第 2 章 運動の知覚と視覚インタフェース
2.4 視覚インタフェース
2.4.1 環境設置型視覚インタフェース
環境設置型視覚インタフェースとして代表的なものはテレビやプロジェクタなどがあげられ,
視覚インタフェースの中でも最も社会に普及している.一般的にはこれらは出力インタフェース としてディスプレイとも呼ばれ,以下のような分類で整理できる.
高精細ディスプレイ
近年ではディスプレイの大型化とそれに伴う画像素子の小型化によりディスプレイの高精細化 が進み,一般家庭にもHD(High Definition)ディスプレイが広く普及している.HDの画素数はメー カー各社によって様々な規格を用いているが,HD規格における最大画素数1920×1080pixelとな っている.また,普及はしていないがこのHDの4倍の画素数を持つ4Kディスプレイも開発され ておりその画素数は3840×2070pixelである.さらにはその4Kの4倍,HDの16倍の画素数であ
る 7680×4320pixel を表示可能なスーパーハイビジョン(SHV: Super Hi-Vision)や UHDTV(Ultra
High Definition Television)方式のディスプレイの技術開発も進められている.プロジェクタを用 いた高精細ディスプレイは単体でFull-HD(1920×1080pixel)を表示できるものが既に流通してい るが,高精細化自体は従来から複数台を同期することで実現してきた.
このようなディスプレイの高精細化は大型のディスプレイのみに留まらず,画像素子の小型化
やGPU(Graphics Processing Unit)の小型化により携帯端末などの小型ディスプレイにおいても見ら
れる.Apple社のiPhone4において搭載されたRetina Displayは画素数が960×640pixelであり,デ
ィスプレイの大きさから換算した解像度は326ppi(pixel per inch)である.
3Dディスプレイ
3D ディスプレイは立体的な映像を知覚することができる立体視ディスプレイである.3D ディ スプレイの方式としては平面のディスプレイを用いる方式,立体を直接空間上に投影し表示する ボリュームディスプレイ方式などがある.
平面のディスプレイを用いた方式は左右の眼に対して異なる映像を提示することで両眼視差に 基づいた立体視を知覚させる手法が一般的である.異なる映像を提示する手法としてメガネ型デ バイス装着方式とデバイス不要方式に分けられる.メガネ型デバイス装着方式は後述する眼球作 用型視覚インタフェースへの分類が可能のように思えるが,眼球自体の機能への変化をもたらす ものではなく環境側に固定されたディスプレイに既に視差情報が含まれているという点で環境作 用型に分類される.
メガネ型デバイス装着方式は近年では液晶シャッタ方式が主流であり,ディスプレイから提示 される左眼用,右眼用それぞれの映像に完全に同期して液晶を左右交互に開閉することで情報を 提示している.このため液晶は1フレームに対して2フレーム以上の映像が必要(フレーム・シ ーケンシャル方式)になり映像の更新周波数が高くなる.また,液晶シャッタの使用により裸眼 で見るよりも輝度の低下が起こるという問題や,左右映像の分
離が不完全であるとクロストークなどが発生する問題もある.
装着デバイス不要方式(裸眼立体ディスプレイ)では,パララックスバリア方式とレンチキュ ラレンズ方式がある.どちらの方式も図11に示すように空間側に左右映像を適切に取得できる位 置(ホットスポット)を形成し,体験者がその視点でディスプレイを見ることによって立体視を 実現する.いずれの方式でも,視点数の増加に伴い水平解像度が逆比例して低下するため,解像
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度低下を水平方向と垂直方向にバランスよく行い緩和する斜めレンチキュラ方式やステップバリ ア方式が提案されている[34].VR分野においてはパララックスバリア方式を用いて,画像表示用 LEDを一列に並べて回転させることで図12のように体験者に水平360度の裸眼立体視を可能にし
たTWISTERなどがある[35].
図11 パララックスバリア方式(図左)とレンチキュラレンズ方式(図右)の構造([34]より引用)
図12 TWISTER[35]
ボリュームディスプレイ方式は,スクリーンを高速に回転させ,その回転角に同期した映像を 投影することで体験者に立体映像を知覚させる手法が一般的である.Perspecta 3D は既に製品化 も成されているが,図13に示すように円形スクリーンを回転させて球状ディスプレイ内で知覚的 に立体的な映像を提示する.このシステムは体験者がフリッカー(点滅)を知覚しにくいように 高速に画像の描画を行う必要があるため,DLP(Digital Light Processing)方式のプロジェクタを用い ている[36].
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図13 Perspecta 3Dの構成(図左)と外観(図右)([36]より引用)
また,360° Light Field Displayはスクリーンとして拡散ミラーを用いて回転させ,上方からDLP
プロジェクタで立体を多方向から見た画像を回転角に応じて表示し立体表示を行っている[37].
図14 360 Light Field Displayの外観(図左)と構成(図右)([37]より引用)
没入型ディスプレイ
環境作用型の没入型ディスプレイとしてはプロジェクタを用いた没入型プロジェクション技術
(IPT : Immersive Projection Technology)がVR分野で用いられている.IPTは複数のスクリーンを立
方体状に配置し,CAVEは正面,床面,左右の4面[38],CABINは図15のように天井を加えた5 面で構成される[39],[40].体験者はその立方体の中から観察することで,通常の1枚スクリーンよ りも広視野角の映像を得ることが出来る.
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図15 CABINのプロジェクタとスクリーン配置 ([40]より引用)
その他
環境作用型視覚インタフェースはディスプレイやスクリーンを用いたプロジェクタ投影方式な どのようにインタフェース自体は環境側に固定され,そこから直接情報が提示されるこれまでの 手法の他に,インタフェースは環境側に固定されるが,反射光を利用することで運動体の観察な どに用いられるストロボスコープ,再帰性反射材を用いて図16のような光学系を組むことで実現 される再帰性投影技術RPT(Retro-reflective Projection Technology:) [41],[42]などがある.
また,LEDなどを用いた光点列を環境側に固定し,サッカードと呼ばれる高速眼球運動中に光点 列の点滅パターンを高速で時間変化させることで図17のように,光源の点滅パターンが眼球運動 により網膜上で空間パターンに展開され,2 次元イメージが知覚されることを利用した提示手法 としてサッカードディスプレイ(Saccade-based Display)がある[43].
図16 再帰性投影技術の構成 ([42]より引用)
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図17 サッカードディスプレイ ([43]より引用)