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船体上部構造の防振設計のための全船振動応答解析 に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

船体上部構造の防振設計のための全船振動応答解析 に関する研究

高橋, 弘行

https://doi.org/10.15017/1441215

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

船体上部構造の防振設計のための 全船振動応答解析に関する研究

平成26年3月

高橋 弘行

(3)

i

船体上部構造の防振設計のための全船振動応答解析に関する研究

目次

第1章 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -1- 第2章 上部構造の防振設計の現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・ -4- 2.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -4- 2.2 上部構造の機能的要件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -4- 2.3 上部構造の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -6- 2.4 上部構造の設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -7- 2.5 全船振動応答解析の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・ -8- 2.6 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -8- 第3章 全船モデルのモデル化検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -9- 3.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -9- 3.2 従来の全船モデルのモデル化要領・・・・・・・・・・・・・・ -9- 3.3 主機のモデル化要領・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -11- 3.4 メッシュサイズの影響と等価剛性法・・・・・・・・・・・・・・ -13-

3.4.1 船体節振動固有振動数検証・・・・・・・・・・・・・・ -13- 3.4.2 メッシュサイズの影響と等価剛性法・・・・・・・・・・ -16- 3.4.3 感度解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -21- 3.4.4 応答解析精度検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -34- 3.5 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -38- 第4章 タンク内液体に対する自由表面の影響・・・・・・・・・・・・・ -39- 4.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -39- 4.2 タンク内液体に対する自由表面の影響・・・・・・・・・・・・ -39- 4.2.1

Senda

簡易式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -39- 4.2.2

Housner

簡易式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -42- 4.2.3 熊井の簡易式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -45- 4.2.4

2D BEM

理論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -46- 4.2.5

2D BEM

と簡易式との比較と考察・・・・・・・・・・・ -48- 4.2.6 各振動モードにおける有効振動質量の特性・・・・・・・ -50- 4.3

VLCC

全船振動解析による検証・・・・・・・・・・・・・・・ -52- 4.3.1 全船モデルによる自由表面影響検証・・・・・・・・・・ -52- 4.3.2 部分モデルによる回転運動影響の検証・・・・・・・・・ -55-

(4)

ii

4.4 バルクキャリアー全船解析による自由表面の影響評価・・・・・ -59- 4.5 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -62- 第5章 起振力モデル化手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -63- 5.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -63- 5.2 主機起振力モデル化手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -63- 5.2.1 アンバランスモーメント・・・・・・・・・・・・・・・ -65- 5.2.2 ガイドモーメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -68- 5.2.3 軸系縦振動起振力・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -69- 5.3 プロペラ起振力モデル化手法・・・・・・・・・・・・・・・・ -72- 5.3.1 サーフェスフォース・・・・・・・・・・・・・・・・・ -73- 5.3.2 ベアリングフォース・・・・・・・・・・・・・・・・・ -78- 5.4 主機起振力とプロペラ起振力の統合解析・・・・・・・・・・・ -79- 5.4.1 統合解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -79- 5.4.2 フェイジング技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -81- 5.5 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -82- 第6章 減衰のモデル化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -83- 6.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -83- 6.2 従来の減衰の取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -83- 6.3 実験モーダル解析法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -87- 6.4 実船における減衰同定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -89- 6.5 減衰モデルを用いた応答解析・・・・・・・・・・・・・・・・ -123- 6.6 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -127- 第7章 振動応答ズーミング解析手法の活用・・・・・・・・・・・・・・ -128- 7.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -128- 7.2 振動応答ズーミング解析手法の理論・・・・・・・・・・・・・ -128- 7.3 本手法の検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -129- 7.4 本手法の適用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -139- 7.5 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -140- 第8章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -141- 付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -144 付録1 振動質量と回転慣性質量の固有振動数への影響・・・・・・・・ -144 付録2 減衰比とレイリー減衰の関係・・・・・・・・・・・・・・・・ -147 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -148 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -149-

(5)

- 1 -

第1章 緒言

タンカー、バルクキャリアー、コンテナ船といった一般商船の乗組員は航海中、船舶の 上部構造で長時間を過ごす。上部構造の居住性、快適性には多くの要因があるが振動応答 レベルが乗組員の居住性、快適性に与える影響は大きい。上部構造の振動応答レベルが高 いと不快感、作業性の悪化、健康への影響など深刻な悪影響を及ぼす。

上部構造の振動応答レベルを低減させるためには、自由度の大きい設計の初期段階で居 住区画の振動応答を精度よく評価し適切な対策を適用することが重要である。居住区画の 振動応答を設計段階で精度よく評価するためには全船モデルによる振動応答解析が有効で ある[1]。

上部構造の防振設計のための全船振動応答解析の研究は

1980

年代頃から行われており、

大規模な例としては「無振動型高品質船舶の開発」[2]があげられる。しかし、それぞれの 要素の検証とツールの開発にとどまり全船を対象とした解析精度の評価は課題のままであ った。藤田らによる研究[3] では全船モデルによる固有振動数解析は船体節振動を対象とし て固有振動数の推定精度が

3%~5%、振動応答解析はオーダ的な応答レベルと評価してい

る。一方、笹島は対象とする船種によっては上部構造の固有振動数が

1~4%の精度となる

が振動応答に関しては計測時に解析結果の倍の値とならない保証はないとしており精度に 問題があると評価している[4][5]。また、松本らの報告[6][7][8][9]では上部構造の固有振動 数推定レベルは精度

5%、応答の推定精度は 5

倍と結論づけており応答の推定精度が大きな 課題であることを示唆している。このように上部構造の防振設計に全船振動応答解析を適 用するには多くの課題が残されていた。水早らにより全船解析における主機起振力に着目 した研究[10][11]が発表されたが計算機の制約により多くの仮定を含んでいた。また、その ほかに遠山[12] により全船振動解析の報告がされているが全船応答解析技術というよりは むしろドジャーウイングの防振設計に焦点があてられている。また、海外では

Besnier[13]

により報告がされており主機軸系のモデル化要領に焦点をあてており、注意すべき箇所の 紹介がされている。また、Kim ら[14]により報告がされているが目新しい点は特にない。

以上のとおり全船振動応答解析は解析精度という点で多くの課題を有している。

ここで

FEM

による全船振動応答解析の振動方程式を以下に示す。

  K     C     M      F

ここに、[

K ]、[ C ]、[ M ]、{ δ }、{ F }はそれぞれ剛性マトリクス、減衰マトリクス、質量マ

トリクス、節点変位ベクトル、等価節点外力ベクトルを表わす。剛性マトリクス、減衰マ トリクス、質量マトリクス、等価節点外力ベクトルそれぞれが応答解析精度に影響を及ぼ

(6)

- 2 -

すが、全船振動応答解析に関して現状ではそれぞれに対応するモデル化手法が確立されて いるとは言えない。よって、

F.E.モデル、付加質量に関わる流体モデル、減衰モデル、起振

力モデルそれぞれについてモデル化手法を見直す必要がある。

このような全船振動応答解析の従来の技術の状況を踏まえ、本研究では解析精度に寄与 する各要素について検討を行い解析精度向上のための課題を具体化し、また、局部振動に よる上部構造の振動応答を評価するための応用技術を示すことを目的とした。本研究で取 り組んだ課題を以下に示す。

(1) 上部構造の防振設計の現状と課題について整理し、上部構造の防振設計に対する全 船振動応答解析の位置付けをレビューした(第2章)

(2) 剛性マトリクス、質量マトリクスに寄与する全船モデルのモデル化要領の検討を行 った(第3章)

(3) 質量マトリクスに寄与するタンク内液体のモデル化手法について検討を行った(第 4章)

(4) 等価節点外力ベクトルに寄与する主機起振力、プロペラ起振力のモデル化手法を開 発し評価を行った(第5章)

(5) 減衰マトリクスに寄与する減衰のモデル化について検討を行った(第6章)

(6) 全船振動応答解析の結果を使用して上部構造の局部振動を求めるための振動応答ズ ーミング解析手法を開発し検証を行った(第7章)

第2章では、まず上部構造の視認性、要求デッキ面積といった機能的要件をまとめ、上 部構造の防振設計に対するこれら機能的要件による制約を明確とし、上部構造が高層化し 防振設計に対して条件が厳しくなった変遷、上部構造の設計での防振設計の位置づけを整 理した。そして近年の高層化した上部構造に対して防振設計に全船振動応答解析が必要で あることを示した。

第3章では、従来の全船振動解析のモデルのレビューを行い現モデル化要領となってい る要因を整理した。主機起振力を表現するための主機のモデル化についてレビューを行い、

また、メッシュサイズの影響を簡易的に考慮する等価剛性法によりメッシュサイズが解析 精度に与える影響について検討を行った。

第4章では、タンク内液体に対する自由表面の影響について検討を行った。Senda

Housner、Kumai

の簡易式の有効性を検証し、タンクが水平運動、上下運動、回転運動を

する際のタンク内液体の有効振動質量に与える影響を定量化した。また、

VLCC(Very Large

Crude Oil Carrier)の全船振動解析により、タンク内液体のモデル化手法が船体節振動の固

(7)

- 3 -

有振動数解析結果に影響を与えることを示した。

第5章では起振力のモデル化手法について検証を行った。アンバランスモーメント、ガ イドモーメント、軸系縦振動起振力の主機起振力について従来と比較して仮定の少ないモ デル化手法の開発を行い、主機メーカーによる計算値と比較することにより起振力の精度 についての検証を行った。プロペラ起振力の1つであるサーフェスフォースについて実船 の計測結果、Holdenの簡易式による定性的な傾向を示し、モデル化するうえでの注意点を 示し、また、ベアリングフォースのモデル化要領を示した。本研究にて開発した主機起振 力モデル化手法により可能となった主機起振力とプロペラ起振力の統合解析について試解 析の結果を示した。

第6章では従来の減衰に関する研究の内容をレビューし、従来の減衰モデルの成り立ち を検証した。近年開発が進んでいる実験モーダル解析技術についてレビューを行い、

VLCC

を対象として実船の振動計測結果により減衰の同定を行った。また、実船の計測結果によ り同定された減衰により開発した減衰モデルの適用による全船振動応答解析の精度向上の 検証を行った。

第7章では、現状のメッシュサイズの全船振動応答解析結果のみでは得られない局部振 動を求めるために開発した振動応答ズーミング解析手法の理論を示し、VLCC の実船の振 動計測結果による解析結果の検証を行い、本技術の今後の活用の方向性を示した。

第8章では、各章の実施内容と得られた成果をまとめ結論として述べた。

なお、本論文では

SI

単位系以外の

cpm, gal, tonf

を使用している。

(8)

- 4 -

第2章 上部構造の防振設計の現状と課題

2.1 概要

船舶の上部構造は操舵室、作業区画、居住区画という機能を持っている。また、乗組員 の居住性のために上部構造の振動応答を許容できるレベルとする必要がある。これらの要 求を満足させるために上部構造の層数、前後幅、左右幅等のプロポーション、構造補強等 の防振対策が検討される。本章では、上部構造の防振設計の課題を明確とするために上部 構造の機能的要件、上部構造の変遷、上部構造の設計、全船振動応答解析の必要性につい て示す。

2.2 上部構造の機能的要件

上部構造の機能的要件として操船に関して船舶からの視界、特に前方を見渡せる高さを 確保すること、作業区画、生活区画、居住区画として必要なデッキ面積を確保することが あげられる。図

2.1

にタンカー、バルクキャリアーに多い上部構造とエンジンケーシングが 分離したタイプ、図

2.2

にコンテナ船に多い上部構造とエンジンケーシングが一体となった 上部構造を示す。なお、本論文は図

2.1

に示す分離型上部構造ではファンネル、エンジンケ ーシングは含まず上部構造のみ、図

2.2

に示す一体型上部構造ではファンネル、エンジンケ ーシングを含んだ上部構造を対象とする。

2.1

分離型上部構造

2.2

一体型上部構造

(9)

- 5 -

タンカー、バルクキャリアーは上部構造の層数が5層から7層と比較的低く、また、機 関室上部に制約がないため上部構造とエンジンケーシングを分離させている。一方、コン テナ船は大型のものでは8層から10層と高く、また、機関室上部にもコンテナを搭載す るため上部構造とエンジンケーシングを合わせ上部構造の前後長さをできるだけ短くする 必要がある。そのため上部構造とエンジンケーシングを一体とすることが多い。

タンカー、バルクキャリアーは高さとデッキ面積の関係から一般的には5層および6層 の上部構造であれば図

2.3

に示すようなボックス型となり、7層であれば図

2.4

に示すよう なタワー型となることが多い。7層でタワー型とするのは上部構造の防振上、下部の剛性 が高く、上部の質量が小さいと固有振動数は高くなり、振動応答は小さくなる傾向にある からである。一方、5層および6層ではむしろ側壁を上まで通したほうが全体の剛性を確 保できるためボックスタイプとしている。

2.3

ボックス型上部構造

2.4

タワー型上部構造

コンテナ船はアッパーデッキ上に高くコンテナを積むため、前方の視認性の関係で特に 上部構造に高さが必要となる。また、上部構造が高くなる分、層数は増え1層あたりの面 積は小さくなる。そのため、高いわりには前後方向長さの小さい上部構造となる。

上部構造は上記の要件に追加して主機起振力、プロペラ起振力による防振を考慮して前 後方向長さ、幅、高さといったプロポーションが決定される。また、上部構造の基部剛性 は上部構造の振動特性に影響を与えるため、上部構造の下部にある機関室内の構造配置も 計画段階で検討される。

(10)

- 6 -

2.3 上部構造の変遷

一般商船は世界経済の規模の拡大による貿易量の増加と船舶の建造技術の向上により大 型化の傾向にある。特にコンテナ船は図

2.5

に示すとおり急激に大型化しつつある。

- 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000

1960 1970 1980 1990 2000 2010

Built Year

Container Capacity in TEU

2.5

コンテナ船の大型化 [15]

また、近年、上部構造はさらに高くなる傾向にある。要因としては

1998

7

1

日以降 の建造船を対象とした

SOLAS Regulation 22 “Navigation Bridge Visibility” [16]の規則化

がある。また、バルクキャリアーの

Fore Castle Deck

の強制化を規定した

2004

1

1

日以降の契約船を対象とした

IACS UR-S28 “Requirement for the Fitting of a Forecastle for Bulk Carriers, Ore Carriers and Combination Carriers”[17]があげられる。SOLAS

Regulation 22

は上部構造の操舵場所から船首部より前の海面の視界の確保を規定してお

り上部構造を高層化させる要因となる。本規則によりそれまで6層であった

VLCC

の上部 構造が7層となるケースがあった。また、

IACS UR-S28

は青波に対するハッチカバー強度 の確保を目的として船首部に一層分高いデッキを設置することとしている。そのため、

SOLAS Regulation 22

と合わせて前方の視界確保のために上部構造を高層化する傾向とな

る。本規則によりケープサイズのバルクキャリアーの上部構造が6層から7層となるケー スがあった。これら上部構造の高層化により上部構造の固有振動数は低下し、主機起振力、

プロペラ起振力の主要起振力成分の起振振動数に近くなるケースが増えている。そのため、

従来以上に詳細な上部構造の防振設計が必要となっている。

(11)

- 7 -

2.4 上部構造の設計

2.6

に計画段階の上部構造の主な設計フローを示す。

2.6

上部構造設計フロー

まず、上部構造の船長方向の配置箇所が決定される。機関室の上部で上部構造の前壁が 機関室の前壁とラインアップさせる位置が一般的である。しかし、10,000TEUを超えるコ ンテナ船の場合は視認性の関係から機関室より船首側に上部構造を配置する場合がある。

次に操船に関する視認性により上部構造の高さが決まる。本要求により、船長が大きい船 は上部構造が高くなる傾向となる。作業区画、生活区画、居住区画として必要なデッキ面 積により上部構造のトータルのデッキ面積が決まる。そのデッキ面積を確保できるように 上部構造のプロポーションが決定される。タワー型上部構造などは防振を考慮して各デッ キの形状が決定される。また、上部構造の一部であるドジャーウイングは特に図

2.4

に示す タワー型上部構造ではスパンの長い梁となり防振に特別な配慮が必要となる。ドジャーの 前後振動モード、上下振動モードが主機起振力、プロペラ起振力と共振しないよう必要に 応じてピラーが配置される。上部構造、ドジャーウイングの防振のためのピラー配置が決 定され、FEM等を使用した詳細検討により上部構造の防振検討が実施される。

上部構造の機能的要件の確保、防振対策のコストという観点で最適な上部構造の防振設 上部構造の設置箇所の決定(船長方向)

視認性に対する高さ/層数の決定

要求されるデッキ面積の検討

上部構造の長さと幅の決定

上部構造/ドジャーの防振のための ピラー配置検討

詳細な上部構造防振検討

(12)

- 8 -

計を行うためには、上部構造内の鋼壁配置、ドジャーピラーの配置、上部構造の基部構造 が配置される機関室内アレンジなどが変更可能なうちに防振対策のめどを立ててしまう必 要がある。そのため、基本設計段階で上部構造の防振対策を検討することが望ましい。

2.5 全船振動応答解析の必要性

近年の大型化した一般商船の上部構造はドジャー、ファンネル、主機、レーダーマスト、

船体等と連成することが多く上部構造単体での固有振動数解析では実船の振動特性を再現 できないことが多い。そのため、上部構造のみでなく船体後部等のある程度範囲を広げた モデル化範囲で固有振動数解析を行うことがある。しかし、上部構造のみでなく範囲を広 げたモデル化で固有振動数解析を実施すると多くの振動モードが広い振動数範囲で現れ応 答感度が高く問題となる振動モードの特定が困難である。そのために振動応答解析を実施 し応答感度の高い振動モードを抽出し評価、対策の検討を行うことが必要である。また、

モデル化範囲を全船でなく船体後部に限定すると船体と連成する場合の船体部分の振動質 量を考慮できず振動応答の精度が問題となる [18]。そのため、振動応答の評価を行うため には全船モデルを使用する必要がある。以上より、上部構造の防振対策の検討を精度よく 行うためには全船モデルを使用した振動応答解析が必要となる。そのため、上部構造の防 振設計には全船振動応答解析の精度向上が必要である。

2.6 本章のまとめ

本章では、一般商船の上部構造の機能的要件、上部構造の変遷、上部構造の設計、全船 振動応答解析の現状についてまとめ、上部構造の防振設計に全船振動応答解析が必要であ ることを示した。

上部構造は、現状の上部構造の層数、プロポーションが操舵室、作業区画、居住区画と いう機能的要件のみでなく防振の要件により設計されているので、上部構造の設計におけ る防振設計の位置づけを明確化した。

上部構造の変遷に関しては、1998 年の

SOLAS Regulation 22 “Navigation Bridge Visibility”の規則化や、2004

年の

IACS UR-S28 “Requirement for the Fitting of a Forecastle for Bulk Carriers, Ore Carriers and Combination Carriers”の発効により上部

構造が高くなるケースがあり、従来より詳細な上部構造の防振設計が要求されている状況 を示した。

上部構造の設計では、計画段階の上部構造の設計の流れを整理し、最適な上部構造の防 振設計を行うためには、設計の自由度がより大きく残されている基本設計段階で上部構造 の防振設計を行う必要があることを示した。

上部構造の固有振動数および振動応答量を精度よく評価し、適切な上部構造の防振設計 を行うためには全船振動応答解析が必要であり、全船振動応答解析の精度向上が重要であ ることを述べた。

(13)

- 9 -

第3章 全船モデルのモデル化検証

3.1 概要

全船モデルを使用した振動応答解析では解析精度に向上の余地があることが従来より指 摘されている[6]。また、全船モデルのモデル化要領は解析精度に影響を与える。そのため、

全船モデルのモデル化要領の検討を行った。本章では、従来のモデル化要領を整理し課題 を明確としたうえで、主機のモデル化手法の開発を行い、精度向上のためのメッシュサイ ズの影響検証を行った。

3.2 従来の全船モデルのモデル化要領 全船モデルの例を図

3.1~図 3.3

に示す。

3.1 VLCC

全船モデル

3.2

バルクキャリアー全船モデル

(14)

- 10 -

3.3

コンテナ船全船モデル

船種によりばらつきがあるが、片弦モデルで節点数は

4000~8000、要素数は 7000~

13000

程度となっている。従来の全船モデルのモデル化要領は表

3.1

のようにまとめること

ができる。

3.1

従来の全船モデルのモデル化要領

項目 要領

船体のメッシュサイズ 3ロンジスペース(1トランススペース)程度 基本使用要素 シェル要素、または、ビーム要素

大骨のモデル化要領 シェル要素、または、偏心ビーム要素でモデル化

小骨のモデル化要領 スキンプレートのシェル要素に異方性を入れてモデル化、または 小骨をプレートの板厚に置き換えた等価板厚を追加

上部構造 1層1分割程度の要素分割でモデル化 主機 主機形状を再現できる程度のモデル化

外部流体 バーチャルマスでモデル化して付加水質量として考慮 タンク内流体 タンク境界壁の密度調整、または節点マスで考慮

メッシュサイズをトランススペースとしているのは船長方向に関して縦強度部材の皮板 の節点をトランス部材との取り合い箇所のみに設けるためである。トランスウェブフレー ムの間に縦強度部材の皮板の節点があると、縦強度部材の皮板に面外方向に拘束の弱い自 由度が生じ計算上面外変位が生じやすくなってしまう。ロンジを想定したビーム要素をモ デル化すれば面外方向に十分な剛性をもたせることができるがその作業を簡略化するため にトランス部材との取り合いのみに節点を設けている。本要領は上部構造のモデル化につ いても同様である。上部構造の前後壁、側壁の上下方向に関して節点は各デッキとの取り 合いのみに設けることにより上部構造の前後壁、側壁の面外方向に拘束の弱い自由度が発

(15)

- 11 -

生することを防いでいる。上記のとおり従来の全船モデルのメッシュサイズは船体構造の 各部の振動特性を再現するために必要なサイズというわけではなく、モデル化が簡易にで き、また、従来の計算機でも解析を行える自由度という制約のもと確立されたものである。

外部流体のモデル化に関しては有限要素法と特異点分布法を連成させるバーチャルマス を適用することが一般的である。バーチャルマスの有効性については笹島ら[19]により検証 されている。全船振動応答解析モデルのモデル化要領に関して発表されている論文は少な いが、武田ら[20]により上部構造のモデル化要領について報告があり、レーダーマスト、フ ァンネル、ドジャーの振動特性の影響、上部構造のドアや開口部のモデル化の必要性など が示されている。

3.3 主機のモデル化要領

主機は主要な起振源であるため、その振動特性を精度よく再現することは解析精度に対 して重要である。(3.1)式に一般の多自由系の強制振動の応答をモード法を用いて表した式 を示す[21]。モードベクトルの加振点

i

の成分

φ

riが含まれていることから、評価点の振動 応答推定精度に加振点のモードベクトル成分が影響を及ぼすため加振点付近の構造のモデ ル化が重要であることを示している。

    

  

N

r

t j r r r r

i

ri

e

k jc m

x F

1

2

 (3.1)

ここに、

{x}:変位ベクトル N

:モード数

ω

:起振振動数

m

r:r次のモード質量

c

r:r次のモード減衰

k

r:r次のモード剛性

F

i :加振点

i

に負荷する起振力の振幅

φ

ri:モードベクトルの加振点

i

の成分

{ φ

r

}:モードベクトル

主機は複雑な3次元形状をした鋳物が多用される。しかし、許容できる自由度数の関係 からソリッドモデルでの詳細なモデル化はされておらず、シェル要素を使用して等価板厚 を設定しモデル化されている。また、主要なブロックの接合にはボルトが使用されている。

しかし、ボルト接合による非線形性をモデル化することは現実的でなく、線形な剛性を仮 定してモデル化されている。このように、実機に忠実にモデル化することは困難であり多

(16)

- 12 -

くの仮定を含めて主機はモデル化されてきた。

従来は図

3.4

に示す簡易的なモデルが使用されていた。外形状を限定的にラフにモデル化 しており主機の剛性、質量分布が詳細に再現されていない。そこで、著者らは図

3.5

に示す 主機モデルを開発した[22][23]。

3.4

従来の主機モデル[22]

3.5

新主機モデル[22]

本モデルは剛性に関してはより実機に近い構造とするために台板(下部)、コラム(中部)、

シリンダージャケット(上部)の構造を再現している。高さ方向の質量分布に関しては主 機トータルの重量を合わせるだけでなく、高さ方向の質量分布が再現できるモデル化とし ている。主機起振力の負荷手法に関しては各シリンダーごとに主機起振力が実機と同様な メカニズムで負荷できるようにシリンダー単位で詳細にモデル化を行っている。

主機モデルは前述のとおり鋳物やボルト接合の適用により図面等の設計情報からモデル

(17)

- 13 -

を作成しても固有振動数といった振動特性を再現することが困難である。そのため、実機 の計測結果を参考にして主機モデルの剛性を調整することにより主機モデルの振動特性を 再現している。

主機のクランク軸には起振力が直接負荷する。また、クランク軸からプロペラまでの主 機軸系はねじり振動、縦振動といった局部的に振動する系となっている。主機軸系の振動 特性は上部構造の振動応答に影響を与えることがあり、主機軸系は起振力の伝達経路とし て振動特性を精度よく再現する必要がある。図

3.6

に本研究で開発した主機軸系モデルの例 を示す。クランクは3次元形状の鋳物となっているが自由度を大きく増やさないためにビ ーム要素でモデル化した。本モデルは全船振動応答解析の精度を向上させるために主機軸 系のねじり振動、縦振動の固有振動数、振動モードを再現している。

3.6

主機軸系モデル

3.4 メッシュサイズの影響と等価剛性法

レーダーマスト、ファンネル等の構造基部のメッシュ分割が粗い場合には解析結果で固 有振動数が高めとなる。船体構造に関しても同様なことが言えると考え、メッシュ分割が 全船振動応答解析に与える影響を検証した[24]。

3.4.1 船体節振動固有振動数検証

3.2

に示す

VLCC

を供試船として振動モードがシンプルで定性的な評価が容易である 船体節振動を対象に検討を行った。本供試船の全船モデルを図

3.7

に示す。

3.2 供試船データ

L×B×D 322.0m×60.0m×28.5m Main Engine 7RT-flex84TD

Shaft Revolution

(rpm) 70.1(NOR)

74.0(MCR)

Propeller Blade 5

Draft at Sea Trial

draft aft : 20.69m

draft fore : 20.39m

(18)

- 14 -

3.7

供試船全船モデル

本供試船を対象に解析結果と計測結果の比較を行った。結果を表

3.3

に示す。振動モード に関して”V”は船体上下節振動、”H”は船体水平節振動であることを示す。また、計測結果 は詳細を6章に示す実稼働モーダル解析により固有振動数を同定した。

3.3

解析結果と計測結果の比較

節数が増加すると誤差が大きくなる傾向にある。上下2節~上下5節の振動モードを図

3.8~図 3.11

に示す。節数が増加すると船倉部の二重底の連成が顕著となる。

Mode Natural Frequency (cpm) Error Measurement Analysis (%)

V 2-node 27.5 27.1 -1.5

V 3-node 59.2 61.0 +3.0

V 4-node 89.9 94.6 +5.2

V 5-node 116.2 123.6 +6.4

H 2-node 55.4 55.8 +0.7

H 3-node 100.9 104.9 +4.0

(19)

- 15 -

3.8

上下2節振動モード

3.9

上下3節振動モード

3.10

上下4節振動モード

(20)

- 16 -

3.11

上下5節振動モード

3.4.2 メッシュサイズの影響と等価剛性法

3.2

に示す

VLCC

の全船モデルからカーゴホールド二重底構造を取り出して固有振動 数解析を行い、メッシュサイズと二重底の固有振動数の関係を検証した。カーゴホールド センタータンクの二重底部分を取り出した。図

3.12

にコースメッシュモデル、図

3.13

にフ ァインメッシュモデルを示す。モデルの4周を固定条件とした。また、二重底構造のみの 質量を考慮したモデルとセンタータンクに漲水した海水の質量(1m2あたり

25.6

トン)を インナーボトムの密度調整で考慮した2ケースを対象に解析を行った。なお、ロンジ部材 の剛性はボトム、インナーボトムのプレートに異方性として考慮している。また、本検討 では外板の外の海水の影響は考慮していない。

3.12

二重底コースメッシュモデル

(21)

- 17 -

3.13

二重底ファインメッシュモデル

固有振動数を表

3.4、振動モードを図 3.14~図 3.17

に示す。

3.4

解析結果固有振動数

固有振動数(cpm) コースメッシュ/

ファインメッシュ コースメッシュ ファインメッシュ

二重底の質量のみ

1257 1190 1.056

タンク内質量考慮

172 161 1.068

(22)

- 18 -

3.14

振動モード(コースメッシュ、二重底の質量のみ)

3.15

振動モード(ファインメッシュ、二重底の質量のみ)

(23)

- 19 -

3.16

振動モード(コースメッシュ、タンク内質量考慮)

3.17

振動モード(コースメッシュ、タンク内質量考慮)

(24)

- 20 -

3.4

に示すとおりメッシュサイズを細かくすることで固有振動数が低下している。単純 なパネルであれば要素サイズが粗い場合は離散化誤算により剛性は高め、質量は大きめと なり固有振動数に対する影響はキャンセルする。本解析で使用している

NASTRAN

は質量 の影響がやや大きくわずかに固有振動数が低めとなる。しかし、今回対象とした二重底構 造はガーダー、フロアーがボトムプレート、インナーボトムプレートの質量を支える構造 となっており、メッシュが粗いモデルはガーダー、フロアーの剛性が有意に影響して固有 振動数が高くなったと考えられる。そのため、メッシュが粗いことにより増加した剛性の 分簡易的にヤング率を下げてメッシュが細かい時の剛性を再現する方法を考案した。本手 法を本論文では等価剛性法と呼ぶ。

3.18

に示す船倉部二重底のフロアー、ガーダーの要素のヤング率を設計変数、船体節 振動の固有振動数を目的関数として最適化解析ツールである

LMS Virtual Lab[25]を使用

して最適化解析を行った。フロアー、ガーダーのヤング率をオリジナルモデルの

1/5

とした ときがもっとも計測結果と解析結果の乖離が小さい結果となった。その時の解析結果と計 測結果の比較を表

3.5

に示す。なお、二重底の上下方向の曲げ剛性を変化させるためには外 板、二重底板のヤング率も変更すべきであるが、船体節振動に有意な影響を与えないため にフロアー、ガーダーのヤング率のみを設計変数とした。

3.18

ホールド二重底フロアー、ガーダー

3.5

二重底剛性最適化時の解析結果と計測結果の比較

Mode Natural Frequency (cpm) Error

Measurement Analysis (%)

V 2 Node 27.5 27.0 -1.8

V 3-Node 59.2 60.0 +1.4

V 4-Node 89.9 90.9 +1.1

V 5-Node 116.2 115.1 -0.9

H 2-Node 55.4 55.7 +0.5

H 3-Node 100.9 103.8 +2.9

(25)

- 21 -

計測結果に対する解析結果の誤差は表

3.3

に示すオリジナルより小さくなっている。上記 結果より船体各部の剛性を適切に再現できれば全船振動応答解析の解析精度が向上する可 能性があることがわかった。

3.4.3 感度解析

3.2

に示す供試船の上部構造前後振動を対象に精度向上の検討を行った。

海上試運転時の沖出しの起振機試験を想定した解析結果の上部構造(操舵室)前後の計 測結果と剛性を調整しない場合の解析結果の比較を図

3.19

に示す。沖出しの条件で起振機 で船尾を上下方向に加振したときの上部構造の前後方向の伝達関数を示している。図中に 解析結果のピークを定義する。また、それぞれのピークでの振動モードを図

3.20

に示す。

なお、本解析では6章の図

6.8

に”Conventional Damping Model”で示す過大な減衰モデル を使用している。

3.19

上部構造前後振動応答 解析結果と計測結果の比較

ピーク①

ピーク③

ピーク②

(26)

- 22 -

ピーク①

ピーク②

ピーク③

3.20

各ピークでの振動モード

ピーク①は上部構造前後とファンネル前後が同相のモードとなっている。ピーク②は上 部構造前後とファンネル前後が逆相のモードであり二重底等の船体が連成している。また、

TBHD(Transverse Bulkhead)も連成している。ピーク③は上部構造前後とファンネル前後

が逆相のモードでありさらに船尾上下が連成している。

船尾端上下とファンネル前後の解析結果と計測結果の比較をそれぞれ図

3.21、図 3.22

示す。

(27)

- 23 -

3.21

船尾端上下振動応答 解析結果と計測結果の比較

3.22

ファンネル前後振動応答 解析結果と計測結果の比較

(28)

- 24 -

3.19

に示す上部構造前後のピークで上部構造前後と船尾端上下、ファンネル前後が連 成しているためそれぞれの解析結果が計測結果により近くなるように等価剛性法を適用す るための感度解析を行った。具体的には上部構造前後、ファンネル前後はピークの振動数 を変更せず船尾端上下のみピークの振動数を低下させることを目標とした。設計変数は等 価剛性法により対象とする箇所のヤング率とした。対象は図

3.23

に着色で示すとおり、上 部構造とエンジンケーシングの接続部、船尾部、ファンネルのほかにカーゴホールド部ト ランス部材、カーゴホールド部

TBHD、カーゴホールド部/船首部とした。上部構造とエン

ジンケーシングの接続部は上部構造の振動特性を変化させるため、船尾部は船尾部の振動 特性を変化させるため、ファンネルはファンネルの振動特性を変化させるため設定した。

カーゴホールド部トランス部材、カーゴホールド部

TBHD

は図

3.20

に示す振動モードにお いて該当箇所が連成しているため設定した。カーゴホールド部/船首部は図

3.24

に示すとお り船首端前後の計測点で矢印で示す

480cpm

付近にピークがあったため船体前後振動に対 する振動特性の変化を想定して設定した。なお、上部構造が剛体に近いモードで倒れるロ ッキングモードは上部構造とエンジンケーシングの接続部の設計変数で評価できると考え た。

(29)

- 25 -

上部構造とエンジンケーシングの接続部 船尾部

ファンネル カーゴホールド部トランス部材

カーゴホールド部

TBHD

カーゴホールド部/船首部

3.23

設計変数設定箇所

(30)

- 26 -

3.24

船首端前後振動応答計測結果

感度解析の結果のサマリーを図

3.25

に示す。それぞれの設計変数を組み合わせで変化さ せた各ケースの解析結果を細線、計測結果を太線で示している。また、それぞれの設計変 数に対する上構前後、船尾端上下、ファンネル前後の応答の感度を図

3.26~図 3.31

に示す。

解析結果に対する考察を表

3.6

にまとめる。それぞれの図の凡例と表

3.6

に元のヤング率と 変更後のヤング率(kg/mm2

)を示す。なお、各設計変数を組み合わせて感度解析を実施した

ため元の解析設計はそれぞれのケースで同一ではない。

3.25

感度解析結果サマリー

(31)

- 27 -

上部構造前後

船尾端上下

フェンネル前後

3.26

上部構造とエンジンケーシングの接続部

(32)

- 28 -

上部構造前後

船尾端上下

フェンネル前後

3.27

船尾部

(33)

- 29 -

上部構造前後

船尾端上下

フェンネル前後

3.28

ファンネル

(34)

- 30 -

上部構造前後

船尾端上下

フェンネル前後

3.29

カーゴホールド部トランス部材

(35)

- 31 -

上部構造前後

船尾端上下

フェンネル前後

3.30

カーゴホールド部

TBHD

(36)

- 32 -

上部構造前後

船尾端上下

フェンネル前後

3.31

カーゴホールド部

/

船首部

(37)

- 33 -

3.6

感度解析結果に対する考察

設計変数 ヤング率 考察 上構接続 21,000kg/mm2

10,000kg/mm

2

・上部構造前後は

460cpm

付近のピークの振動数がやや低下する

・船尾端上下は

460cpm

付近のピークに関して有意な変化はなく効果なし

・ファンネル前後は

460cpm

付近のピークの振動数がやや低下する →船尾端上下の変化がないので効果なし

船尾部 21,000kg/mm2

16,000kg/mm

2

・上部構造前後は

510cpm、550cpm

付近のピークが

530cpm

付近の1つ のピークになっている

・船尾端上下は

550cpm、590cpm

付近のピークが

500cpm

付近の1つの ピークになり大きくピークの振動数が低減している

・ファンネル前後は

450cpm

付近のピークの振動数がやや低下する →上部構造の

510cpm、550cpm

付近のピークは1つになってしまうが

船尾端上下のピークの振動数は大きく低下し効果あり ファンネル 34,500kg/mm2

40,000kg/mm

2

・上部構造前後は

460cpm

付近のピークの振動数がやや増加する

・船尾端上下は全体的に有意な変化はなく効果なし

・ファンネル前後は

450cpm

付近のピークの振動数が増加する →船尾端上下の変化がないので効果なし

トランス 部材

21,000kg/mm

2

2,400kg/mm

2

・上部構造前後は

510cpm

付近のピークの振動応答は増加し

560cpm

付近 のピークは振動応答が低減している

・船尾端上下はそれぞれのピークの振動数が低下している

・ファンネル前後は有意な変化はなし

→船尾端上下のピークの振動数が低下するので効果あり

TBHD * 21,000kg/mm

2

42,000kg/mm

2

・上部構造前後は

430cpm

付近のピークの振動数が増加しているがフェン ネル変更の影響と思われる

・船尾端上下は

430cpm、460cpm

付近のピークの振動数が増加している がフェンネル変更の影響と思われる

・ファンネル前後は

430cpm、460cpm

付近のピークの振動数が増加し

430cpm

付近の1つのピークになっているがフェンネル変更の影響と思

われる

→ファンネルの影響が有意と考えられ効果なし ホールド 21,000kg/mm2

18,900kg/mm

2

・上部構造前後は

510cpm、550cpm

付近のピークが

530cpm

付近の1つ のピークになっている

・船尾端上下は

550cpm、590cpm

付近のピークが

500cpm

付近の1つの ピークになり大きくピークの振動数が低減している

・ファンネル前後は

450cpm

付近のピークの振動数がやや低下する →船尾端上下のピークの振動数が低下するので効果あり

*:合わせてファンネルのヤング率を 34,500kg/mm2→40,000 kg/mm2

に変更している

(38)

- 34 -

変更前と変更後のヤング率の差異は応答に有意な影響が出そうな程度を想定して設定し た。また、メッシュサイズ影響を考慮するとヤング率は

21,000kg/mm

2より低減させるべ きだが、この検討では感度を調べるためヤング率を増加させた場合の解析も行った。上部 構造前後、ファンネル前後はピークの振動数を変更せず船尾端上下のみピークの振動数を 低下させる設計変数は、船尾部、カーゴホールド部トランス部材、カーゴホールド部/船首 部であった。

3.4.4 応答解析精度検証

感度解析の結果を全船モデルへ考慮して応答解析精度の検証を行った。解析精度向上の ために有効な設計変数は船尾部、カーゴホールド部トランス部材、カーゴホールド部/船首 部であったが、カーゴホールド部トランス部材でトランス部材の面内曲げ剛性はメッシュ 分割を細かくする場合と等価と考えられる[24]が、せん断剛性は大きく低下してしまうため 最終モデルには考慮しなかった。同じくカーゴホールド部/船首部は船体各部の振動特性を 変化させてしまうため最終モデルには考慮しなかった。これらの影響が等価剛性法の問題 点であり、今後の課題として実際にメッシュを細かくして解析精度の向上を検証する必要 がある。

モデルの剛性の影響の検証を船尾部を対象に行った。船尾部の剛性に関してメッシュサ イズが細かい場合と等価になるモデル化要領を検討した。オリジナルのメッシュサイズで

3.32

に示すメッシュサイズが細かい場合のモデルと等価な固有振動数になるヤング率を 検討した。オリジナルモデルのヤング率変更箇所は図

3.33

に着色部で示すとおり船尾部の アッパーデッキと外板としている。

3.32

船尾部ファインメッシュモデル

(39)

- 35 -

3.33

オリジナルモデルヤング率変更箇所

オリジナルモデルと最終モデルの沖出し起振機試験を想定した解析結果の比較を図

3.34

に 示 す 。 な お 、 本 解 析 の 減 衰 は 6 章 の 図

6.8

に 示 す 従 来 使 用 し て い た 減 衰 モ デ ル

(Conventional Damping Model)としている。また、試運転時の累進計測を想定した主機 7次起振力に対する上部構造(操舵室)の前後方向の振動応答の比較を図

3.35、上部構造

(操舵室)の左右方向の振動応答の比較を図

3.36

に示す。凡例は”Measurement”が計測結 果、Analysis(Conventional)がオリジナル、Analysis(Proposed Org. Damp)が本ヤング率 を適用、

Analysis (Proposed)がさらに6章の図 6.8

に示す新減衰モデル(Proposed Damping

Model)を適用した解析結果を示す。

(40)

- 36 -

上部構造前後

船尾端上下

ファンネル前後

3.34

オリジナルモデルと最終モデルの比較(起振機試験)

(41)

- 37 -

3.35

計測結果と解析結果の比較(主機7次起振力に対する上部構造前後振動応答)

3.36

計測結果と解析結果の比較(主機7次起振力に対する上部構造左右振動応答)

(42)

- 38 -

結果的に6章に示す減衰を考慮することで解析結果が計測結果とよい一致を示している。

以上より全船モデルの船体各部のメッシュ分割を見直すことにより解析精度が向上する可 能性がある。

3.5 本章のまとめ

本章では、まず、従来のモデル化要領を整理した上で、主機のモデル化手法の開発を行 い、さらに、全船

FEM

のメッシュサイズが計算精度に及ぼす影響について研究した。

従来の振動解析用全船

FEM

モデルは、解析精度の収束性の観点からモデル化要領を決め ているというよりは、むしろモデル化が簡易にでき、EWSなどの計算機で比較的容易に解 析が行える自由度に収まる要素数としてメッシュサイズが決定されていると言うことがで き、全船モデルのメッシュが粗く、解析精度の点で課題であることを示した。

主機のモデル化では、起振力が負荷される位置と大きさが重要であることを理論的に示 し、剛性、質量を詳細にモデル化し実機の振動特性を再現できる主機モデルを開発した。

また、軸系の縦振動、ねじり振動の振動特性が再現できるよう開発した軸系モデルを示し た。

全船

FEM

解析において計算精度を高めるために全体にわたりメッシュを十分細かくす るのは実際上困難であるので、メッシュサイズは変えずに部分構造について剛性を下げて 擬似的にファインメッシュの剛性に近い計算を行う「等価剛性法」を考案した。VLCC 船体節振動の固有振動数の計算に、この等価剛性法による感度解析を適用して、感度の高 い部分構造のモデル化要領を見直すことにより解析精度が向上することを示した。ただし、

等価剛性法では振動モードに悪影響を及ぼすことがあり課題もある。

(43)

- 39 -

第4章 タンク内液体に対する自由表面の影響

4.1 概要

タンク内液体に自由表面がある場合に液体の質量に対して有効振動質量は

100%を下回

る場合があることが従来より示されている[26][27]。従来の研究では船体上下節振動を対象 としており有意な影響がないという結論となっていた[28]。また、上部構造の左右振動には 船体の左右振動、ねじれ振動が影響を与えるケースがある[18]。その場合にはタンク内液体 の自由表面影響を適切に考慮する必要がある。本章では、タンク内液体の有効振動質量を 求める従来の簡易式の有効性を調べ、タンクが水平運動、上下運動、回転運動する際の自 由表面が有効振動質量に与える影響を評価した。タンカーの船体節振動に与えるタンク内 液体自由表面影響が固有振動数に与える影響について調べ、バルクキャリアーのバラスト タンクが水平方向に振動する際に船体の振動特性に与える影響を検証した。

4.2 タンク内液体に対する自由表面の影響

全船モデルによる振動解析の精度を向上させるためには船体の質量分布を精度よくモデ ル化することが必要である。バラストコンディションでのバラスト水の質量や、タンカー のフルロードコンディションでの液体カーゴの質量は、排水量の半分以上を占め、タンク 内液体の有効振動質量を精度よくモデル化することは解析精度向上のために不可欠である。

そこで、タンク内液体に対する自由表面の影響による有効振動質量を

Senda[29]、 Housner [30][31]、熊井[26]の簡易式による結果と BEM(Boundary Element Method)による結果を

比較することにより検証した[32]。

4.2.1

Senda

簡易式

Senda

の簡易式は地震動を受けた柱の上にあるタンクが液体から受ける力を計算するた

めに開発された。本研究ではこれを参照してスロッシングの影響を省いたものを用いる。

以下、その導出を説明する。計算モデルは図

4.1

に示すとおり矩形の2次元モデルとなって いる。

4.1

タンクモデル

[29]

図 2.5  コンテナ船の大型化 [15]
図 3.26  上部構造とエンジンケーシングの接続部
図 3.33  オリジナルモデルヤング率変更箇所
図 4.8  水平運動に対する有効振動質量比
+7

参照

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