• 検索結果がありません。

第 2 章 Pb-Ca-Sn 合金の機械的性質に及ぼす Ba 添加の影響

4.3 TEM 観察による強化機構の検討

93

剥離 させ 、 ジエ チ ルエ ーテ ル中 で 広が っ たカ ーボ ン膜 を シー ト メッ シュ 上に す くい 取る こと に より 、 抽出 レプ リカ 試 料を 作 製し た。

薄膜 試料 は、2.2.5項 で述 べた 方 法で 作 製し た。エ メ リー 紙 によ る 手研 磨と バ フ研 磨に より 厚 さ を 0.05 mm以 下と して デ ィン プリ ンン グ を行 い 、こ れに イオ ン ミリ ン グに より 中 心部 に 穴を 開け て作 製 した 。 なお 、イ オン ミ リン グ 後の 薄膜 試料 を 大気 中に て保 管 する と 表面 に酸 化膜 が 生成 し、透 過型 電子 顕 微鏡(TEM)によ る観 察が 困難 にな る ため 、 イオ ンミ リン グ 終了 後 にす ぐ に TEM 観 察 を行 な った 。

使 用し た 透過 型 電子 顕微 鏡は 、PHILIPS 社製 TECNAI30s であり 、加 速 電圧 は 200〜300 kV と して 、明視 野観 察 を行 な った 。更 に、抽出 レ プリ カ 試料 は、電子 線 に よ る ダ メ ー ジ を 考 慮 し 、 高 角 度 散 乱 暗 視 野(HAADF)-走 査 透 過 電 子 顕 微 鏡

(STEM)法 に より 観 察を 行な っ た。 ま た、 エネ ルギ ー 分散 型 X線分 光法 (EDS) によ る元 素 分析 も 行っ た。 なお 、 電子 線 によ る試 料の 加 熱を 防 ぐた め一 部の 観 察で は試 料ホ ル ダー に 冷却 ホル ダー を 使用 し た。

94

は、 これ ら の析 出 物の 詳細 な構 造 や組 成 は判 明し てい な いが 、Ba の添 加に よ り Ba を構 成元 素 とす る 微細 な析 出物 が 均一 に 析出 する こと で 優れ た 機械 的特 性を 有 する と言 えそ う であ る 。

図 4.1 ベー ス合 金 の TEM観察 写 真(抽出 レ プリ カ)

図 4.2 C21合 金 の TEM 観察 写 真(抽出 レ プリ カ)

95

図4.3 C21 合 金 の EDS 分 析結 果(抽 出レ プ リカ)

4.3.2 薄 膜 試 料 に よ る 微 細 組 織 の 観 察

ベ ース 合 金 と C21合金 の鋳 造 まま 材 につ いて、薄 膜試 料に よ る 微細 組織 の 観察 を 行っ た 。図 4.4は 、鋳造 まま のベ ー ス合 金 の薄 膜試 料に よ る微 細 組織 を示 して い る。

抽出 レプ リ カと 同 様に 粒内 には 析 出物 は 観察 され ない 。 図 4.5に、C21 合金 の 微細 組織 を示 す 。 図 4.5よ り、 球状 に 近い 析 出物 が均 一に 析 出し て いる こと が分 か る。

96

図 4.4 ベー ス合 金 の TEM 観察 写 真(薄膜)

図4.5 C21 合 金 の TEM 観察 写 真(薄膜)

97

次 に 、393 K時効 処 理材 の薄 膜 試料 に よる 微細 組織 の 観察 結 果を 示す 。図 4.6 は、

時効 処理 後 のベ ー ス合 金の 微細 組 織を 示 して いる 。図 4.6の(a)は結 晶粒 内、(b)は結 晶粒 界付 近 の微 細 組織 であ る。 図 4.6より 、 ベー ス合 金 では 、393 K で の時 効処 理 を施 して も(a)の結 晶 粒内 には 析 出物 は 認め られ なか っ た。しか し 、(b)の 結晶 粒界 付 近で は、 粒 界に 沿 って 梨地 状の 析 出物 が 確認 され た。 こ れは 不 連続 析出 物で あ り、

パー ライ ト 状の ノ ジュ ール が形 成 され た 粒界 反応 型析 出 と推 察 され る 。Al 合金 の 応 力腐 食割 れ のよ う に、 粒界 析出 は 合金 の 機械 的特 性を 低 下さ せ る場 合が 多い と 考え られ てい る 。

図 4.7に、C21 合 金の 時効 後の 微 細組 織 を示 す。 均一 に 分散 し た粗 大な 析出 物 と 微細 な析 出 物が 観 察さ れた 。粗 大 な析 出 物は 、鋳 造時 に 析出 し た析 出物 が更 な る時 効処 理に よ り過 時 効状 態と なり 成 長し た と考 えら れ、微細 な 析出 物 は 393 Kの時 効 処 理 に よ っ て 析 出 し た も の と 考 え ら れ る 。 な お 、 薄 膜 試 料 で 観 察 さ れ た 析 出 物 も EDS に よる 元 素分 析 を試 みた が 、電 子線 に よる 損傷 が 激し く、分 析す るこ と がで き なか った 。

以上 の薄 膜 試料 に よる 観察 から 、Baの 添 加 は析 出物 の 生成 を 促進 する とと も に、

析出 形態 に も影 響 を与 える こと が 判明 し た。

98

(a) 結晶 粒 内

(b) 結晶 粒 界付 近

図 4.6 ベー ス合 金 の 時効 後 の TEM 観察 写 真(薄膜)

99

図 4.7 C21合 金の 時 効後 の TEM 観 察写 真(薄膜)

4.3.3 引 張 試 験 片 の 破 断 部 の 微 細 組 織

ひ ずみ の 導入 に よる 微細 組織 の 変化 を 調査 する ため に 、393 K, 10.8 ksの時 効処 理を 施し た 引張 試 験片 の破 断部 か ら薄 膜 試料 を作 製し 、 微細 組 織観 察を 行っ た 。図 4.8 は 、ベ ー ス合 金の 破断 後の 微 細組 織 であ る。 図 4.8 の(a)より 、ベ ース 合 金で は マト リッ ク ス中 に 転位 はほ とん ど 確認 さ れず 、わ ずか に 孤立 し た転 位が 見ら れ た。

また、(b)よ り、粒界 が拡 がっ て 見ら れ、こ れは 転位 が 吸い 込 まれ たた めに 粒 界の 方 位差 が拡 大 した た めで あり 、こ の 写真 は 転位 が粒 界に 吸 い込 ま れる 状態 を撮 影 した もの であ る 。こ の よう に、 ベー ス 合金 で は析 出物 によ る 分散 強 化が ほと んど 機 能し ない ため 、転位 が 容易 に移 動し て しま い 、ク リー プ特 性 に劣 る と考 えら れる 。また 、 転位 が移 動 し結 晶 粒界 で消 滅す る ため に 粒界 の方 位差 が 増加 し 、大 きな ミス フ ィッ トが 生じ 、 粒界 の 耐食 性も 低下 す ると 思 われ る。

100

(a) 視 野 1

(b) 視 野 2

図4.8 ベー ス合 金 の 破断 後 の TEM 観察 写 真( 薄膜 )

101

図4.9 は 、C21 合 金 の 破断 部の 転 位組 織 であ る。(a)よ り、図 中の 矢印 で示 し た析 出物 に転 位 の移 動 が妨 げら れタ ン グル を 形成 して いる こ とが 分 かる 。更 に、 タ ング ルを 形成 し てい る 転位 に他 の転 位 が絡 み 合っ て結 晶粒 内 に均 一 に分 散し てい る のが 確認 でき る。ま た、(b)では、結晶 粒 内に 均 一に 分散 し た転 位 が見 られ る。これ ら は マト リッ ク スに 分 散し た微 細な 析 出物 に よる 転位 のピ ン 止め 効 果が 有効 に機 能 した ため であ り 、本 合 金が 典型 的な 分 散強 化 型合 金で ある こ とを 裏 付け てい る。

4.3.4 微 細 組 織 に 及 ぼ す 時 効 処 理 の 影 響

次に 自然 時 効処 理 によ って 生成 し た析 出 物の 析出 形態 を 調査 す るた めに 透過 型 電 子顕 微鏡 (TEM) を 用い て微 細 組織 観 察を 行っ た。

図4.10 は 533 K溶体 化処 理材 に 自然 時 効処 理 を 168 hr施し た C21 合 金 の TEM 観察 像で あ る。 結 晶粒 内に 微細 な 析出 物 が均 一に 分散 し てい る こと が確 認で き た。

また 、析 出 物の 粒 径は 約 6 nmの サ イズ であ った 。こ こ では 、 析出 物の 制限 視 野回 折を 試み た が、 ビ ーム を絞 ると 数 十秒 で 析出 物が 消失 す るた め 、回 折像 を得 る こと がで きな か った 。 更に 、こ れら の 析出 物 はマ トリ ック ス に対 し てコ ント ラス ト を有 して おり 、母 相 と非 整 合で ある と 考え ら れる 。つ まり 、C21 合金 で は、自然 時効 に より 準安 定 な析 出 相が 析出 する と 推察 さ れる 。 図 4.11 はC21 合 金 の 553 K溶体 化 処理 材に 自 然時 効 処理 を 168 hr 施し た 場合 の TEM 観察 像と 電子 線回 折像 で ある 。 TEM 観察 か ら析 出物 に転 位が ト ラッ プ され てい る様 子 が観 察 され た。ま た、結 晶粒 界に 沿っ て 針状 の 準安 定な 析出 物 また は 転位 と見 られ る 組織 を 観察 する こと が でき る。 この 組 織は 自 然時 効処 理に よ り生 成 され たも のと 考 えら れ る。

図4.12 はC7'合金 の 533 K溶体化 処 理ま ま 材のTEM観察 像で あ る。結 晶 粒界、結 晶粒 内に 微 細な 析 出物 が観 察で き る。 図 4.13はC7'合 金 の 553 K溶体 化処 理 まま 材 のTEM観 察 像 で あ る 。 こ の バ タ フ ラ イ 型 の 析 出 物 はPb-Ca-Sn系 の 析 出 物 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る52)。C7’合 金 で は 母 相 と 整 合 し た 析 出 物 の 歪 に よ る バ タ フ ラ イ 型の コン ト ラス ト が観 察さ れた と 考え ら れる 。析 出物 は 、時 効 に伴 い母 相格 子 と整 合し てい る 状態 か ら、部分 的な 整 合、そし て 非整 合へ と 進む た め、C7’合金 の溶 体化 処理 まま 材 では 、 析出 初期 の状 態 が観 察 され たと 考え ら れる 。

102

(a) 視 野 1

(b) 視 野 2

図 4.9 C21合 金の 破 断後 の TEM 観 察写 真(薄膜)

103

図 4.10 533 K溶体 化処 理材 に 自然 時 効処 理を 168 hr 施 し た C21 合 金 の TEM 観 察 像

図 4.11 553 K溶体 化処 理材 に 自然 時 効処 理を 168 hr 施 し た C21 合 金 の TEM 観 察 像

104

図 4.12 C7’合 金 の 533 K 溶体 化 処理 まま 材 の TEM観察 像

図 4.13 C7’合 金 の 553 K 溶体 化 処理 まま 材 の TEM観察 像

105

以 上の よ うに 、C21合金 の 533 K 溶体 化 処理 材 に 168 hr の自 然時 効処 理 を施 し た試 料 の TEM 観 察結 果か ら、 結 晶粒 内 に微 細な 析出 物 が均 一 に分 散し て存 在 して いる こと が 分か っ た。また 、553 K 溶体 化処 理材 に 168 hr の 自然 時効 処理 を 施し た 試料 から は 、析 出 物に よる 転位 の ピン 止 め効 果や 自然 時 効処 理 によ り析 出し た と考 えら れる 準 安定 相 また は転 位の 形 成が 観 察さ れた。一 方、C7’合 金の 溶体 化処 理 まま 材で は母 相 格子 と 整合 した 析出 物 が生 成 し、 その 歪に よ るバ タ フラ イ型 のコ ン トラ スト が観 察 され た 。こ れは 析出 初 期の 状 態を 観察 した と 考え ら れる 。

以 上よ り 、C21 合 金は Ba 系 の 微細 な析 出物 が均 一 に分 散 し転 位の 運動 を 妨げ る 典型 的な 分 散強 化 型合 金で あり 、 この 分 散強 化に より 優 れた 機 械的 特性 を示 す こと が明 らか と なっ た 。