第 6 章 薄翼理論 49
7.4 ランキン・ユゴニオの関係式
連続の式(7.2)、運動量の式(7.3)、エネルギーの式(7.4)から、速度V1, V2を消去するとランキン・
ユゴニオ(Rankine-Hugoniot)の関係式が得られる。
p2
p1
= (γ+ 1)ρ2−(γ−1)ρ1
(γ+ 1)ρ1−(γ−1)ρ2
= (γ+ 1)(ρ2/ρ1)−(γ−1)
(γ+ 1)−(γ−1)(ρ2/ρ1) (7.31) ρ2
ρ1 = (γ+ 1)p2+ (γ−1)p1
(γ−1)p2+ (γ+ 1)p1 =(γ+ 1)(p2/p1) + (γ−1)
(γ−1)(p2/p1) + (γ+ 1) (7.32)
ここで、圧力比が小さいときには(p2/p1≃1 +ϵ)、上式をテーラー展開で微小擾乱展開したものは、
等エントロピーの関係式を微小擾乱展開したものと同じになる。
p2 p1
= (ρ2
ρ1
)γ
あるいは lnp2 p1
=γlnρ2 ρ1
(7.33) これを微小変化の仮定で展開すると
∆p p1
=γ∆ρ ρ1
(7.34) となる。ここで、∆p=p2−p1、∆ρ=ρ2−ρ1である。つまり、マッハ数が1に近い場合には、エ ントロピー上昇はほとんどなく、ポテンシャル流と考えてよい。遷音速流の場合には、これに近い流 れとなる。
ちなみに、圧力比を速度比で表すと p2
p1 = (γ+ 1
γ−1 −V2
V1 )
/ (γ+ 1
γ−1 V2
V1 −1 )
(7.35) となる。
参考:衝撃波の伝播速度
ランキン・ユゴニオの関係式より、衝撃波の伝播速度Cshockに関する以下の式が導かれる。
[f]−Cshock[U] = 0 (7.36)
ここで、[a]は衝撃波前後の量の差を表し、[a] =a1−a2である。a1は衝撃波前の値、a2は衝撃波 後の値である。また、f は流束(flux)で、U は解ベクトルである。ちなみに、流束は、解ベクトルの 関数である(f =f(U))。1次元オイラー方程式の場合には、
U = (ρ, ρu, et)t, f = (ρu, ρu2+p, ρuH)t (7.37) となる。uは流れの速度、etは単位体積当りの全エネルギー、Hは全エンタルピーである。
et=ρ(ei+u2/2), H =h+u2/2 (7.38) ここで、eiは単位質量当りの内部エネルギーである。
7.4.1 エントロピー変化
流れが衝撃波を通過するとき、エントロピーがどのように変化するかを見る。衝撃波に入り込む 側を()1と衝撃波から出て行く側を()2で表すと、それぞれの側でエントロピーは、式(1.81)より、
以下の式で表される。
p1
ργ1 =Cexp(S1/Cv), p2
ργ2 =Cexp(S2/Cv) (7.39) これらの式を割り算すると
p2/p1
(ρ2/ρ1)γ = exp{(S2−S1)/Cv} → S2−S1 Cv
= ln p2/p1
(ρ2/ρ1)γ (7.40) となる。この式に式(7.11)と式(7.12)を代入すると
S2−S1
Cv
= ln [p2
p1
(ρ1
ρ2
)γ]
= ln {[
1 + 2γ
γ+ 1(M12−1)
] [(γ−1)M12+ 2 (γ+ 1)M12
]γ}
(7.41)
となる。
この式より、エントロピーは
S2−S1
Cv >1 if M1>1 (7.42)
S2−S1
Cv
<1 if M1<1 (7.43)
となる。
前者を圧縮衝撃波(compression shock)、後者を膨張衝撃波(rarefaction shock)と呼ぶ。実際には エントロピが減少することは無いので(式(7.6))、後者の膨張衝撃波は存在しない。つまり、M1>1 でないと、衝撃波は存在しない。
あるいは、衝撃波前後のエントロピー変化に関して以下のようにも表すことができる。エントロピ は次のように表せる。
S2−S1= (Cp−Cv) ln(T2/T1)γ/(γ−1) p2/p1
(7.44) これは、式(1.84)より
S2−S1
R = Cp
R lnT2
T1 −lnp2
p1
(7.45) となり、Cp/R=Cp/(Cp−Cv) =γ/(γ−1)から、
S2−S1
R = γ
γ−1lnT2
T1−lnp2
p1 (7.46)
となるためである。
また、澱みエントロピーに対しては、添え字0を付けて、
S02−S01= (Cp−Cv) ln(T02/T01)γ/(γ−1) p02/p01
(7.47) の関係が得られる。衝撃波の前の領域(1)と後ろの領域(2)では、それぞれの領域で流れを断熱的に 澱ませてもそれぞれの領域のエントロピーは変化しないので、
S1=S01, S2=S02 (7.48)
となる。従って
S2−S1=S02−S01 (7.49)
となる。また、衝撃波を通って総温は変化しないので
T02=T01 (7.50)
である。さらに、メイヤーの関係式より
Cp−Cv=R (7.51)
である。これらを式(7.47)に代入すると、
S2−S1
R =S02−S01
R = lnp01 p02
(7.52) となる。衝撃波を横切ると総圧は大きく減少する。つまり、p01/p02>1となる。従って、衝撃波を 横切ってエントロピーは増加することになる。つじつまが合っている。
ちなみに、式(7.44)を、状態方程式を使って、圧力と密度を含む形に変形する。状態方程式より、
p=ρRT → p1 p2
= ρ1T1
ρ2T2 → T2 T1
=ρ1 ρ2 ×p2
p1
(7.53) となる。これを式(7.44)に代入すると、
S2−S1
R = ln(ρ2/ρ1)−γ/(γ−1)+ ln(p2/p1)1/(γ−1) (7.54) となる。
7.4.2 総圧の関係
衝撃波の前後の領域で、等エントロピー的に圧縮することにより、それぞれの領域で静圧pと総圧 p0に関して、式(2.32)から次の関係式が成立する。
p1
p01
= (
1 + γ−1 2 M12
)−γ/(γ−1)
(7.55) p2
p02
= (
1 + γ−1 2 M22
)−γ/(γ−1)
(7.56) ここで、p02/p01を以下のように変形して求める。
p02
p01
= p02
p2 ·p2
p1· p1
p01
= (
1 +γ−1 2 M22
)γ/(γ−1)
·p2
p1· (
1 +γ−1 2 M12
)−γ/(γ−1)
(7.57) p2/p1に式(7.11)を代入すると
p02
p01 =
(1 + γ−21M22 1 + γ−21M12
)γ/(γ−1)
× ( 2γ
γ+ 1M12−γ−1 γ+ 1
)
(7.58) となる。この式に式(7.16)を代入すると
p02 p01
= ( 2γ
γ+ 1M12−γ−1 γ+ 1
)−1/(γ−1)( γ−1 γ+ 1 + 2
γ+ 1 1 M12
)−γ/(γ−1)
(7.59) となる。
M1 ≥1であれば、p02/p01≤1であるので、衝撃波を通過すると総圧は減少する。代表的なマッ ハ数での、総圧比を表(7.2)に示す。このようにM = 8になると、総圧比は大変小さく1%以下とな
マッハ数(M1) 圧力比(p02/p01)
1.5 0.93
2 0.72
2.5 0.50
3 0.32
5 0.06
8 0.008
表7.2: マッハ数と衝撃波前後の総圧比との関係
る。つまり、総圧損失が大変大きいことを示している。これが超音速飛行での抵抗となる。従って、
総圧損失を減少させる工夫が必要である。