論文内容要旨
論文題名:
Dual Energy CT
による心筋脂肪の定量評価 専攻領域名:診療放射線領域氏名:濵田裕貴
内容要旨
近年、心臓CT検査において、心臓周囲脂肪量が多い症例ほど冠動脈硬化が進行しており、
予後不良例が多いと報告されている。また、脂肪組織は心臓周囲だけではなく、心筋その ものにも脂肪沈着が起こることが知られており、左室心筋への脂肪沈着が虚血性心疾患を 予見するとの報告がある。しかし、従来のCT装置では、心筋脂肪の定量はCT値のばらつ きが大きく容易ではない状況にある。Dual Energy CT(DECT)はX線のエネルギーに依存 して物質の質量減弱係数が固有の変化を示すことを利用しており、物質弁別や性状分析が 可能である。そのため、心筋脂肪についても定量評価が可能であると考えた。
本研究は、DECTを用いた心臓CT検査から心筋の脂肪率を計測し、冠動脈疾患との関係 を評価することで、冠動脈疾患のリスク評価における新たな診断方法として、DECTの有用 性について検討した。
CT画像から冠動脈狭窄率を算出し、冠動脈狭窄率及び冠動脈狭窄数における心筋脂肪率 を比較した。また、リスク因子の数と冠動脈狭窄数及び狭窄率との関係について検討した。
冠動脈狭窄数と心筋脂肪率との間に正の相関を認め、冠動脈狭窄率と心筋脂肪率との関 係において、狭窄率が高いほど心筋脂肪率が有意に高かった。これは、心筋内に脂肪が蓄 積することで、心臓周囲脂肪と同様に炎症性サイトカインが増加し、抗動脈硬化作用を持 つアディポネクチンが低下したためと考えられる。ROC解析から得られたcut-off値により 心筋脂肪率が 14%以上を示した場合、冠動脈狭窄が発生しやすいと予測できるため、冠動 脈狭窄の発生リスクのある患者を定量的に拾い上げることが可能となり、予防医学として 利用できる情報であることが考えられる。
DECTを用いた心臓CT検査から得られる心筋脂肪率は、冠動脈疾患の新たなリスク因子 となり得る。また、DECTはそのリスクを予測する上で有用であることが示唆された。