論文内容要旨
論文題名
Effects of lipid metabolism on mouse incisor dentinogenesis (脂質代謝がマウス切歯の象牙質形成に与える影響)
掲載雑誌名
Scientific reports (投稿中)
地域連携歯科学 黒滝 優太朗
内容要旨
【目的】脂質異常症は、血中低密度リポタンパク質(LDL)レベルの上昇 を特徴とし、動脈硬化、脂肪肝、骨密度低下等を誘発する生活習慣病であ る。本研究で我々は、脂質異常症が歯の形成にいかなる影響を及ぼすか解 明するため、実験動物に高脂肪食を与えて歯の伸長や構造変化を解析した。
【方法】野生型マウス(雄
8
週齢)を、脂肪含有率14%の餌を与えた「標
準食群」と脂肪含有率36%の餌を与えた「高脂肪食群」に分け、3
週間毎 に切歯のμCT 撮影を実施し、12 週間後に屠殺して血液生化学検査、μCT による下顎骨および大腿骨の骨形態計測、および下顎切歯の組織切片観察 を行った。また、摂餌10
週間後に直径1 mm
の歯科用ラウンドバーで下顎 右側切歯唇側歯頚部にマーキングし、それを指標として2
週間の歯の伸長 距離を計測した。さらに、脂質異常症を発症するLDL
受容体欠損(Ldlr
-/-) マウスを用いて上記と同様の実験を行った。【結果】野生型マウスを用いた実験では、高脂肪食群は標準食群に比べて 総コレステロール(T-CHO)値が
2
倍に増加しており、切歯の伸長速度の 低下と象牙質の肥厚を伴う歯髄の狭窄を認めた。この切歯を詳しく観察し たところ、①根中央部付近の象牙前質の消失、②象牙芽細胞とエナメル芽 細胞の形態変化および、③根尖部の象牙芽細胞層の高密度化を生じている ことが判明した。また、象牙質は肥厚していたものの、象牙質の形成速度 は低下傾向にあった。なお、臼歯ではこのような異常は認められなかった。一方、
Ldlr
-/-マウスの標準食群と高脂肪食群のT-CHO
値は、野生型マウス(標準食群)に比較してそれぞれ約
3
倍と約20
倍を示した。Ldlr
-/-マ ウスの標準食群では、野生型の標準食群に比べて切歯の伸長速度の低下傾 向と象牙質の肥厚を伴う歯髄の狭窄傾向および、根中央部付近の象牙前質 の異常を認めた。Ldlr
-/-マウスの高脂肪食群では、切歯の伸長速度の低下 と象牙質肥厚を伴う歯髄の狭窄がより顕著となり、象牙前質の消失および、エナメル芽細胞の分化促進が観察された。なお、野生型マウスの高脂肪食 群と
Ldlr
-/-マウスの標準食群および高脂肪食群においては、歯の形成異常 だけでなく大腿骨の骨密度低下も認められた。【考察】野生型と