第 6 章 薄翼理論 49
6.3 相似則
式(6.1)を使うと、例えば、圧縮性流中に置かれた2次元翼周りの流れが計算できる。ここでは、
それらの流れについて調べていく。特に、2種類の流れ(流れ1と流れ2)を比較し、それらの関係 から相似性を調べる。流れは2次元とする。
6.3.1 基本流(流れ1)
(x, y)座標での流れを考える。Plandtl-Glauertの式とも呼ばれるポテンシャルの線型方程式(6.1) を1−M12で割ると
∂2ϕ
∂x2 + 1 1−M12
∂2ϕ
∂y2 = 0 (6.24)
が得られる。ここでM1は一様流のマッハ数である。ちなみに、この線型方程式は、通常、M1= 0.4 ぐらいまで適用可能であるが、場合により、M1= 0.7ぐらいまで適用できる。
翼断面形状などの物体表面は、以下の式で表される。
y=t1f (x
c )
=τ1cf (x
c
) ⇐⇒ y c =τ1f
(x c )
(6.25) ここで、t1は厚み(thickness)で、cは翼弦長(chord length)で、τ1 = t1/cは、厚み比(thickness ratio)である。また、f′ =df(ξ)/dξである。
流体が物体表面に沿って流れるという境界条件は (∂ϕ
∂y )
y=0
=V1dy
dx =V1τ1f′ (x
c )
(6.26) となる。これは薄翼近似の場合である。つまり、本来物体表面上で評価されるべき境界条件は、薄翼 近似のため、x軸上で評価しても良いことになる。これが、添え字y = 0が付いている理由である。
圧力係数は、式(5.17)より、
Cp1=−2u V1 =−2
V1 (∂ϕ
∂x )
y=0
(6.27) となる。
6.3.2 変換された流れ(流れ2)
もうひとつの流れのポテンシャルΦ(ξ, η)を(ξ, η)面上に考える。ここでの流れの速度をV2、マッ ハ数をM2とする。
ここで、ϕとΦの間の関係を ϕ(x, y) =AV1
V2
Φ(ξ, η) =AV1 V2
Φ (
x,
√ 1−M12 1−M22y
)
(6.28) とおく。ここで、(x, y)座標と(ξ, η)座標の変換は
ξ=x, η=
√ 1−M12
1−M22y (6.29)
とする。式(6.28)、式(6.29)を式(6.24)に代入すると、
∂2Φ
∂ξ2 + 1 1−M22
∂2Φ
∂η2 = 0 (6.30)
が得られる。
ここまでをまとめると
• ϕ:一様流マッハ数M1における流れ;式(6.24)
• Φ:一様流マッハ数M2における流れ;式(6.30) 基本流の境界条件式(6.26)は、式(6.28)を使って、
(∂ϕ
∂y )
y=0
=AV1
V2
√ 1−M12 1−M22
(∂Φ
∂η )
η=0
=V1τ1f′ (x
c )
(6.31) となる。流れ2での厚み比をτ2として、
A
√ 1−M12
1−M22τ2=τ1 (6.32)
とする。つまり、厚みの変換である。ここで、Aは任意定数である。
式(6.31)から (
∂Φ
∂η )
η=0
=V2τ2f′ (ξ
c )
(6.33) が得られる。これは、一様流V2、M2で、厚み比τ2の翼周りの流れに対する境界条件となっている。
これは、基本流(流れ1)に対する式(6.26)と対応している。
1番目の流れの圧力係数Cp1を2番目の流れの変数で表す。式(6.27)と式(6.28)を使えば、
Cp1=− 2 V1
(∂ϕ
∂x )
y=0
=−2 V2
A (∂Φ
∂ξ )
η=0
(6.34) となる。
一方、第2の流れの圧力係数Cp2は
Cp2=−2 V2
(∂Φ
∂ξ )
η=0
(6.35)
と表されるので、Cp1とCp2の間には
Cp1=ACp2 (6.36)
の関係が存在する。
以上まとめると、2種類の翼型で、2種類の流れ場は以下表のような特性量を持つ。
流れ 第1の流れ 第2の流れ 厚み比 τ1 τ2 圧力係数 Cp1 Cp2 主流マッハ数 M1 M2
この2つの流れ場に対して、厚み比と圧力係数は、式(6.32)と式(6.36)より A
√ 1−M12
1−M22τ2=τ1 (6.37)
のように置けば、圧力係数は、係数(A)倍の違いとなる。
Cp1=ACp2 (6.38)
ここで、話を展開するために、第2の流れを非圧縮性流、つまり、M2= 0とする。そのとき、式
(6.37)より、流れ2と流れ1での厚み比の関係は
τ2= τ1 A√
1−M12 (6.39)
となり、また、圧力係数の関係は
Cp2= Cp1
A (6.40)
となる。
圧力は、一般的に厚み比の関数である。これを第2の流れで考えれば、
Cp2=f(τ2) (6.41)
となる。τ2をτ1で表せば、式(6.39)より、
Cp2=f(τ2) =f (
τ1 A√
1−M12 )
(6.42) となる。左辺の圧力係数を式(6.40)より、第1の流れで置き換えれば、
Cp1 A =f
( τ1 A√
1−M12 )
(6.43) となる。つまり、流れ1(圧縮性流)において、Cp1、τ1、M1、Aの間の一般的な関係が得られる。
6.3.3 Prandtl-Glauert の法則
式(6.43)から類推できるように、一般には、3次元流の場合において、
Cp
A =f (
1 A
√ τ
1−M12, AR
√ 1−M12
)
(6.44)
と書く事が出来る。ここで、τは厚み比、また、ARはアスペクト比(縦横比)である。
以下にいくつかの場合について考える。ただし、簡単のために、流れは2次元とする。
Cp A =f
( 1 A
√ τ 1−M12
)
(6.45) いかに、Aの取り方を種々変えて調べる。
• A= 1の場合:
式(6.45)でA= 1にとると
Cp=f (
√ τ
1−M∞2 )
(6.46) となる。ここで、この式において、M∞→0にして、非圧縮性流の場合を考えると
Cpi =f(τi) (6.47)
となる。ここで、添え字iは非圧縮性流を表す。
式(6.46)と式(6.47)を比較すると、
√ τ
1−M∞2 =τi (6.48)
であれば、
Cp=Cpi (6.49)
となる。つまり、厚み比を1/√
1−M∞2 倍した翼型を非圧縮性流で実験し、そのとき得られる 圧力分布は、それが厚み比τを持つ翼型の圧縮性流での圧力分布となる。ちなみに、この厚み 比の変換を行ったときには、揚力L、循環Γ、ピッチングモーメントM も同じになる。
CL=CLi, Cm=Cmi, Γ = Γi (6.50)
• A= 1/√
1−M∞2 の場合:
式(6.45)でA= 1/√
1−M∞2 にとると Cp
√1−M∞2 =f(τ) (6.51)
となる。ここで、M∞→0にすると
Cpi =f(τi) (6.52)
となる。これを解釈すると、厚み比を同じにすると、つまり、τ =τiとすると、同じ形状の(大 きさの)翼型の、圧縮性流と非圧縮性流での圧力分布の間には
Cp√
1−M∞2 =Cpi (6.53)
の関係がある。つまり、圧縮性流では圧力分布は Cp= Cpi
√1−M∞2 (6.54)
となる。圧縮性の影響で圧力係数が増加する。これは大事な関係式である。
同様に他の空力係数や循環も同様な関係式となり、増加する。
CL= √ CLi
1−M∞2 , Cm= √Cmi
1−M∞2 , Γ = √ Γi
1−M∞2 (6.55)
• A=τの場合: 式(6.45)でA=τにとると Cp
τ =f (
√ 1
1−M∞2 )
(6.56) となる。この意味するところは、圧縮性流において、マッハ数が同じであれば、圧力係数Cp は、厚み比τに比例する。つまり、厚い翼ほど圧力係数が大きくなる。つまり、
Cp∝τ (6.57)
である。
第 7 章 衝撃波
飛行機が超音速で飛ぶと必ず衝撃波が発生する。また、亜音速で飛んでも、翼の上では速度が増加 し、局所的に超音速になるので、その後、減速するときに衝撃波が発生する。
V 1
V 2
Õg
T 1
Ï1 p1
T 2
Ï 2 p
2
<
<
<
図 7.1: 衝撃波を横切っての諸量の不連続