神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第12号 2008年3月 15
■ 研究論文
中国におけるコーポレートガバナンス原則と経営者教育システム
一 企業独自原則の実効力向上のために ‑
Principlesofcorporategovernanceand也esystemofmanager‑educationinChina:
InordertoprogresstheoriginalprinciplesofChinesecompanies
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程
宣 京 哲
■キーワー ド
コーポ レー ト・ガバ ナ ンス、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則、企業独 自原則、経営者教育 システム、
経営者教育原則
1 は じめ に
1990年代 における中国企業 は、「近代 的企業制 度1」の実施 に ともな う公有制企業の株式会社化 につれて、株式所有構造の改革 と企業経営機構の 構築 といった本格 的 なコーポ レー ト ガバナ ンス 問題に直面 したと考 えられ る。具体的に、株式所 有構造では、投資家 による国有企業への投資環境 を整 えるような株式制度 を形成す ることと、企業 経営が国家行政機 関か ら独立 し、企業の経営管理 も行政の直接関与か ら分離 されたことに起因す る
2。 また、企業経営機構では、国家行政機 関か ら 独立 した企業経営者 に対す る監督 と責任問題の追 及、そ して有効なインセンテ ィブ向上体制 を整 え ることにも関係す る3。
こうした1990年代 におけるコーポ レー ト ガバ ナ ンス問題 を解決す るために、中国で は2000年 に入 って、証券監督管理委員会 (証監会) と証券 取引所 を中心に、多 くの指導意見やガイ ドライン、
報告や規則などが策定 されたのである。 それ らの 総称 は、 「コーポ レー ト ガバ ナ ンス原 則 (以下
「原則」 とい う)」 と呼ばれ る4。諸原則 の なかで も、2002年1月に証監会 が公表 した 「中国上場会 社 コーポ レー ト ガバ ナ ンス原則 (以下 「上場会 社原則」 とい う)」 が代表 的で ある。 さらに、 そ れ を皮切 りに広 まりつつ ある今 日における諸原則 と、 もっとも中国企業が独 自に自社の経営環境 に 適合 的 と思われ る企業独 自原則 を策定す ることと は、中国における株式市場の健全化において、な くてはな らない重要 な役割 を果 たす と考 えられ る。
しか し、今 日において も収 まるところを知 らな い中国 における企業不祥事 をみ る限 り5、証監会 と証券取引所 より策定 された原則 は もちろん、企 業経営者 が自ら策定 した企業独 自原則 さえ、企業 経営に反映 されてこなかったことが明 らかである。
そのため、 こうした形式的な企業独 自原則 は、単 に策定 され るにとどまらず、その実効力 を発揮す ることが重要 であるとされ る。 また、 それには、
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企業経営者 向 けに、原則 の遵守 意識 と遵守能力、
および原則への適応能力 を高 めることを目的 とす る経営者 教育 システ ムが不可欠で ある。 そこで、
2006年度 か ら証監 会 と証券取 引所 は、原 則 が実 効力 を発揮す ることに よる健全 な コーポ レー ト ガバ ナ ンス構築 を目的に、経営者教育 プログ ラム を始動 し、今 日では全国範囲で本格 的な経営者教 育 システムが形成 されつつ ある。 それ ゆえ、本稿 では、中国企業 における企業独 自原則の本質 と課 題 を明 らかにす る うえで、企業独 自原則の実効力 が発揮 され るための経営者教育 システムの実態 を 解明す ることが 目的である。
本稿 では、 まず、中国における原則の誕生 と分 顎、そ しで 性質 を考察 し、企業への浸透過程 を検 討 す る。つ ぎに、代表 的 な中国の企業3社の企業 独 自原則 に焦点 を当てて、企業独 自原則が企業経 営へ多大 な影響 を与 えることを言正明す る。 くわ え て、企業 における企業独 自原則の策定の必要性 を 強調 しなが らも、残 された問題点 を指摘 し、改善 策 の1つ と して、原則 の実効力 が発揮 され るため の経営者教育 システムを考察す る。最後 に、企業 独 自原則 と経営者 教育 との関係 を解明 し、今後、
中国における経営者教育 システム構築上の残 され た課題 を検討す る。
2 中国におけるコーポ レー ト・ ガバナ ン ス原則の体系化 と企業への浸透
2.1 コーポ レー ト・ガバナ ンス原則の誕生 と体系化
2000年10月に開催 され た 「中国共産 党十五届 五中全会」では、国家の統一的方針に、「健全 なコ‑
ポ レー ト ガバ ナ ンス構 築 は国有企業改革 を深化 させ る重要 な任務 である」 と明記 した。 これによ り、21世紀 には い り中国 が直面 した優先 的課題 と して、1990年代 にお け る一連 の国有 企業改革 に ともなって、 コーポ レー ト ガバ ナ ンス を中心 とす る課題 が明確 となった。
こうした国家の方 針 を背景に して、中国経済体 制改革研究会 と南 開大学 国際商学 院 は2000年11
月に北 京 で
、「 WT
O、企 業 発展 とコーポ レー ト ガバ ナ ンス原則検討会」 を共催 した。 この会議 に おいて、李維安 が報告 した 「中国 コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 一世界潮流 と企業改革への呼びか け
‑
」 は、多方面 で大 きな反響 を巻 き起 こ したの である。特 に、原則の策定提案 に対 しては多 くの 人々によ り賛成 の声 があが り、原則 こそが有効 な 企業経営機構 を着実 に構築 し、規範 的なガバ ナ ン ス制度 とは何かに答 えることがで きると強調 した のである6。この よ うな なか、李 維安 は研究 チ ーム を発足 し、2001年2月に 『中国 コーポ レー ト ガバ ナ ン ス原則 (草案)』 を公表 した7。草案 では原則 のあ り方 が きめ細 か く紹介 され、一刻 も早 く原則 が誕 生 す ることに大 きな期待 が寄せ られ た。 その後、
2002年1月に政府機 関である証監会 と国家経済貿 易委員会 (経貿委) は、上場会社原則 を共 同で策 定す ることになった。 そ して、 この上場会社原則 を皮切 りに広 まりつつ ある今 日の中国 における諸 原 則 を分類 化す る と、 図表1の よ うに、大 き く3 つ に分 けることがで きる。
1つ 目の政府原則 は、全 国人民代表常務委員会 (常委会)や証監会、国有資産監督管理委員会 (国 資委) などの国家の統一 的方針 を定 め る政府機 関 が策定 した原則 を指す。それ らには、法令化 され た会社法や証券法 な どが含 まれ、企業 に対 し法的 拘束性 を持つ とい える0‑万、法令化 され たわけ ではないが、上場会社 が必ず参照す るべ き上場会 社原則 も含 まれ、上場会社 に対 し強力な拘束力 を 持つ と評価 されてい る8.
2つ 目の証券取 引所原則 は、上海証券取 引所 (上 証所) と深
別
証券取引所 (深証所) が策定 した原 則 を指す。 それ らには、必ず遵守 すべ き上場規則 や会員管理原則 などが含 まれ、企業 に対 し強制性 を持つ といえる0‑万 、企業 に対 して、模範 的情 報 を提供す る取締役会議事模範原則 も含 まれ、企 業 が独 自に策定す るよ うな提案性 を持つ とい える 9O3つ 目の企業独 自原則 は、上場 してい る個 々の 企業単位 が策定 した原則 を指 し、宝 山鋼鉄の投資
中国におけるコーポレー ト ガバナンス原則と経営者教育システム 17
図表1 中国におけるコーポ レー ト ガバナ ンス原則の分類
分類 原則一覧
政府原則 独立取締役指導意見 (2001) 投資家 との利害調整手引 き (2005) (常委会) 上場会社原則 (2002) 上場会社株主総会原則 (2006) (証監会) 少数株主の権益保護原則 (2004) 上場会社定款手引き (2006) (国資委) 会社法、証券法 (2005) 情報開示管理原則 (2007)
証券取引所原則((上証所)深証所) 上場規則 (2004) 取締役会議事模範原則 (2006) 独立取締役事務報告原則 (2005) 監査役会議事模範原則 (2006) 企業内部統制手引 き (2006) 会員管理原則情報開示の事務管理制度手引き(2007) (2007) 企業独自原則 投資家関係管理原則 (宝、民) 取締役会議事原則 (共通)
(宝山鋼鉄) 内部統制原則 (育) 執行役会長業務原則 (万)
(注)企業独lきし原則は、3祉以外にも多くの企業により策定され、その純理も多様であるOただ、本稿でこの3杜を取り上げるIl‑l壮]t原則 の詳細については、第3節で具 体的に論じる。
(出所)筆者作成。
家関係管理原則、万科の執行役会長業務原則、民 生 の独立取締役業務原則 などがそれ に相 当す る。
企業独 自原則 は、主 に企業経営者 に関す る正 当な 行動指針などを志向す る原則 であるため、企業経 営者 に対 し強力な遵守性 を持つ と考 えられ る。
2.2 コーポ レー ト・ガバナ ンス原則の企業への 浸透過程
このなかで、政府原則 と証券取引所原則 は、最 終的に企業への浸透 を図 ろうとす る。 そ して、企 業 が自社の経営環境 に適合 的 とされ る企業独 自原 則 を策定 し、 その実効力 を発揮 してい くことこそ が、健全 なコーポ レー ト・ガバ ナ ンス を構築す る
うえで不可欠だ といわれてい る。
ここでは、政府原則 と証券取引所原則の企業へ の浸透過程 を考察す るが、その際、上場会社原則 の策定 において大 きく参考 とされたOECD原則 に つ いて も触 れ なければな らない。 その理 由は、 ま ず、OECD原 則 をめ ぐる先 行 研究 と して、平 田 [2001] と小島 [2006] の論考 があ り、 その研究 成 果 と して、OECD原 則 を世 界標 準 と して扱 う ことが可能 で あ る と認識 され た ことで あ る, ま た、OECD原則 は、 アジア諸国や東 ヨーロ ッパ な どにおけるOECD非加盟国 をも、対象 と して扱 っ
た内容 であ り、OECD非加盟 国の一国で ある中国 に対 して も強い影響 を与 えることが可能で あると 考 え られ る10。 さらに、2007年3月29日に上証所 とOECDが上海 で共催 した 「中国 におけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンス政策 に関す る対話会」 によれ ば、証券取引所 は政府機 関 ともにOECDを始 め と す る国際機 関の経験 を積極 的に参考す ることを表 明 した11。
では、 図表2を用 いて、原則 の企業へ の浸透 過 程 を検討す る。 まず、政府原則 は世界標準原則の 強い影響 を受 けなが ら成熟化 し、証券取 引所原則 の策定 に基礎 的情報 を与 えるの で あ る。つ ぎに、
証券取 引所原則 も世界標準原則 の影響 を受 けつつ、
政府原則 を参考 に しなが ら、最善 の規範 となる原 則 を策定す るのである。 くわ えて、政府原則 と証 券取 引所原則 は、相互 に連携 しなが ら企業へ浸透
し、企業独 自原則の形成 に役立 たせ うるのである。
最後 に、企業独 自原則 が策定 され、その実効力 を 発揮 してい くことによって、企業 の コーポ レー ト
・ガバ ナ ンス関連 問題 が解決 され ることが可能 だ と考 え られ る。
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図表2 コーポ レー ト・ガバナンス原則の企業への浸透
3 中国 にお ける企 業独 自型 原則 の実践 と限界
3.1 上場会社 と企業独 自原則
中国の企業 では2004年度 後半 か ら企業独 自原 則が活発に策定 され始めた。そこで筆者 は、中国 最大の鋼鉄企業である宝山鋼鉄 (以下 「宝鋼」 と い う) と、中国最大の不動産企業である方科企業
(以下 「万科」 とい う)、そ して民間銀行 として初 めて上場 された民生銀行 (以下 「民生」 とい う) の3社における企業独 自原則 を研究対象 として扱
うことにす る。その理由は、大 きく以下の2点に まとめることがで きる。
第1に、株式所有構 造 において、3社 それ ぞれ が異 なる所有構造 を形成 しているが、企業成長 は 共 に顕著 で ある。具体 的 には、 まず、2006年度 末 時点 において、宝鋼 は国家所有 の非流通株 が 78%を占めている企業 である。 そ して、万科 は流 通株 が8割以上 を占め る中国最大の流通株割合 を 形成 している企業である。 また、民生は非流通株 49.5%と流通株50.5%で構成 され るように均等的割 合 を形成 している企業である。 このような大 きく 異 なる株式所有構造であるに もかかわ らず、近年 における3社の企業経営 は、 ともに健全かつ著 し い成長 をみせつつ ある12。
第2に、3社 にお け る企業 経営機構 の共通点 と して、 まず、取締役会内に専門委員会 が設置 され、
監査、報酬、指名委員会の うち、ほぼ全員が独立 取締役 よ り構成 され、戦略委員会 に も参加 してい るよ うな独立取締役制度 が重要 で ある。 そ して、
最高経営責任者の執行役会長 と、 これ を監督す る 取締役会長 とが分離 され るような意思決定機能 と 執行機能の分離 を図 ることで、権力の拡大 を防 ぎ、
企業の効率的なガバ ナ ンス体制 を構築 しよ うとし ていることも共通の特徴である。
こうした3社の健全な経営機構構造 と役員の効 果的な経営行動が企業価値 を高 めたと考 えた場合 に、その土台 となるもの とは何かを解明す ること が、3社 を取 り上 げた主要 な理 由となる。
3.2 宝山鋼鉄の投資家関係管理原則
宝鋼の企業独 自原則には投資家関係管理原則 を 含 む6つの原則 がある。 ここで、特 に考察 を加 え たいの は、2005年12月に策定 され た投 資家 関係 管理原則である。その理由は、多 くの研究者 が指 摘するように、企業 において国家所有の非流通株 が大部分 を占めていることは、少数株主の権利 が 侵害 されやすいなどの問題が生 じるため、非効率 的経営 をもた らす ことになるとしているところに ある。
た しかに、非流通株が多 く占め られてい る企業 では、先進市場国における多数の株主 による企業 経営への監督に比べ、企業経営の監督役割が十分一 果 たされ ないなどといった問題が存在す るといえ
中国におけるコーポレー ト・ガバナンス原則と経営者教育システム 19
図表3宝山鋼鉄 の投資家関係管理原則
① 目的と
本原則は投資家の利益 を高度に重視する一方、投資家 との対話を充実 させ、投資家尊重の文化を構築す る ことを目的とする。投資家に真実な情報を、公平かつ適時に開示することを約束 し、すべての投資家 を平等 に扱い投資家の意見や苦情を積極的に収集することを大原則 とする。
②対話内容 と方式
対話内容には一般会計情報の公開に限 らず、企業戦略や発展方向、競争戦略や経営方針、企業文化の構築 も含 まれる。対話方式は株主総会以外に、投資家大会 を定期的に開催 し、マスコ ミのみならず、電話や ファッ クス、電子メールやネッ ト対話、 さらに 「一対
一
」会談 も設けるO③管理組織 と社内教育
取締役会長 を管理組織の第1責任者 とする。管理組織は適切な方式で、社内幹部 と全従業員に対 し、投資 家尊重の意識 を高めるような相関知識の教育に積極的に取 り組むことにす る。
(.ll.所)宝山鋼鉄 (2005)瞳と資家関係管理̲原則』を基に、筆者作成o る。 しか し、宝鋼の投資家関係管理原則の ように 投資家 との利害 関係 を健全に構築 しよ うとす る指 針が定 め られ、それ を実効 してい く条件 さえ整備 されれば、必ず しも非効率的経営だ とは言 い切れ ないだろ う。
宝鋼 の投資家関係管理原則 は、7章22節 よ り構 成 され、重要 な内容 をまとめ ると、図表3の よ う に3項 目とな る。宝鋼 が中国雑誌 『新財経 ‑ きれ
い50』 において、「2005年度最 も尊敬 され る上場 会社」 と呼ばれたの もユ3、2006年11月版 の イギ リ
スの投 資家関係雑誌 において、「投資家関係最 優 秀進歩貰」 を授賞 され たの も】4、投資家関係管理 原則が土台 となって、その実効力 を発揮 して きた
ことが原 因の1つであるとい えよ う。
3.3 万科企業株式会社の執行役会長業務原則 万科の企業独 自原則 には執行役会長業務原則 を 含む6つの原則 がある。 ここでは、2004年12月に 策定 され た執行役会長業務原則 を考察す る。 その 理 由は、中国における連 日の企業不祥事 をみ ると、
1つ は執行役会長 が 自己利 益 を満 足 させ るため、
倫理性 を失 った行為 を犯す ことで あ る。 もう1つ は執行役会長の無能力 によ り、会社の実力 を上 回 る投資行動 などを取 ることによる企業破綻 が生 じ ることである。すなわち、収 ま らない企業不祥事 の背後 には、執行役会長の違法経営や無能経営が
図表4万科企業の執行役会長業務原則
①執行役会長の権限と業務手順
執行役会長は、取締役会に必ず参加することと、臨時取締役会の開催を提案する権利 を持つ。重大投資プ ロジェク トは、投資と策略委員会の承認 を必要 とし、プロジェク トの執行担当者や監督者 を明確に し、定期 的に実施状況や監査項 目を報告することになるO
⑦執行役会長の責任
執行役会長は従業員の給与や福利、労働保険などの利害 に関わる問題 を制定 ・改訂す る際に、事前に労働 組合の意見を聴取する。従業員の育成や教育 を強化 し、従業員に十分な成長空間を与 え、積極性 と創造性 を 十分に生かせ るような企業文化を創造するために努力すべ きである。
③執行役会長の禁止行為
執行役会長は当社の業種 と同類の会社を経営するのを禁 じ、賄賂、不法収入、会社財産の占用 と流用など の不法行為に関わってはいけない。 また、取締役会の同意 を得ずに、当社の株主 と担保や情報提供などの行 為があってはならない。
(山所)‑Jf科企業 (2004)『執行役会長業務原則』を基に、筆者作風
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あ っ た こ とは疑 う余地 が ない。 その た め、執 行役 会長 を規 律 づ け る議 論 が注 目 され るが、 もっ と も 執 行 役会 長 の正 当 な行 動 指 針 が基盤 とな り、 その 実 効 力 を発揮 す る こ とが重要 で あ る点 も見 逃 して は な らな い。
万 科 の 執 行 役 会 長 業 務原 則 は、7章22条 よ り構 成 され、 重 要 な 内容 を ま とめ る と、 図表4の よ う に3項 目 とな る。 万 科 が 中 国 の雑 誌 『新 財 経 ‑ き れ い50』に お い て 、 「最 優 秀 コ ー ポ レ ー ト・ガバ ナ ンス シス テ ム を持 っ た会 社」 と呼 ば れ たの も、
2006年度 まで に3年 連続 の 「中国最優 秀企業 市 民」 称 号 を獲 得 したの も、企 業 独 自原則 の策定 と、 そ の実 効 力 を発 揮 す るよ うな揺 れ ない基盤 が あって こそ、達成 で きた とい って も差 し支 えないだ ろ う
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3.4 中国民生 銀 行 の独 立 取 締 役 業務 原則 民生 の企 業 独 自原 則 に は独立取 締 役業 務原 則 を 含 む11個 に の ぼ る原 則 が あ る。 こ こで、2005年 6月 に公 表 され た独 立 取 締 役 業 務 原 則 を考 察 す る。
その理 由 は、 中国 で最 初 に上 場会 社 ガバ ナ ンス価 値 を高 め る こ とを 目的 に設立 され た連 城 国 際研究 顧 問 集 団 の2006年 度 に お け る コ ーポ レー ト ガバ ナ ンス評 価 報 告 に よれ ば、民生 は取締 役 ガバ ナ ン ス価値 の評 価 に お いて トップの座 を獲 得 して お り、
それ を推 し進 め たの が独立 取 締 役 業 務 原 則 で あ る と考 え られ る こ とで あ る。
民 生 の 独 立 取 締 役 業 務 原 則 は、8章33条 よ り 構 成 され 、重 要 な 内容 を ま とめ る と、 図表5の よ うに3項 目 とな る。 連 城 国 際代 表 で あ る王 中傑 は、
「民 生 の取 締 役 は、 社 会 的責 任 を強 く意 識 し、 健 全 な細 則 を基 に実 効 力 を発揮 して い るため、企 業 経 営機 構 の運営 効率 は最 高 だ とい え る」 と評価 し て い る】6。
小 島 [2004]は、 企 業 不 祥 事 へ の 対 処 と企 業 競 争 力 の強 化 とを 目的 に、企業 経 営 目標 と企 業 経 営機 構 改革 との両 者 を持 ち合 わせ た原 則 が企 業 独 自原 則 で あ る と して い るユ7。
そ こで 、既 述 した中国 の企業 独 自原 則 を振 り返 る と、 まず 、宝 鋼 の投資 家 関係 管 理 原 則 は株 主 尊 重 主 義 を構 築 す る こ とを 目的 に、社 内全 員 の投 資 家 に対 す る尊重 意 識 を高 め よ うとす る内容 で あ っ た。 つ ぎに、万 科 の執 行 役会 長業 務 原則 は企 業 不 祥 事 の 防止 と企 業 競 争 力 の強化 を 目的 に、執 行 役 会 長 の 経 営 の正 当性 と厳 格 な説 明 責 任 を要 求 し、
従業 員 と良 き労使 環 境 を創 造 しよ うとす る内容 で あ った。 そ して、民 生 の独立 取 締 役 業 務 原 則 は独 立 取 締 役 の モニ タ リング機 能 の強 化 を 目的 に、権 力 の配 分 と監 督体 制 、 お よび企 業 経 営 へ も積極 的 に参 加 で きる よ うな環 境 を作 り上 げ よ うとす る内 図表5 中 国民生銀 行 の独立 取 締 役 業務 原 則
(∋独立取締役 の指名要項 と就任条件
指名人 は被指名人の職業や学歴、経歴 や兼任 な どを十分 に理解 し、詳細 に説明 した うえで資格 と独立性 に つ いて明確 な意見 を提示す る。 また、両者の関係 が独立性 に影響がない ことについて誓 を立 て る。独立取締 役 の人数 を3分の1以上 に守 り、少 な くとも1人 は会計専門家 にす る。免職 され る場合 はその理 由が不当 だ と 認識すれば、公開的声 明が可能 となる。
②独立取締役 の権利 と兼務
重大取引 は独立取締役の認可 を得 てか ら議論す るが、報告 内容の認可判 断 を事前 に仲 介機構 や独立財務顧 問 を招堰 して依拠す ることがで きる。専門委員会 の召集人 は独立取締役 が担 当 し、取締役会 の決議 が違法で あって も反対意見 を出 さない場合、厳重 な処分 と して失職 とす る。
(む独立取締役 の業務執行 に対す る支援
取締役会 で討論 す る事項 を事前 に独立取締役へ提供 し、会議 中で資料 が不充分だ とした場合 は会議 を延期 す ることになる。独立取締役 が権限 を行使す る時、ほかの役員 は必ず援助 し、拒絶、妨害、隠 しごまかす こ となどは絶対許 され ない。独立取締役 が仲介機構 を招樗 す る際にかか る費用 はすべて企業負担 とな る.独立 取締役の危険性 を考慮 して、責任保険制度 を提供す る。
(山所)民生銀行 (2005)『独立取締役業務原則』を基に、筆者作成。
中国におけるコーポレ‑ ト ガバナンス原則と経営者教育システム 21
容 であった。すなわち、3社 における企業独 自原 則は、 ともに企業経営 目標 と経営機構改革 との両 者 を持 ち合 わせた ものである。 そのため筆者 は、
こ うした原則 を小 島 [2004] が提 唱 してい る企 業独自原則であるとして、論 を展開 して きたので ある180
3.5 企業独 自原則の必要性 と限界
そ もそ も、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス問題 は経 営者の不正や無能力により、企業不祥事が続発 し、
企業競争力が低下する背景 が発端 となっていると いわれている。 これ らは結局、従業員のモラル低 下や顧客の離れ、株価の下落や環境汚染、 ときと して社会全体 に も影響が及ぶので ある。 そこで、
直接 あるいは間接的に損害 を被 る諸利害関係者 は、
経営者 に対 し厳 しい制約 を要求す るようになって きた。
このよ うななかで、経営者 は厳 しい制約 を乗 り 越 えて自由な経営 を行なお うとす るな らば、株主 を含む諸利害関係者 との信頼関係 を構築す る必要 がある19。 しか し、信頼関係 と言 うのは長期間 に わたる経営者 による健全な企業経営 と、それにと もな う企業価値の向上がなければ、達成す ること はで きない といわれている。 そこで必要 なのは、
経営者 自 らが社内外に向けて、積極的に自分の経 営行為の正当性 を主張するツ‑ル となる企業独 自 原則であると考 えられ るO
平田 [2001]の 「コーポ レー ト ガバナ ンス問 題 はつ まるところ経営者問題 に他 な らない」 と、
小 島 [2003b] の 「コーポ レー ト ガバ ナ ンス問 題は経営者問題が中心 とな り、 この間題 を抜 きに しては論 じることも、実践す ることもで きない」
とは、 まさに経営者が自分の正 当性 を主張す る必 要性 を示唆 し、それがコーポ レー ト ガバ ナ ンス 改革の本質であると考 えられ る2°。
したがって、企業経営者 は自社の経営環境に適 合的 とされ る企業独 自原則 を策定 し、それに基づ く倫理性 に徹 した企業経営 を行 うことこそが、社 会 に信頼 され る企業 として評価 され、企業価値 の 向上に もつながることが可能であると断言 して も
異論 はないだろう。
とはいえ、中国における多 くの上場会社では企 業独 自原則が策定 されているものの、信頼関係 は もちろん、経営成績 に さえ反映 されて こなかった のである2]。 この ことは、企業独 自原則 は、必ず 自社の遵守能力の範囲内に収容 させ られ るもので なければな らないことと、その実効力が重要であ ることを教 えて くれ る。
この点 を考 えて、中国における企業独 自原則の 問題点 を整理すると、 まず、多 くの企業独 自原則 は政府機関 と証券取引所による厳 しい要求や指示 の もとで受動的立場に立 って策定 されたため、実 効力のない形式的な原則になって しまった。 その ため、経営者 が主導的立場 に立 って原則の策定 と 向 き合わなければな らない一方、企業経営者 の企 業独 自原則への遵守意識 を高 めることが必要 とな る。つ ぎに、企業独 自原則には企業の遵守能力 を 上回るよ うな細かい原則が多 く、企業経営への応 用には長 い時間がかかるのである。 そのため、原 則 を自社の経営環境に適合 的 とされ る最低限の必 要な ものに絞 る必要がある一方、企業経営者の企 業独 自原則への遵守能力 を高 めることが必要 とな る。 くわ えて、原則 を機械的に適用す るのではな く、常に変化 させ 自社の実態 に合 わせ なが ら有効 性 を構築す るような企業経営者の企業独 自原則へ の適応能力 を高 めることが必要 となる22。つ まり、
企業独 自原則の実効力を発揮 させ るには、企業経 営者の企業独 自原則に対す る遵守意識 と遵守能力、
そ して適応能力 を高めるシステムが不可欠である と考 えられ、それ を実現 させ る方法 と して、次節 で論 じよ うとす る中国における経営者教育 システ ムであると考 えられ る。
4 中国における経営者教育 システム
4.1 中国における経営者教育 プ ログラムの 目 的
今 日、経営者教育 をめ ぐる議論 は次第 に高 ま りつつ あ る。 それ は、企業 内部 にお け る経営現 場上 トレーニ ング
( OJ T)
の実施や組織 内育成方22 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報j第12号 2008年3月
式 の導 入、企 業外 部 にお け る経営 専門職大学 院 (GraduateBusinessSchool)の設立や営利 ・非営 利組織 による経営者育成 コースの導入 などである
23
0
そ して、 これ らの 目的は、おおむね企業経営者 の戦略構築能力 とリーダーシ ップ能力の向上 を実 現 させ ることで あると考 え られ る。 た とえば、ア メ リカの経営専門職大学 院 におけ るMBAコース は、主 に財務 と会計、 そ してマーケテ イングなど の経営技術 、 または経営戦 略 の教育 を中心 とす るので ある24。 また、 アメ リカの大企業GEやIMB、 ジ ョンソン&ジ ョンソンやモ トローラなどの企業 内部 において実施 され る経営者教育 プログラムは、
グローバル競争下での リーダーシップや事業戦略、
人間関係や顧客志向などの教育 を中心 とす るので あ る250 さらに、 日本 の企業 ソニ ーが実施 して き た経営者 教育 プ ログ ラム 「ソニ ー ・グ ローバ ル ・ リーダーシ ップ ・セ ミナ
ー
」 も、 トップの考 えて い る課題 を現場 に伝達す ることや、 トップの人材 発掘能力 を向上 させ るといった リーダーシップ能 力の向上 が中心 となっていたのである26。これに対 して、中国における経営者教育 システ ムは、政府機 関である証監会 が主導 的立場 に立 っ て取 り組んでい ることが特徴 となる。 その 目的 と して、企業経営者 が諸原則 を遵守す る意識 と遵守 す る能力、 さらにはそれに適応す る能力 を高 め る ことに よ り、健全 な コーポ レ‑ 卜・ガバ ナ ンス構 築 を図 り、有効 な企業経営 を構築 し、健全 な資本 市場 の発展 を促進す ることで ある27。つ ま り、 中 国において、企業独 自原則が盛んに策定 され、多 大 な注 目を集め るなか、企業経営者 に対す る企業 独 自原則への遵守意識 と遵守能力、そ して適応能 力 を高 め ることが、経営者教育 プログ ラムの主 な
目的であるといえる。
4.2 中国 における経営者教育 システム とプ ロ
セス
ここで は、図表6を用 いて、中国におけ る経営 者教育 システムを明 らかにす る。
中国 において、経営者教育 プ ログ ラムを駆動す る機 関は、主 に証監会 と証券取 引所 である。証監 会 は、2005年12月に上場会 社 経 営者 教育 原 則 を
図表6中国にお ける経営者教育 システム
(出所)筆者作成。
中国におけるコーポレー ト ガバナンス原則と経営者教育システム 23 図表7中国における経営者教育のプロセス
(山所)筆者作成。
策定 し、教育対象 を上場会社における取締役会長 と取締役、監査役 と独立取締役、執行役会長 と最 高財務責任者、および取締役秘書 と した'280そ し て、本原則は教育対象別に、取締役会長 と執行役 会長教育細則、取締役 と監査役教育細則、最高財 務責任者教育細則、独立取締役教育細則、取締役 秘書教育細則の5つの細則 と分け られ、2006年 か ら全国各地で本格的に取 り組むことになったので ある。
一方、上海証券取引所は、会員企業の経営者教 育の効果性 をよ り高 めることを目的に、2006年3
月に、取締役秘書 と独立取締役に限って、取締役 秘書教育原則 と独立取締役教育原則 を策定 したの である。なお、両原則 とも、証監会が策定 した取 締役秘書教育細則 と独立取締役教育細則 をそれぞ れ参照に策定 されたものである29。
では、図表7を用いて、経営者教育原則 に沿 っ て実施 されている経営者教育のプロセスを考察す る。
まず、全体的プロセスとして、証監会 は、経営 者教育原則 を策定 し、企業経営者がそれ を遵守す ることを求めている。つ ぎに、具体的プロセスと して、証監会 は、経営者教育 を行 う教育機関を設 置 し、集中講義やネ ッ ト教学 などといった教育方 式のプログラムを実施す るのである。 そ して、教
育 プログラムへ参加 されている企業経営者 は、一 定期間の教育 を受けた後、テス トを受 け、合格す れば、合格証書が付与 され るのである。
4.3 経営者教育原則 における教育内容 そ して、経営者教育原則 にどのような教育 内容 が含 まれているのか を細則 ごとにまとめたのが図 表8である。
これ をみ ると、中国における経営者教育 システ ムは、 まず、企業経営者 に対 して、 コーポ レー ト
・ガバ ナ ンス現状 の把握 の重要性 を認識 させ よ う とす る 目的が明 らか にな る。つ ぎに、企業経営 者 に対 して、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス周辺問題 をめ ぐる法的規定 または原則の学習能力 と遵守意 識 を高めようとす ることが明 らかになる。 さらに、
諸原則の運営方法や事例分析 などと、経営戦略 と の相互の連携関係 を構築 し、企業成長 を図 ろうと す ることが明 らかになる。
5 経営者教育 システム と企業独 自型原則 の実効力
今 日、経営者教育 をめ ぐる議論が注 目を浴びつ つ ある。 そのなかで も、中国では、政府機関が主 導 的立場 に立 って、主 に、 コーポ レー ト ガバ ナ
24 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第12号 2008年 3月
図表8 経営者教育原則 にお ける教育 内容
①取締役会長 と執行役会長教育細則 (1)基本項 目
コーポレー ト ガバ ナ ンス現状 と最新政策の動向、法律枠組 と法律問題、取締役会長 と執行役会長の行動 規範、情報開示規範や コ‑ポレー ト ガバナンス評価体系、そして監督管理状況の分析がある。
(2)管理戦略項 目
財務理念 と財務危機意識、資本運用 と戦略的管理、投資分析 と経済金融状況の分析、証券市場の動向 と未 来への展望、証券法の改訂内容 と企業家の挑戦的思想へのアプローチがある。
(3)資本市場運営項 目
企業のM &A事例 と再融資政策の分析、そしてST (特別処理銘柄)会社 と上場廃止会社の事例分析がある。
(4)交涜項 目
取締役会長 と執行役会長の他社役員との経験交流や商務上の礼儀、および企業見学がある。
①取締役 と監査役教育細則 (1)基本項 目
コーポ レー ト ガバ ナ ンスの基本原則 と法律枠組、取締役 と監査役の権利 と義務 と法的責任、情報開示規 範 と資金募集上の基本規範、および相関事例の分析がある。
(2)管理知識項 目
財務監査意識 と財務諸表の解読知識、企業の発展戦略の分析 と内部統制、そ して投資分析がある (3)資本運営項 目
企業のM&A事例 と融資方法および政策指導、投資家関係の管理 と教育がある。
(釘独立取締役教育細則 (1)基本項 目
コーポ レー ト ガバ ナンス現状 と最新政策の動向、法律枠組 と法律問題、独立取締役の行動規範 と情報開 示規範、独立取締役指導意見 と事例分析、上場会社の監督管理状況の分析がある。
(2)管理戦略 と資本運営の項 目
財務理念 と財務危機への意識強化、取締役に対す る科学的管理方法、独立取締役の役割 と危機 に陥った上 場会社の分析、ST会社 と上場廃止会社の事例分析、報酬 と成績評価 および各委員会の運営がある。
(3)交流項 目
独立取締役の他社役員との経験交流や商務上の礼儀、および企業見学がある。
④最高財務責任者教育細則 (1)基本項 目
企業会計原則 と相関規定、企業会計制度の執行 と会計政策の選択、情報開示規範 と法的責任 および典型的 な事例分析、資金募集上の規定 と事例分析、不正会計上の法的責任 と相関事例の分析がある。
(2)財務能力項 目
粉飾決算の識別、財務戦略と事例分析、財務予算上の管理 と計画、投資分析 と監査事例の分析、税制改革 と納税相関の知識、再融資上の投資問題 と年度財務報告書の分析、ST会社 と上場廃止会社の分析がある。
(3)交流項 目
最高財務責任者の他社役員 との経験交流や企業見学、および体験式教育がある。
①取締役秘書教育細則
(1)資格 を獲得す る場合の教育項 目
基本権利 と職責、義務 と法的責任、上場規則 と情報開示の相関規定、上場廃止や特別処理および上場回復 などの知識、証監会 と証券取引所の審査 システムの了解や定期報告 システムの知識、年度報告 と半年度報告 および4半期報告の格式規定、情報開示の電子化 と投資家関係の基本知識がある。
(2)後続す る場合の教育項 目
上場規則 と情報開示の相関新規則、再融資と資金募集上の相関規定、情報開示の監督管理 と事例分析、財 務 と会計および監査上の新規定の学習、勤勉 さと責任感、法律 と規範の遵守意識、他社役員 との経験紹介 と 相互交流がある。
(出所)筆者作成。
中国におけるコーポレー ト ガバナンス原則と経営者教育システム 25
(.I̲冊T・)筆者作 成o
ンス関連問題 を解決す ることを目的 として、取 り 組 んでい ることが特徴であると考 えられ る。 そ し て、 コーポ レー ト ガバ ナ ンス関連 問題 の解決法 として、近年、盛 んに策定 されつつ ある原則、特 に、
企業独 自原則 に対す る遵守意識 と遵守能力、そ し て適応能力 を高 めることが、経営者教育 システム の大 きな狙 い となる。
この点 を踏 まえて、中国における経営者教育 シ ステムと企業独 自原則の実効力 との関係 を探 ると、
図表9の ような流れになると考 えられ る。
まず、企業経営者 は、政府原則 と証券取引所原 則 とを参照に、自社の経営環境 に適合 とされ る企 業独 自原則 を策定す るのである。つ ぎに、企業経 営者 は、経営者教育 プログラムへ参加 し、一定期 間の教育 を受 け、原則の遵守意識 と遵守能力、 そ して原則への適応能力 を高 めてい くので ある。最 終的に、企業独 自原則 をめ ぐる諸問題点 をク リア
しつつ、その実効力 を発揮す ることが可能 とな り、
有効 な企業経営へつなげることが可能 だ と考 えら れ る。
以上、政府機 関である証監会 が取 り組 んでいる 経営者教育 システムを企業独 自原則の実効力 とも に考察 して きた。 この他、民間機関である連城 国 際研究顧問集団 も、近年、経営者教育 プログラム を大 きく取 り組んでお り、 その狙い も上場企業の コーポ レー ト ガバ ナ ンス価値 を高 め ることで あ
り、原則の遵守問題や応 用問題 な どが中心 となる。
この ことか ら、中国における経営者教育 システ ム は、健 全 な コーポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 を 目的 として、 これ を後押 しす る諸原則の実効力が発揮 され ることを目指すのが最大の特徴で あるといっ て も過言 ではない。
6 おわ りに
本稿 では、中国における経営者教育 システムを 企業独 自原則の実効力 ともに考察 して きた。具体 的に、企業独 自原則の本質 と問題点 を指摘 し、改 善策 と して経営者 教育 システ ムの必要性 と概要 、 および企業独 自原則 が実効力 を発揮す ることとの 関係 を掘 り下 げたのである。最終 的に、企業独 自 原則 の策定 とその実効力 を発揮 す る企業経営 が、
企業成長 につ なが ることを可能 にす るとい う結論 と、企業独 自原則が実効力 を発揮す るには、企業 経営者の原則 に対す る遵守意識 と遵守能力、 およ び適応能力 を高 めることが不可欠 とな り、それ を 実現 させ るのが経営者教育 システ ムで あるとい う 結論 を導 き出 した。
そ して、今後 の課題 と して、以下 の4つ が挙 げ られ る。1つ 目は、 なぜ、 日本 や アメ リカな どの 市場経済先進国 と、中国における経営者教育 の シ ステムは違 うのか、 といった国際比較 的な観点か
26 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第12号 2008年3月
らの研究 で あ る。2つ 目は、 中国 にお け る経営者 教育 システ ムは、企業独 自原則の実効力 を発揮 さ せ る ことに役立 たせ ると論 じて きたが、その貢献 度 の大小 の究 明や、 システ ム運営 の現状 な どをよ り突 き詰 めて考 え るこ とが、重要 な課題 とな る。
3つ 目は、経営者 教育 プ ログ ラムには、集 中講義 な どが設 け られて い るが、海外出張 中の経営者 な どを考慮 すれ ば、企業経営者 を1つ の場所 に集 め て教育 させ るには、困難 さが と もな うの で あ る。
その ほか もコス トや教育品質 な どの教育 プログ ラ ム運営上 の問題点 が多 く予想 され、 これ らをいか に ク リア してい るのかな どを、 さらに掘 り下 げ る 必要 が ある。
最 後 の4つ 目は、経営者 教育 システ ムが有効性 を発揮す るには、他者 による基礎 的知識の提供の み な らず、企業経 営者 自信 の意識改善 が必要 で あ ると考 え られ る。 そのため、企業経営者 が 自社 の 健 全 な コーポ レー ト ガバ ナ ンス構 築 と持続 的企 業 発展 の ため、 いかに意識改善 を行 うのか、 そ し て、 それ らをいか にサポー トしてい くのかが、 中 心的 な課題 とな ると考 えられ る。
【 注】
I 1993年 に実 施 され た 「近代 的企 業 制 度 」 の 内容 は、主 に、所有権 の帰属 、財産権 と所有 責任の明確 化、政企分離、科学 的管理制度 の 形成 、 とい う4つ の改革 目標 が中心 に構成 さ れ た。
金 山 [2007]170‑171頁 劉 [2003]164‑167貢
小鳥 [2003a]93頁 で は、原則 の 目的 を企業 不祥 事への対処 と企業競争力の強化 に設定 し、
その意義 と して、有効 な企業経営機構 を構築 し、諸利害 関係者 との利害調整 を達成 す る健 全 な コーポ レー ト ガバ ナ ンス構 築 を実 現 す る もので あると した。
中国公安 省 は、2006年5月23日に、2005年度 にお け る経 済 犯罪事件 が6万 件 を超 え、年 間 5万 人 を逮 捕 した と発表 した。 さ らに、 中国
の会 計検査 当局 も、2005年1月か ら11月 まで における政府機 関 と国有企業 の不正会計処理 を発表 し、不 正 会 計2,900億 元 (約40,024億 円) が発見 され た とい う。 この発表 は、汚職 や横 領 な どの不正 会計 で あ り、全 国 で196人 の幹部 が司法機 関や党の規 律検査部門の審査
を受 けた ことを も浮 きぼ りに した。詳 しくは、
日本経済 新聞2005年12月26日付、2006年5月 24目付 を参照の こと。
王・ 劉
[2001
]38‑39頁 南 開 [2001]証監会 と経貿委 は、上場会社原則 を基 に、上 場会 社 にお け るコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの 実施状況 の検査 な ど も行 っていたため、上場 会社 に対 し十分 な拘束 力 を持つ とい える。詳 しくは、金 山 [2007]170頁 を参照 の こと。
9 上場規 則 な どの一部の証券取引所原則 は、機 能上 または内容上 、政府原 則 と重 な る条項 も あるため、両原則 を同一視 す ることも可能 で あ ると考 え られ る。 なお、本稿 では、 中国 に お け るコーポ レー ト ガバ ナ ンス原 則 を、読 者 に よ りわか りやす く伝 えるために、分類す ることに した。
10 儲 [2001]に よれ ば、 上 場 会 社 原 則 は、 会 社法や証券法 な どの法律 に基 づ き
、OECD
原 則 を参照 しなが ら、中国上場会 社の実態 を考 慮 した うえで、策定 され た と してい る。11 桂 [2007]
12 3社 の2004年度 か ら2007年第1・四半期 までの 経 営 指標 に よれ ば、宝 鋼 は
EP S
とROE
の み、万 科 は
BP S
とEP S
のみ、民 生 はBP S
のみ が 自 己資本 の拡大 や大量 な非流 通株 の放 出 よ り、若干下 がってい るものの、 それ以外 のすべて の指標 は右肩上 が り趨 勢 を示 してい る。
34LJ;67cc
新財経 [2006]48‑50頁 宝鋼 [2006]12頁 新財経 [2006]46‑47頁 任売 [2006]
小 島 [2004]171‑172頁
中国では企業 が独 自に策定す る原則 を、「コー
中国におけるコーポレー ト ガバナンス原則 と経営者教育 システム 27
ポ レ‑ 卜・ガバ ナ ンス細 則 」 と呼 ん で い る。
しか し本稿 で は、先 行研究 を引 き継 ぎ、企業 独 自原則 と して論 を展 開す る。
19 山願 [2007]150頁 で は、企 業 経 営 にお け る 信頼 の役割 を、 「さま ざまな利 害 関 心 を もつ 個 人 ない し集 団 との あいだに信頼 関係 を構築 す ることで、企業 発展 を妨 げ るよ うな行為 を 何 らかの利害 集 団 が とる危険 を一定 の程度 で 回避 しうる可能性 が生 じる」 と指摘 してい る。
20 平 田 [2001]34頁 ;小 島 [2003b]30頁
21 中国 にお け る多 くの上場会 社 が共 用す る企業 独 自原則 と して は、株主 総会 議 事原 則 と取締 役会議事原則 、監査 役会議事原則 と情報 開示 管理原則 が あ る。
22 中国では企業独 自原則 に対 し、 「厳 しす ぎる、
多す ぎる、細 かす ぎる」 との3つ の す ぎる問 題 が あ るとい われ て い る。詳 しくは、上証所 研究 中心 [2006] の摘要 部分 を参 照 の こと。
森本 [2007]2頁 森本 [2007]7頁
GEの グ ロ ーバ ル ・ビ ジ ネ ス ・マ ネ ジ メ ン ト コースや、 ジ ョンソ ン&ジ ョンソ ンのエ グゼ クテ ィブ ・コ ンフ ァ レ ンス Ⅲな どが それ に当 た る。 詳 し くは、 野 村 [2000]115‑160頁 を 参 照の こ とo
吉 田 [2002]19‑20頁 証監会 [2005]第2条 証監会 [2005] 第3条
上証所 よ り策定 され た経営者 教育 原則 の内容 には、証監会 よ り策定 され た経営者 教育原則 の内容 以外 に、座談 討論 や実 地考 察 な ども含 まれ る。 なお、本稿 で は、 よ り影響 力 が あ る と思 われ る政府機 関の証監会 よ り実施 され る 経営者 教育 システ ム を中心 に論 を展 開す るこ とにす る。上 証所 よ り策定 され た経営者 教育 原則 の 内容 の詳 しくは、上 証 所 [2006a] と 上証所 [2006b] を参照 の こ と。
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