね一致してオパール CT が生成す る深度450m 付近から 500m にかけて 0.1μm 前 後の間隙が急激に減少し、800m 付近から 0.01 μm の間隙が増加している。 表 3.1-1 HDB-11 の鉱物含有量(wt%) 図 3.1-6 HDB-11 孔でのシリカ鉱物の量比とオパール CT(101)の d 値の変化 オパール CT の d 値は深度の増加とともに小さくなる。

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図 3.1-7 HDB-11 孔でのシリカ鉱物形態変化 (a)シリカ球状体が珪藻化石、および周辺を充填している。(b)カードハウス状のオパール CT が 認められる。ブレードの厚さは約 30nm、(c)球状のオパール CT。ブレードの厚さは約 100nm まで増加。 図 3.1-8 HDB-11 孔での間隙径分布の変化 およそ 100m の幅で間隙径が急激に減少しており,溶液からのシリカが沈殿したこ とにより急激に間隙径が減少したと推察される。

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(5) 考察

HDB-9 孔、および HDB-11 孔の分析により声 問層と稚内層の境界部付近の鉱物学的変化と浅 所から深部までのシリカ鉱物の変化を明らかに した。HDB-9 孔では声問層/稚内層境界では球状 のシリカ粒子からなるオパール質チャートが生 成していた。このチャートは非常に硬質で透水 係数が小さく、間隙率、間隙径が非常に小さい。 鉱物学的にはオパール質チャートを占めるオパ ールCT の d 値は 4.12~4.11Åで大きく続成作 用の初期に認められるシリカ鉱物と考えられる。 HDB-11 孔ではこのオパール質チャートは認め られないにもかかわらず同様なd 値を示すオパ ールCT が認められ、SEM 観察からはシリカ球 状体も確認できた。 オパール質チャートから認められたシリカ球 状体は溶液から沈殿する場合に形成される。た とえば中田・千木良(1996)は珪藻土鉱山で貫入 岩近傍の軽石凝灰岩層の上下にやや離れてd 値 の大きい、球状のシリカを確認しており、水の 移動が認められる場合にこのようなシリカ鉱物 が形成されることを報告している。さらにd 値 が 4.053Åからは石英が増加し始め、オパール CT が減少することも示している。 シリカ鉱物の形態から声問層と稚内層の境界 では貫入岩周辺で認められたような溶液からの シリカ鉱物の沈殿が起こったと考えられ、水(熱 水鉱物が認められないことから温度の低い地下 水、間隙水などが主体と思われる)が移動しや すい箇所でこのようなオパール質チャートが形 成されたと推察する。また、間隙径が声問層と 稚内層の境界の稚内層の非常に狭い範囲で小さ くなることは、シリカに過飽和な溶液の供給量 はわずかであったことを示すと考えられる。 地下施設の安全性においては、このような緻 密な層は遮水壁となることが期待できる。しか しながら現状ではシリカ球状体で充填されたオ パール質チャートの側方への分布が連続的なも のか、局所的なものかは不明であり、今後調査 が必要と思われる。

(6) まとめ

・ノルム計算および、XRD の強度比から声問層 の珪藻質泥岩と稚内層の鉱物構成比はシリカ鉱 物を除きほとんど変わらないことが明らかにな った。 ・シリカ鉱物は声問層と稚内層の境界でオパー ルA からオパール CT へと移り変わり、オパー ルCT の量が増加する傾向が認められた。 ・HDB-11 孔では深度 1000m 付近でも石英が増 加する傾向は認められない。しかしながらオパ ール CT の d 値は 4.06Åを示しており、深度 1000m 付近は、おおむね石英が生成し始める深 度に近いと考えられた。 ・声問層と稚内層の境界ではシリカ球状体から なるオパール CT が間隙を充填していた。同様 なシリカ球状体は溶液が移動する場で溶液から 沈殿して形成されることが多く、シリカ鉱物が 生成した時期には、声問層/稚内層境界付近に水 が移動し易い場が形成されていたと推定される。 ・オパール質チャートの透水係数は同深度の珪 質堆積岩と比べて2 オーダー程度小さく、現在 は地下で遮水壁となっていると推定される。こ のチャートの側方への連続性は確認されていな いが、溶液から沈殿したシリカ球状体はオパー ル質チャートが認められないHDB-11 孔でも認 められることから、シリカ鉱物生成時には広範 囲で地下水、間隙水の移動が生じていたと推定 する。

3.1.3 声問層の急速スレーキング特性

幌延深地層研究計画では立坑や水平坑道の掘 削が予定されている。このため坑道周辺で起こ る現象のナチュラルアナログとして声問層の急 速スレーキング特性に関する調査を露頭表面で 行った。図 3.2-2 に今回の調査で用いた試料の 採取位置を、図 3.1-9 に露頭状況を示す。試料

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採取は問寒別の道路切取り斜面である。露頭に は声問層が露出しており、表面が黄色(ジャロサ イト;硫酸鉄鉱物)に変色していることがわかる。 試料は表層から深部に向けて 20cm 前後の間か ら採取した。試料の採取は2007 年 9 月におこな った。試料は採取後の乾燥を防ぐために密封容 器に入れ、保管したものを分析に用いた。

(1) 調査結果

図 3.1-10a には自然含水率の変化を示してい る。さらに図3.1-10b,c に未乾燥の岩石片を超純 水に浸水させたときの溶液の組成を示す。この 組成は自然含水量に換算しており、浸水による 岩石、鉱物の溶解が無いと仮定すると試料採取 時の含水状態における間隙水の組成を示してい る。ここでは間隙水の組成を求めた結果のうち、 硫酸イオンと溶液の pH の分布を示す。切取り 斜面極表面の試料は乾燥しており、深部に向け 間隙に占める水の割合(飽和度)が増加している ことがわかる。また表面には硫酸イオンが濃集 していること、希釈溶液(岩石2g:超純水 50ml) に浸水させた場合でもpH は 2~3 まで低下する ことがわかる。 図3.1-11 は急速スレーキング試験の結果を示 している。図は試料を乾燥させた後に蒸留水に 浸水させたときの形態変化を示している。すべ ての試料で急速スレーキングは認められなかっ た。表面から深度 20cm の間で最も顕著な変化 が認められた調査項目は浸水させた溶液の組成 であった。図から表層に元素が濃集しているこ とがわかる。

(2) 考察

露頭で採取した声問層の珪藻質泥岩を用いて 急速スレーキング試験を実施した。この結果、 声問層の岩石は乾燥後の浸水では形態変化を起 こさないことが明らかになった。表層において 顕著な変化が認められた項目は間隙水の組成で あり、間隙水の組成からPHREEQC を用い間隙 水のpH を想定した結果を図 3.1-12 に示す。露 頭では実際に表面でジャロサイトが生成してお り、解析は坑壁表面の間隙水だけをジャロサイ ト に 飽 和 さ せ 、Fe3+の 濃 度 を 0.1ppm か ら 1000ppm まで変化させ、他の溶液はそのままの 組成を用いた場合の pH の変化を示した(TIC は350ppm)。図は溶液中の Fe3+濃度が上昇する と表層で pH が減少する傾向を示している。表 3.1-1 に示したように珪藻質泥岩には黄鉄鉱が 約2.7wt%含まれる。 黄鉄鉱が酸化するとこれにより形成される硫 酸イオンは間隙水のpH を 1.5 付近まで低下させ ると予想される(浸漬させる溶液が蒸留水の場 合)。坑壁では通気や高温下で酸化した間隙水が 蒸発し、坑壁周辺に鉄イオンや硫酸イオンが吸 い上げられる。これにより露頭で認められたよ うに、Fe3+イオンが表層に移動しトンネル坑壁 にもジャロサイトが晶出すると予想される。ジ ャロサイトなどの鉱物が沈殿しない不飽和溶液、 あるいはジャロサイトが析出してもさらに表層 での蒸発作用により、溶液中のFe3+、SO 42-濃度 が高く保たれる場合には、坑壁周辺の間隙中の pH は非常に低い状態となる。一方、ジャロサイ トが析出し溶液中のFe3+、SO 42-が消費されるな らば(蒸発等による元素の吸い上げが少ない場 合)、間隙水のpH は中性~アルカリ性になると 予想される。 露頭において乾燥により含水飽和度が低下し た岩石から間隙水を抽出することは現段階では 不可能であり、岩石を蒸留水に浸漬させる方法 では実際の間隙水の pH と隔たりが大きい。し かしながら露頭表面で認められたように坑内の 岩盤が露出する坑壁では乾燥により元素の吸い 上げが発生し、これにより表層には多くの元素 が濃集すると予想される。表層において硫化鉄 鉱物が酸化すると硫酸イオンが形成される。こ の硫酸イオンは鉄とともに露頭表面まで吸い上 げられ、ジャロサイトとして晶出する。このよ うな場合、坑壁周辺の pH は増加する方向へ向

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図 3.1-9 問寒別の林道の裏面に掘削されえた声問層露頭

表面のみが黄色化したジャロサイト;KFe3(SO4)2(OH)6が生成している。

左は急速スレーキング試験用の試料採取位置を示す。 図 3.1-10 露頭表面の含水状態とイオン,pH の分布 (a)前日に小雨にもかかわらず,表面が乾燥している。 (b)SO42-の分布。岩石(粉)約 2g に対して超純水を 50ml 入れ,放置後の組成。 露頭表面にイオンが濃集していることがわかる。 (c)pH の分布。希釈した溶液中でも pH が 3 前後と小さいことがわかる。

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かうと推察する。

(3) まとめ

・声問層の珪藻質泥岩では急速スレーキングは 認められない。 ・露頭表面には乾燥により硫酸イオンが表面に 吸い上げられ濃集している。坑内坑道壁面でも 乾燥が進めば、露頭と同じイオンの濃集が起こ ると推察する。 ・間隙水の pH は鉄イオンが吸い上げられるこ とで低下すると推察される。これは、黄鉄鉱の 酸化などにより鉄イオンが供給されるためであ り、他方、坑壁表面でジャロサイトなどの鉱物 が析出し、Fe3+やSO42-が消費されるとpH は増 加すると考えられる。露出する岩石中の間隙水 の pH を中性~アルカリ性まで増加させるため には、鉱物の析出を促し、かつ元素の濃集が遅 い、すなわち透水性が小さく、EdZ 分布域が小 さい施工が望ましいと推察する。

3.1.4 東立坑-140m 坑内での EdZ 調査

地表からの調査に加え、平成20 年度 12 月か らは実際に東立坑 GL.-140m(第 2 ボーリング 横坑)でEdZ に関する調査を開始した。図 3.1-13 に調査地点のレイアウトを示す。 本章での報告は坑内で声問層をほぼ水平に ボーリングした場合に、良好なコアを得るため の条件の把握を主体とし、これらの掘削で用い た孔の状況と、コアを利用した割れ目調査、物 理探査、採水・採ガスの状況を報告する。 なお、東立坑は発破掘削を行っているが、第 2 ボーリング横坑付近の声問層は一軸圧縮強度 が約5MPa であり、ボーリング孔口付近の坑道 は重機のみで掘削が行われた。

(1)調査内容

調査は東立坑-140mから換気立坑に向かって 北西に6m進んだ 140m東側調査坑道から右に 4 m掘削された140m東側第 2 ボーリング横坑(以 下;第2 ボーリング横坑)で実施した。本調査 で実施したボーリング掘削は 11 孔である。 図 3.1-12 ジャイロサイト晶出による pH の変化 珪藻質泥岩(声問層)では間隙水中の Fe3+が少ない場合, pH が増加する。これはジャイロサイトなど鉄鉱物が晶出するためと考えら れる。他方,間隙水中に Fe3+が多く存在する状況では pH は減少すると考え られる。ジャイロサイトが晶出すれば間隙水中の Fe3+が低下し,pH は上昇 すると推察できる。 図 3.1-11 急速スレーキング試験結果 声問層では急速スレーキングは生じない。 番号は図 3.1-9 の番号に対応。

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図 3.1-13 深地層研究センターGL-140m 付近の レイアウトと今回調査を実施した東立坑第 2 ボーリング座 上:GL-140m の水平断面図、下:東立坑調査地点の鉛直断面 ボーリング孔の間隔は割れ目の連続性の検討の ために 0.45m から 0.9m とした。またコアビッ トの直径は46、66、86mm 用のものを用い、コ アパックチューブ付きのダブルコアチューブで コア採取をおこなった。小さな径で掘削した孔 に対しては、86mm に拡孔を行い、最終的な孔 の直径は全孔 86mm とした。表 3.1.2 に各孔の 掘削長を示す。採取したコアは乾燥しないよう にコア箱内にビニールを被せ、JAEA のコア倉 庫で保管、観察をおこなった。 ボーリング機材2 機の搬入は 12 月 2 日の午前 (8 時~12 時)にキブル(昇降機)で行い,装 置を設置したのち、掘削は平成18 年 12 月 3 日 から16 日で実施した。搬出は 12 月 17 日の午前 に搬入と同様にキブルにて行った。立坑-140m までの搬入、搬出に時間を要さないこと、概ね 1 日 1 孔の水平掘削が行われていることがわか る。

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(2)ボーリングレイアウト

図 3.1.14 に 掘 削 孔 の レ イ ア ウ ト を 示 す 。 M1-M8 孔は東立坑から換気立坑に向け、140m 東側調査坑道に平行に真北から西に 30°の角度、 水平から上向き+2°の傾斜で掘削した。ボーリ ング実施時にはまだ 140m東側調査坑道は掘削 されていない。 坑道には支保工に 15cm メッシュの鋼線と約 1m 間隔で H 形鋼とロックボルトが施工され、 さらに吹きつけコンクリートが施工されている。 図 3.1-14 ボーリング孔レイアウト(東立坑 GL-140m)

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掘削孔の孔口は坑道の安定性に影響ない範囲で 孔口付近の鋼線を事前に撤去した。 掘削孔のうちM1-M3 孔は孔内載荷試験用に掘 削したもので、坑道底盤から高さ0.7m に配置し た。一方、M4-M8 孔は物理探査を主たる目的に 掘削したもので、底盤から高さ1.5m に配置した (図3.1-15a)。M9 孔はボーリング横坑の軸上に 切羽から掘削した2 孔からなる。M9-1 孔は底盤 から高さ 2m で水平から上向き+8°、長さ約 2m で実施し、坑壁直近の地下水を採取した。M9-2 孔は高さ1.5m から上向き+10°、長さ約 8m で掘 削した。この 2 孔には水で膨張させるインフレ ータブルシングルパッカーを設置し、採水・採 ガス用のバルブを設置し、間隙水圧測定用の圧 力センサーを設置した(図 3.1-15b)。M10 孔は 立坑周辺での物質移行を調査するために東立坑 に第 2 ボーリング横坑から東立坑に向かって掘 削を行った(図3.1-15c)。具体的には東立坑のコ ンクリート内壁から2m を通過するように、水平 から上向き+2°で、南から東へ 40°(坑道軸と直 交する軸から 10°東)の方向へ掘削を行った。 M10 孔(長さ 11m)には孔口から 30cm(内吹き つけコンクリート厚さ20cm)、2-3m、6-7m の 3 箇所にパッカーを設置した。

(3)ボーリング機器

坑内のメタン濃度は 1.5%に達すると通電が 自動で中止される。今回のボーリング掘削はメ タンガス湧出下での作業をともなうため炭鉱仕 様の機器で実施した。今回の作業で用いた装置 は釧路コールマイン(株)が通常坑内で使用して いるPPN-2(エアー駆動式)と,当所が所有す る FT-1A(油圧式:鉱研工業製)の油圧モータ ーを炭鉱が所有する本質安全防爆のモーターに 変更した2 機とした。ともに防爆仕様である(図 3.1-16)。 実際にメタンガス濃度は掘削直後のM6 孔孔 底(6.5m:上向き+2°)において孔口を一昼夜開 放させた場合で 10%、毎分 7L の空気を循環さ せた場合でも 2%以上を示した。

(4)地質・地下水状況

東立坑 GL-140m 付近は珪藻質泥岩からなる 声問層が分布している。声問層/稚内層の境界は 立坑掘削前の先行ボーリングの結果から 240m 付近と予想されている。 ボーリングにより採取したコアから判断さ れる地質状況は以下のとおりである。 ・ 吹き付けコンクリートの厚さは 20-30cm あ り、岩盤とコンクリートの境界部は密着し ている。 ・ 岩盤は均質な珪藻質泥岩からなり、所々で やや白味を帯びた石灰質(本掘削では最大 10cm)のマールが認められる。 ・ 潜在的な割れ目が多く、コアチューブから コアを取り出すときにコアが割れる。 ・ 1cm 前後の大きさに小片化する箇所がゾー ンとして認められる。小片化したゾーンで は粘土化は認められない。 ・ 生痕が多い。 ・ 幅1mm-2cm の黒い筋が認められ、生痕のズ レから 2cm 程度の変位が認められる(図 3.1-17a)。黒い筋(黒色脈)は珪藻質泥岩コ ア表面に明瞭な線として認められ、層理面 と交差し、コア周に連続的に完全に密着し た面として存在する。 ・ 黒色脈の中には亜円礫状の同質礫が取り込 まれ、声問層の堅岩部と明瞭な境界で接し ている(図3.1-17b)。 ・ 黒い筋を切る変位を伴う小断層が認められ る。小断層は所々僅かに開口しているもの のおおむね密着している(図3.1-17c)。 ・ 多くの割れ目(NE-SW 系)と異なる N70W 方向の割れ目が M5,M7 孔で坑壁から 0.1m のふき付けコンクリート極近傍のみで認め られる。 ・ 地下水は掘削直後のM1-M3 孔、M5-M7 孔で 滴水程度湧出した。同様にM9 孔、M10 孔か

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図 3.1-16 防爆ボーリングマシン(FT-1A:手前、PPN-2:奥) 高さ 0.4m から 2.5m までの間で水平掘削が可能 らも地下水が湧出した。ただし東立坑から 1.58m を通過する M10 孔の最深部のパッカ ー区間からは地下水が湧出せず、間隙水圧 も坑内の気圧相当(大気圧)であった。 これらの結果から、黒色脈(断層)活動時期 は声問層が固結したものの、固結度が小さい時 期と推察され、狭在物(粘土鉱物)などが無い ことから一度の活動であったと考えられる。 図3.1-18 にはこれらの割れ目を同一水平断面 に表示させたものを示す(中田・杉田、2009)。 割れ目は BTV 観察により孔の壁面全周で確認 されたもの(図中赤色)、孔の壁面において周の 半分程度を占めるとともにその延長上にほかに 1、2 点の不明瞭な線や点が認められたもの(図 中灰色)から抽出した。図中の線は隣り合う 2 つ以上のボーリング孔を通過し、走向傾斜が同 じ割れ目を示しており、同一の連続する割れ目 と考えられるものを示している。これらの割れ 目は主に NE-SW 走向、N 傾斜からなり、層理 面と斜交している。孔口から 2-3m、4-5m にこ れらの割れ目が密集する割れ目ゾーンが認めら れ、一割れ目ごとの連続性は乏しいことがわか る。一方、不明瞭な割れ目(図中灰色)は層理 面に沿う緩傾斜の連続性の乏しい割れ目からな り、孔口から 3-6m 付近に多く分布している。 坑道の坑壁観察では、粘土をともない他の坑道 坑壁と連続する断層は認められていない。ボー リング箇所周辺の声問層は、均一で構造運動の 影響が認められず、割れ目が密集するゾーンが 数m 以上の間隔で分布する。

(5)ガス組成

地下水の湧出が少ない(岩盤の透水性が小さ い)岩盤では掘削により坑壁から周辺岩盤に向 い大気が混入することや、岩盤に吸着、あるい は間隙水中に溶解しているガス成分が減少して いると考えられる。堆積岩はメタンや二酸化炭 素からなるガスを含むことが多く、炭素安定同 位体比を天然トレーサーとしてEdZ の分布や物 質移行の可能性を知ることができる(中田・メ ーダー、2008)。 このため湧出ガスの採取を経時的に実施した。 表3.1-3 に M9-2 孔において水上置換で採取し た湧出ガスとコアから抽出したガスの組成と同 位体比(以下、δCPDB)を示す(中田・杉田、2009)。 コアガスは掘削直後の 30 分以内にコアをヘ リウムガス雰囲気下で SUS 容器に封入したも のである。この方法は掘削泥水に含まれるカッ ティングスを採取する方法(早稲田・岩野、2007)

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図 3.1-17 コアで確認された小断層 と比べ大気、掘削水の影響を受けない試料が得 られる。表に示すように湧出ガス組成はメタン (C1)、エタン(C2)と二酸化炭素、若干の酸素、 窒素からなり、メタン濃度が90vol%(24℃)と 非常に高濃度であること、他の炭化水素ガスは 検出限界以下であることがわかる。深地層セン ター140m 付近の声問層に含まれる δ13C 1PDBは -50~-55‰、δ13C2は δ13C1よりわずかに小さ いまた δ13C CO2 は+10‰前後の正の値を示す ことを特徴とする。コアガスと湧出ガスの炭素 同位体比とガス濃度比はおおむね同じ値を示し ていることから、遊離ガスはコア中に同一組成 で均一に含まれていると考えられる。

(6)まとめ

・東立坑周辺での割れ目の走向は北東-南西、西 に40°以上傾斜したものが多い。 ・黒色脈を伴う小断層が認められる。また黒色 脈を切る小断層も認められる。 ・東立坑GL-140m 付近の声問層に重機により、 高さ 2.8m の水平坑道を展開した場合、EDZ と思われる割れ目は坑道から 0.1m 程度に形 成されると推察する。 ・地下水の湧出量は少ないものの高濃度のメタ ン ガ ス は 孔 内 か ら 連 続 し て 湧 出 し て お り 、 EdZ ではガスの移動が著しいと考えられる。 ・東立坑では地下水が湧出しない掘削影響領域 (EdZ)が立坑坑壁から巾 1.5m 以上分布して いると考えられる。

3.1.5 今後の課題と展開

オパール質チャートの成因、メタンや二酸化 炭素ガスの成因を議論し、この地域の地史とむ すび付ける。また今後掘進が行われる稚内層に おいても急速スレーキング特性に関しての調査 を実施する。東立坑-140m では坑道、立坑近傍 の地質、ガス、地下水組成の変化を継続調査し EdZ での炭素や他の元素の移動を明らかにする とともに、-250m、-400m など深部で展開される 坑道周辺においても同様な調査を行い、比較デ ータを得る。

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図 3.1-18 底盤から高さ 1.5m レベルでの割れ目の方向と傾斜(水平断面図)

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表 3.1-2 ボーリング孔の仕様 表 3.1-3 M9-2 孔掘削直後の湧出ガスとコアガスの組成と同位体比組成

3.2 岩石の化学的風化・変質特性に関

する検討

3.2.1 目的

地下環境で還元状態にあった岩石が、坑道掘 削などにより大気に触れると急激に酸化するこ とがある。岩石の酸化は岩盤を急速に劣化させ る恐れがあるため、地下空洞掘削の際には事前 に岩石の風化・変質様式を把握しておく必要が ある(Chigira and Oyama,1999, 大山ほか、2000)。 岩石の風化・変質様式やその経時変化および影 響範囲を把握するためには、天然に生じている 現象を詳細に観察・検討することが有効である と考えられる。また、深部地下環境は、地表や 断層等の水みちからの天水の侵入により地質環 境が変化することがある。本節では、新第三紀 の堆積軟岩である声問層の珪藻質泥岩について、 その風化・変質様式とその進行状態を把握する ために、(1)地表露頭で確認した岩石の酸化フロ ントの調査と、(2)東立坑掘削により発生した岩 石試料を利用した地表からの天水・酸素の侵入 による深部地質への影響調査の結果を報告する。 図3.2-1に、本調査の概念図を示す。

3.2.2 地表付近における珪藻質泥岩の

酸化現象の調査

(1)調査地点(問寒別露頭)の概要

調査対象とした露頭(図 3.2-2)は道路の法面 に声問層の珪藻質泥岩とそれを覆う礫層が露出 している。声問層の上位の礫層は、氷河の浸食 作用により礫状に破砕された声問層起源の礫と 基質からなる角礫層(ソリフラクション)と考え られる。この露頭では、①地表からの酸化、② 道路の切取り斜面からの酸化、③割れ目からの 酸 化 の 3 種 の 褐 色 化 ゾ ー ン が 確 認 で き る ( 図 3.2-3)。これら酸化部について岩石を採取し、 元素分析(XRF)、鉱物分析(XRD)、リーチング試 験等を実施した。なお、地表面からと割れ目周 辺からの酸化は最終氷期以降(約2 万年以降)か らの影響を、切取り斜面からの酸化は約100 年 程度(林道を整備した時期)からの影響を受けた と考えられるが、実際に酸化の進行が始まった 時期は明らかではない。 図 3.2-4 に、代表的な声問層の顕微鏡写真を 示す(HDB-6 孔、GL-102.72~102.89m から採取)。 声問層は新第三紀中新世の海成の堆積軟岩であ り、珪藻化石に富む比較的塊状の珪藻質泥岩か

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図 3.2-1 岩石の酸化の概念

図 3.2-2 調査地点.地形図は,国土地理院発行 1/2.5 万地形図, 安牛,雄信内,上問寒別,問寒別を使用.

露頭位置

(29)

図 3.2-3 露頭状況 図 3.2-4 声問層珪藻質泥岩の薄片写真.単ポーラー.スケールバーは 0.2mm. 切り割り面からの風化(100年) 地表からの風化(2万年) 割れ目周辺の風化 表面にはジャロサイト が晶出

B

A

C

B

C

A

礫層

声問層

割れ目

声問層

(30)

らなる。構成鉱物は、少量の石英、斜長石など 主要造岩鉱物の砕屑粒子と珪藻化石の他には、 極細粒な基質により構成されており、粘土鉱物 や炭酸塩鉱物には乏しいといった特徴がある。 間隙率は、50~70%程度と高く、図 3.2-3 に示し た珪藻質泥岩の間隙率(絶対間隙率)は62.3vol% である。珪藻化石の中にはフランボイダル状黄 鉄鉱を含むことがあり、空洞掘削に伴う酸化に より酸性水の発生が予想される岩石である。新 鮮部では灰色を呈し、酸化の影響を受けた部分 は主に淡褐色から濃褐色を呈する(図3.2-3)。声 問層の露頭表層にはジャロサイトが晶出してお り、表面は黄色を呈する。

(2)結果と考察(地表付近の酸化)

1)地表からの酸化(図3.2-3A)

採取した珪藻質泥岩は、礫層下底から約22cm が褐色化している。地表側の2/3には、礫層との 境界面に平行に褐色の濃淡で認識される縞模様 が発達しており、上位から0~5cmは淡褐色、5 ~15cmほどは赤褐色、15~22cmはやや淡い褐色 を呈する。褐色部と灰色部と境は、比較的明瞭 である。 分析結果のうち代表的なものを図3.2-5Aに示 す。図中の鉱物分析の結果は、各鉱物のピーク 強度からバックグラウンドの値を差し引いたネ ット強度(カウント/秒)である。リーチング試験 は、岩石:蒸留水=1:10で混合、振とうした後、 溶液を分析に使用した。 分析結果から、0~9cmを酸化帯1、9~15cm を酸化帯2、15~22cmを酸化帯3、22cm以深を溶 解帯とした。これらの境界は上述した色調の変 化に対応する。間隙率は酸化帯の中では酸化帯1 でやや増加するが、溶解帯と比較すると明瞭な 差異はない。硬さの指標となる針貫入強度は、 酸化帯1では若干低下し、酸化帯2でやや高い値 を示す。鉱物分析の結果で最も明瞭な変化が認 められたのは黄鉄鉱であり、溶解帯に入ると急 激に増加する。酸化帯1と2では、雲母のピーク 強度が低下し、スメクタイトの強度が上昇する。 化学分析の結果、硫黄(S)の濃度は、黄鉄鉱のピ ーク強度に対応し、酸化帯3の下位でわずかに増 加し、溶解帯に入ると、急激に濃度を増す。全 鉄(Fe2O3換算)は酸化帯の褐色の濃いところで 増加し。溶解帯ではほぼ一定の値を示す。リー チング試験(岩石:蒸留水=1:10)による溶出液 のpHは、酸化帯2で低下し、溶解帯ではpH=3~4 の酸性を示す。硫酸イオン(SO42-)濃度は酸化帯2 から溶解帯に向かい漸移的に増加する。塩化物 イオン濃度(Cl-)は全体に6mg/以下と乏しく、天 水に置換されている。

2)道路切取り面からの酸化(図3.2-3B)

調査した試料は切取り面から約13cmまでが 褐色化している。地表面からの風化の試料と比 較すると褐色バンドは不明瞭であるが、同様に 中心付近の褐色化が濃くなっている。①の試料 に認められた淡褐色を示す酸化帯1の幅は狭い。 図3.2-5Bに主な分析結果を示す。分析結果は地 表面からの風化とほぼ同様であるが、全鉄と硫 黄の濃度、黄鉄鉱のピーク強度を除くと、酸化 帯と溶解帯で明瞭な変化は認められない。針貫 入強度も酸化帯2において、高い値を示さない。

3)割れ目からの酸化(図3.2-3C)

調査の対象とした割れ目は、声問層の地表面 側から深部に向かって斜めに発達するほぼ単一 の直線的な割れ目である。割れ目の周辺には、 この割れ目にほぼ平行に褐色化帯が数cmの幅 で分布している。この褐色化部を詳細に観察す ると、割れ目の表面には褐鉄鉱と思われる濃褐 色の鉱物が付着し、その周辺から岩石の内側に 向かって、赤褐色部、白色バンド、明褐色部が 帯状に分布する。露頭下部(図3.2-3左下)で割れ 目の連続は途絶え、周辺の褐色化部も下端ほど その分布幅は狭くなり端部では1cmほどになる。 本露頭では、褐色帯の進行は割れ目の上下でそ の幅の広さに傾向は認められない。この割れ目 の形成時期、酸化の開始時期は不明である。

(31)

図3.2-5 分析結果:地表(A)および道路切割り(B)からの酸化. 図3.2-6 分析結果:割れ目からの酸化. 主な分析結果を図3.2-6に示す。割れ目周辺の 酸化では、①②の酸化帯2、酸化帯3、溶解帯に 区分された。酸化帯2は赤褐色部、酸化帯3は明 褐色部がそれぞれ相当し、白色バンドは①②の 試料の縞模様の明褐色部に相当するものとして、 酸化帯2に含めた。褐色化した酸化帯2と酸化帯3 は非晶質鉄鉱物の間隙への沈殿と膠結作用によ り、間隙率は低下し、針貫入強度が増加している。 (B)切取り斜面からの 酸化 溶解帯 酸化帯 1 酸化 帯2 酸化帯 3 赤褐色(縞模 様) 褐 色 灰色 淡褐色(縞模様) 風化の進 行 赤褐色(縞模様) 褐色 灰色 明褐色(縞模様) (A)地表からの酸化 溶解帯 酸化帯 1 酸化 帯2 酸化帯 3 (B)切取り斜面からの 酸化 溶解帯 酸化帯 1 酸化 帯2 酸化帯 3 赤褐色(縞模 様) 褐 色 灰色 淡褐色(縞模様) 風化の進 行 赤褐色(縞模様) 褐色 灰色 明褐色(縞模様) (A)地表からの酸化 溶解帯 酸化帯 1 酸化 帯2 酸化帯 3 酸化帯3 溶解帯 白色バンド 風化の進行 酸化帯2 風化の進行 溶解帯 酸化帯2 酸化帯3 酸化帯3 溶解帯 酸化帯2 溶解帯 酸化帯2 酸化帯3 酸化帯3 溶解帯 白色バンド 風化の進行 酸化帯2 風化の進行 溶解帯 酸化帯2 酸化帯3 酸化帯3 溶解帯 酸化帯2 溶解帯 酸化帯2 酸化帯3

(32)

酸化帯2、酸化帯3には全鉄とリン(P2O5)が濃集す る。白色バンドおよびその周りは、全鉄、リン、 マンガンの濃度が周辺と比較して低下する。鉱物 分析の結果、酸化帯では粘土鉱物のピーク強度が 高くなり、逆に黄鉄鉱は溶解帯に入ると急激にピ ーク強度が増加する。その他の主要な鉱物のピー クは酸化帯2で軒並み強度が低下し、酸化帯から 溶解帯は漸移的である。白色バンドでは、黄鉄鉱 のピーク強度が、酸化帯の中では高く、元素分析 では確認できていないが、 黄鉄鉱は全ては溶解 しておらず残留していると考えられる。 これらの結果から、声問層珪藻質泥岩の地表 付近での酸化は酸化帯(酸化帯1、 酸化帯2、 酸 化帯3)、溶解帯に区分された。図3.2-7に各分帯 の特徴を示す。酸化帯ではFe(非晶質鉄鉱物)の 濃集が顕著であり、Pの濃集も認められた。濃 褐色部では粘土鉱物の若干の増加も認められた。 一方で、黄鉄鉱はほぼ消失しておりSにも乏し い。溶解帯に入るとFeの濃集は認められず、黄 鉄鉱とSも残留している。この結果は、珪藻質 泥岩の風化は、地表からの天水や大気の侵入、 黄鉄鉱の酸化による酸性水の発生、鉱物の溶解 と岩石内部への酸化の進行という様式であると 考えられる(図3.2-8)。

3.2.3 地下浅部~深部(GL-140m)にお

ける珪藻質泥岩および間隙水質

の調査

(1)調査地点(東立坑)の概要

本調査では、幌延深地層研究センター東立坑 掘削により発生した岩石ブロック(掘削ズリ)に 対して、岩石の元素分析、鉱物分析および岩石 から圧縮抽水した間隙水の水質分析等を実施し、 地表から地下深部への天水の侵入状況、天水の侵 入に伴う岩石の風化・変質状況を調査した(図3.2-9)。 図 3.2-10 に、東立坑の GL-140m までの柱状 図 3.2-7 風化帯の区分と特徴 酸化帯 表層 酸化帯1 (表層からの 風化のみ) 酸化帯2 酸化帯3 黄鉄鉱 (FeS2) スメク タイト 酸素の進 入 Fe P 酸素を含 む地下 水 Cl (間隙水) SO4 (間隙水) 酸素 を消 費 し た 地 下水 S 主要 造岩鉱物 O2 間隙水は 天水で 置 換 酸化フロント 溶解フロント 新鮮部 (還元帯) Fe P 地表からの風化 割れ目周辺の風化 溶解帯 溶解 酸化帯 表層 酸化帯1 (表層からの 風化のみ) 酸化帯2 酸化帯3 黄鉄鉱 (FeS2) スメク タイト 酸素の進 入 Fe P 酸素を含 む地下 水 Cl (間隙水) SO4 (間隙水) 酸素 を消 費 し た 地 下水 S 主要 造岩鉱物 O2 間隙水は 天水で 置 換 酸化フロント 溶解フロント 新鮮部 (還元帯) Fe P 地表からの風化 割れ目周辺の風化 溶解帯 溶解

(33)

図 3.2-8 地表付近での風化の進行の概念. 酸化フロントで生じた鉄イオンは,間隙水が酸性の領域では溶存するが、 中性領域で沈澱し酸化フロントから離れたところに濃集ゾーンを形成する。 図 3.2-9 幌延深地層研究所のレイアウトイメージと本調査の調査箇所. 層序表は石井ほか(2006)を改変. 図を示す。GL-5m 以浅には盛土と腐植土、GL-5 ~-10m 程 度 ま で が 礫 、 砂 、 泥 か ら な る 層 、 GL-10m~-19.3m は角礫層が、そして GL-19.3m 以深に声問層の珪藻質泥岩が分布する。角礫層 は下位の声問層の珪藻質泥岩が角礫化したソリ フラクションと考えられる。この角礫層は、 GL-15m 付近以浅は基質支持であり、GL-15m 以 深は礫支持である。東立坑の掘削深度は 2009 Fe (C)割れ目周辺 (B)切り割り面 (A)地表面から 岩石表層 岩石内部 FeS2 O2 O2 O2 O2 風化開始 Fe Fe Fe 酸化帯1 酸化帯2 酸化帯3 溶解帯 酸化帯2 酸化帯3 溶解帯 酸化帯1 酸化帯2 酸化帯3 溶解帯 酸化帯2 間隙水pH

FeS2 FeS2 FeS2

Fe沈殿 Fe溶解 移動 Fe (C)割れ目周辺 (B)切り割り面 (A)地表面から 岩石表層 岩石内部 FeS2 O2 O2 O2 O2 風化開始 Fe Fe Fe 酸化帯1 酸化帯2 酸化帯3 溶解帯 酸化帯2 酸化帯3 溶解帯 酸化帯1 酸化帯2 酸化帯3 溶解帯 酸化帯2 間隙水pH

FeS2 FeS2 FeS2

Fe沈殿 Fe溶解 移動

岩相

時代

更別層

勇知層

稚内層

増幌層

地層

硬質頁岩

(珪質頁岩)

細-中粒砂岩

礫岩,砂岩,泥岩

スランプ層を伴う

礫岩,砂岩,泥岩

炭層を伴う

更新世

鮮新世

中新世

声問層

東立坑

調査範囲

珪藻質泥岩

岩相

時代

更別層

勇知層

稚内層

増幌層

地層

硬質頁岩

(珪質頁岩)

細-中粒砂岩

礫岩,砂岩,泥岩

スランプ層を伴う

礫岩,砂岩,泥岩

炭層を伴う

更新世

鮮新世

中新世

声問層

東立坑

調査範囲

珪藻質泥岩

図 1-1  高レベル放射性廃棄物処分地層処分計画での、幌延サイトでの共同研究開発の位置づけ 調査段階概要調査詳細調査幌延サイトでの研究・調査項目H14年度~・ボーリング調査コントロールボーリング・堆積岩の性質とその変化続成作用、スレーキング、化学的風化・物理探査技術・微生物影響・地下水年代測定間隙水抽出H20年度~・坑道を利用した岩盤の調査評価項目・地質環境長期変動・地質構造・地質・地化学環境・地下水流動・物質移動特性・岩盤力学・熱特性・岩盤応力・地下施設建設影響評価本報告書の範囲鉱物組成 物性値水質透水
表 2-1  役割分担  原子力機構 電中研 ①堆積岩の続成作用と急速スレーキング(浸水崩壊)に関する検討 ・コア試料採取(層序区分を考慮) ・鉱物化学分析、室内試験(X線回折、密度、間隙径分、SEM観察) ・ボーリング孔掘削 ・坑内調査 ・続成作用と浸水崩壊に関する検討 ○○ ○○○ ②岩石の化学的風化特性に関する検討 ・露頭および坑壁観察 ・試料採取 ・鉱物化学分析、室内試験 ・風化の評価 ○○○ ○○○ ③コア間隙水の抽出法に関する検討 ・ コア試料採取 ・ 間隙水の抽出方法の検討及び抽出(2方法)
図 3.1-5  コア透水係数の分布  透水試験はコアを用い,それぞれの試料採取地点の深度に応じた 有効拘束圧で実施された。  オパール質チャートは有効拘束圧が小さいにもかかわらず,透水 係数が小さいことがわかる。  てもほとんど変わらない。図 3.1-6b にはシリカ 鉱物の種類とクリストバライト (101) 面の面間 隔(以下、d 値)の変化を示している。    オパール CT は声問層と稚内層の境界から深 部に向けて増加し、オパール CT の d 値は 4.12 Åから GL-1020m に向けて 4
図 3.1-7 には深度 471.85m、750m、1000m で認 め ら れ た オ パ ー ル CT の 形 態 を 示 す 。 深 度 471.85m 付近では円盤状の珪藻の殻の中にフラ ンボイダルパイライト(黄鉄鉱)とともにシリカ 球状体が生成していることがわかる(図 3.1-7a )。 特に珪藻の殻の外の基質はシリカの球状体に充 填されている様子が認められる。深度 750m の オパール CT はこれとは異なり、シリカ球状体 が積み重なり厚さ 30nm の板(ブレード)状がカ ードハウス状に重な
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参照

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