第 9 章 超音速流 91
11.9 平板前縁での流れの干渉
極超音速流中に平板を置いた実験では、シュリーレン写真を見ると、前縁から衝撃波が発生してい る。これは、平板上に発生する境界層の影響である。平板はフラットであるが、境界層が出来ると、
排除厚さの分だけ、平板の形状は外側に突き出た形状になり、その結果、前縁が実質的に勾配を持つ ようになり、流れを押し出すため、衝撃波が発生する。
一般的に極超音速流中に置かれた平板の平板境界層内では、温度が上がるために密度が小さくな り、その結果、境界層の厚さは増大する。
極超音速流の主流と平板境界層の干渉(特に平板の前縁付近の干渉)は、パラメータχを使って 表す事が出来る。前縁付近では、強い干渉(strong interaction)が、少し下流に行った辺りの、境界 層と衝撃波がはっきりと分離できる領域から、弱い干渉(weak interaction)が現れる。この弱い干 渉が終了した後で、境界層本来のPrandtlの境界層が発達することになる。
強い干渉領域と弱い緩衝領域における圧力分布が理論的に解析されている。
• 強い干渉領域: 前縁近くでは、衝撃波が壁近くにあるために、衝撃波と粘性層が強く干渉し ている。P r= 1, γ= 1.4に対して、
p
p∞ = 0.514χ+ 0.759 (11.94)
となる。ただし
χ=M∞3
√C Rex
, C=µwall/µ∞ T∞/Twall
(11.95)
• 弱い干渉領域: 前縁から少し下流に行くと、衝撃波が壁から離れて、境界層との干渉が弱く なる。P r= 0.725, γ= 1.4に対して、
p
p∞ = 1 + 0.31χ+ 0.050χ2 (11.96)
となる。
ちなみに、平板の先端付近では、スリップ流れが存在する。つまり、流れの速度が速いために、十 分な分子同士の衝突が行われることなく、壁での影響を受けないまま(壁との情報交換が行われない まま)平板上を流れすぎてしまう現象である。ここでは、ナビエストークス方程式のような連続体の 方程式が適用できなく、ボルツマン方程式のような気体分子運動方程式を適用する必要がある。ボル ツマン方程式は、簡単には、モンテカルロ法(DSMC法: Direct Simulation Monte Carlo Method) で解くことができる。
(参考)DSMC法に関しては、以下の本
G.A.Bird: Molecular Gas Dynamics, Claredon Press, Oxford, 1976 を参照されたい。
(参考終わり)
これに関連して、スペースシャトルでは、300,000f t(92km)以上上空では、シャトルのノーズ付 近の流れを純粋な連続体の方程式では、うまく解くことができない。
11.9.1 極超音速粘性干渉
この場合の干渉とは、粘性境界層が発達すると、外側の流れ(非粘性流)が変更される。これが変 化すると、また境界層の中の流れが変化するという仕組みである。
極超音速流には、2つの大きな干渉がある。
• 圧力干渉: 極超音速流の状態では、境界層が異常に厚くなる。これを粘性干渉と呼ぶ。
• 衝撃波と境界層との干渉: 強い衝撃波が境界層の中に突入する(shock impinging)。この結 果、衝撃波の後ろで境界層が厚くなる。また、衝撃波の突入部で境界層が剥離する。
平板における層流境界層の場合、境界層厚さδは、
δ∝ Me2
√Rex
(11.97) となる。つまり、Rexが同じであれば、境界層の厚さは、Me2に比例する。この証明は、以下の通り である。層流境界層の中では、自己相似解として、
δ∝ x
√Rex
(11.98) となる。境界層の中では、強い粘性散逸があるので(温度の上昇につながる)、温度分布は境界層の 中で大きく変化する。その結果、密度や粘性係数は、境界層の中で大きく変化する。壁上での密度 ρwとµwを用いると、
δ∝ x
√ρ
wuex µw
∝ x
√ρ
euex µe
√ρe
ρw
õw
µe
(11.99) となる。
境界層の中では、壁に垂直方向に圧力が一定であるので、
pe=pw=p (11.100)
となる。また、状態方程式より
ρe
ρw = pe
pw Tw
Te =Tw
Te (11.101)
となる。ここで、境界層より、pe/pw= 1である。また、粘性係数が温度に比例すると考えると、
µw
µe
= Tw
Te
(11.102) となる。
以上より、境界層の厚さは、
δ∝ x
√Re
√Tw
Te
√Tw
Te ∝ x
√Re ·Tw
Te
(11.103) となる。ここで、Reは、境界層外縁での値に基づいている。
Re= ρeuex
µe (11.104)
断熱壁を仮定すると(回復係数はr= 1)、
Tw
Te
=Taw
Te
= T0
Te
= 1 +γ−1
2 M e2≃ γ−1
2 M e2 (11.105)
となる。最後の関係式は、境界層外縁でのマッハ数が大きい(M e≫1)として近似している。この 式を式(11.103)に代入すると、
δ∝ x
√ReM e2 =⇒ δ
x∝ M e2
√Re (11.106)
となる。