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第 2 章 Pb-Ca-Sn 合金の機械的性質に及ぼす Ba 添加の影響

3.4 本章のまとめ

本章では、冷間圧延された Ba 添加鉛合金の機械的性質について系統的な実験を行 い、以下のことを明らかにした。また、温間圧延された Ba 添加鉛合金についても同 様の実験を行った。

(1)冷間圧延した C21 合金は、圧下率 40 %では引張強さが向上するが、圧下率が 60%に達すると引張強さは飽和又は低下傾向となり、90 %では著しく低下することが 明らかとなった。

(2)鋳造まま材と冷間圧延材の時効硬化挙動も、引張強さと同様、圧下率が40 %を 越えると、また時効温度が高いほど最大硬さは低下した。

(3)温間圧延された C21 及び C7'合金は時効処理を施すことにより、冷間圧延材と 比較して著しい硬さの上昇が見られた。

(4)温間圧延された C21 合金は、冷間圧延材に対し引張強さがわずかに増加し、伸 びも増加したが、硬さの増加ほど顕著ではなかった。一方、温間圧延された C7’合金 は、引張強さの増加が C21合金よりも大きかった。

(5)C21 及び C7’合金の冷間圧延材、溶体化処理材および温間圧延材について X 線 回折により圧延および再結晶集合組織の形成について検討した。冷間圧延した C21合 金は圧下率の変化により(220)面の存在量が増加し、圧延集合組織の形成が示唆さ れた。一方、溶体化処理材では C21 合金と C7’合金における(220)面の存在量の増 加が認められ、再結晶集合組織の形成が示唆された。また、温間圧延した C21合金で も(220)面の存在量の増加が認められ、圧延集合組織の形成が示唆された。

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第 4 章 Ba 添加 Pb-Ca-Sn 合金の電子顕微鏡を用いた

微細組織観察による強化機構の検討

4.1 緒 言

過 飽和 固 溶体 か らの 析出 には 、 連続 析 出と 不連 続析 出 があ る 。連 続析 出は 、 析出 が結 晶粒 内 に均 一 に起 こる 均一 析 出で あ り、 析出 に伴 い 母相 の 溶質 濃度 が連 続 的に 減少 する 。 一方 、 不連 続析 出で は 、2 相 が同 時に コロ ニ ーや ノ ジュ ール を形 成 して 析出 し、 そ の成 長 が行 なわ れる 間 、母 相 の溶 質濃 度が 一 定に 保 たれ る。 不連 続 析出 の代 表的 な 形態 は 粒界 反応 型析 出 であ り 、結 晶粒 界に パ ーラ イ ト状 のノ ジュ ー ルを 形成 する45)。な お、粒 界反 応型 析 出は 再 結晶 を伴 うた め、材料 の 機 械的 特性 を 損な う場 合が あ る46)。鉛 蓄 電池 の正 極 格子 用 合金 でも 、これ に 着目 した 研究 が数 多 く行 なわ れて い る 。例 え ば 、Pb-Ca系 やPb-Ca-Sn系合 金の 金 属学 的な 強化 機構 に 関す る

研究47),48)で は 、Pb-Ca系合 金は 時 効に よ りPb3Caの 均一 析出 と 粒 界反 応型 析 出を 起

こし 、ま た 、Pb-Ca-Sn系合 金で は 時効 によ り微 細な(Pb1-xSnx)3Caの粒 子 が下 記の よう に連 続 析出 す る38)

α’Pb → αPb + β(= (Pb1-xSnx)3Ca) (4.1)

しか し 、過 時 効に より 、(Pb1-xSnx)3Caの微 細な 粒子 は 、同じ(Pb1-xSnx)3Caの 粗 大 な 層 状 の 析 出 物 に 変 化 す る と い わ れ て い る49)。 ま た 、(Pb1-xSnx)3Caは 、Pb3Ca と比 較し てPb格子 と のミ スフ ィ ット が 大き いた め、より 高 い機 械 的強 度が 得 られ る と さ れ て い る 。 し か し 、Baを 添 加 し たPb-Ca-Sn系 合 金 の 強 化 機 構 に つ い て は 、 こ れ ま で に ほ と ん ど 報 告 さ れ て い な い 。 一 方 、Ba添 加Pb-Ca-Sn合 金 の 正 極 格 子 へ の 実用 化に お いて 、 生産 性向 上の た めに 従 来の 鋳造 方式 の 格子 製 造法 に代 えて 、 圧延 シー トを エ キス パ ンド 加工 する 手 法が 実 用化 され てい る 。こ の 手法 では 、生 産 性が 高く、軽 量な 電 極板 の 製造 が可 能 であ る。し かし なが ら、Pb-Ca-Sn合金 に圧 延 を加 える と、時効 、過 時 効 、再 結晶 が競 争 的に 生 じる ため37),38)、腐 食 量が 増加 し、グ ロ ース 問題 が 発生 し 、機 械的 特性 の 低下 が 懸念 され てい る 。これ らのBa添加 に よる 機 械的 特性 の 改善 や 圧延 によ る性 質 の変 化 は、 その 微細 組 織に 起 因し てい るこ と が予 想 さ れ る。 こ れ ま で に 著 者 ら は、Ba添 加Pb-Ca-Sn合 金 (C21 合 金 ) の 微細 組 織 を

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詳細 に観 察 し、 そ の強 化機 構と 圧 延に よ る再 結晶 挙動 を 報告 し てき た50),51)。 本章 では 、電 子 顕微 鏡 を用 いた 微 細組 織 観察 によ り得 ら れた デ ータ から、Ba 添加 Pb-Ca-Sn 合金 (C21 合金 )の 強 化機 構 と圧 延に よる 特 性変 化 の原 因を 明ら か にし た。

4.2 実 験

4.2.1 合 金 試 料

TEM観察 で は 、C21 合金(Ba 添 加 Pb-Ca-Sn 合金 )と 比較 材と し て C21合金 か ら Ba を除 いた ベ ース 合金 (Pb-Ca-Sn 合金 )並 び に C7’合 金(Pb-Ca-Sn 合金 )を 準備 した 。 これ ら の試 料は 、ス テ ンレ ス 製る つぼ を用 い て大 気 中 773 K で 溶解 後 、 423 K に加 熱 した 鉄製 鋳型 を用 い て短 冊 状に 鋳造 した も ので あ る。 これ らの 試 料に おい て、鋳造 ま ま材 、393 K 時効 処理 材、引 張 試験 片の 破 断部 の 3 種 類に つい て TEM 観察 を行 っ た。 合 金組 成を 表 4.1 に示 す。

表 4.1 合金 試料 の 組 成

(mass %) Alloy Pb Ca Sn Ba C21 98.948 0.044 1.000 0.008 Base alloy 98.960 0.040 1.000 - C7’ 98.572 0.048 1.380 -

4.2.2 TEM 観 察 用 試 料

TEM観 察 には 、抽 出レ プリ カ 試料 と 薄膜 試料 を準 備 した 。

抽出 レプ リ カ試 料 は次 のよ うに 作 製し た 。ま ずエ メリ ー 紙に よ る手 研磨 とバ フ 研磨 を行 った 後 に、 乳 酸 25 ml と過 酸化 水 素 水 50 mlの混 合液 で 化学 研磨 を行 な った 。 次に 、蒸 留 水 100 ml、七 モリ ブ デン 酸 六ア ンモ ニウ ム 四水 和 物 10 g、ク エン 酸 水 和 物 25 g の 混合 液 で 表面 を腐 食 させ 、カー ボン レプ リ カ膜 を 蒸着 した 。そ の 後、乳 酸 25 mlと過 酸化 水 素 水 50 mlの混 合液 で 化 学研 磨を 行 い、表 面か らレ プリ カ 膜を

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剥離 させ 、 ジエ チ ルエ ーテ ル中 で 広が っ たカ ーボ ン膜 を シー ト メッ シュ 上に す くい 取る こと に より 、 抽出 レプ リカ 試 料を 作 製し た。

薄膜 試料 は、2.2.5項 で述 べた 方 法で 作 製し た。エ メ リー 紙 によ る 手研 磨と バ フ研 磨に より 厚 さ を 0.05 mm以 下と して デ ィン プリ ンン グ を行 い 、こ れに イオ ン ミリ ン グに より 中 心部 に 穴を 開け て作 製 した 。 なお 、イ オン ミ リン グ 後の 薄膜 試料 を 大気 中に て保 管 する と 表面 に酸 化膜 が 生成 し、透 過型 電子 顕 微鏡(TEM)によ る観 察が 困難 にな る ため 、 イオ ンミ リン グ 終了 後 にす ぐ に TEM 観 察 を行 な った 。

使 用し た 透過 型 電子 顕微 鏡は 、PHILIPS 社製 TECNAI30s であり 、加 速 電圧 は 200〜300 kV と して 、明視 野観 察 を行 な った 。更 に、抽出 レ プリ カ 試料 は、電子 線 に よ る ダ メ ー ジ を 考 慮 し 、 高 角 度 散 乱 暗 視 野(HAADF)-走 査 透 過 電 子 顕 微 鏡

(STEM)法 に より 観 察を 行な っ た。 ま た、 エネ ルギ ー 分散 型 X線分 光法 (EDS) によ る元 素 分析 も 行っ た。 なお 、 電子 線 によ る試 料の 加 熱を 防 ぐた め一 部の 観 察で は試 料ホ ル ダー に 冷却 ホル ダー を 使用 し た。