神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報j 第13号 2009年3月 121
■ 研究論文
金融コングロマリット のためのコーポレートガバナンス原則
一現状 と展望 に焦点 をあてて‑
Pr i nc i p l e so fCo r po r a t eGo v e r na n c ef orFi na nc i a lCo n g lo me r a t e s
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程
山 田 洋
YA
…A, Yo h
■ キーワー ド
コーポ レー ト・ガバ ナ ンス、 コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則、金融 コングロマ リッ ト
1 は じめに
今 日で は、各国の大規 模 な金 融機 関の コーポ レー ト・ガバナ ンス構築 を推進す るために、金融 と関わ りの深 い公的国際機関 (以下 「国際金融監 督機関」 とい う) がコーポ レー ト・ガバナ ンス原 則 (以下 「原則」 とい う)の策定 を行 ってい る。
国際金融監督機関が金融機 関に対 して原則 を策定 す る理由は、金融機 関の コーポレー ト・ガバナ ン ス構築 が、国際金融 システムの維持 と促進 に対 し て重要 な役割 を果たす と認識 しているか らである
と考 えられ る。
また、 これ らの大規模 な金融機関は、金融 コン グロマ リッ トを形成 していることが多い。国際金 融監督機関が策定す る原則は、金融持株会社下の 銀行や保険会社、証券会社に対 してコーポ レー ト ガバナ ンスの構築 を求 めてい るが、金融 コングロ マ リッ ト全体のコーポ レー ト・ガバナ ンス構築に 対 しては部分的な記述 を行 うことに留 まっている とい える。そのため、金融 コングロマ リッ トのた
めに策定 されてい る原則の現状 と、金融 コングロ マ リッ ト全体のコーポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 を 強化す るための手段 について検討 を行 う必要 があ
ると考 えた。
そこで、本稿では、国際金融監督機関の原則 と 金融 コングロマ リッ トの コーポ レ‑ 卜・ガバナ ン ス構築 を促進する手段に主眼 を置 き、論 を展開す る。 まず、第2節 では、 コーポ レー ト・ガバ ナ ン ス原則 とその策定過程 および浸透過程 について考 察 を行 う。つ ぎに、第
3
節 において、国際金融監 督機 関が策定 した原則 について検討 を行 う。 さら に、第4
節では、金融 コ ング ロマ リッ トの監督 を 目的に設置 されたジ ョイン ト・フォーラムの原則 の特徴 を明 らかに し、金融 コングロマ リッ トのた めの原則 について展望 を提示 した。2
コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 と金融 コングロマ リッ トへの浸透過程2. 1
コーポ レー ト・ガバナ ンス原則1 2 2
神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第1 3
号2 0 0 9
年3月1 98 0
年代 後半 以 降、 コ ーポ レー ト・ガバ ナ ン スに関す る議論 は、先進 国 を中心 に活発 になった。その後、次第に コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る統一基準 が求 め られ るよ うにな り'、コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関係 の深 い機 関 な どにおいて、
企業 に対 して実効性 の ある具体 的な企業像 を提示 し、企業の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 に直接 関与す る必要性 が高 まった2。 そ して
、1 9 92
年 に、イギ リスの公的国内機 関であるキ ャ ドバ リー委員 会 が、 『キ ャ ドバ リー委 員会報告書
3
』 を策定 した。これが契機 とな り、原則策定の動 きは急速 に進展 し
、1 99 0
年代 中頃か らはCa l PERS
などの機投資家 やI CGN
な どの私的国際機 関、1 99 0
年代後半 にはOECD
な どの公的国際機 関、が原則 を策定す るようになった。
原則 の定義 は、 「企業 がその利害 関係者 の利害 調整 を行いなが ら、健全 で効率 的な企業経営 を行 える企業構 造 の一形態 を示 した もの4」 と されて い る。 よって、原則策定機 関は、他の機 関 が策定 した原則 を参照す ることによって、 よ り実効性の 高 い原則 を策定す ることが可能 となる。 また、企 業 は策定 された原則 を参照す ることによ り、効率 的に実効性 の高 いコ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンスを構 築す ることが可能 にな るとい える。
今 日では、銀行や保 険会社、証券会社 などの監 督 を国際協調の下 に行 ってい る国際金融監督機 関 が原則の策定 を行 ってい る。国際金融監督機関で は、構成 国の中央銀行や金融監督官庁 の代表者 が 集 ま り、各国における金融機関の監督 に関す る問 題 を解決す るために意見交換 が行われて きた経緯 がある。 また、国際金融監督機 関は、金融機 関の 監督 に関す る国際的な方 向性 を決定 し、採決 され た規 制や監督指針な どは各国で実施 され てい る。
この よ うな国際的な協調性 と実効性 を有す る国際 金融監督機 関が策定 した原則 を、金融機 関 が参照
して コーポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 を行 うことは、
金融機 関の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスを強化す る うえで有効 な もの とな り得 ると考 えられ る。 そ し て、銀行や保 険会社、証券会社 を兼業す る金融 コ ングロマ リッ トの コーポ レー ト・ガバ ナ ンスを考
察す るうえで、 これ らの国際金融監督機 関が策定 す る原則 を検 討す ることが必要 で あるとい える。
次項以下 では、国際金融監督機 関が策定す る原則 が策定 され、各国の金融監督官庁へ浸透す る過程 について検討 を行 う。
2. 2
世界標準原則策定段階 と行動指針原則策定段 階図1は、原則 が銀行や保 険会 社、証券会 社 に浸 透 す る過程 を示 して い るO この過 程 は、 (1)世 界標準原則 の策定 を 目指す
OECD
による原則 の策 定、 ( 2 )
国 際 的 な金 融監 督 の 協調 を 目的 とす る バ ーゼル委員会やnl S、I OSCO
による原則の策定、( 3 )
各 国の金 融監 督 官庁 に よ る監 督 指 針 や検 査 マニ ュ アル な どの策 定、 (4)銀 行や保 険会 社 な どによ る原則 の実践、の4つ の段 階 を経 て原則 が 各金 融機 関 で実践 され る こ とを示 した もの で あ る5。本 項 で は、 (1)世 界標 準原則 の策定 を 目指 すOECD
に よ る原 則 の策 定、( 2 )
国 際 的 な金 融 監督 の協調 を 目的 とす るバ ーゼル委 員会 やI AI S
、I OSC
Oによる原則 の策定、につ いて説明す る。第
1
に、世界標準原則 の策定 を 目指 して原則 を 策 定 して い る公 的国 際機 関 は、経済協 力 開発機 棉 (以下「 OECD
」 とい う) で ある。OECD
が策 定 した『 OECD
コ ーポ レー ト・ガバ ナ ンス原 則‑ 2 0 04
年‑(以下「 OECD
原則‑ 2 00 4 ‑
」 とい う)6』は、「もっとも世界標準原則 に近 い7」 といわれ、公的 機 関や私的機 関、機 関投資家 などか ら広 く参照 さ れ、各機 関による原則 の策定や各国の企業法制度、
企業 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 に影響 を 与 えてい る。今 日において
、OECD
は世界標準 と なる原則 を策定す ることを志向 してい ることか ら、この段階の ことを世界標準原則策定段階 とい える であろ う。
第2に、国際的 な金 融監督 の協調 を 目的 とす る 国際機 関は、バ ーゼル銀行監督委員会 (以下 「バ ー ゼル委員会 とい う
」 )
や保 険監督者 国際機構 (以 下「 UuS
」 とい う)、証券監 督者 国際機構 (以下「 I OSCO
」 とい う) な どが挙 げ られ る。 これ らの 国際金融監督機 関は、各国の中央銀行や金融監督金融コングロマ リッ トのためのコーポレー ト・ガバナ ンス原則
1 2 3
官庁 におけ る代 表者 な どが集 ま り、 国際的 な協調 の もとに金 融監 督 を行 うために設置 され た。 また、
金融監 督官庁 は、 国際金 融監 督機 関の会議体 な ど で交 わ され た情 報交換 な どを もとに、各国 の金融 機 関 に対 して協調 の取 れ た監督 を行 うよ うに努 め て きた. そ して、今 日で は、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスにつ いて も国 際的 に協 調 して取 り組 む必要 性 が あ るこ とを認識 す るよ うにな り、 国際金融監 督機 関 が原則 の策定 を行 うに至 って い る。 た とえ ば、 中央銀行 の代表 者 な どか ら構成 され るバ ーゼ ル委 員会 は、 『銀行組織 に とっての コーポ レー ト・
ガバ ナ ンス の 強 化 (以 下 「バ ー ゼル 原 則
1 20 06 ‑ 」
とい う)
B
j を、 保 険会 社 の監 督 者 な どか ら構 成 され るM S
は、 『保 険監 督基 本原 則9』 を、証券 市 場 の監 督 者 な どか ら構 成 され るI OSCO
は、 『市場 仲 介 業 者 の コ ンプ ラ イ ア ンス機 能 (以 下 「コ ン プ ライア ンス原 則」 とい う)10』 を策 定 して い る。これ らの、 国 際金 融監 督機 関 が策 定 す る原 則 は、
F OECD
コーポ レー ト ガバ ナ ンス原 則‑ 1 999
年‑(以 下「 OECD
原 則‑ 1 999 ‑
」 とい う)‖』 お よびOECD
原 則‑ 2 004 ‑
を参 照 し、 その うえで策 定 され て い る とい えるO この よ うに、国際金 融監 督機 関 は、金融監 督官庁 や銀行 、保 険会社 や証券会 社 な どに対 して原則 の策定 を行 って い る こ とか ら、 この段 階 の こ とを行動 指針原 則 策定段 階 とす る。
2.3監督指針等策定 段 階 と原則 実践段 階
こ こで は、 図1の (3) 各 国 の金 融 監 督 官 庁 に よ る監 督 指 針 や検 査 マ ニ ュ アル な どの策 定
、 ( 4 )
銀 行 や保 険会 社 な どに よ る原則 の実践 、 に関す る 検 討 を行 う。第
3
に、金 融監 督 官 庁 は、 国 際金 融監 督機 関 が 策 定 した原則 を もとに監 督 指 針や検査 マニ ュアル を策定 し、各金 融機 関 に対 して コーポ レー ト ・ガ バ ナ ンス の構 築 を求 め て い る。 また、 中央 銀 行 は、主 に銀 行 を対 象 に コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス に関す る報告書 の作成 な どを通 じて、銀行 に対 し て コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの構 築 を求 めてい る。つ ま り、金 融監 督 官庁 が国 際金 融監 督機 関の原則 を参照 して監 督 指 針 な どを策定 し、金 融機 関 に対 して間接 的 に コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの構 築 を 求 め るこ とか ら、 この段 階 の こ とを監 督 指針等策 定段 階 とす る。
第
4
に、金 融 コ ング ロマ リッ トを形成 して い る図1 金融機 関 にお ける コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 の浸透 過程
世界標準
雷 獣 策定
行動指封
厚真J3策定
監朝
滝
壷1 策定 原則 の浸透遇IILJ
(出所)筆者 作成。
1 2 4
神奈川大学大学 院経営学研究科 F研究年報』 第1 3
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年3
月大規模 な銀行や保険会社、証券会社 は、金融監督 官庁 の監督指針等 を検討 し、独 自の コーポ レー ト ガバ ナ ンスを構築す る。 ここで、銀行や保険会社、
証券会社 は金融監督官庁 が作成す る監督指針な ど の参照 を通 じて、 間接 的 に、OECD原則
1 2 0 0 4 ‑
や 国際金 融監督機 関の原則 を参照す ることにな る。また、 よ り実効性 の高 いコーポ レー ト・ガバ ナ ン スを構築 す るために、企業 は積極 的にOECD原則
‑ 2 0 0 4
‑や国際金融監督機 関の原則 を参照すべ きで あるが、現状 では、企業 が これ らの原則 を直接参 照 してい るとは考 えづ らい。いずれ に して も、銀 行や保 険会社、証券会社 が国際機 関が策定 した原 則 を間接 的に参照す ることによ り、コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 を行 ってい るとい える。 よって、
この段階の ことを原則実践段階 とす る。
ここ まで、金 融機 関 が原則 を実 践 し、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 を行 うまでの過程 につ いて検討 を行 った。 これ らの過程 で注 目すべ きこ とは、 国際金 融監督機 関 が、(∋OECD原則
‑ 1 9 9 9
‑ やOECD原則‑ 2 0 0 4
‑を参照 した うえで原則 の策定 を行 っていること、① コーポ レー ト・ガバ ナ ンス を国際金融 システムの安 定化策 の1つ と認識 して いることで ある。次節では、国際金融監督機 関が、銀行や保険会社、証券会社の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス を強化す ることを目的に策定 した原則 につ いて検討 を行 うこととす る。
3
国際金融 監督機 関 によ るコーポ レー ト・ガバナンス原則の策定3. 1
バ ーゼル銀行 監督委 員会 『健 全 な銀行の た めの コーポ レー ト・ガバナ ンスの強化』1 9 7 4
年、G1 0
中央銀行総裁会議 は、 グローバル に経営活動 を行 う銀行の監督 を、国際的な協調の もとに行 う必要性 を認識 し、バ ーゼル委員会 を設 置す ることに合意 した。バ ーゼル委員会 は、『バ ー ゼル ・コ ンコル ダー ト1 2
』 によって銀行監督 の責 任の所在 を明確 にす ることや、 『銀行の 自己資本 比率 に対 す る規 制 (バ ーゼル合 意)】3』 の公表 な どを通 じ、銀行の監督規制 を中心 に銀行が破綻 することの ない よ うに対策 を取 って きた。 しか し、
1 9 9 7
年 の ア ジア通貨 危機 後、金 融機 関 にお け る コーポ レー ト・ガバ ナ ンスが国際金融の安定化に 影響す るとい う認識 が広 が り、先進国の銀行 も含 め コーポ レー ト・ガバ ナ ンス を強化す る必要性 に 迫 られ た。 そ して、1 9 9 9
年 に、OECDがOECD原 則‑ 1 9 9 9
‑の策定 を行 った ことを契機 に、バ ーゼル 委員会 も原則の策定 を行 うよ うにな り、銀行に対 して コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 を求 め るこ とになったので ある。OECD原則
‑ 1 9 9 9
‑が策 定 され た こ と を契機 に、バ ーゼル委 員会 は、OECD原 則
‑ 1 9 9 9
‑を参 照 し、銀行の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス強化 を目的 とす る
、
『銀行組織 に とっての コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの強化 (以下 「バ ーゼル原則‑ 1 9 9 9 ‑
」とい う)過 の策定 を行 った。 その後、OECD原則‑ 1 9 9 9
‑は各 国の企業法制度 や上場規則の整備、原則策定機 関 における参照や企業 による原則の実践 な ど多方面 へ の影響 を与 え、バ ーゼル原則‑ 1 9 9 9
‑は、金融監 督官庁 の監督指針等 に影響 を与 え、間接 的に銀行 に対 して コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 を促進 す る役割 を果 た した といえる。OECDは、OECD原 則
‑ 1 9 9 9
‑の 策 定 後 か ら改 訂 作 業 を始 め、2 0 0 4
年 に は、OECD原 則‑ 1 9 9 9
‑ をOECD原 則‑ 2 0 0 4 ‑
へ 改 訂 した。 そ の 際、 バ ー ゼル委 員会 は随時オ ブザ ーバ ー と して招咽 され、OECD原則
‑ 2 0 0 4
1の策定 に関与 した。 そ して、バ ー ゼル委 員会 はOECD原則‑ 2 0 0 4 ‑
の策定 に関わ った 経験 を生 か し、2 0 0 6
年 にバ ーゼル原則‑ 1 9 9 9
‑を表1
のバ ーゼル原 則‑ 2 0 0 6
1へ と改 訂 した。 このバ ー ゼル原 則‑ 2 0 0 6
‑の特 徴 は、銀行 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの強化 を目的 に策定 されてい ること、
金融監督官庁 が銀行の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス 構築 に果 たすべ き役割 を明確 に表 記 してい ること である。
バ ーゼル原則
一 2 0 0 6
‑の内容 は、表1
の 「Ⅲ.健全 なコーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの原則」 において提 示 されてい る。原則1は取締 役の役割 や資質、判 断能力 について、原則2は取締役会 に よる 目標 の 承認 と監督 につ いて、原則3
は取締役会 と組織 の金融コングロマ リッ トのためのコーポレー ト ガバナンス原則
1 2 5
表
1
バ ーゼル委 員会 『銀行組織 に とっての コーポ レー ト・ガバナ ンスの強化』Ⅰ.は じめに (省略)
Ⅱ.銀行のコーポレー ト・ガバナ ンスの概観 (省略)
Ⅲ.健全 なコーポレー ト・ガバ ナ ンスの原則
原則1 (取締役の役割)取締役は、職責 に相応 しい資質を有 し、 コーポ レ‑ ト.ガバ ナ ンスにおける自ら の役割 を明確 に理解 し、銀行の事業に関 して健全 な判断を下す能力を有す るべ きであるo 原則2 (取締役会の役割)取締役会は、銀行の戦略 目標 と企業の価値基準 を承認、監督 し、銀行組織全体
に周知すべ きであるo
原則3 (取締役会の責任)取締役会は、組織全体 を通 じて責任 とアカウンタビリテ ィ (説明責任)が明確 となるような体制 を整備 し、実施すべ きである○
原則
4
(上級管理職による監視)取締役会は、取締役会の方針 と整合的な、上級管理職による適切な監視 を確保すべ きであるo原則
5
(監査機能 と内部統制)取締役会 と上級管理職 は、内部監査機能、外部監査人、および内部統制機 能が行った仕事 を有効に活用すべ きである○原則
6
(取締役の報酬)取締役会は、報酬に関す る方針 と実務が、銀行の企業文化、長期の目揺 .戦略、および管理環境 と整合的であることを確保すべ きである○
原則
7
(透明性)銀行は、透明な手法で統治 され るべ きであるo原則
8
(銀行構造の理解)取締役会および上級管理職は、銀行が透 明性 を阻害する法域で、あるいは透明 性 を阻害す る構造 を通 じて業務 を行っている場合 を含め、銀行の業務構造 を理解 しているべ きでⅣ.監督当局の役割
原則
A
(行動指針の提供)監督当局は、銀行に対 し、実施すべ き健全 なコーポ レー ト.ガバナ ンスおよび先見的な実務に関す る●ガイダンスを提供すべ きであるo
原則
B
(利害関係者)監督当局は、 コーポレー ト.ガバナンスを預金者保護のひ とつの要素 とみなすべ き であるo原則
C
(銀行の検査)監督当局は、銀行がコーポ レー ト.ガバ ナ ンスに関す る健全な方針および実務 を採 用 し、有効に実施 していることを確認すべ きである■o原則D (銀行の評価)監督当局は、銀行の監査および コン トロール機能の質 を評価すべ きであるo 原則E (銀行構造の評価)監督当局は、銀行のグループ構造が及ぼす影響 を評価すべ きである○
原則F (銀行の監督 と注意)監督当局は、監督 を通 じて気付いた問題 について、取締役および上級管理職
V.
健全 なコーポレー ト・ガバナ ンスを支 える環境の育成 (省略) (出所)ht t p : / / w
w. f s a . go . j p / i nt e r / b i s / b j ̲ 2 0 0 6 0 2 1 3 . p
dfをもとに、筆者作成O 責任 、 アカ ウ ンタ ビ リテ ィにつ いて、原 則4
は上級 管 理 職14に よ る経 営 の監 視 につ いて、原 則
5
は 内部 ・外 部監 査機 能 と内部統 制つ いて、原則6は 取 締 役 の報酬 につ いて、原 則7は統治 の透 明性 に つ い て、原 則8
は、銀行 の構 造へ の理解 につ いて、記述 され てい る。
バ ーゼル原 則
‑ 2 0 0 6
‑は、銀 行 の コーポ レー ト ・ ガバ ナ ンスの強 化 を 目的 と して い るが、 この原則 の位 置付 け を、 「コーポ レ‑ ト ・ガバ ナ ンスに おいて広 く受 け入れ られ、長年 にわた り用 い られ て きた原 則 の主 要 な要 素 を補 強 す る もの で あ る
」
と してい る。 また
、OECD
原則‑ 2 0 0 4
‑との関係 を、「株 主 の有 効 な権利 な ど、上場会 社 の コ‑ポ レ‑
卜・ガバ ナ ンスに関す るその他 の基本 的な論点 は
OECD
の原則 において取 り扱 われ てい る。本文書 に提示 す る原則 は、広範 な国 々における様 々な銀1 2 6
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号2 0 0 9
年3
月行 の法 的構 造 の ための健 全 な コーポ レー ト・ガ バ ナ ンスの根 本 的 な基盤 で あ る」 と し、銀 行 は OECD原則
‑ 2 0 04
1の参照 に よ りコーポ レ‑ ト・ガ バ ナ ンスの基礎 を構 築 し、バ ーゼル原則‑ 2 0 06 ‑
の 参照 によって、銀行の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス を補 強すべ きと している。バ ーゼル原則
‑ 2 00 6
‑は、金 融監督官庁 に対 して も、独立 した章 を設 けて銀行の コーポ レー ト・ガ バ ナ ンス構築へ果 たすべ き役割 を示 してい る。 そ の内容 は、表1
の「 Ⅳ
.監督 当局の役割」 において 提示 されてい る。 また、「監督 当局の重要 な役割 は、銀行 が第 Ⅲ章 に述べ られ た健全 な原則 を実施 して いることを検証、評価す ることで、銀行の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの強化 を促す ことにある」 と 役割 を定義付 けてい る。 ここでは、金融監督官庁 が銀行に対 して コーポ レ‑ 卜・ガバ ナ ンス構築 を 要請す る際に、経営の 自由度 を尊重 し、強制や圧 力 とな らないよ うに牽制 してい る。バ ーゼル委員 会 が、金融監督官庁 が果 たすべ き役割 を原則へ提 示 した理 由 は、バ ーゼル原則
‑ 2 0 0 6
‑がOECD原則‑ 2 00 4 ‑
の内容 を もとに策定 されてい るか らで ある。OECD原則
‑ 2 0 04
‑が改 訂 され た際 に、表2
の 「Ⅰ.有効 なコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの枠組みの確保」
が加 えられ た。つ ま り、表2におけ る 「C.各国 ・ 地域 における異 なる当局間の責任分担 は、明確 に
な され なければな らない し、 それが公共の利益の ためになってい ることが確保 され なければな らな
い。
」 や「 D.
監督 ・規 制 ・執行当局 は、 その責務 をプロに徹 して、客観 的に果 た しうるだけの権限、廉音劉生、人員や予算 を有 す るべ きである。 さらに、
その監督 ・規制 ・執行 につ いては、適時、透明か つ十分 に説 明 され るべ きで ある
。
」 な どの内容 に よ り、金融監督官庁の責任 を明確 に し、責務 を果 たす ことが要求 されてい るのである。3. 2
保険監督者国際機構 『保険基本原則』1 9 9 4
年、nl S
は、全米保険監督者協会 の発議 に よ り設 置 され た。I AI S
は、2 0 08
年現在、1 44
の国 や地域 の証券監督官庁 とOECDなどの国際機 関が 正会員 とな り構成 され公的国際機 関で ある。L AI S
の 目的 は、 (1)保険監督 当局間の協力促進、 (2) 保険監督 と規制のための国際基準の設定、 (3)他 の金 融 セ ク ターの規 制 当局 お よび 国際機 関 との 協 力、 (4)保 険市場 の一 体性 を保護 す るための 相互 協 力、 ( 5 )
情 報 の交換 、 の5
つ で あ る1 5
。 ま た、I AI S
は、 これ らの 目的 を達成 す るための基準 と して、1 99 7
年 に 『保 険監 督 に関 す る原 則』 を 策定 した。 その後、2
度 の改訂 が行われ、I AI S
は、2 0 0 3
年 に保 険基 本原 則 を公表 した。保 険基 本原 則 は、保 険会社経営の全般 に係 る原則であ り、全 表2 0ECD
原則‑ 2004
‑の一部OECD
原則‑ 2 0 0 4 ‑
Ⅰ.有効なコーポレー ト・ガバナンスの枠組みの基礎の確保
コーポレー ト・ガバナンスの枠組みは、透明で効率的な市場 を促進 し、法の原則 と整合的で、異なる監督 ・ 規制 ・執行当局間の責任分担を明確にするものでなければならない。
A. コーポレ‑ 卜.ガバナンスの枠組みは、経済パ フォーマンス全体への影響、市場の廉潔性、市場参加 者へのインセンテ ィブ、透明で効率的な市場の育成 とい う観点 を持 って、策定 されるべ きであるo B. 各国 .地域のコーポレー ト.ガバナンス慣行に影響を与 える法律 .規制の要請は、法 と整合的で透明
かつ執行可能なものでなければならないo
C. 各国 .地域における異なる当局間の責任分担は、明確になされなければならない し、それが公共の利 益のためになっていることが確保 されなければならないo
D. 監督 .規制 .執行当局は、その責務 をプロに徹 して、客観的に果た しうるだけの権限、廉潔性、人員 や予算を有するべ きである○ さらに、その監督 .規制 .執行については、適時、透明かつ十分に説明 (出所)
OECD [ 2 0 0 4
] をもとに、筆者作成。金融コングロマ リッ トのためのコーポレー ト・ガバナンス原則
1 2 7
28章 か ら構 成 され て い る。 そ して、 その なかの 分 け られて い る。基本基準 は
、【 a .
監督官庁】、【b.敬 第9章 において コーポ レー ト ガバ ナ ンス に関す 締 役】、 【C.上級 管理 職 の責任】 に区別 され、対象 る記述 がな され て い る16。以下 で は、保 険基本原 に適 した内容 の原則 が示 され てい る。上級 基準 は、則の第9章 につ いて検討 を行 うこととす る。 基本基準 の遵守 に加 え、保 険会社 に遵守 を求 め る 保 険基本 原則 は、基本 基準 と上級 基 準 の
2
つ に ことに よ り、 よ り実効性 の高 い コーポ レー ト ・ガ表3 1AIS『保 険監督基本原則‑ コーポ レー ト・ガバ ナ ンスー』
第9章 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス
コーポ レー ト・ガバナ ンスの枠組みは、すべての利害関係者の権利 を認識 し保護する.監督官庁 は、適用 可能なコーポ レー ト・ガバナンスの基準 と法令の遵守 を要求す る。
1.保険会社 は慎重 に経営 され るべ きで ある。コーポ レー ト・ガバ ナ ンスは、保険会社 の経営 を監督す る 取締役や上級管理者のマナーに言及す る。 これは、取締役 と上級管理者が自らの行動に責任 と説明責任 を 負 うとい う意味 も包含 しているO コーポレー ト・ガバ ナ ンスは、企業行動の決定や透明性や独立性、責任 や説明責任や公正性 および社会的責任 を含む。保険会社の財政状況やパ フォーマ ンス、所有や統治 に関す る取 り決めなどを含む具体的な内容 に関す る迅速で正確 なデ ィスクロージャーは、コーポ レー ト・ガバナ ンスの枠組みの一部 とみなす ことがで きる。 コーポレー ト・ガバ ナ ンスは、法律や上場規則 とともに法令 遵守 を内包 している。
2.取締役会 は、コーポレー ト・ガバ ナンス・システムの中心である。取締役会 は、最終的な説明責任 を有 し、
保険会社のパ フォーマンスと指揮 に対 して責任 を負 ってい る。取締役会や経営者への権限の委任が、取締 役の義務や責任 をいつ も軽減 させ るとは限 らない。取締役会 によって方針が定め られた場合、取締役会 は 方針の実行 と法令遵守への監督 を満 たす必要 がある。同様 に、取締 役会 は適用 され る法律 と遵守 して きた 上場規則 を満 たす必要がある.統治主体の責任は、法律 によって制定 された統治構造 と一致 しなければな らない。 また、議長や最高経営責任者が1人の人物 によって兼任 され る地位 である場合、監督官庁 は、適 切なコン トロールや経営陣による十分な説明責任 が機能 していることを確実 なもの とす るための確認 をす
る必要がある。
3.コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの規則 に関す るほ とんどの法律 は、一般 的 な事業会社のために存在 し、お そ らく保険会社について も適用 され るといえる。 しか しなが ら、保険監督者 にとって保険に関す る立法 を 通 じて追加の要求 をす ることは重要 なことである。 これ らについては、下記の基準のなかで説明す る。監 督官庁がコーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す るルールの詳細 を指定す る強制力 を持 ってはな らない ことや、
法令遵守 を強制 してほな らないのと同様 に、本原則の下記にあるい くつかの基準 は、監督官庁 による要求 よりも、む しろ取締役の責任 に言及 している。
基本基準
a .
監督官庁1. (原則の遵守 と確認)監督官庁 は、保険会社が適用可能なコ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 を遵守す るこ とを要求 し、遵守 しているか確認す る。
b.取締役
1. (取締役の責任)取締役の責任は、特定のコーポ レー ト・ガバナ ンス原則の受諾 を約束す ることに対 し て責任 を負 うことである。 コーポ レー ト・ガバナ ンスに関す る規則 は、一般 的な事業会社 に対す る法律 と 保険会社 に対す る法律の穴 を埋めるべ きものである。 これ らの規則 は、保険会社の規模や性質、複雑 さを 考慮すべ きである。
2 .
(方針の制定 と再検討)取締役は、方針や戦略 を制定 し、方針や戦略 を成 し遂 げる意図の説明やそのた めの監督 を行い、評価の方法 を決定す る。方針や戦略に対す る再検討は定期的にな され るべ きであり、少 なくとも1年に1回は行われるべ きである。128 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第13号 2009年3月
3.(取締 役 の監督 責任)取締 役 は、効果 的 かつ慎重に経営することを目的とする保険会社の経営に対する 監督を十 分 に行 う必要 が あ る。
4.(リス ク管理)取 締役 は、独立 した リス ク管理機能に対して適した監視を行う。取締役は、監査機能や 保険計理機 能 、強 固 な内部 コ ン トロール や有効なチェックアンドバランスを確立 しなければならない。
5.(意思決定)取締 役 は、責任 や意 思決定 について、取締役と議長、最高経営責任者と上級管理職の協力 と相互作 用 な ど を区別 しなけれ ばな らない。取締役は責任を移譲し、意思決定のプロセスを構築する。保 険会社は、全 ての個 人 が権 力 によ る決定 か ら解放されるように、力や権限の均衡を保証 し、責任の分割を 確立すべ きで ある。
6.(企業 倫理 ) 取締 役 は、企業 経 営 や倫理 的な行動の基準を確立しなければならない。これらの基準は、
私的な取 引 や 自己勘 定取 引や内外 の指示 の優先的な扱い、損失補填、非独立企業の性質の過度な競争慣行 も含んだ方 針 で あ るべ きで あ る。保 険会 社 は継続性を有 し、基準の遵守に対する保証に対 して効果的な方 法を有す る必要 が ある。
7.(上級 管理 職 の選解任)取締役 は、上級 管理職の選任 ・解任権を有するべきである。また、上級管理職は、
定期的に改 訂 され る報酬方 針 を決定 す る。 この方針は監督官庁に役立てられる。
8.(コンプ ラ イア ンス)取締 役 は、保 険会社が、関連する法律や規則、制定された行動規範に従うことを 保証すべ きで あ る。
9.(取締 役 の資質)取締 役 は、保 険会 社 を効果的に監督するために、保険に関する完全な知識や技能、経 験や義務 を持 つ べ きであ る。
10.(不当 な影響 の排 除)取締役 は、経営陣 やその他の関係者などから不当な影響を受けてはならない。取 締役は、保 険会社 に関す る情 報 に アクセス し、質疑応答を通 じて付加的な情報を得て、取締役会が適正規 模であるか を分析 すべ きで あ る。
ll.(監督 官庁 との連携 )取締 役 は、監 督官庁 と連絡を取 り合わなければならないのと同様に、必要に応 じて監督官庁 と接 点 を持つ必要 が ある。
C.上級管理 職 の責任
1.(上級 管理 職 の役割)上級 管理職 は、保 険会社の業務に対する監視、業務に関する基本的な方向性を毎 日示すこと、法律 お よび取締 役 が決定 した 目標や方針を実行することに対 して責任を負う。
2.(取締役 に対 す る勧告)上級 管理職 は、保険会社の業務を統治する目標や戦略経営計画、主な方針の見 直 しや支持 に関す る勧告 を取締 役 に対 して行う責任 を負う。
3.(取締役 へ の説 明責任)上級管理職 は、経営 目標や経営戦略、経営方針を見直すことを可能にする広範 囲に関連性 の あ る情 報 を取締 役会 に対 して迅速 に供給する責任を負うと同時に、保険会社のパフォーマン スに対 して も責任 を負 う。
上級基準
1.〔委員会 の設 置〕取締役 は、報酬委 員会 や監査委員会、もしくは危機管理委員会など明確な責任を負う 委員会を設立 したほ うが良い。
2.〔報酬方 針〕取締役 と上級 管理職 の ための報酬方針は、保険会社のパフォーマンスだけでなく、個人の パフォーマ ンスに も関係 す る。報酬方 針 は、憤重 な行動を促進するためにインセンティブを含むべきでは ない。
3.〔役員に対す る取締役 の責任〕取締 役 は、関連す る法律の遵守や要求されている経営指揮に関する基準 を定期的に報告 す る責任 を役 員 に対 して負 うとみな してよい。
4.〔保険数 理士 の役割〕保 険数理士 が監督過程の一部を成 しているとき、保険数理士は取締役や取締役会 内委員会に直接 的 に アクセスす るための手段を持つ必要がある。基本的に保険数理士は、経営に関係する 出来事を迅速 に取締役 に報告 す る必要 が あ る。
(出所)IAl S [2003] を もとに、筆者 作成 。
金融コングロマリットのためのコーポレー ト・ガバナンス原則
1 2 9
バナンスを構築す ることを目的に策定 されている。
基本基準の 【a.監督官庁】では、バ ーゼル原則 には及ばないが、監督官庁の役割が少なか らず明 記 されている。 ここでは、監督官庁が保険会社に 原則の遵守 を求めるととともに、原則の遵守状況 を確認す ることを求めている。 ここで も、国際金 融監督機 関が策定す る原則 は、監督官庁 が保険会 社に対 して強制や圧力によるコーポ レー ト・ガバ ナンスの構築 を要求 しないよ うに求めているとい える。
基本基準の 【b.取締役】では、 (取締役の責任)、
(方針の制定 と再検討)、(取締役の監督責任)、(リ スク管理)、 (意思決定)、 (企業倫理)、 (上級管理 職の選解任)、 (コンプ ライアンス)、 (取締役の資 質)、 (不 当な影響の排除)、 (監督官庁 との連携) の
1
1項 目につ いて記述 がな されて い る。 ここで は、経営者支配に対す る内容 として、 (意思決定) 早 (不当な影響の排除)が提示 され、企業不祥事 の防止 に対す る内容 と して、 (企業倫理) や (コンプライアンス) が提示 されている。
基本基準 【C.上級 管理職 の責任】 では、 (上級 管理職の役割)、 (取締役に対す る勧告)、 (取締役 への説明責任) について言及 されている。 ここで は、上級管理職が取締役に対 して方針などの見直 しに関す る勧告 を行 う責任がある、 とい う内容が 明記 されていることが特徴であるとい える。
上級基準は、〔委員会の設置〕、〔報酬方針〕、〔役 員に対す る取締役の責任〕、〔保険数理士17の役割〕
について言及がな されてい る。 ここでは、責任 を 明確 にす るために各委員会の設置 を推奨 し、 イン セ ンテ ィブを含まない報酬方針の推奨について言 及 している。 また、 ここでは取締役が役員に対 し て負 う責任や保険数理士の役割について も明記 さ れている。
3,3 証券監督者 国際機構 『市場仲介業者 の コン プライアンス機能』
1 9 7 4
年 に発足 され た米州 証券 監 督 者 協会 は、証 券 監 督 の 国 際 的調 和 を 目指 す ため
1 9 8 6
年 にI OS CO
へ名称 が改 め られ ることとなった。2 0 0 8
年 まで に
、1 0 9
の証券 監 督 当局 が普 通会 員 と し てI OS CO
に加盟 して い る。 また、準会 員 と して1
1の監 督官庁 が加盟 し、協 力会 貝 と してI MF
やOECD
な どの公的国際機 関および、証券取引所 な どが7 1
の機関がI OS CO
に加盟 している。I OS CO
の 目的 は、( 1 )
公正 で効率 的、健 全 な 市場 を維持す るため、高水準の規制の促進のため に協力す ること、 (2)国内市場の発展 と促進のた め、各メンバ ーの経験 につ いで l青報交換す ること、(3)国際的な証券取 引 につ いての基準 お よび効 果的な監視 を確立す るため、努力 を結集す ること、
(4)基準の厳格な適用 と違反に対す る効果的な執 行によって市場の健全性 を促進す るため、相互 に 支援 を行 うことである18。
I OS CO
は、証券 市場 の健 全化 を原則 の策定 に つ いて積極 的に行動 し、 『監査人 の監督 に関す る 原則』や 『上場企業による継続開示及び重要事項 の報告 に関する原則
』 などを策定 して きた。 そ し て、 これ らの原則 は、OECD
原則‑ 2 0 0 4
‑において 最大限遵守す るべ きだ と述べ られている19。 また、2 0 0 6
年 にI OS CO
は、 コ ンプ ライア ンス原則 を策 定 してい る。 この原則 は、証券会社 などの市場仲 介業者20の コンプ ライア ンスを確立 す ることが市 場 を安定化 させ るとい う認識の もとに策定 されて いる。以下では、 コンプライアンス原則の内容 に ついて検討 を行 うこととす る。コ ンプ ライア ンス原則 は、 【1.コ ンプ ライア ン ス機 能 の確立 】、 【2.上 級 経営 陣21ぉ よび企 業統 治組織 の役割】、 【3.独立性 および業務遂行能力】、
【 4.
コ ンプ ライア ンス担 当者 の資格 】、【 5.
コ ンプ ライア ンス機能の有効性の評価】、 【6,規制当局に よる監督】、 【7.クロスボーダー業務 におけるコン プ ライア ンス体制】、 【8.コンプライア ンス機能の 外部委託】の8
つの項 目か ら構成 されてい る。 コ ンプライアンス原則は、証券会社 におけるコンプ ライア ンス体制の構築 を促進す ることを目的に策 定 されているといえる。コ ンプ ライア ンス原則 の特徴 は、第
1
に【 2.
上 級経営陣および企業統治組織の役割】 において、コンプ ライアンス体制の構築における役割 を明確
1 3 0
神 奈川大学大学 院経営学研究科 F研究年報』 第1 3
号2 0 0 9
年3
月表
4
証券監督者 国際機構 『市場仲介業者 の コンプライア ンス機 能』
市場仲介業者のコンプライアンス機能 トピック1:コンプライアンス機能の確立
原則 :(a)市場仲介業者は、コンプライアンス機能 を確立 し、維持すべ きである。
原則 :(b)コンプライアンス機能の役割は、市場仲介業者による証券規制の遵守状況 とその監督手続 きの 適切性 について、継続的に、確認 し、評価 し、助言 し、報告す ることである。
トピック
2:
上級経営陣および企業統治組織の役割原則 :(a)証券規制 を遵守す るためのコ ンプ ライア ンス機能、 コンプライア ンス方針及び手続 きの確立、
並びにその維持は、上級経営陣の役割である。
原則 :(b)企業統治組織 は、上級経営陣がその役割 を効果的に果た してい るとい う十分な保証 を得 るべ き である。
トピック
3:
独立性及び業務遂行能力原則 :コンプライアンス機能 は、他の業務分野か ら不当な影響 をうけることな く、 自らのイニシアテ ィブ で活動で きるべ きであり、上級経営陣や、必要 な場合には企業統治組織 にアクセスで きるべ きである。
トピック4:コンプライアンス担当者の資格
原則 :コンプライア ンス担当者 は、 その責務 を効果的に果 たすため、誠実であ り、関連す る規則 を理解 し てお り、必要 な資格、業界経験、専門性及び個人的資質を有 しているべ きである。
トピック5:コンプライアンス機能の有効性の評価
原則 :(a)市場仲介業者は、定期的に、 コンプライアンス機能の有効性 について評価 しなければな らない。
原則 :(b)内部評価 に加 え、 コンプライアンス機能 は、定期的な外部検証 を受けるべ きである。そのよう な検証は、外部監査人、 自主規制機関、 あるいは規制当局のような独立 した第三者が行 うことがで きる。
トピック6:規制当局による監督
原則 :(a)規制当局 による市場仲介業者の監督 には、市場仲介業者 の規模及び業務内容 を考慮 した上で、
コンプライアンス機能の評価 を含むべ きである。
原則 :(b)規制当局は、特に欠陥に気づいた場合 には、市場仲介業者 にコンプライア ンス機能の改善 を促 す方策 を講 じるべ きである。 また、規制当局は、市場仲介業者 に対 し、そのコンプライアンス機能について、
法を執行 し、あるいは他の適切な懲罰手続 きを採 ることがで きる権限 を有す るべ きである。
トピック7:クロスボーダー業務 におけるコンプライアンス体制
原則 :市場仲介業者がクロスボーダーで活動す る場合、 コンプライアンス機能は、当該市場仲介業者が業 務 を営むそれぞれの国で適用 され る法令 を理解 し、 それ を遵守す るために必要 な人員及び専門性 を有する ための方策 を講 じなければな らない。
トピック8:コンプライアンス機能の外部委託
(出所)
ht t p : / / ww . f s a . go . j p / i nt e r / i o s / 2 0 0 6 0 5 1 0 / 0 3 . p
dfを基 に筆者作成.に して い る こ と、第
2
に【
5.
コ ンプ ライア ンス機 能 の有効性 の評価】 において、 コ ンプ ライア ンス 体制の定期 的 な内部評価 に くわ え、外部評価 の必 要 性 を示 して い る こ と、 第3に 【6.規 制 当 局 に よ る監督】 において、バ ーゼル原則 と保 険基本原則 と同様 に、監督官庁の役割 を規 定 してい ることで あ る。 第3
の特 徴 につ いて は、 コ ンプ ライア ンス体制 の評価 に加 え、改善 の促進 や欠陥 を発見 した 際 に法律 を執 行 し、罰則 を加 える権限 を有 すべ き となってお り、バ ーゼル原則 や保 険基本原則 とは 異 な り、強制 力 を含んだ内容 となってい るといえ
る。
ここまで、国際金融監督機 関の原則 につ いて検 討 を行 って きたが、今 日の大規模 な金融機 関にお
金融コングロマリッ トのためのコーポレー ト・ガバナンス原則 131 いては、銀行業や保険業、証券業 を兼務す る金 融
コングロマ リッ トを形成 してい ることが多い。 そ のため、金 融 コング ロマ リッ ト全体の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス を構築す る手段 を検討 していかな ければな らない と筆者 は考 える。 そこで、次節で は、金融 コ ングロマ リッ トの監督 および規制 を行 うことを 目的に設置 された ジ ョイン ト・フォーラ ムが策定 した原則 につ いて考察 を行 な う。
4
ジ ョイン ト・フォーラムの コーポ レー ト・ガバナンス原則 とその展望 4.1 ジ ョイ ン ト ・フォーラムの設置1 98 0
年 代 後半 か ら199 0
年代 後半 にか けて、各 国では金融の 自由化 が進 め られ、銀行、証券会社、保険会社 とい う金融機 関 を、金融持株会社の傘下 に統合す る金融 コ ングロマ リッ トが次 々に誕生 し たoバ ーゼル委員会 や
I AI S、I OSCO
といった国際 金融監督機 関は、金融 コングロマ リッ トの増加 に 伴い、 (1)各々が進 めて きた規 制の国際的なハ ‑ モニゼ‑シ ョン作業 の内容 を再検討 し、調整 を図る こ と、 (2)異 な る金 融部 門 の監 督 当局 の間 で 情報の交換 と協力 ・調整 を図 ることが必要 となっ た。 その後、各国の金融監督官庁 の代表者 か ら構 成 され る会議 が金融 コングロマ リッ トに関す る問 題 を報告書 に とりまとめ
、1 996
年 に、ジ ョイン ト フォーラムが設置 された22。ジ ョイ ン ト・フォー ラムの特徴 は、第1に金融 コングロマ リッ トの監督 を行 うことを主眼 におい て設置 され た合議体 で あ ること、第2に規 制対象 が異 なる国際金融監督機 関が共 同 して設置 した こ と、第3に金融 コングロマ リッ トの コーポ レー ト ガバ ナ ンス構 築 を促 進 す るため に原則 の策定 を 行 ってい ることで あるとい える23。次項では、ジ ョ イン ト・フォー ラムが金融 コングロマ リッ トの監 督 を目的に作成 した報告書 につ いて検討 を行 う24。
4.2 ジ ョイ ン ト ・フ ォーラム 『金融 コング ロマ リッ トの監督 に関す る報告書
』
199 9
年 に、 ジ ョイ ン ト・フォー ラムは、 『金融 コングロマ リッ トの監督 に関す る報告書 (以下 「監 督報告書」 とい う)25』 を作成 した。監督報告書図2 国際金融監督機 関の協調 によるジ ョイン ト・フォーラムの設置 パーゼル
銀行監管 委員会
ジョイント フォ‑ラム
証券監督者 国際機構
ひOSCOう (出所)筆者作成O
132 神奈川大学大学院経営学研究科 托汗究年報』第13号 2009年3月 は、 「自己資本 の充 実度 に関す る諸原則」、 「自己
資本の充実度 に関す る諸原則の補論」、「経営陣の 適格性 につ いての諸原則」、「監督上の情報交換 に 関す る枠組み」、「監督上の情報交換 に関す る諸原 則」、「情報交換のための コーデ ィネータ
ー
」か ら 構成 されてい る26。これ らの報告書のなかで、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス と関係 す る もの は、 「経営陣の適格性 につ いての諸原則」 である。 この なかでは、取締役や 管理職の適格性要件 につ いて検討 がな されてい る。
適格性要件 は、能力要件 と適性要 件 に分 け られて お り、能力要件では専門の資格 や過去の業務な ど の記録が評価 され る。適正要件 では、過去 に行 っ
た犯罪行為や財政状態 などを考慮 し評価 がな され る。 そ して、2つ の要 件 を満 た した取 締役 と管理 職 を採用す ることが、金融 コ ングロマ リッ トにお ける経営の健全性確保 に有効で あると してい る。
この よ うに、 ジ ョイン ト・フォーラムによって 策定 された監督報告書が、金融 コングロマ リッ ト 内の取締役や管理職 に対 して適格性要件 を設 ける 背景 には、 (1)金融 コングロマ リッ トの事業 内零 が多岐 に渡 って い る こと、 (2)企 業構 造 が複 雑 化 しインサ イダー取引や利益相反行為 が発生 しや すい こと、 な どの理 由があると考 え られ る。 ジ ョ
イン ト・フォーラムは、金融 コ ングロマ リッ トが 行 う企業経営機構改革 に、経営者 の適格性 を客観
表
5
ジ ョイン ト・フォーラム 『金融 コングロマ リッ トの監督 に関する報告書』
経営陣の適格性についての諸原則 指針 となる原則
(適格性要件)適格性要件の うち能力要件は、通常、管理職および取締役の有能 さおよびその役職に伴 う 責任 を遂行する能力を評価するものであり、一方、適格性要件の うち適性要件は、高潔性および適性 を評 価す るものである。有能 さを判断する上で、公式の資格、過去の経験および記録は、監督者が注 目す る項 目の一部である.高潔性および適性 を評価するために検討 され る項 目として、犯罪記録、財政状態、個人 的な負債の返済 に関する個人への訴訟、職業上の団体への加入拒否 または追放処分、他の類似業種の規制 当局により課 された制裁措置、ならびに、過去における疑わ しい業務行為が挙げられる。
原則1 金融コングロマリッ トの規制対象企業が確実かつ健全に経営 されていることを確保す る一助 とな るためには、コングロマ リッ ト内の他の企業の管理職および取締役が規制対象企業の業務に実質 的または支配的な影響力を行使する場合には、その管理職および取締役に対 して適格性要件が課
されるべ きであるo
原則2 特定の数を上回る持株数 を有 し、かつ当該 コングロマ リッ ト内の規制対象企業に対 して重要な影 響力を行使する株主は、監督者が定める適格性要件 を満た さなければならない○
原則3 適格性要件は、免許付与の段階およびそれ以降で特定の自由が発生 した場合に適用 されなければ ならないo
原則4 監督者は、当該企業が適格性要件を満たすことを確保す るために必要な措置 を講ず ることを期待 するo
原則5 規制対象企業の業務 に重要 な影響力を行使す ると思われ る管理職 もしくは取締役がコングロマ リツ ト内の他の規制対象企業の管理職 もしくは取締役であった場合には、監督者は評価手続 きの 一部 として、当該ほかの規制対象企業の監督者 と協議を行 うよう努力すべ きである○
原則6 規制対象企業の業務 に重要 な影響力を行使すると思われ る管理職 もしくは取締役がコングロマ リツ ト内の規制対象外の企業の管理職 もしくは取締役であった場合には、監督者は評価手続 きの 一部 として、当該規制対象外の企業 と取引のある他の規制対象企業の監督者 と協議 を行 うよう努 力すべ きであるo
原則7 管理職、取締役または重要株主が適格性要件 を満た していないと思われる場合には、管理職はコ
(出所)http://www.boj.or.jp/b,pe/release/zuiji/kakoO2/data/bis9902a.pdLをもとに、筆者作成。
金融コングロマリットのためのコーポレー ト・ガバナンス原則
1 3 3
図
3
金融機 関に対 して国際金融監督機 関が策定 したコーポ レー ト・ガバナ ンス原則バリ‑ゼル控fvl
監市費毘意 パー.ゼ′ま.1労彰■
[ 璽 ] ヒ 牽 ] [車 ]
保簸監常春 鮎陪俊幸糞
1liIS、
傑族長芯I',5崇
(出所)筆者 作成。
的に評価 で きる基準 を組み合 わせ ることによって、
よ りコーポ レー ト・ガバナ ンスの実効性 が増す と い う視点 に立 ち、監督報告書 を策定 しているとい える。次項では、今後の金融 コ ングロマ リッ トの コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る展望 について 検討す る。
4.3 金融 コングロマ リッ トに関 す る包括的 コー ポ レー ト・ガバナ ンス原則の提唱
今 日、図
3
の よ うにEg際金 融監督機 関 が、規 制 対象の金融機 関に対 し個別 に原則の策定 を行 って い る。 これ らの原 則 は、図1で示 したよ うに、金 融監 督官庁 の監督指針 な どに影響 を与 えるため、各金融機 関は間接 的に参照 をす ることになる。 し か し、今 日の大規模 な金融機 関は、金融 コングロ
マ リッ トを形成 してい ることが多いため、金融 コ ングロマ リッ ト内の各金融機 関に原則の参照およ び コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 を求 めて も実 効性 が強 く発揮で きるとは限 らない。一方 、金融 コングロマ リッ トの監督 を目的に設置 され たジ ョ イ ン ト フォーラムが策定 した監督報告書 は、コー ポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る記述 が取締役や管 理職の適格性要件 に限 られてい ることか ら、金融 コングロマ リッ トに適 したコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの一形態 を示 す ことはで きていない とい える。
よって、今後は、 ジ ョイ ン ト・フォー ラムが主 体 とな り、「金融 コ ング ロマ リッ トの コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに関す る包括 的な原則 (以下 「金 融 コ ング ロマ リッ ト包括原則」 とい う
)
」 の策定 を進 め る必要 が あ るとい える。 それ は、図4に表図4金融 コングロマ リッ トに関する包括的 コーポ レー ト・ガバナ ンス原則の提唱
バ‑ゼ給費盈食 L ジョイント 金敷コングロマリット 全数コングだ緩
行
マ リ.p 卜証券覧そ賢栄亀子亡きOSeO賢羊3者 フ軍J.‑‑ ラム 包括既呉一言 詰貴意
幸 三
(出所)筆者 作成。
1 3 4
神奈川大学大学 院経営学研究科 F研究年報』 第1
3号2 0 0 9
年3月され るよ うに、原則策定の経験 を持つ国際金融監 督機 関の協力 を受 けた うえで、ジ ョイン ト フォー ラムが金融 コ ングロマ リッ トの コ‑ポ レー ト・ガ バ ナ ンスを強化す るための原則 を策定 し、金融 コ ングロマ リッ トにコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構 築 を求 め るものでな らなければな らない と考 えら れ る。
金融 コングロマ リッ ト包括原則 は、 (1)金融 コ ング ロマ リッ ト全体の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス、
(2)金融 コングロマ リッ ト内の各金融機 関 におけ るコーポ レー ト・ガバ ナ ンス、か ら構成 され ると 考 え られ る。 (1)金 融 コ ング ロマ リッ ト全体 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスは、 グル ープ全体の監 視 ・監督 および意思決定の システムの あ り方 が焦 点 となる。 また、 (2)金融 コングロマ リッ ト内の 各金 融機 関におけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンスは、
金融 コングロマ リッ トの内部に存在す る金融機 関 の コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスをいかに構築 すべ き かが焦点 とな る。 そ して、金融 コ ングロマ リッ ト の要件や形態 は各国で異 な る。 そのため、金融 コ ングロマ リッ ト包括原則 は、 これ らの差異 を容認 す ることがで きる柔軟 な原則の策定 を行 う必要 が ある。 よって、各国の法制度 な どを考慮 した うえ で策定 され た
OECD
原則‑ 2 0 0 4
‑を参 照 し、原則 を 策定す ることが望 ま しい とい える。国際金融監督機 関は、 これ まで行 って きた原則 の策定 ・改訂作業 を継続 して行 い、金融 コ ングロ マ リッ ト内の各金融機 関に対す るコーポ レー ト・
ガバ ナ ンスの構築 を 目的に行動すべ きで ある。 ま た、金融 コングロマ リッ ト包括原則 は、国際金融 監督機 関の フィー ドバ ックを集約 した うえで策定 され るため、国際金融監督機 関が果 たすべ き役割 は大 きい とい える。 そ して、国際金融監督機 関は、
ジ ョイ ン ト・フォーラムが策定 した金融 コングロ マ リッ ト包括原則 を参照 し、原則の策定 ・改訂作 業 に生かす必要 がある。
金融監督官庁 は、金融 コングロマ リッ ト包括原 則 を基 に、金融 コングロマ リッ ト監督指針の策定 を行 い、各 国 の金 融 コ ング ロマ リッ トの コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス を評価 し、促進す るシステム
を構築 しなければな らない。 この とき、監督指針 の策定 や コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの評価 は、金 融 コングロマ リッ トの コーポ レー ト・ガバ ナ ンス 構築 を強制す るものでない ことが望 ま しい と考 え
られ る。
金融 コングロマ リッ トは、金融 コングロマ リッ ト包括原則 を参照 し、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス の構築 を行 うことで、 (1)金融 コングロマ リッ ト の事業 内容 が多岐 に渡 ってい る、 (2)企業構造が 複雑化 しイ ンサイダー取 引や利益相反行為 が発生 しやすい、などの金融 コ ングロマ リッ トに特有の 問題 に対処 し、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス体制の 強化 を達成す ることがで きるとい えよ う。
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おわりに本論文では、 まず、国際金融監督機関が策定 し た原則 が銀行や保 険会社、証券会社 などを兼業す る金融 コングロマ リッ トへ浸透す る過程 を提示 し た。 ここでは、各金融機 関が金融監督官庁 を通 じ て
OECD
原則‑ 2 0 04
やバ ーゼル原則‑ 2 0 0 6
‑な どを間 接的に参照 してい ることなどについて明 らかに し た。 つ ぎに、銀 行 や保 険会 社、証券 会 社 の コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス構 築 を 目的に策定 され た、バ ーゼル原則
‑ 2 0 0 6 ‑
と保険基本原則、 コ ンプ ライ ア ンス原則 の内容 につ いて検討 した。 また、国際 的な金融 自由化の動 きを受 け増加 した金融 コング ロマ リッ トの経営 に対 し、バ ーゼル委員会 とI AI S
、I OSCO
が協調の もとに新 たにジ ョイン ト・フォーラムとい う会議体 を設置 し、監督 を行 ってい るこ とについて考察 を行 った。 そ して、今後、金融機 関の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスが金融 コングロマ リッ トと同時に論 じられてい くべ きであると主張 し、展望 を提示 した。
ここまで、銀行や金融 コングロマ リッ トの原則 に関す る考察 に終始 したが、金融 コングロマ リッ トにおけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの実践 に関 す る考察 は行 うことがで きなかった。 また金融 コ ングロマ リッ トと しての要件の基準 は各国 ごとに 異 なっているため、金融 コングロマ リッ トの定義
金融コングロマ リッ トのためのコーポレー ト・ガバナンス原則 135
につ いて整理 し検討 を行 う必要 が あ る とい える。
そ して、金融 コ ングロマ リッ トは、金融持株会 社 形態 の他 に もユニバ ーサル ・バ ンク形態 な どが存 在 し、 それ ぞれ構造 が異 な るため、金融 コング ロ マ リッ トに関す る法律 について研究 を行 う必要 が あるとい えよ う。 さらに、各国の金 融 コングロマ リッ トが構築 してい るコーポ レー ト・ガバ ナ ンス 体制 に関す る考察 を行 な うべ きで あると考 えられ る。 これ らの課題 を、次回の研究 で明 らかにす る ことを誓 い、論 を閉 じることに したい。
注
1 小鳥大徳 [2004a]3頁。
2 小 島大徳 [2004a]32頁。
3 CadburyReport[1992] 4 小 島大 徳 [2004a]9頁。
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図1
は、主 に金 融 と造詣 が深 い公 的国際機 関 によるコーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原 則への関 与 を表 して い る。本 図 で は示 さなか ったが、金 融機 関 は、他 の国際会 議 や公 的国際機 関、
私的国際機 関 な どか らも影響 を受 けてい ると 考 え られ る。 また、場合 によっては これ らの 会議 や機 関か ら受 ける影響 の方 が強 いことも
あるとい える。
6 0ECD [2004]
7 小 島大徳 [2007]40頁。
8 BCBS[2006] 9 IAIS [2003] 10 IOSCO [2006]
ll OECD [1999]
12 BCBS [1975] 13 BCBS [1988]
14 バ ーゼル原 則 の な か で は、 最 高 財務 責 任者 (chiefFinancialOfficer,CFO)な どの、銀行 の管理運営 に責任 を有す る者 の ことを意味 し てい る。
15 中川敦司 [2005]37頁。
16 くわ えて、7章 の 「人材 の適格性」や8章 の 「支 配 の変更 お よび ポ ー トフ ォ リオ の移転」 や
10章の 「内部管理」、13章 の 「立 ち入 り検査」
や18章 の 「リス ク評 価 と リス ク管 理 」 や26 章 の 「市場 に対す る情報 と情報 開示 、透 明性
」
な どもコ‑ポ レー ト ・ガバ ナ ンス と密接 に関 係 す ると してい る。
17保 険計理人や アクチ ュア リーの ことをい う。
18 中川敦司 [2004C]47頁。
19小 島大徳 [2007]89頁O
20 お もに証券会社や信託銀行 な どの ことをい う。
21 ここでは執行役 員 な ど、業務執行 を行 う者 の ことをい う。
22 中川敦司 [2005]40貢。
23小 島大徳 [2004a]63頁。
24小 島大 徳 [2004a]は、原 則 を広義 で と らえ ると、狭義 の原則 に加 えて コーポ レー ト・ガ バ ナ ンスに関す る報告書 、意見書、提言 等 が 含 まれ る、 と してい る。
25 JF [1999]
26 中JII敦司 [2005]40頁O
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