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5.1 概要

全船振動応答解析において起振力の負荷手法は解析精度の点で重要である。

主機起振力の負荷手法に関して、水早らは主機起振力を各シリンダーごとに着火順序に よる位相差を考慮して計算する手法を提案している[10]。しかし、実船計測結果による解 析結果の検証は主機軸系縦振動起振力による上部構造前後振動にとどまっており、ガイド モーメントに関しては起振力負荷手法の詳細、検証結果について示されていない。また、

船体を主構造、主機を従構造としてあらかじめ求めた両者単独の固有振動特性をモード座 標系で結合する多点結合サブストラクチャー法、ピストン、軸系に作用する起振力と等価 な起振力を主機架構に負荷する手法など大きな仮定を含んでいる。

プロペラ起振力は主機起振力と並ぶ船体を励振する主要な起振力であるが、起振力のモ デル化手法として特に紹介されていない。

本研究では、主機起振力であるアンバランスモーメント、ガイドモーメント、軸系縦振 動起振力を実機と同じメカニズムでそれぞれの起振力の位相差を考慮して直接全船モデル に負荷する手法の開発を行い起振力の検証を行った。また、プロペラ起振力であるサーフ ェスフォースとベアリングフォースに関して発生のメカニズムと起振力のモデル化要領を 示した。また、詳細な主機起振力のモデル化により可能となった主機起振力とプロペラ起 振力との統合解析手法の開発を行い、応用技術としてフェイジング技術の例を示した。

5.2 主機起振力モデル化手法

一般商船に搭載される主機は2サイクルの低速ディーゼルであり、アンバランスモーメ ント、ガイドモーメント、軸系縦振動起振力の起振力を発生させ上部構造などの船体を励 振する。それぞれの主機起振力成分を図5.1に示す。

図5.1 主機起振力成分

Main Engine Unbalance Moment H-Type Guide Moment

X-Type Guide Moment

Axial Vibration Force

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これらの起振力はそれぞれトータルの力、モーメントとして主機メーカーのプログラム により計算される。従来はこれら主機メーカーが計算したトータルの起振力を図5.2に示す とおり仮定に基づき主機モデルに負荷していた。アンバランスモーメント、ガイドモーメ ントに関しては主機が剛体であると仮定すると従来の手法は有効であるが主機は弾性体で あり主機の振動モードによっては実現象との乖離が有意となってしまう。また、軸系縦振 動起振力に関しては主機起振力に対する主機軸系の連成影響を考慮することができない。

特に近年のメガコンテナ船に関しては上部構造の前後振動の固有振動数は5Hz 程度である のに対して主機軸系の縦振動の固有振動数も5Hz程度であり連成を考慮できないのは解析 精度に影響を与えてしまう[22]。

(X型ガイドモーメント)

(軸系縦振動起振力)

図5.2 従来の手法による主機起振力[22]

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そのため、主機、軸系の振動特性を考慮したより実現象に近い解析を行うためにはトータ ルの起振力でなく各シリンダーごとに着火順序による位相差を考慮して計算モデルに負荷 する手法が必要である[10]。そこで、アンバランスモーメント、ガイドモーメント、軸系 縦振動起振力を対象として各シリンダーごとに着火順序による位相差を考慮して計算モデ ルに負荷する起振力モデル化手法の検討を行った。

5.2.1 アンバランスモーメント

ディーゼル機関はピストンの上下運動およびクランク軸の回転運動によって上下方向、

左右方向にそれぞれ慣性力が働く。このうち低速ディーゼル主機を搭載した一般商船で問 題となるのはピストンの上下運動により発生するアンバランスモーメントの2次成分とな る。そこでアンバランスモーメントのモデル化の検討を行った。

主機のシリンダー一筒について、図5.3に示すように、クランク軸が角速度ωで回転する とき、ピストンPが上死点Aから下方に距離x移動する。

図5.3 ピストンの運動

- 66 - xは次式で表される。

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