論文内容要旨
Fibroblast Growth Factor-23 Induces Cellular Senescence in Human Mesenchymal Stem Cells from Skeletal Muscle
(Fibroblast Growth Factor-23 による骨格筋間葉系幹細胞の細胞 老化誘導)
Biochemical and Biophysical Research Communications(2016 年 掲載予定)
昭和大学大学院医学研究科生理系生化学分野専攻 佐藤 千聡
【目的】
骨格筋における間葉系幹細胞(MSC)と衛星細胞は異なる形質を示 し、機能低下が筋内異所性脂肪蓄積と関連が示唆されている。慢性 腎臓病(CKD)や心不全における骨格筋萎縮は筋代謝異常が機序の一 つ と さ れ る が 、 再 生 異 常 に つ い て は 不 明 で あ る 。 CKD で は Fibroblast growth factor(FGF)-23 の関与が知られている。本研 究では FGF-23 および Angiotensin(Ang)-Ⅱの骨格筋 MSC への影響 を培養実験系で検討した。
【方法と結果】
ヒト骨格筋組織より MSC を単離し培養を行った。MSC は筋衛星細胞 と異なり血小板由来増殖因子受容体、Ang-Ⅱタイプ 1 受容体および FGF 受容体ファミリーの遺伝子発現を認めたが、Klotho 遺伝子は発 現していなかった。MSC および筋衛星細胞を無血清培地(control)、
同培地に Ang-Ⅱ(0.1μM)もしくは FGF-23(10ng/ml)を 48 時間添加 した 3 群で比較したところ、FGF-23 群で control と比べ有意に細 胞数が減少していた。(control より 58%減少、p < 0.05)筋衛星 細胞の細胞数は液性因子による有意な減少は認められなかった。老 化関連βガラクトシダーゼ染色で FGF-23 群は有意に陽性細胞比率 が高かった。(%senescent cells: FGF-23 46.5± 11.7 % vs. control 35.8± 5.8, p < 0.05)また FGF-23 により老化シグナル蛋白である
p53 と p21 の細胞内高発現を認めた。さらに FGF-23 は細胞内酸化 ストレスを増強した。酸化ストレスに関与する NADPH オキシダーゼ の活性化と消去系のマンガン SOD の発現が抑制されていた。組織学 的には、CKD 患者の腓腹筋を用いた。筋線維の萎縮と著明な脂肪浸 潤を認めた。また血小板由来増殖因子受容体陽性の MSC を血管周囲 間質に認め、p53 陽性の老化 MSC は異所性脂肪蓄積部位に認められ た。
【結論】
FGF-23 は、Klotho 非依存性経路で骨格筋 MSC の早期細胞老化を誘 導した。心腎症候群における筋萎縮に重要な役割を果たしている可 能性が示唆された。