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第 8 章 総 括 149

B.2 Taketomi の理論

そこで,次の形の解を考える。

ρ(x, z, t) =

q

ρqexp[i(q1x+q3z)] exp(iωt) (B.18) 式(B.5)(B.13)(B.14)(B.15)に式(B.18)を代入して,ρq, vqx, vqz, θq4つの式を導く。こ の解によって,次の関係が導かれる。

V02q2−ω2 = iγ1C0q2c2−ω2)

0ωωc2(1 +iωτm)[v02q2(λcos 2φ−1)2−ω22−2λcos 2φ+ 1)] (B.19) ここで,τ =γ1/m0Hで緩和時間,ωc =χ0H/Iはθの微小変化に対する固有振動数である。

q1=qsinφ and q3 =qcosφ (B.20)

ωが与えられているので,式(B.19)からqが決まる。

q = (ω/V0) +q (B.21)

式(B.19)qについて線形化して,右辺を小さいものとして扱うと,qについての解は,

−2ωV0q = C0λ21ω3c2−ω2) 4ρ0V02ωc2

(1/ωc2)−iωτm

(1−ω22c)22τm2

sin22φ (B.22) q =qr +iqi,V =ω/qrとして相速度を定義すると,

V =V0(1 + ∆) (B.23)

ここで,∆は次のように与えられる。

∆ =C0

λ2 8

γ1ω ρ0V02

1−ω2 ωc2

ωτm

(1−ω2c2)22τm2 sin22φ (B.24) このように,Parsonsは,(sin 2φ)2に音速変化が依存するとしているが,これは,後に行われ たいずれの実験においても一致が見られていない。

ここで,ρmは磁性コロイド粒子の局所密度で,ρ0mはρmの平均的な値,χ0は磁性流体の磁化率 χの平均的な値である。xyz三次元直交座標系を用いて行う。磁場H z軸方向にかけられてい る。音波はxz平面をz軸に対してφの角度をなして伝播する。2次以降の空間偏微分項を無視し て,吸収係数αpを次のように得た。

αp = ω2γ1

3c

(1−ω22c)2 (1−ω2c2)22τm2

(sin 2φ)2 (B.26)

ωcは以下で与えられる。

ωc=

χ0H/I (B.27)

ここで,Iは強磁性微粒子の慣性密度モーメントであり,τm

τm1/(m0H) (B.28)

である。定数γ1,γ2はLeslie係数αiを用いて

γ13−α2 (B.29)

γ26−α523 (B.30)

と書ける。ここで,磁性流体をネマティック液晶と見なすためには次の条件を必要とする。

γ2= 0 (B.31)

強磁性微粒子は磁場の作用下で凝集し,鎖状クラスターを形成している。鎖状クラスター中の 微粒子の磁化方向は全て同方向であると仮定し,Parsonsが設定した配向ベクトルnを微粒子の 磁化方向ではなく,クラスターの磁化の方向とする。連続の式,Navier-Stokesの方程式,n方向 に関する運動方程式は以下のように表される。

ρ,t+ (ρuj),j= 0 (B.32)

ρu˙i+ (Toij+tij),j = 0 (B.33) Ii+ Πij,j+fi+fi =γni, (B.34) ここで,Iはクラスターの慣性密度モーメント,X,t=∂X/∂tX,i=∂X/∂i,また,ドットはそ れぞれのtに関するラグランジュ微分である。また,uiは流体速度のi成分であり,γは定数であ る。T0ijとtij はそれぞれ応力テンソルの保存成分と散逸成分である。Πij,jは応力ひずみテンソ ル,fi,fiはそれぞれni方向に働く体積力の保存成分と散逸成分である。これらは,以下の式に よって与えられる。

T0ij = p·δij −nk,i·Πkj (B.35)

−α4Aij −α5(Aiknknj+ninkAkj)

−µ1δijAll−µ2ninjAll−µ3δijnknpAkp (B.36) Πij = −∂Fd

∂nij

(B.37) fi = ∂Fd

∂ni

(B.38)

fi = γ1Ni =−2α2Ni (B.39)

pは圧力,Fdはひずみエネルギーの合計を表す。磁気エネルギーは以下の式で表される。

Fd = K1

2 (∇ ·n)2+K2

2 (n·(∇ × n))2 +K3

2 (n× (∇ × n))2−χ0(n·H) (B.40) K1,K2,K3は定数である。変数Niは以下で与えられる。

Ni = ˙niijnj (B.41)

変数ωij,Aij を以下のように定義する。

ωij ≡ 1

2(uj,i−ui,j) (B.42)

Aij ≡ 1

2(uj,i+ui,j) (B.43)

ここで,nは磁場の方向とほぼ同じであると仮定すると,以下のように表現できる。

(ni) =

θ

√1 +θ2, 0, 1

√1 +θ2

(B.44)

|θ| ≪ 1 (B.45)

このとき,式(B.40)は次のように書ける。

Fe= K1

2 (θ,x)2+K3

2 (θ,z)202/2 +const. (B.46)

ここで,θ,x=∂θ/∂xである。またθは微小であるとし,2次以上の項を無視する。磁場の方向と

音波伝播方向を考慮すると流体の速度uは次のように表現できる。

ux =ux(t, x, z). uy = 0, uz =uz(t, x, z) (B.47) 式(B.47)を用いて,式(B.38),式(B.41)はそれぞれ以下のように導かれる。

fx0Hθ, fy =fz = 0 (B.48)

Nx = ˙θ+1

2(uz,x−ux,z), Ny =Nz = 0 (B.49)

式(B.37),式(B.46)からΠijは次のように表現できる。

Πxx =−K1θ,x Πxz =−K3θ,z

and for other pairs of iandj Πij = 0 (B.50) 式(B.39),式(B.41),式(B.44),式(B.48),式(B.50)を用いれば,式(B.34)から以下の式が導 かれる。

Iθ¨−2α2θ˙−K1θ,xx−K3θ,zz+m0

2ux,z−α2uz,x = 0 (B.51) ここで,uij,θθ˙θ,iは一次の微少量とみなす。同様の近似を用いて,式(B.35)は以下のように 表すことができる。

T0ij =pδij (B.52)

次に密度ρを普遍量ρ¯と微小変動量ρに分割する。

ρ= ¯ρ+ρ(t, x, z) (B.53)

このとき,T0ijは以下のように表現できる。

v2= ∂p

∂ρ

s

(B.54) ここで,cは音速で,

T0ij =c2ρδij (B.55)

である。これは等エントロピーでなされる。また,式(B.32)は以下のようになる。

¯

ρ(ux,x+uz,z) +ρ,t (B.56)

tijに対しても同様な近似をし,式(B.54)とともに式(B.33)に代入すると,以下の等式が得られる。

¯

ρux,t + u2ρ,x−α4ux,xx1ρ,tx/ρ−µ3uz,xz

− α2θ,tz+1

2(α2−α4−α5)ux,zz−1

2(α245)uz,xz = 0 (B.57)

¯

ρuz,t + u2ρ,z−(α14+ 2α5)uz,zz+ (µ12,tz/¯ρ−µ3uz,zz

+ α2θ,tx−1

2(α245)ux,xz+1

2(α2−α4−α5)uz,xx= 0 (B.58) 式(B.51),式(B.56),式(B.57),式(B.58)を用いれば,θ,ux,uz,ρが求まる。これらの量を 次のように書き直す。

θ=θqe, ux=u1e

ここでψ

ψ=qxx+qzZ−ωt (B.60)

ここで,qは波数ベクトルである。式(B.59)のフーリエ変換によって,偏微分方程式の式(B.51) 式(B.56),式(B.57),式(B.58)は線形の代数方程式に置き換わる。自明でない解(θq, u1, u3, ρq) を得るためには,これらの係数の行列式がゼロでなければならない。

よって,鎖状クラスターの回転による音波の吸収αrは行列式から以下のように得られる。

αr = ω2

2¯ρv3{(α41) + 2α5(cosφ)21(cosφ)4} (B.61)

ここで,αiは(¯ρω)/α2に対して一次の微小項であり,二次以上の微小項は無視している。また,

次の関係式を用いた。

µ23 = 0 (B.62)

また

α4 = 2η (B.63)

µ1=ζ−2η/3 (B.64)

であり,式(B.61)の右辺第一項は次のように書ける。

ω2 2¯ρc3

ζ+4

(B.65) これは通常の流体の吸収係数と等しく,η,ζはそれぞれせん断粘度,体積粘度である。式(B.61) の右辺第二項,第三項はクラスターの回転に由来する吸収係数への付加項である。

鎖状クラスターの並進運動による音波の吸収

ここで,鎖状クラスターを次のようにモデル化する。強磁性微粒子は凝集し球体のクラスター を形成し,磁場にそってビーズ状に整列しているとする。鎖状クラスターの方向と,音波伝播の 方向,x方向とのなす角をφとする。また,球状クラスターの半径をdとする。xcだけ変位した クラスターに働く復元力F1を以下のように表す。

F1=−kc(sinφ)·xc (B.66)

F1はクラスター間相互に働く磁気力に由来し,鎖状のクラスター方向と変位したクラスターの距 離(sinφ)·xcに比例する。流体の速度uxを以下とする。

ux=u0exp{i(qx−ωt)} (B.67)

ここで,u0は一定である。クラスターは音波の伝播するx方向に振動し,その変位xは以下のよ うに表される。

x=x0exp{i(qx−ωt)} (B.68)

ここで,x0は一定である。このとき,クラスター速度Vcは以下で与えられる。

Vc=−iωx (B.69)

鎖状クラスターに働く摩擦力F2は次のように表される。

F2=−6πη0a(Vc−ux) (B.70)

η0は流体のせん断粘度である。鎖状クラスターに働く圧力F3は以下で表される。

F3=ρvcu0ωexp{i(qx−ωt)} (B.71) vcはクラスターの体積であり

vc = 4π

3 d3 (B.72)

である。以上よりクラスターの運動方程式が以下で表される。

ρmvcx¨=F1+F2+F3 (B.73) 磁性流体の単位体積,時間あたりの散逸エネルギーEdisは次のように表現できる。

Edis=−N

4 < F2·u¯+ ¯F2·u > (B.74) Nは単位体積あたりのクラスターの個数,u¯はuの共役複素数,<・・・>は時間平均を示す。(B.73) の解を(B.74)に代入すると,

Edis= 3πη03ρ0vcu20(6πη0a+ρ0vcω)N/k2c

(sinφ−ρmvcω2/kc)2+ (6πη0aω/kc)2 (B.75) よって鎖状クラスターの並進運動による吸収係数αtは以下で表される。

αt=Edis/(ρ0vu20) = 3πη03vcN(6πη0a+ρ0vcω)/(kc2Vc)

(sinφ−ρmvcω2/kc)2+ (6πη0aω/kc)2 (B.76) Taketomiによる吸収係数αT はαrとαtの和である。

αTrt (B.77)

付 録 C Newton 流体管内振動流の理論解析

第7章では,UVPを用いた磁性流体管内振動流の速度分布計測を行なった。無磁場下における磁 性流体は,Newton流体として取り扱うことで,理論解析が可能となる。ここに,Newton流体の 管内振動流の理論解析を記す。

管軸方向をx,管半径方向をrとして,管軸方向の速度分布u(r, t)を考える。Navier-Stokesの 方程式は次のように与えられる。

∂u

∂t −ν 2u

∂r2 1 r

∂u

∂r

=−1 ρ

∂p

∂x (C.1)

である。ρは流体の密度,νは動粘性係数である。ここで,圧力勾配を

−∂p

∂x =Aeiωt (C.2)

として,変数分離法により,u(r, t) =u(r)eiωtとすると,式(C.1)は,次のようになる。

d2u dr2 +1

r du dr −iω

ν u=−A

νρ (C.3)

この式の特殊解は,

u(r) = A

iωρ (C.4)

となる。

次に式(C.3)の同次解を考える。斉次方程式は,

d2u dr2 +1

r du dr −iω

ν u= 0 (C.5)

ここでi

ν r =krとおき変数変換を行い整理すると,

r2d2u

dr2 +rdu

dr +r2u= 0 (C.6)

となる。

ここで,式(C.6)は0次ベッセル微分方程式の形なので,式(C.5)の同次解は第2種ベッセル 関数J0(r),Y0(r)を用いて

u(r) =A1J0(r) +B1Y0(r) (A1,B1は任意定数)  (C.7)