第 6 章 薄翼理論 49
7.6 斜め衝撃波
一般には衝撃波は一様流に対してある角度を持って発生する。これを斜め衝撃波(oblique shock
wave)と呼ぶ。特に、超音速流中に物体が置かれたときその前方部に発生する衝撃波(bow shock)
は、湾曲している。中心部では垂直衝撃波であるが、中心から離れるにつれて衝撃波は一様流に対し て傾いていく。
斜め衝撃波の関係式を求めるときに大事なことは、
• 流入する流れの、衝撃波に垂直な流れの成分に対して、上述の垂直衝撃波の関係式が成立する。
• 流入する流れの、衝撃波に沿う方向の流れの成分は、衝撃波の前後で変化しない。
ことである。つまり、衝撃波に垂直な方向の速度成分をVn、衝撃波に沿う方向の速度成分をVtとす れば、
Vn2 Vn1
= γ−1 γ+ 1 + 2
γ+ 1 1
Mn12 (7.77)
Vt2 = Vt1 (7.78)
最初の関係式は、式(7.13)に基づいている。ここで、添え字1は衝撃波の前の流れを、添え字2は 衝撃波の後の流れを表す。
今、衝撃波がx軸(水平)に対して、βの角度だけ傾いて存在し、衝撃波の前の流れはx軸方向に V1、衝撃波を通過した流れは、絶対値がV2で、角度θだけx軸から偏向したとする。従って、
Vn1=V1sinβ, Vt1=V1cosβ (7.79) である。
衝撃波に垂直な成分に対して Mn1 = Vn1
a1
= V1sinβ a1
=M1sinβ >1 (7.80)
Mn2 = Vn2
a2
= V2sin(β−θ) a2
=M2sin(β−θ)<1 (7.81) となる。理由は、垂直衝撃波の関係式より、垂直衝撃波の前では超音速、垂直衝撃波の後では、亜音 速になるためである。
衝撃波に沿う方向の速度は、衝撃波を横切っても変化しないので、
V1cosβ=V2cos(β−θ) (7.82)
となる。速度比で表せば、
V2
V1
= cosβ
cos(β−θ) (7.83)
である。また、衝撃波に垂直に流入する質量はそのまま衝撃波から流出するので(質量流量保存の 関係)、
ρ1V1sinβ=ρ2V2sin(β−θ) (7.84) となる。
一方、圧力比p2/p1は、式(7.11)より p2 p1
= 1 + 2γ
γ+ 1(M12sin2β−1) (7.85) となる。密度比は、式(7.12)より
ρ2
ρ1
= (γ+ 1)M12sin2β
(γ−1)M12sin2β+ 2 (7.86)
となる。あるいは、式(7.83)と式(7.84)を使って、
ρ2
ρ1 = V1sinβ
V2sin(β−θ)= cos(β−θ)
cosβ · sinβ
sin(β−θ) = tanβ
tan(β−θ) (7.87)
となる。
衝撃波前後でのマッハ数の関係は
M22sin2(β−θ) =(γ−1)M12sin2β+ 2
2γM12sin2β+ 1−γ (7.88) となる。この式の誘導は、圧力比p2/p1が
p2 p1
= 1 +γM12sin2β (
1−ρ1 ρ2
)
(7.89) となる。これは、衝撃波に垂直方向の運動量の関係式を衝撃波前の状態を基準に整理した式から得ら れる。
p1−p2=ρ2Vn22 −ρ1Vn12 =−ρ1Vn12 (
1−ρ2Vn22 ρ1Vn12
)
(7.90) 一方、 圧力比p1/p2が
p1 p2
= 1 +γM22 (
1−ρ2 ρ1
)
sin2(β−θ) (7.91)
となる。これは、衝撃波に垂直方向の運動量の関係式を衝撃波後の状態を基準に整理した式から得ら れる。
p1−p2=ρ2Vn22 (
1−ρ1Vn12 ρ2Vn22
)
(7.92) 式(7.91)が式(7.89)の逆数に等しいので、
1 +γM22 (
1−ρ2
ρ1 )
sin2(β−θ) = 1 1 +γM12sin2β
(
1−ρρ12) (7.93) となる。この式を整理すると
γM22 (
1−ρ2
ρ1 )
sin2(β−θ) = −γM12sin2β (
1−ρρ12) 1 +γM12sin2β
(
1−ρρ12) (7.94) となる。さらに簡単化すると、
M22sin2(β−θ) =1−ρρ12
1−ρρ21 · −M12sin2β 1 +γM12sin2β
(
1−ρρ12) (7.95) となる。ここで、
1−ρρ12
1−ρρ21 =−ρ1 ρ2
(7.96) であるので、
M22sin2(β−θ) =−ρ1
ρ2 · −M12sin2β 1 +γM12sin2β
(
1−ρρ12) (7.97) となる。この式に式(7.86)を代入すると、式(7.88)が得られる。
ここで、衝撃波の角度(wave angle)βと流れの角度(deflection angle)θとの間の大事な関係式は tanθ= 2 cotβ M12sin2β−1
M12(γ+ cos 2β) + 2 (7.98)
となる。これは、式(7.86)と式(7.87)より (γ+ 1)M12sin2β
(γ−1)M12sin2β+ 2 = tanβ
tan(β−θ) (7.99)
À
Æ M
1
M 2
Õg
Ï
P
P p
2 p
Ï
2
図 7.3: 斜め衝撃波を過ぎる流れ
となる。この式のtan(β−θ)に、
tan(β−θ) = tanβ−tanθ
1 + tanβ·tanθ (7.100)
の公式を代入して、tanθ=の形にすれば得られる。
Æ
À Î/2
Ê O
Æ max
図7.4: 流れの偏向角と衝撃波角の関係
衝撃波に流入マッハ数をM1、衝撃波通過後の流れの偏向角をθ、衝撃波角度をβとすれば、これ らの間の関係は図7.4のように描くことが出来る。極端な場合として、θが0の場合(衝撃波後ろの 楔の角度が0の場合に相当)には、衝撃波は音波にまで弱まり、その結果βはマッハ角sinµ= 1/M1
となる(β =µ)。
一方、θが大きくなり、つまり、物体の角度が大きくなる(楔角が大きくなる)と、βも大きくな り、ある角度以上になると(θ > θmax)、衝撃波は物体にもはや付着していることができずに、物体 から離れるようになる。これを離脱衝撃波(detached shock)と呼ぶ。例えば、一様流のマッハ数を
M1= 2.5とすると、物体の先端の角度がθ= 30◦以上になると、衝撃波は離脱する。逆の言い方を
すれば、物体の先端の角度がθ= 30◦の場合、一様流のマッハ数がM1≤2.5になると衝撃波は離脱 する。ちなみに物体先端に付着した衝撃波を付着衝撃波(attached shock)と呼ぶ。離脱衝撃波では、
中心部付近(楔の先端付近)では垂直衝撃波になり、衝撃波としては強い衝撃波が発生していること になる。
図7.5では、マッハ数M1をいろいろ変えた場合の変化を表している。実線は各マッハ数における θmaxの軌跡である。また破線は、流れが衝撃波を通過後に、破線より左側は超音速に、右側は亜音
´¹¬
¹¬
Æ
À
Î/2
Î/6
weak solution strong solution
O
Æ max
M1=
2 M1=
図7.5: 衝撃波通過後の流れ(weak solution/strong solution; supersonic/subsonic)
速になる領域の境目を表す。楔の角度をθ= 0から徐々に大きくしていくと、最初は衝撃波通過後の 楔の表面に沿う流れは超音速であるが、ある角度に達すると亜音速になる。それから先は、θmaxま で楔の角度を大きく出来るが、それから先は、衝撃波が楔から離脱する。
また図7.5では、同じ θでも(θ = constの線を引く)、衝撃波の角度 β は、2 つの解を持つ (β=β1, β2)。β1> β2とすれば、β1の方が衝撃波がより立ってくることになり、その結果強い衝撃 波になる(衝撃波通過後の圧力上昇や速度減少が大きくなる)。
斜め衝撃波を横切っての温度比T2/T1は、状態方程式と、式(7.85)、式(7.86)を使って、
T2
T1
=p2
p1 ×ρ1
ρ2
= {
1 + 2γ
γ+ 1(M12sin2β−1)
}(γ−1)M12sin2β+ 2
(γ+ 1)M12sin2β (7.101) となる。
ちなみに、速度成分に関しては u2
V1 = 1−2(M12sin2β−1)
(γ+ 1)M12 (7.102)
v2 V1
= 2(M12sin2β−1) cotβ
(γ+ 1)M12 (7.103)
ここで、斜め衝撃波後ろでの流れはV2= (u2, v2)である。この式の誘導を以下に示す。衝撃波の後 ろの速度は
u2=V2cosθ, v2=V2sinθ (7.104) である。いま、u2の誘導に焦点を絞る。上式から、
u2 V1
=V2 V1
cosθ (7.105)
となる。また、式(7.83)を代入すると、
u2
V1
= cosβ
cos(β−θ)cosθ= cosβ
cosβ+ sinβtanθ (7.106) となる。ここでは、cos(β−θ)が公式から展開されている。
この式のtanθに式(7.98)を代入して整理すると、式(7.102)が得られる。同様な方法で、式
(7.103)も得られる。
7.6.1 3次元衝撃波面に対する関係式
衝撃波面の速度をVsとする。つまり、衝撃波は移動しているとする。その結果、以下の関係式が 得られる。
Vs=|⃗u1n| −
√ p2−p1
1−1/ρ2
(7.107) p2
p1
= 2γ γ+ 1
[ M1
(⃗u1·⃗n)
|⃗u1||⃗n| ]2
−γ−1
γ+ 1 (7.108)
ρ2
ρ1 = p2/p1+ (γ−1)/(γ+ 1)
(γ−1)/(γ+ 1)p2/p1+ 1 (7.109)
⃗
u2=⃗u1+ 2(p2−p1)
(γ+ 1)p2+ (γ−1)p1|⃗u1n|⃗n (7.110) ここで、⃗nは衝撃波面に垂直な単位ベクトルである。また、添え字nは、衝撃波面に垂直な方向の成 分である。