第 9 章 超音速流 91
11.7 極超音速相似パラメータ
極超音速相似パラメータ(hypersonic similarity parameter)について述べる。結果的には、極超音 速流に対する微小擾乱方程式と境界条件が、パラメータ(M∞δ)2のみを含んだ形で無次元化される ことになる。つまり、一様流のマッハ数M∞と物体の厚み比δ(流れの偏向角と考えてもよい)が 個々の場合に違っていても、M∞δが同じであれば、それぞれの流れは力学的に相似になる。つまり、
変換された変数を用いれば、一つの曲線で表されることになる。これを極超音速相似則(hypersonic similarity rule)と呼ぶ。
極超音速相似パラメータとして
K=M∞δ (11.32)
を考える。
M∞が非常に大きい場合には、マッハ角µは小さくなる。
µ≃sinµ= a V∞ = 1
M∞ (11.33)
また、マッハ角µは、物体表面の最大傾斜角θと同程度かそれ以下になる。
µ≤θ (11.34)
従って、 1
M∞ ≤θ→ 1
M∞θ ≤1 (11.35)
となる。
ここで、式(11.32)の極超音速相似パラメータKを用いれば、
K=M∞θ≥1 (11.36)
となる。
11.7.1 圧力係数
圧力係数Cpは、以下のようになる。
Cp= p−p∞
(1/2)ρ∞V∞2 = p−p∞
(1/2)γp∞M∞2 = 2τ2 (
¯ p− 1
γM∞2τ2 )
(11.37) となる。ここで、
¯
p= p
γM∞2τ2p∞ (11.38)
である。式(11.37)を変形し、極超音速相似パラメータKを使って表すと、
Cp=2M∞2τ2 M∞2
(
¯ p− 1
γM∞2τ2 )
= 2K2 M∞2
(
¯ p− 1
γK2 )
(11.39) となる。ちなみに、流れの偏向角δと物体の厚み比τは、ほぼ同じである。
δ≃τ (11.40)
一般に極超音速流においては、物体まわりの圧力分布は、
¯
p = p(¯¯x,y,¯ z, γ, M¯ ∞τ, α/τ) (11.41)
¯
x = x/l, y¯=y/l, z¯=z/l (11.42)
で表される。従って、この式と式(11.39)から、
Cp=K2P(K, ξ, η)/M∞2 (11.43)
と表すことができる。ここで、
ξ= x
l、 η= y
lδ (11.44)
である。
式(11.43)に基づけば、
Cp
τ2 =P(K), or Cp
τ2 =P(K, γ), or Cp
τ2 =P(K, γ, α/τ) (11.45) となる。
同様にして、揚力係数CLは
CL
τ2 =L(K) (11.46)
となり、抵抗係数CDは、
CD
τ3 =D(K), or CD
τ3 =D(K, γ, α/τ) (11.47) となる。分母にτが余計に掛かっているが、これは、遷音速相似のところで述べたものと同じ理由 で、式(8.45)の下で述べられた説明を参照されたい。
以上述べたことから、2つの物体が極超音速流中にあり、それらの断面積分布が軸方向に同じであ れば(断面形状が異なっていてもよい)、この2つの物体は、同じ軸方向圧力分布と同じ抵抗を持つ ことになる。これを極超音速断面積法則と呼ぶ。
また、2つの物体が相似であるためには、
K=M∞τ =const M∞α=const (11.48) である必要がある。2番目の関係式は、K=M∞τ=constとα/τ=constを掛けることにより得ら れる。
例えば、
• 流れ1: M∞= 3, α= 10◦, τ= 1/3
• 流れ2: M∞= 5, α= 6◦, τ = 1/5
の2つの流れは、どちらも、K = 1となり、互いに相似となり、Cp/τ2 でデータを整理すれば、同 じ値をとることになる。
11.7.2 極超音速相似例(斜め衝撃波の場合)
斜め衝撃波を通る流れは以下の関係式がある。
M2sin2β−1 = γ+ 1
2 M2sinβsinθ
cos(β−θ) (11.49)
ここで、βは衝撃波の角度で、θは衝撃波通過後の流れの角度である。
極超音速流で、
M ≫1, θ≪1, M θ≫1 (11.50)
の場合には、
β≪1 (11.51)
となる。この場合をまとめると、
sinβ≃β, sinθ≃θ, cos(β−θ)≃1 (11.52) となる。
式(11.49)を展開して、O(θ2), O(β2)まで考えると、
M2β2−1 = γ+ 1
2 M2βθ (11.53)
となる。この式をM2θ2で割ると β
θ =γ+ 1
4 +
√(γ+ 1 4
)2
+ 1
(M θ)2 (11.54)
となる。ちなみに、M → ∞のときには、M θ→ ∞となり、
β
θ = γ+ 1
2 (11.55)
となる。
衝撃波前の圧力をp1、衝撃波通過後の圧力をp2とすると、衝撃波前後での圧力比は、式(7.85)
より、 p2−p1
p1
= 2γ
γ+ 1(M2sin2β−1)≃ 2γ
γ+ 1(M2β2−1) (11.56) となる。
圧力係数Cpは、一般に、式(11.37)より Cp = p−p∞
(1/2)ρ∞V∞2 = 2 γM∞2
p−p∞
p∞ (11.57)
となり、これを衝撃波前後の圧力変化に適用すれば、式(11.56)と式(11.54)を使って、
Cp= 2 γM∞2
p2−p1 p1
= 2
γM2 2γ
γ+ 1(M2β2−1) (11.58)
= 2
γM2 2γ γ+ 1
γ+ 1
2 M2βθ (11.59)
= 2βθ (11.60)
= 2θ2·β
θ (11.61)
= 2θ2
γ+ 1
4 +
√(γ+ 1 4
)2
+ 1
(M θ)2
(11.62)
となる。
これを見ると、
Cp=θ2f(M θ, γ) (11.63)
となっていることが分かる。つまり Cp
θ2 =f(M θ, γ) =f(K, γ) (11.64)
である。極超音速相似則である式(11.45)が斜め衝撃波を過ぎた流れに対して成立していることが確 認できる。ちなみに、θ=δである。
11.7.3 極超音速相似例( Prandtl-Meyer 膨張流の場合)
特性曲線の関係式より、式(9.115)と式(9.121)において、流れの偏向角θは、
θ = −(ω(M)−ω(M∞))
=
√γ+ 1 γ−1
( tan−1
√γ−1 γ+ 1
√M∞2 −1−tan−1
√γ−1 γ+ 1
√ M2−1
)
− (tan−1√
M∞2 −1−tan−1√
M2−1) (11.65)
となる。ここで、M∞は角をまわる前の流れのマッハ数で、M はプラントルマイヤー膨張をした後 の、角を過ぎた流れである。
M∞が大きくなると、M も大きくなり、
√
M2−1≃M (11.66)
と近似できる。また、引数xが大きい場合(x≫1)、tan−1xの漸近展開は tan−1x=π
2 −1
x+· · · (11.67) となる。その結果、式(11.65)は、
θ= 2 γ−1
( 1 M − 1
M∞ )
(11.68) と簡略化される。あるいは、この式に(γ−1)/2×M∞を掛けると
M∞
M = 1 +γ−1
2 M∞θ (11.69)
となる。
圧力係数は、
Cp= p−p∞
(1/2)ρV∞2 = 2 γM∞2
( p p∞ −1
)
(11.70) で定義されるので、これに圧力比p/p∞の式を代入する。等エントロピー流の関係式である
p0 p =
(
1 +γ−1 2 M2
)γ/(γ−1)
(11.71) を用いれば、Cpは
Cp = 2 γM∞2
( p p0 × p0
p∞ −1 )
= 2
γM∞2
{[2 + (γ−1)M∞2 2 + (γ−1)M2
]γ/(γ−1)
−1 }
(11.72) となる。M, M∞が大きい場合には
Cp= 2 γM∞2
[(M∞ M
)2γ/(γ−1)
−1 ]
(11.73) となる。式(11.69)を代入すると
CpM∞2 = 2 γ
[(
1 +γ−1 2 M∞θ
)2γ/(γ−1)
−1 ]
(11.74)
となる。この式の両辺をM∞2θ2で割ると Cp
θ2 = 2 γ · 1
M∞2θ2 [(
1 +γ−1 2 M∞θ
)2γ/(γ−1)
−1 ]
(11.75) となる。従って、
Cp
θ2 =f(M∞θ, γ) =f(K, γ) (11.76) となり、これは、極超音速相似則の関係式(11.45)を満たしている。つまり、このような膨張流に 対しても、極超音速相似則は成立する。