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・高次の船体節振動においてトータルの減衰はおおよそ固有振動数に比例して増加する。

・大型貨物船や油槽船において外部減衰率は内部減衰率と比較して非常に小さくこれを 無視してよい。ここで、外部減衰は外部流体の表面波、粘性、圧力波によるエネルギ ー散逸による減衰および積載貨物等の減衰を示し、内部減衰は船体の構造物としての 減衰を示す。

・大型船軽荷時の2節垂直振動および高次垂直振動における対数減衰率を推定する実験 式は計算の結果から確かめられた。

広渡[44]は、実船での起振機実験での計測結果により減衰を整理し減衰の実験式に対して 考察を行っており以下の知見を示している。

・対数減衰率は振動数の増加とともに単純に増加するものではない

・起振機実験の条件により低い振動数の場合には精度の点で問題があるものと考えられ る

・船体節振動に船尾振動が連成する場合に減衰が大きくなる傾向にある

また、広渡は論文中で減衰の実船計測結果は図6.1に示すとおりばらつきが大きいことを 示している。

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図6.1 実船計測結果の減衰のばらつき[44]

熊井は広渡らの示した実船により計測された減衰に対して、ばらつきが大きく簡易な実 験公式により減衰の推定を行うことは不合理であると示している[45]。論文でせん断撓み係 数、回転慣性係数、直接粘性係数、せん断粘性係数をパラメータとして整理することを試 みているが更なる検討が必要であると結論づけている。ここで、せん断撓み係数α、回転 慣性係数βは以下で定義される。

'

2

/ k GAL

EI

(6.3)

2 2

/ L

r

(6.4)

ここに、

EI:曲げ剛性 k’GA:せん断剛性 L:梁の長さ

r:断面の質量慣性回転半径

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山本ら[40]は船体の振動における減衰の成分に鋼材の内部摩擦、外部流体の摩擦抵抗、表 面波による造波抵抗、積荷によるエネルギー散逸をあげてそれぞれを定量化することを試 みている。長さを変更したI型鋼で固有振動数に対する対数減衰率の変化が整理され、対数 減衰率が固有振動数に比例しない結果が示されている。また、空中、水中の対数減衰率を 比較して水中の条件で対数減衰率が増加していることを確認している。ただし、空中、水 中の差異の検討では長さの異なる I 型鋼に対して支持点間距離は一定としているため節の 位置で支持をしておらず支持点からのエネルギー散逸を課題としている。さらに積荷を想 定してI型の梁にブリキ製の枠を取り付け、その中に鉄粒、砂、砂利、水を入れた場合の対 数減衰率を整理している。その結果では積荷の量の増加に伴い対数減衰率が大きく増加す ることが確認されている。また、対数減衰率は振動数に必ずしも比例するわけではないと 言及している。

以上のとおり減衰はばらつきが大きく振動数に対する傾向に関しては諸説があり明確な 傾向が得られていない。また、対象としているのは船体節振動の振動数域のみであり、船 体節振動より振動数域の高い上部構造主体の振動モードに関しては検討が行われていなか った。

近年は武田らにより減衰の同定の研究が行われている[20][41][42]。レイリー減衰をさら に拡張し質量マトリクスに対する減衰同定係数は構造の質量マトリクスに対する係数はαs、 流体の質量マトリクスに対する係数はαwとして減衰を同定している。この研究ではαwに 模型船の起振機試験から得られた値が実船でも大きく変化しないという仮定を適用してい るがその仮定の妥当性が今後の課題であると位置づけている。

以上のとおり減衰のモデル化に関して様々な取組が行われてきたが、理論的に系統立て られた実用的な減衰のモデル化は今後の課題と位置づけられる。

図6.2にGermanischer Lloydのコンテナ船を対象とした減衰モデルを示す[46]。θは減 衰比を示している。減衰は振動モードによって異なると考えられるが全船振動応答解析に 対して振動モードごとに減衰を設定することは現実的ではなく、現状ではGLの減衰モデル のように振動数に対する関数として処理をされることが多い。減衰モデルは一般的には振 動数が高くなると減衰の値も増加する傾向でモデル化される場合が多い。

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図6.2 Germanischer Lloydの減衰モデル [46]

以上のとおり減衰を理論的なアプローチでモデル化する手法は確立されておらず、現段 階では実船等の計測結果から得られた減衰を用いて理論的な考察を加えモデル化している。

6.3 実験モーダル解析法

減衰は理論的なアプローチでモデル化することが困難であり実船等の計測結果に基づき モデル化されることが多い。実船等の計測結果から減衰を抽出する手法として実験モーダ ル解析が適用される。

簡易な手法としては1自由度法であるハーフパワー法、モード円適合法などが用いられ る。これらの手法は他のモードの影響を受けていない明確な共振峰の場合に有効でありレ ーダーマストが単独で振動している場合などが相当する。しかし、上部構造が船体と連成 して振動している場合などは複数の振動モードが影響をしあう共振峰となり1自由度系で 表すことが難しいためこれらの手法では著しく精度が低下してしまう。

複数の振動モードが寄与している共振峰を扱う場合は異なる振動モードの影響を考慮し ながら複数の固有モードのモード特性を同時に同定できる多自由度法が適用される。多自 由度法のうち、周波数領域である偏分反復法が使用されることが多い。偏分反復法は比例 粘性減衰を適用し、不減衰固有角振動数、モード減衰比、慣性拘束、剰余コンプライアン スを未知数として最小二乗法を用いて収束計算を行い未知数を同定する。なお、慣性拘束 は同定の対象としていない低次固有モードをまとめて剛体モードとして近似した係数、剰 余コンプライアンスは同定の対象としていない高次固有モードによる剛性をまとめて近似 した係数となっている。偏分反復法は簡易な式で多自由度を扱える点が特徴であるが、初 期値の設定、計測データのばらつきによっては収束しないことがある。

近年、実験モーダル解析の汎用ソフトウェアーが振動モード、モーダルパラメータの同

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定に使用されている。従来の手法は比例粘性減衰を仮定していたが近年の実験モーダル解 析の汎用ソフトウェアーでは(6.5)式で表される一般粘性減衰を適用している。一般粘性減 衰を用いることで位相差を考慮した振動モードを扱うことができる[21][48]。

   

j

 

C D

jV U j

jV G U

n

r dr r

r r r

dr r

r  





 

2

1

      

(6.5)

ここに、

G(ω):コンプライアンス n:考慮するモード数 ω:起振振動数

ωdr:r次の減衰固有角振動数 σr:モード減衰率

C:慣性拘束

D:剰余コンプライアンス

Ur+ jVr :モード定数(= φriφrj/({Φr}T[P]{Φr}) φri:加振点のr次固有モードの振幅

φrj:応答点のr次固有モードの振幅 {Φr}:r次の固有モード

 

 

 

0 M

M P C

[C]:減衰マトリクス [M]:質量マトリクス

実験モーダル解析は起振機により加振した際の振動応答計測結果から求めた周波数応 答関数G(ω)を用いて減衰固有角振動数、モード減衰率、モード定数、慣性拘束、剰余コン プライアンスを同定し、振動モード、減衰などのモーダルパラメータを求める。実験モー ダル解析は船体への起振機の搭載が必要、航走時の条件でのデータが特定できないなどの デメリットがある。そのような場合には実稼働モード解析が有用となる[49]。実稼働モード 解析は起振機による加振は必要なく、船舶の航走時に主機、プロペラ、波浪などにより励 振された振動応答を入力データとしてモーダルパラメータの同定を行うことができる。た だし、起振力は未知であるため周波数帯域内で振幅が一様であるホワイトノイズと仮定し ておりモード質量を推定することはできない。

- 89 - 6.4 実船における減衰同定

船舶への実験モーダル解析技術の適用例としてはRosenowら[49]がコンテナ船で岸壁、

海上試運転時に振動計測を行い固有振動数、減衰比を抽出している。岸壁では衝撃力の加 振による従来の実験モーダル解析と波浪の加振による実稼働モーダル解析を行っており固 有振動数と減衰比で両者の相関がみられる。試運転時はアンカリング、波浪による加振、

主機のランアップ、主機の定回転運転でデータを取得し固有振動数、減衰比を抽出してい る。船舶の岸壁係留時と試運転時では喫水、タンクの積み付け、水深が異なるため海上試 運転時にデータを取得して減衰などのモーダルパラメータを求める必要があるとしている が、海上試運転時の実稼働モーダル解析では波浪による応答と主機起振力、プロペラ起振 力による応答に大きな差異があり計測システムのダイナミックレンジの関係で主機起振力、

プロペラ起振力による応答はむしろノイズになる場合があると示している。また、固有振 動数と減衰の同定は船体節振動の振動数域にとどまっている。修理ら[50]が研修船を対象と した主機のランアップ時の実稼働モード解析により船体節振動の固有振動数を同定してお り、アンカリング試験と比較することにより妥当性を確認している。また、Gianpieroら[51]

が本研修船の主機の定回転運転時と主機のランアップ時の計測結果を用いて実稼働モーダ ル解析による減衰同定を行っており、船体節振動の振動数域ではよい一致を示しているが 上部構造を含む高次の振動モードではやや乖離の大きい結果となっている。

従来の論文では大型の一般商船の船体節振動より高い振動数域での実験モーダル解析の 報告がない。そこで、近年の実験モーダル解析ソフトウェアー[52]を使用して表6.1に示す VLCC の供試船の海上試運転時に取得したデータにより減衰データの同定を行った[53]。

Rosenow らの知見に基づき、実際に航行する際の条件で実稼働モーダル解析より仮定の少

ない従来の実験モーダル解析を行うため、海上試運転時に起振機試験を実施した。また、

参考に合わせて実稼働モーダル解析を実施した。

起振機試験は海上試運転時にアンカーを落とさず漂流させた状態で船尾のセンターライ ン上に設置した起振機により上下加振(以降EMA_EXV)と左右加振(以降EMA_EXT)

を行いデータを取得した。また、実稼働モーダル解析(以降OMA)は、主機のランアップ時 に取得したデータを使用した。

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