論文内容要旨
Truncal adiposity influences high-density lipoprotein cholesterol levels and cardiovascular events in hemodialysis patients
(血液透析患者における体幹脂肪量と脂質異常、心血管病との関係)
Journal of renal nutrition
(volume 29,Issue 3,May 2019,Pages 235-242)
内科系内科学(腎臓内科学分野)(昭和大学横浜市北部病院)
高橋 剛
内容要旨
血液透析(HD)患者の脂質異常症は高中性脂肪(TG)血症、高 non-HDL-コレス テロール(non-HDL-C)血症、低 HDL-C 血症が特徴である。HD 患者では内臓脂 肪蓄積や腹部肥満がTG増加に関係し、また、腹部肥満を呈するHD 患者では TG 上昇が心血管病(CVD)イベント発症率増加に関係することが報告されてい る。一方、これまでの先行研究の多くは欧米 HD 患者を対象としており、日 本人の背景と異なる問題がある。また、体格と脂質異常の関係は多くが横 断解析で検討され、さらに各因子の変化を考慮した縦断的な予後解析は行 われていない。本研究では体幹皮下脂肪量(truncal fat mass:TFM)と脂質バ イオマーカーの変化を縦断的に検討し、観察期間中のTFM並びに脂質異常の 変化とCVD発症との関係を検討した。
対象は HD 患者 240 名であり、末期悪性腫瘍、感染症、活動性血管炎、活動 性肝炎・肝硬変、心不全患者を除外基準とした。試験デザインは観察開始 時の横断研究と観察期間12か月の縦断観察研究、12 か月目を起点とした36 ヵ月のランドマーク解析を行った。観察項目は観察開始時の非空腹時透析 前採血でのルーチン検査、高感度(hs)CRP、interleukin-6、アディポネク チン、脂質(総コレステロール、TG、HDL-C)を測定し、脂質と hsCRP は 3、6、
9 、 12 ヶ 月 目 に 追 加 測 定 し た 。 体 脂 肪 は Dual energy X-ray
absorptiometry(DXA)で観察開始時と12 ヶ月目に計測し、CVD(心筋梗塞、急 性冠症候群、脳梗塞)イベントをエンドポイントとした。
観察開始時の総脂肪量と TFM はともに TG、non-HDL-C、hsCRP、アディポネ クチンで正の相関を、HDL-C で負の相関を示した。多変量解析結果では総脂 肪量に比べTFMがHDL–C低下と中性脂肪上昇と有意に関係した。観察開始時 と 12 ヶ月目の TFM が共に 7000g 以上の群(高脂肪群)とそれ以外(中-低脂肪 群)の2群に分けて脂質の推移を縦断的に検討した結果、高脂肪群では中-低 脂肪群に比べて有意で持続的な TG と non-HDL-C の増加、HDL-C 低下を示し た。高脂肪群と中-低脂肪群、TG(あるいはnon-HDL-C)高値持続とTG(あるい はnon-HDL-C)低値持続または変動群を組み合わせた4群でCVDイベント発症 率を検討したが、有意差は認めなかった。一方、高脂肪群と中-低脂肪群、
HDL-C低値と HDL-C 高値または変動群による 4群で検討すると、高脂肪群で
低HDL-C血症を伴う場合に約 4倍のCVD イベントの発症率増加を認めた。こ
れらの体格、脂質と予後の関係は、海外のHD患者に比べて日本人 HD患者で はHDL-Cレベルは同等だが、TGやnon-HDL-Cが低値であること、HDL-CはTG や non-HDL-Cに比べて長期変動が少ないこと等が影響し、HDL-Cの CVD イベ ントに対する予測性が有意であったと考える。
本研究成果より、TFMが多いHD患者では脂質異常、特にHDL-C低下が持続し た症例においてCVD発症頻度が増加することが示唆された。