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Sb 照射 GaAs バッファ層の表面再構成構造

第 3 章 Sb 照射 GaAs バッファ層上の InAs 成長過程における表面構造

3.3 結果と考察

3.3.1 Sb 照射 GaAs バッファ層の表面再構成構造

3.2 Sb照射前後のRHEEDパターンの基板温度依存性.

438 ℃:照射前(a),照射後(b) ~ (c),468 ℃(d),484 ℃(e), 525 ℃(f).

[110] 入射 [1-10] 入射

Sb照射後

(b) 438 ℃

(c) 438 ℃

(2×3)

(4×3)

(2×3) (a) 438 ℃

c(4×4) Sb照射前

c(4×4) Sb照射前

(d) 460 ℃ Sb照射後

(2×4) (f) 525

(2×4) Sb照射前

Sb照射後

(2×3)

Sb照射前 c(4×4)

(e) 484 ℃ Sb照射後

[110]

[1-10]

20 nm

[1-10]

[110]

10 nm 20 nm

(b) (c)

[110]

[1-10]

(a)

3.3 GaAsバッファ層表面(a)およびSb照射GaAsバッファ層表面 ((b) , (c))のSTM像.

(スキャンサイズ100 nm

×

100 nm)((a), (b)),

(スキャンサイズ 50 nm

×

50 nm)(c).

ることが分かった.図3.4(a)は,図3.3(c)よりさらにスキャン範囲を狭くした時のSTM像(スキャンサイ

ズ20 nm × 20 nm)である.明暗のコントラストの縞状構造が[1-10]方向に沿って観察された.その断面プ

ロファイル(図3.4(b))から構造の間隔は1.2 nmであり,RHEEDの[1-10]入射方向で観察された3倍周 期構造の周期(1.2 nm)とも一致したことから,この明るい構造は表面原子のダイマー列であると考えられ

る(図3.4(c)).また,ダイマー列は所々で曲折しており,ジグザグの構造をランダムに形成しているこ

とが分かった.ダイマー列の間の距離は,断面プロファイル(図3.4(d))から表面第1層と第2層との間 で0.03 ~ 0.06 nm,第2層と第3層との間で0.04 ~ 0.08 nmであった.

次に,Sb照射GaAsバッファ層表面の(2×3)再構成構造モデルについて考察するために,GaSb(001)表面 のSb安定化面でエネルギーの最も低いh0-(4×3)構造[5]を基にした図3.5(a) - 3.5(c)に示す3つのモデルを 考えた.ここで,第1層と第2層の原子はすべてSb原子で,第3層はすべてGa原子,そして第4層以 降はAsとGaを繰り返したGaAsである.Model Aは,第1層目の2つのSbダイマーが[1-10]方向に沿っ て同一の列にあり,第2層目のSb原子は互いにダイマーを構成していないモデルである.Model Bは,

Model Aの第2層目のSb原子がダイマーを構成したモデルである.図3.4(c)で観察された直線状のダイ

マー列は,Model AまたはModel Bによって構成されていると考えられる.第一原理計算によるModel B

に対するModel Aのエネルギー差は,第2層目のSbダイマー化の影響によりセル当たりで+0.31 eVと見

積もられた[6].したがって,第2層目のSbダイマーが構成されているModel Bが,直線状のダイマー列 を支配的に構成しているものと推察される.一方,ダイマー列の曲折部分(図3.4(a), 3.4(d))は,第1層 目の2つのSbダイマーが[1-10]方向に沿って交互に配列しているModel C(図3.5(c))から構成されてい るものと考えられる.Model BのエネルギーはModel Cよりも0.13 eV低く[6],STM像で見られるよう に,曲折したジグザク構造よりも直線的な構造がが多いことと一致する.しかし,Model BとModel Cの エネルギー差は比較的小さいことから,Model BとModel Cの共存は可能であることが考えられる.図

3.5(d)は,図3.4(d)におけるダイマー列の一部分を拡大したSTM像である.図中の白線枠は(2×3)単位メ

ッシュを示し,その縦([1-10]方向)は0.8 nm,横([110]方向)は1.2 nmである.(2×3)単位メッシュを ダイマー列に重ねると,それぞれ上側がModel C(図3.5(c)),下側がModel B(図3.5(b))に一致する.

こうして,Model BとModel Cによりダイマー列の曲折やジグザグ構造が説明される.

3 nm

[110]

[1-10]

-0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15

0 1 2 3 4 5

Height (nm)

Width (nm)

5 nm

1.2 nm

-0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05

0 1 2 3 4 5

Height (nm)

Width (nm) 0.048 nm 0.058 nm

0.032 nm

1.2 nm 1.2 nm

(a) (b)

(d)

(e)

1.2 nm

3 nm (c)

[110]

[1-10]

A

B

C D

A B

C D

3.4 Sb照射GaAsバッファ層表面のSTM像(a), (d).

(b), (e)は図中の白線部におけるラインプロファイル.

(c)は(a)の一部拡大像で,[1-10]方向に沿った1.2 nm(3倍)の周期構造を示す.

[110]

[1-10]

1 nm (d)

(a) Model A

(c) Model C

3

rd

Ga 1

st

Sb 2

nd

Sb

[1-10]

(b) Model B

Model C (c) Model B

(b)

3.5 (2

×

3)表面再構成構造モデル Model A (a), Model B (b), Model C (c),

Model BとModel Cに該当するダイマー構造のSTM像 (d).

すでに述べたように,基板温度438 ℃のSb照射GaAsバッファ層表面は,RHEEDパターンの観察に より(2×3)と(4×3)の遷移領域にあることが分かった(図3.2(b)).そこで,Model BとModel Cの2つの(2×3) 表面再構成構造モデルの組み合わせによる表面再構成構造モデルについて検討した.図3.6(a) - 3.6 (d)は,

Model B(図3.5(b))とModel C(図3.5(c))によるモデル(Model I(a),Model II (b)),Model Cのみによ るモデル(Model III(c)),そしてModel Bのみによるモデル(Model IV(d))で,Model IおよびIIはそれ ぞれ(4×3)構造であり,Model IIIおよびIVはそれぞれ(2×3)構造(Model CおよびModel B)である.図 3.6(e), 3.6 (f)は,図3.4(d)のSTM像の一部を拡大した像で,それぞれModel I,Model II,Model III,Model IVに対応するダイマー列の例である.図3.4(a), 3.4 (d)に示した表面におけるダイマー列は,Model Iから IVの組み合わせで構成されるものと考えられる.エネルギー的に最も安定なModel IVは,直線状のダイ マー列が形成されている領域において支配的である(図3.6(f), 3.4(a)).一方,エネルギーの最も高いModel IIIは大きく曲折したダイマー列(図3.6(f))に対応し,表面における支配性は低い.また,ダイマーのジ グザグ構造は[110]方向と[-1-10]方向のどちらにも曲折しており(図3.6(e), 3.4(a)),それらのダイマー列

はModel IおよびModel IIに対応する.表面のダイマー列の曲折はランダムに観察されることから(図

3.4(a), 3.4(d)),Model I ~ IVのそれぞれによる領域の区分はなく,基板温度438 ℃では2つの(2×3)の周期

構造と2つの(4×3)の周期構造が混在しているものと考えられる.

次の3.3.2では,基板温度460 ℃でInAs成長過程のその場STM観察を試みたが,基板温度460 ℃に

おけるSb照射GaAsバッファ層表面は(2×3)パターンを示した(図3.2(d)).Sb照射GaAsバッファ層表面 のエネルギー安定性[6]から,基板温度460 ℃ではエネルギー的に最も安定なModel B(図3.5(b))から 成る直線状のダイマー列構造が支配的に形成されているものと考えられ,438 ℃で観察されたダイマー 列のジグザグ構造は抑制されているものと考えられる.