修 士 論 文 概 要 書
Summary of Master’s Thesis
Date of submission: _ 2 /_28_/_ 2013 __ (MM/DD/YYYY) 専攻名(専門分野)
Department 表現工学専攻 氏 名
Name 綱井祐美子
指 導 教 員 Advisor
河合 隆史 教授 印
Seal 研究指導名
Research guidance
先端メディアと 人間工学
学籍番号 Student ID
number
5111E014-6 CD
研究題目 Title
好みの個人差を考慮したアバターの感性評価
Kansei Evaluation of Avatar focusing on Individual Variation in Preference
1.はじめに
近年、製品に対するユーザの要求が多様化し、人の感性 に大きく依存した要求が高まっている。人の主観を評価す るために主にアンケート調査が行われるが、従来の解析方 法の多くは、評価者を均一と見なしデータを平均化するこ とで個人の情報を無視しがちであった。一方で、評価者の 感性が常に均一であるとは限らず、個人差を考慮した解析 の必要性も論じられていた
[1]。
本研究では、近年製品化が進んでいるアバターを対象に、
ユーザの個人差を考慮した解析を行う。遠隔コミュニケー ションにおける自身の代理者として使用されるアバター に対しては、嗜好の個人差が大きいと考えられる。また、
アバター作成の際に変化させる要因となるパラメータの 検討、使用の際に重要となる評価項目の検討も合わせて行 う。
2.アバターのパラメータ検討
始めに、本研究におけるアバターを「知人との遠隔コミ ュニケーションの際に利用する、ユーザ自身のリアルな顔 を表現するユーザの代理者」と定義する。先行研究
[2]と実 験者らによるスクリーニングの結果、ユーザ本人の①顔パ ーツの大きさ・位置、②肌テクスチャの塗りの 2 パラメー タを抽出した。
3.自己のアバターに対する印象評価
・被験者: 20 ~ 24 歳の男女、計 11 名
・評価対象:被験者本人の顔に、表 1 に示すパラ メータ変化を施した3 DCG モデル
表 1 .各パラメータ変化と実験条件 顔パーツの大きさ位置 肌テクスチャの塗り 条件 1 変化小 変化小 条件 2 変化大 変化小 条件 3 変化小 変化大 条件 4 変化大 変化大
・実験環境:刺激呈示機材は、 55 インチのテレビを使用 した。刺激呈示画面と被験者との距離は、 2.1 mであっ た。また、参加者の眼前にモーションキャプチャ用のカ メラを設置した。
・評価方法:各条件のアバターの表情が、被験者自身の表 情の動きに同期した状態で評価 (1 分間 )
・評価項目:「表情が豊かか」「違和感があるか」「存在感が あるか」「使ってみたいか」「好感が持てるか」 5 項目抽出
・評点方法:評定尺度法 (5 件法で評価 )
4.解析結果
4.1.評価項目の信頼性分析
Cronbachのα係数により評価項目の信頼性分析を行っ た。結果、α係数が0.822であり、抽出された評価項目は 高い信頼性が得られた。
4.2.各条件間の比較
評定点の平均値は、全体的に条件1、条件 2が高い傾向に あった。しかし、条件と質問項目を要因とした二元配置の 分散分析を行った結果、P=0.351で各条件間に有意差は見 られなかった。
図 1 .各条件における質問項目の比較
1 2 3 4 5
条件1 条件2 条件3 条件4
表情が豊か 違和感がない 存在感がある 使ってみたい 好感が持てる 評
定 点 平 均
5.個人差を考慮した解析 5.1.総合評価指標の作成
まず、全評価項目の主成分分析 (分散共分散行列ベース、
固有値1以上、回転なし)を行った。結果、第2主成分まで の累積寄与率は78.54%であった。また、各評価項目の成分 負荷量を表2に示す。第1主成分の係数は全て正であること から、第1主成分得点を総合評価得点とした。
表 2 .評価項目の成分負荷量 評価項目 成分1 成分2 表情の豊かさ 0.701 0.577 違和感のなさ 0.673 -0.673 存在感がある 0.592 0.421 使ってみたい 0.922 -0.028 好感が持てる 0.904 -0.042
5.2.総合評価と印象による比較
「使ってみたい」「好感が持てる」の項目を除外、印象に関 わる3項目に対し、主成分分析を行った。その結果、第2 主成分までの累積寄与率は81.14%であった。第1主成分に は「表情の豊かさ・存在感がある」、第2主成分には「違和感 のなさ」がそれぞれ抽出された。
全てのサンプル(アバター条件×被験者)における成分 得点を条件毎に被験者で平均した結果、条件1 ・条件2にお いては総合評価得点が高く、表情の豊かさ、存在感の得点 も高い。 条件3においては、 違和感のなさの得点が高いが、
総合評価得点は低いことが示された。しかし、これは全被 験者の傾向に過ぎない。次に、被験者の個人差を考慮した 解析を行う。
5.3.相関係数によるクラスタ分析
前節で得られた総合評価得点、表情の豊かさ得点と違和 感のなさ得点を用いて、各被験者がアバターを総合的に良 いと判断する際に、どのような印象を持っているのかに着 目し、被験者の分類を行った。分類の手順は以下の通りで あった。①被験者ごとに、全ての条件における主成分得点 データを用いて、総合評価得点と表情の豊かさ得点の相関 係数を求める。②同様にして、総合評価得点と違和感のな さ得点の相関係数を求める。③①②で得られた2つの相関 係数の近い被験者を分類するため、クラスタ分析を行う。
その結果得られた、各被験者の相関係数の値とグルーピン グ結果を図2に示す。
図 2 .各被験者の相関係数の値と分類結果
被験者は、①表情の豊かさも違和感のなさも重視する② 表情の豊かさのみ重視する③表情の豊かさも違和感のな さも評価には関係ない、の大きく3グループに分類された。
また、表情の豊かさをより重視する被験者群は条件1もし くは条件2の、違和感のなさをより重視する被験者群は条 件3もしくは条件4の総合評価得点が最も高かった。
6.まとめ
本研究では、アバターを対象にユーザの個人差を考慮し た解析を行った。アバターの変化要因として二つのパラメ ータを抽出した。結果、全被験者をアバター評価の際に重 視する印象で 3 グループに分類し、グループごとに高評価 とするアバターの肌テクスチャの塗りが異なることを示 した。また、平均化したデータ結果では、違和感のなさは アバターの総合的な評価には関係がないと解釈されたが、
個々のデータ結果では、違和感のなさを重視する被験者が 少数グループとして存在することがわかった。
今後は、評価対象、評価項目の数を増やし、さらなる検 討を行うことが期待される。
参考文献
[1] 平手 , 小島: 3 相 3 元データの因子分析法に関する研究 ( そ の 1, そ の 2), 日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演 概 集 ,pp.835-838,1998.
[2] 平家 他:類似度と好感度を両立する個人化アバターの デフォルメ法の検討 , ヒューマンインタフェース学会論 文誌 ,Vol.13,No.3, pp.67-78,2011.
-1 -0.5 0 0.5 1
-1 -0.5 0 0.5 1
総合評価と表情の豊かさとの相関係数 総
合 評 価 と 違 和 感 の な さ の 相 関 係 数
◆
被 験 者
グループ① グループ③グループ②