第 6 章 薄翼理論 49
7.9 Taylor-Maccoll の関係式
軸対称流れで、衝撃波の先端が円錐の先端に付着している場合に成り立つ関係式である。このとき の流れを錐状流(conical flow)と呼ぶ。この式の誘導を以下に示す。
流れは定常で、軸対称で旋回流がないとする。座標系は、頂点を中心とする球座標(r, θ, ϕ)とする。
rは頂点からの動径、θは物体中心軸からの角度である。また、(r, θ, ϕ)方向の速度成分を(Vr, Vθ, Vϕ) とする。
ここで、以下の仮定を行う。
∂
∂ϕ= 0, Vϕ= 0 (7.124)
ここで、ϕは地球の経度方向の変化である。この場合には、周方向の変化に相当する。
また、錘状流近似のため、動径方向の変化はないとする。
∂
∂r = 0 (7.125)
である。
球座標での連続の式∇ ·ρ⃗V = 0を書き下すと、
∇ ·ρ⃗V = 1 r2
∂
∂r(r2ρVr) + 1 rsinθ
∂
∂θ(ρVθsinθ) + 1 rsinθ
∂ρVϕ
∂ϕ = 0 (7.126)
となる。また、錘状流の関係式を適用すると
2ρVr+ρVθcotθ+ρ∂Vθ
∂θ +Vθ
∂ρ
∂θ = 0 (7.127)
となる。
ここでの流れでは、衝撃波が直線であるため、衝撃波通過後にエントロピーは変化しない。従っ て衝撃波を過ぎた流れには渦度は発生しない(Croccoの定理参照)。つまり、渦度は0となり、渦な し流れ(ポテンシャル流れ)である。渦度の各成分(ωr, ωθ, ωϕ)は以下のようになる。
ωr= (∇ ×V⃗)r = 1 r2sinθ
{ ∂
∂θ(rVϕsinθ)− ∂
∂ϕ(rVθ) }
= 0 (7.128)
ωθ= (∇ ×V⃗)θ = 1 rsinθ
{∂Vr
∂ϕ − ∂
∂r(rVϕsinθ) }
= 0 (7.129)
ωϕ= (∇ ×V⃗)ϕ = 1 r
{∂
∂r(rVθ)−∂Vr
∂θ }
= 0 (7.130)
式(7.130)を展開すると、
Vθ+r∂Vθ
∂r −∂Vr
∂θ = 0 (7.131)
となる。
錘状流の関係(7.125)を使うと
Vθ=∂Vr
∂θ (7.132)
となる。
オイラーの運動方程式より、流線方向(s方向)の運動方程式は
dp=−ρV dV =−ρd(V2)/2 (7.133)
となる(非圧縮性流体のテキスト参照)。ここではdsは省略されている。V2=Vr2+Vθ2であるの で、これを上式に代入して、
dp=−ρ(VrdVr+VθdVθ) (7.134) となる。
流れは等エントロピー流であるので、音速aは、
dp
dρ=a2 (7.135)
となる。式(7.134)と式(7.135)より dρ
ρ =−1
a2(VrdVr+VθdVθ) (7.136) となる。
一方、全エンタルピーが一定の式より H0=h+1
2V2=1
2Vmax2 (7.137)
となる。ここで、Vmaxは得られる最大速度で、これはh= 0(つまり温度を0)にしたときに達成 できる。エンタルピーhは、
h=CpT = γR
γ−1T = a2
γ−1 (7.138)
であるので、式(7.137)と式(7.138)より a2=1
2(γ−1)(Vmax2 −V2) (7.139)
となる。これを式(7.136)に代入すると dρ
ρ =− 2 γ−1
( VrdVr+VθdVθ Vmax2 −Vr2−Vθ2
)
(7.140) となる。
前述のように、VrとVθはθだけの関数であるので、この式から、ρもθだけのの関数であること が分かる。従って、式(7.127)の偏微分は以下のように常微分に変化する。
2ρVr+ρVθcotθ+ρdVθ
dθ +Vθ
dρ
dθ = 0 (7.141)
式(7.140)をθで微分すると、
1 ρ
dρ
dθ =− 2 γ−1
( VrdVdθr +VθdVdθθ Vmax2 −Vr2−Vθ2
)
(7.142) となる。これを、式(7.141)に代入すると
γ−1
2 (Vmax2 −Vr2−Vθ2) (
2Vr+Vθcotθ+dVθ
dθ )
−Vθ
( Vr
dVr
dθ +Vθ
dVθ
dθ )
= 0 (7.143) となる。
式(7.132)をθで微分すると(Vrがθだけの関数であることを考慮)、
dVθ
dθ =d2Vr
dθ2 (7.144)
となる。これを式(7.143)に代入すると、
γ−1 2
(
Vmax2 −Vr2− (dVr
dθ )2) (
2Vr+dVr
dθ cotθ+d2Vr
dθ2 )
−dVr
dθ (
Vr
dVr
dθ +dVr
dθ d2Vr
dθ2 )
= 0 (7.145)
となる。これを整理すると、
γ−1 2
(
Vmax2 −Vr2− (dVr
dθ )2) (
2Vr+dVr
dθ cotθ+d2Vr dθ2
)
− (dVr
dθ )2(
Vr+d2Vr
dθ2 )
= 0 (7.146)
となる。ちなみに、この式の中のVmaxは式(7.137)より、上流側の一様流の持つH0から計算され る。(ある流線上のH0は衝撃波を通過しても変化しない)
この方程式は数値的に解くことにより、Vrがθの関数として求められる。Vrが分かれば、式(7.132)
より、Vθが分かる。
なお、式(7.146)を解くためには境界条件が必要である。式(7.146)はθに関する2階の常微分方 程式であるので、境界条件が2個必要である。ひとつの境界条件は円錐表面上にある。円錐表面上で はVθ= 0であるので、式(7.132)から、
(dVr dθ
)
θw
= 0 (7.147)
となる。もう一つの境界条件は衝撃波のところ(θ=θs)にあり、そこで斜め衝撃波通過後の流れの 条件を満足させる。実際、θsを与えると、そこでの衝撃波通過後の流れは決定される。
(参考文献) G.I.Taylor and J.D.Maccoll, The Air Pressure on a Cone Moving at High Speeds, Proc. Roy. Soc. London A, 139, 1933, pp. 279-311.