博 士 ( 獣 医 学 ) 滝 口 満 喜
学位論文題名
A Study on the Role of the CD287CTLA4‑B7 Costimulatory Signal in the Pathogenesis of DiseaseslnMRL /ゆダMiCe
(MRL ノゆ〆マウスの病態発生におけるCD28/CTLA4 ‐B7 補 助 シ グ ナ ル の 役 割 に 関 す る 研 究 )
学位論文内容の要旨
自 己免 疫疾 患は 、自 己抗 体ま たは 自己 反応性T細 胞が 自己 の組 織や 細胞の抗原と反 応し、臓器障害が弓【き起こされる疾患である。自己免疫疾患には、標的抗原と組織障 害が 単一 臓器 に限 局し てい る臓 器特 異的 自己免疫疾患と、多臓器に渡って障害がみら れる全身性自己免疫疾患がある。
全身性紅斑性狼瘡(Systemic Lupus Erythematosus,SLE)は代表的な全身性自己免疫疾 患 の ー つ で 、 多 彩 な自 己抗 体の 産生 と免 疫複 合体 の全身 の結 合織 への 沈着 、中 でも 腎、 血管 など への 沈着 によ る組 織病 変を 特徴と する 。SLEは ヒト だけ でなく、イヌ、
ネコ およ びウ マで も起 こる が、 中で もイ ヌはヒトとの疾患類似性が強く指摘されてい る。
自 己 免 疫 疾 患 の 病態 発生 を解 析す るに は適 切な 動物モ デル が不 可欠 であ る。 ヒト SLEによ く似 た病態 を自 然発 症す るマ ウス は、'SLEの発 生病 理を 解明 し、免疫学的概 念を 打ち 立て 検証 する 上で 非常 に重 要で ある。 それ ゆえ 、マ ウスSLEの発生病理を解 析 す る こ と は 、 ヒ ト の み な ら ず イ ヌ のSLEを 理 解 す る こ と に っ な が る 。 MRL/lprマ ウスはSLEのモ デル マウ スで 、血中免疫グロブリンの増加、自己抗体の産 生お よぴ 免疫 複合 体の 著明 な増 加が みら れる。MRL/lprマウ スに みら れる全身性の著 明なりンノヾ節腫脹は、lpr遺伝子によるこのマウスに特徴的な所見で、Fas遺伝子の欠損 によ るも のと 考え られ てい る。MRL/lprマ ウス にお ける 自己 免疫 疾患 の病態発生には 活 性 化 し たCD4+T細 胞 の 関 与 が 指 摘 さ れ て い る が 、 詳 細 は 不 明 で あ る 。
MRL/lprマ ウス に み られ る 自己 免 疫 疾患 お よ びり ン バ節 腫 脹 の病 態 発生 に お ける CD28/CTLA4‑B7補 助シ グ ナ ルの 役 割を 明 ら かに す る目 的で、CD28/CTLA4‑B7補助シグ ナ ルを 遮 断す るCTLA4IgG( マウ スCTLA4の 細胞 外 ドメ インと ヒトIgGの恒 常領域と の 融合蛋 白)を1回100Ug、生後24時間 以内から20週齢まで週3回、腹腔内に投与した。ま た 、対 照 には ヒ トIgGを 同 様に 投 与 した 。 そ の結 果 、CTLA4IgG投与 により、 抗dsDNA 抗体お よびりウ マチ因子な どの自己 抗体の産 生が阻害 され、腎 炎、唾液 腺炎および肝 炎に著 明な改善 がみられた 。さらに 、特徴的 なりンノ ヾ節腫脹 と脾腫も 著しく軽減し た。し かしなが ら 、リンバ球とマクロファージの血管周囲および問質への浸潤で特徴 づけら れる肺病 変について は、病変 の数と大 きさにつ いて定量 的に解析 したところ、
対照群に較べて有意な改善は認められなかった。
これら の現象の 機序を明らかにするために、リンノヾ節、脾臓および肺組織を用いて 各免疫 担当細胞 における細 胞表面活 性化抗原 の発現と 細胞内サ イトカイ ンの産生をフ ローサ イトメー ターにより 詳細に解 析した。 また、肺 病変を臨 床病理学 的に解析する 目 的で 、 気管 支 肺 胞洗 浄 液中のサイ トカイン をELISA法によ って定量 し、比較 ・検討 した。その結果、CTLA4IgG投与により、(i)CD4+およびCD8+ (conventional )T細胞の 活性化とconventionalT細胞からのIL‑4の産生、(ii) CD4−CD8―B220+ (double negative, DN)T細胞か らのIFN−Yの 産生、およ び(iii)活性化B細胞の形 質細胞へ の分化は 阻害さ れたが 、(iv) DNT細胞の 発生と、(v)B細 胞および マクロフ ァージの 活性化は 阻害され な かっ た 。ま た 、CTLA4IgG投与に よって気管 支肺胞洗 浄液中のTNF‑Q濃度に有 意な変 化 は認 め られ な か った 。 すな わ ち 、MRL/lprマ ウス に おいては 、CD28/CTLA4‑B7補助 シグナ ルを介し て、(i) conventionalT細胞がIL‑4産生性Th2/Tc2様細胞ヘ分化し、自 己抗体 の産生を 補助していること、(ii)B細胞が形質細胞ヘ分化すること、(iii) DNT細 胞がIFN‑Yを 産生する こと、(iv)特定 の細胞集 団ではなく様々な細胞が集積する結果、
リ ンバ 節 腫脹 や 脾 腫が 起 こる こ と 、し か し なが ら 、(v) DNT細 胞の発生 とB細胞お よ び マク ロ ファ ー ジ の活 性 化は 、CD28/CTLA4‑B7補 助シ グ ナ ル非 依 存 性で あ るこ と が 明らかとなった。
次 に 、MRL/lprマ ウ スに おけるル ープス腎炎 に対する 遺伝子治 療の可能 性を検討 す ‑ 219―
る目的で、CTLA4IgG 遺伝子を発現するアデノウイルスベクター(AdexlCACTLA4IgG
,AdCTLA4IgG) を3 週齢のMRL/ lpr マウスに1x109 PFU 静脈内に接種した。その結果、
一回の静脈内投与のみで、自己抗体の産生がほぼ完全に抑制され、病理組織学的に ループス腎炎の著明な改善が得られた。また、腎機能が温存されたことで、生存期間 の著しい延長が認められた。このことから、AdCTLA4IgG を用いた遺伝子治療は、
SLE に代表される自己免疫疾患の長期的制御に対して、簡単かつ経済的で有効な治療 手段である可能性が示唆された。
以上の成績から、MRL/lpr マウスでは、CTLA4IgG 投与によって、腎炎などの自己抗 体に関連した疾患のみならず、リンバ節腫脹および脾腫も抑制されることが明らかに なった。しかしながら、肺病変に改善がみられなかったことから、MRL ノlpr マウスに おいては、CD28/CTLA4‑B7 補助シグナルの依存性によって免疫担当細胞の活性化が 異なり、表現型の異なる病態が存在することが判明した。また、SLE に対して、
CTLA4IgG 発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療の可能性が示唆された。
本研究から得られた知見は、ヒトのみならずイヌSLE の発生病理のさらなる解明
と、新しい治療法の開発に貢献するものと思われる。
学位論文審査の要旨
学位論文題名
A Study on the Role of the CD287CTLA4‑B7 Costimulatory Signal in the Pathogenesis of DiseaseslnMRL / ゆ ダ MiCe
(MRLノlprマ ウ ス の 病 態 発 生 に お け るCD28/CTLA4‑B7 補 助 シ グ ナ ル の 役 割 に 関 す る 研 究 )
MRLノlprマ ウスは、 全身性紅 斑性狼瘡(SLE)の モデルマ ウスで、 自己抗体の産生およ び免 疫複合体 の著明な 増加がみら れ、SLE類似 の組織病 変を示す 。著明な 全身性リンバ 節腫脹はlpr (lymphoproliferation)遺伝子によるこのマウスに特徴的所見で、Fas遺伝子の 欠損 によるも のと考え られている 。MRりりrマ ウスにお ける自己 免疫病の 病態発生には 活性 化したCD4+T細胞の関 与が指摘さ れている が、詳細 は不明で ある。本 研究は、T細 胞 の 活性 化 に不 可 欠 な補 助 シグ ナ ル を遮 断 す るCTL蚪IgGを用 いて、MRLノ ケマウス の 病態 発生にCD28/CTLA4―B7補助シ グナルがど のように 関与して いるかを 明らかにする 目的で行われた。
はじ め に、 可 溶型CTLA41gGを週3回、100ルg/回、MRIノヶマウ スの腹腔内 に生後24 時 間 以内 か ら20週齢 まで投与 した。そ の結果、 自己抗体の 産生およ ぴ腎炎、 肝炎、唾 液腺 炎の発症 が阻害さ れ、生存期 間が有意 に延長した。また、リンノペ節腫脹および脾 腫が 著明に抑 制された 。さらに、 静止T細胞 からIL・4産生性1112パc2様細胞への分化は 阻 害 され た が、 マ クロファ ージの活 性化によ るものと思 われる肺 病変につ いては改 善 がみられなかった。
次に 、ループ ス腎炎に 対する遺伝 子治療の 可能性を 検討する ために、CTし蝌IgG遺伝 子 発 現ア デ ノウ イ ルスベク ター(AdexlCACTL蝋IgG)を3週齢 のMRりりrマウ スに1X109 PFU静 脈内 に 接種 し た 。そ の 結果 、 ー 回の 静 脈 内投与のみ で、自己 抗体の産 生がほぼ 完全に抑制され、ループス腎炎の著明な改善が得られた。
以上 の よう に 申請 者は、MRり ルマウス において は、CD28/CTし糾 一B7補助シ グナル の 依 存性 に よっ て 免疫担当 細胞の活 性化が異 なり、表現 型の異な る病態が 存在する こ