第 3 章 運動の抑制とその視知覚特性
3.4 Stop Motion Goggle
SMGは頭部固定型の装着インタフェースである.使用環境を限定しないよう制御用PCを必要 としない可搬性の高いインタフェースを目標としてシステム構成や回路,シャッタの選定を行っ た.
3.4.1 システム構成
SMG は主に液晶シャッタとその駆動制御回路からなる.システム構成をおよび外観を図20 に 示す.マイコンを任意の周波数およびDuty比を持つ波形生成器として利用するため,シャッタの 波形パラメータを制御回路内に配置したEEPROMにあらかじめ登録しておく.このパラメータを 制御回路内のダイヤルもしくは赤外送信機を介した外部入力により切り替えることで運用する.
液晶の駆動パラメータを細かく変更する場合は,PCとのシリアル通信により任意の値に指定可能 である.制御できるパラメータは液晶の駆動周波数,Duty比,位相であり左右それぞれ独立して 制御できる.
図20 SMGシステム図
3.4.2 液晶シャッタ
本研究では,短い時間における視覚情報のフィルタリングを実現するため,通常の液晶ディス プレイなどに用いられる TN 型や IPS 型ではなく応答性能に優れている強誘電性液晶((FLC:
Ferro-electric Liquid Crystal)を使用することとした.SMGではDisplaytech社(現Micron社)の強
誘電性液晶LV2500P-OEMを用いた.図21にLV2500P-OEMの外観と表1に仕様を示す.素子自体 の仕様としては透過率10%から90%, 90%から10%の応答時間は50μsであり,高い応答性を持っ ている.
LV2500P-OEMは印可電圧+5V以上の電圧で光を通すが,-5V以下の電圧を加えると光を遮断す
る.実際にFLCを駆動した際の特性を調べるために図22のようにLEDとフォトトランジスタの 間に液晶を設置し測定を行った.実験は 0.02Lux の暗室で行い,フォトトランジスタの出力電圧
- 32 -
をオシロスコープで測定した.図23に10Hz / Duty比1%(印可時間1ms)で駆動した条件と80Hz
/ Duty比4%(印可時間0.5ms)で駆動した条件下での測定した結果を示す.赤いグラフが印可電
圧の時間変化であり,青いグラフがフォトトランジスタの電圧値である.いずれの場合も電圧を 印可してから50μs程度の時間遅れがあり,その後150μs程度過ぎてから定常状態の90%程度の値 までフォトトランジスタの出力電圧が上昇している.実験結果からは印可時間が 250μs(周波数
80Hz,Duty比2%) 以上であれば,確実に90%以上の高い透過率で可視光を通過させる状態を実
現できることが読み取れる.また,100%の透過率を基準とした場合も黒色から無色,無色から黒 色の遷移の合計で1.0ms未満を実現できている.
図21 FLC(LV2500P-OEM)の概観 表1 FLC(LV2500P-OEM)仕様
パラメータ 動作特性@ 21℃ 保証動作特性@ 21℃
透過率(液晶開状態時) 28%~30% > 25%
透過率(液晶閉状態時) < 0.03% < 0.05%
コントラスト比 1000:1 500:1 応答時間
(10%~90%/90%~10%) 35μs < 50μs
状態遷移時間
(0%~90%/100%~10%) 70μs < 100μs
動作保証温度 10℃~50℃
形状 円形
サイズ 直径 34mm
図22 FLC動作特性測定システム
- 33 -
図23 印可時間によるFLCの動作特性
3.4.3 液晶駆動制御回路
制御回路の概観を図24示す.液晶駆動制御波形を生成する装置としてMicrochip社 PIC16F876 マイクロプロセッシングユニットを搭載している.制御電圧は±5Vとしているが,駆動開始時に 短時間だけ液晶に高い印加電圧をプリエンファシス回路経由で与えることにより液晶分子の応答 を早くすることができるため,DC-DCコンバータとしてコーラル株式会社 SUW60515Cを用い ることで制御波形をオーバードライブさせている.
図24 SMG駆動波形制御回路
- 34 -