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第 9 章 超音速流 91

9.8 リーマン問題

リーマン問題(Riemann problem)は、ショックチューブの問題として大変重要であり、また実用 性も高い。簡単に言えば、仕切り板で2つの流れが仕切られており、それを瞬間的に取り外したとき に、その後どのような流れが発生するかを調べる問題である。この流れには、衝撃波(shock wave)、

contact surface(contact discontinuity)、膨張波(expansion wave)が発生する。

(参考) 流れの数値シミュレーションでよく使われるゴドノフ法は、リーマン問題の解を使う方法 である。ただ、後述するように繰り返し計算が必要なので、計算コストが掛かる。これを簡略化し た、近似リーマン解法を使用するのがRoeの方法である。(参考了)

仕切り板の左右での初期条件(t= 0)を以下のように定義する。x= 0に仕切り板があるとする。

u=ul, p=pl, ρ=ρl (x <0), u=ur, p=pr, ρ=ρr (x >0) (9.196) ここでは、pr< plの場合を考える。

破膜すると、初期での圧力の不連続は右側に(xの正の方向)伝播する。つまり圧力の低い方に伝 播する。と同時に膨張波(expansion fan)は圧力の高い方に(つまりxの負の方向に)伝播する。加 えて、初期に2つの流体の境となっていた接触不連続(contact discontinuity)は右方向に伝播する。

衝撃波と不連続面は、一定の状態に向かって進行するので、伝播速度は一定である。一方、膨張波は 初期の膜の位置を原点として、扇状に発生する。

9.8.1 衝撃波

衝撃波は、領域Rと領域2の間に存在する。領域2での圧力、密度、速度をp2, ρ2, u2とすれば、

垂直衝撃波の関係式(ランキン・ユゴニオの関係式(7.32))より、以下の関係が得られる。ただし、

P =p2/prとおく。

ρ2

ρr = 1 +αP

α+P , α=γ+ 1

γ−1 (9.197)

‰E‘¤—̈æ(R)

—̈æ(R)

—̈æ2

—̈æ3

¶‘¤—̈æ(L)

–Œ(x=0) t = 0

t = t

ÕŒ‚”g

V C

ÚG•s˜A‘±

–c’£”g

x

x

図9.15: 初期状態(t=0)とその後(t=t)での衝撃波、不連続面、膨張波の伝播

その他、速度、マッハ数、音速に関しては、以下の関係式が成立する。

u2−ur

cr

= P−1

(1 +αP)1/2 · 1

γ(γ−1)/2 (9.198)

M =C−ur

cr = (P1)cr

γ(u2−ur) (9.199)

(c2

cr

)2

=P α+P

1 +αP (9.200)

ここで、Cは領域Rに向かって伝播する衝撃波の伝播速度である。最後の式(9.200)は音速の式 c2=γp/ρを使えば出てくる。

(参考1)式(9.198)の誘導。衝撃波前後の運動量の関係式である式(7.3)より、

p2−p1=ρ1u21−ρ2u22=ρ1u21−ρ1u1u2 (9.201) 最後の式は、質量流量の保存式(7.2)を適用した。これをρ1c21で割り、展開すると、

p2−p1

ρ1c21 =u1

c1 ·u1

c1 −u1

c1 ·u2

c1 = M1

c1 (u1−u2) (9.202) となる。今、上の式は、衝撃波は静止しているものとして(つまり衝撃波に乗って見ている)扱って いるので、その対応は、

u1→C−ur, u2→C−u2 (9.203)

となる。したがって、式(9.202)は、

p2−p1 ρ1c21 = M1

c1 {(C−ur)(C−u2)}= M1 c1

(u2−ur) (9.204) となる。この式から、左辺が(u2−ur)/c1となるように変形すると、

u2−ur c1

= 1

M1 ·p2−p1 ρ1c21 = 1

M1

p1

ρ1c21(P1) = 1 γ

1 M1

(P1) (9.205)

ここで、音速の式c21=γp11が使われている。式(7.11)から、

P= p2

p1 = 2γ

γ+ 1M12−γ−1

γ+ 1 M12=γ+ 1 2γ

(

P+γ−1 γ+ 1

)

(9.206)

となる。これを式(9.205)に代入して整理すると、

u2−ur

cr =

√ 2

γ(γ−1) · P−1

√αP + 1 (9.207)

が得られる。ここで、c1=crが使われている。(参考1了) (参考2)式(9.199)の誘導。式(9.204)からM1を求めると、

M1= c1

u2−ur ·p1(P1) ρ1c21 = 1

γ· cr(P1)

u2−ur (9.208)

となる。ここで、音速の式c21=γp11が使われている。またc1=crである。(参考2)

9.8.2 接触面

接触面(contact surface)はこれを横切って密度が変化する。しかし、圧力と速度(接触面に垂直方

向)はこの面を横切って同じである。従って、接触面は、速度V は、V =u2で伝播する。従って、

この接触面では、

p3=p2, u3=u2=V (9.209)

の関係が得られる。

9.8.3 膨張波

膨張波は、左方向に伝播する特性曲線によって形成される。この特性曲線は、傾きがdx/dt=u−c である。また、一番左側の領域Lと領域3との間の情報は、C0C+の特性曲線に沿って伝えられ る。C0特性曲線は、流跡(path line, particle path)を表し、この特性曲線の傾きは、dx/dt=uで ある。この特性曲線の上では、エントロピーが一定であるために、

s3=sl, p3

ργ3 = pl

ργl (9.210)

の関係が成立する。つまり、最初、一番左側の領域Rに存在した流体要素は、膨張波が左側に伝 播して来て、その流体要素の上を通過すると、その流体要素は右方向に動き始める。一連の膨張波

(expansion fan)がその流体要素を通過してしまうと、この流体要素は、領域3に入る。

また、領域Rからは、C+特性曲線が右方向に伝播して、この膨張波を通過して領域3に到達す る。この特性曲線の傾きはdx/dt=u+cであり、この特性曲線の上では、次のリーマンの不変量 (Riemann invariant)が成立する。

γ−1

2 ul+cl=γ−1

2 u3+c3 (9.211)

つまりこの特性曲線の上では、(γ1)/2u+c=constなので、領域Lと領域3で同じ値になる。

(参考)リーマン不変量は、C+特性曲線とC特性曲線の上で、以下の関係式で表される。ただし、

ガスは完全気体の場合である。

J+=u+ 2

γ−1c=const (C+特性曲線上で) (9.212) J=u− 2

γ−1c=const (C特性曲線上で) (9.213)

あるいは、以下のように表すこともできる。

[

∂t + (u+c)

∂x ]

J+= 0 (9.214)

[

∂t + (u−c)

∂x ]

J= 0 (9.215)

(参考了)

式(9.210)と式(9.211)から、

V −ul= 2 γ−1cl

[ 1

(p3

pl

)1)/2γ]

(9.216) の関係式が得られる。ちなみに、接触面の速度V は、V =u3である。

領域2と領域3では、それぞれ速度や圧力などの状態量が一定である。式(9.198)において、u2=V とおけば(これは式(9.209)から)、

V −ur cr

= P−1

(1 +αP)1/2 · 1

γ(γ−1)/2 (9.217)

となる。これは、接触面の速度V と圧力比P との関係である。

一方、接触面をまたいで圧力が変化しないことより、p3=p2となり、式(9.216)の中にある、p3/pl

を変形すると、

p3 pl

=p2 pr· pr

pl

=P·pr pl

(9.218) となる。これを使うと、式(9.216)は、

V −ul= 2 γ−1cl

[ 1

( P·pr

pl

)1)/2γ]

(9.219) 式(9.217)と式(9.219)から、接触面の速度を除去すると、(具体的には、両方の式からV /crを求め、

これを等しいとおく。)

√ 2 γ(γ−1)

P−1

(1 +αP)1/2 = 2 γ−1

cl

cr

(pr

pl

)1)/2γ[(

pl

pr

)1)/2γ

−P1)/2γ ]

+ul−ur

cr

(9.220) この式から、圧力比P =p2/pr =p3/prを求める。この式は非線形であるので数値的に解く。つま り、反復法で解を求める。

圧力比P =p2/pr=p3/prが決定された このPを使えば、各量が以下のように決定される。

式(9.197) −→ ρ2

式(9.198) −→ u2=u3

式(9.199) −→ C

式(9.200) −→ c2

である。

9.8.4 膨張波内の状態量の決定

この領域を領域5とする。ここでは、領域3で成立した関係式である、式(9.210)と式(9.211)が 適用できる。

p5

ργ5 = pl

ργl (9.221)

γ−1

2 ul+cl=γ−1

2 u5+c5 (9.222)

の関係が成立する。最初はエントロピーの式、次はリーマン不変量の式である。

—̈æ l

—̈æ 5

t

x x=0

dx

dt

= u-c

図9.16: 領域5を構成する膨張波(C特性曲線)

一方、膨張扇(expansion fan)そのものは、Cの数多くの特性曲線から構成されている。この特 性曲線Cの上では、リーマン不変量が一定となる。つまり、

γ−1

2 u5−c5=const (9.223)

また、各々の特性曲線の傾きは、

dx

dt =u5−c5 (9.224)

である。例えば、ul = 0の場合(静止している場合)、一番左側にある特性曲線では、u= 0であ るため、dx/dt=−cとなり、膨張波を通過した流れは、右方向の速度を持つため(つまり、u >0)、

dx/dt=u−cとなり、特性曲線の傾きは、絶対値が小さくなり(マイナスの値が減少する)、特性曲

線は起き上がってくる。これが右方向に順番に起こる。

式(9.222)と式(9.223)を加えると、

1)u5=γ−1

2 ul+cl+const (9.225)

となり、u5は各特性曲線に沿って一定値をとることがわかる。

u5が一定値であれば、式(9.223)から、c5も一定であることがわかる。従って、式(9.224)の右辺 は一定となり、このことから、積分して(t= 0で原点x= 0にあるとして)、

x= (u5−c5)t x

t =u5−c5 (9.226)

となる。

式(9.222)と式(9.226)より、

u5= 2 γ+ 1

(x

t +cl+γ−1 2 ul

)

(9.227) u5は、

0< u5< V (9.228)

であるので、式(9.227)より、x/tの範囲は、

(γ−1

2 ul+cl

)

<x t <

(γ+ 1

2 V −cl−γ−1 2 ul

)

(9.229) となる。

また、領域5での音速c5は、式(9.222)より、

c5=cl−γ−1

2 (u5−ul) =u5−x

t (9.230)

となる。

さらに、圧力p5は、式(9.221)と音速の式c2=γp/ρ を使って、

p5=pl (c5

cl

)2γ/(γ1)

(9.231) となる。また、密度は、先ほどの音速の式を使って得られる。

ρ5=γp5

c25 (9.232)

以上で、リーマン問題の全ての領域における量が決定された。

10 章 ノズルとジェット

ノズル(nozzle)はジェットなど高速流を得るための有用な装置である.簡単に言えば、ノズルは、

流れを加速する装置である。ノズルから大気に流れが噴出する場合、ノズルの貯気槽(reservoir)の 圧力p0と、大気の圧力(雰囲気圧あるいは背圧:ambient pressure)paとの比により、様々なジェッ トのパターンが発生する。例えば、ロケットが地上からだんだん上空に行くに従い、周りの大気圧が 小さくなるため、圧力比p0/paが増大し(paが減少するため)、ロケットノズルから出た排気プルー ムは大きく膨張するようになる。地上付近でのプルームの拡がりと比較すると、その違いは歴然で ある。

ちなみに、もう少し厳密に言えば、ノズル出口での圧力peも、ジェットのパターンを決定する大 事な特性量である。亜音速流ではノズル出口での圧力peは、雰囲気圧paと等しくなるが(pe=pa)、

超音速流では、必ずしも等しくない(一般的にはpe̸=pa)。その結果、ノズル出口を出た後、衝撃波 や膨張波を発生させ、ジェットの圧力が雰囲気圧paに等しくなるように調整している。

高速ジェットは、ジェットエンジンの他に、産業界で様々な用途に使われている。

10.1 音速ノズル

高速流において、ノズル断面が流れ方向に単調に絞られる場合のノズルを音速ノズル(sonic nozzle) と呼ぶ。低速流も含めた場合には、コンバージェント・ノズル(convergent nozzle)と呼ばれる。

V

P a P

0

図 10.1: 音速ノズル

 背圧paが貯気槽圧p0からあまり変化しない場合は、ノズル内の流れは亜音速である。さらに、背 圧paを下げていくと、ちょうどノズルの出口の所で、マッハ数が1になる。具体的には、pa/p0= 0.53 の場合に出口でのマッハ数がM = 1になる。これ以上背圧を下げてもノズル内のマッハ数分布は変 化しない。これを流れがチョーク(choke)したと言う。このとき、流量も変化しなくなる。雰囲気圧 paが小さい場合、ノズル出口を出た流れは、ショックセル(shock cell)という現象を引き起こし、

下流方向にセル構造が周期的に観察される。このように、ノズル出口でのジェット圧peが背圧paよ りも大きいい場合を不足膨張(underexpansion)と呼び、ノズル出口を出た後、流れは膨張する。

ここまでは、貯気槽圧p0を一定にして、背圧(雰囲気圧)paを下げていく場合を考えたが、逆に、

背圧paを一定にしておいて(例えば背圧を大気圧にする)、貯気槽圧p0を上げていっても、同じよ うな現象が起こる。pa/p0= 0.53になったとき、例えば背圧が大気圧であれば、貯気槽が1.9気圧に なったとき、ノズル出口で流れが音速に到達する。ここで注意することは、貯気槽圧をどんどん上 げた場合に、ノズル出口でマッハ数は1のままであるが、ノズル出口での圧力はpeはどんどん上が ることである。その結果、質量流量も増え続ける。流量が一定にとどまることはない。これに伴い、

不足膨張の程度も増加する。

ちなみに、音速ノズルの場合で、後述する不足膨張ジェットの場合(ジェット出口圧が雰囲気圧よ り高い場合)には、以下のパラメータMj(fully expanded jet Mach number)が良く使われる。これ は、ジェットがノズルを出た後、十分膨張したときのマッハ数を表す。

Mj=

{[(P0

Pa

)γ−1γ

1 ] 2

γ−1 }1/2

(10.1) ここで、γは比熱比(γ=Cp/Cv)で、P0は貯気槽圧力、Paはノズル出口外側の雰囲気圧である。