第 2 章 実験方法
2.2 評価装置
2.2.1 STM装置とMBE装置の合体装置
半導体の原子レベルの表面構造や量子ドットの成長過程をその場観察する手段として,
2.1.3で述べたRHEEDがあるが,RHEEDでは2次元島の詳細な表面モフォロジー変化,ド
ットの密度やサイズなどの情報は得られ難い.一方,表面モフォロジーなどの構造観察法 としてSTMがある.MBE成長した清浄な基板表面をSTM観察する場合には,MBEの成長 室とゲートバルブで仕切られた超高真空STM装置を用いる場合があるが,成長温度から冷 却した試料の装置内搬送によりMBE成長中のその場観察ではない.そこで本論文(第3章)
では,Sb照射GaAsバッファ層上の InAs成長過程における表面構造変化を検討するため,
STMとMBEの合体装置[9]を用いた.図2.8は,装置の外観(a)およびMBE装置の試料ホル ダとSTMユニットの概略図(b)[9]である.試料は治具に4つのクリップ(電極)で固定され,
MBE 成長室へ搬入される.STM 装置は超高真空容器の中をレールで移動し,MBE 成長室 に搬送される.図2.8(b)は搬送された状態である.①試料ホルダ,②防熱保護シールド,③ 真空中STM移動機構の3つの仕組みによりMBE成長中のSTM観察を可能としている.① 試料ホルダは3本のピンでMBEの基板ヒータと近接しているが,STMユニットとMBE装 置の合体時には,この試料ホルダはSTMの上に乗り,ピンはホルダから浮いた状態になり,
MBE装置側からの振動から遮断される.合体装置全体が除振台に乗っており,STMユニッ トの除振機構と併せて除振を行っている.②防熱保護シールドによってSTMユニット全体 はMBEの高蒸気圧雰囲気から保護される.基板加熱による放射熱に対しては,3重のシー ルドにより保護される.さらに,STMスキャナ上部のセラミック板により,STMスキャナ 部への原料の侵入及び放射熱から保護される.③真空中STM移動機構は必要時にのみSTM 装置をMBE装置にドッキングさせることにより,STM装置を高蒸気圧雰囲気中に晒す時間 を最短化させることができる.また,KセルはMBE成長室下部と側部にそれぞれ付いてお り,側部のKセルは成長その場観察用である.MBE成長室の中にはRHEED装置が設置さ
図2.8 STM装置とMBE装置の合体装置の外観(a)および MBEの試料ホルダとSTMユニットの概略図(b)[8].
(a)
(b)
れており,STM装置がMBE成長室に搬入されていない状態で使用することができる.
2.2.2 XRD装置とMBE装置の合体装置
本論文(第5章)で用いた表面XRD装置とMBE装置の合体装置[9]は,兵庫県にある大 型放射光施設SPring-8のビームラインBL11XUに設置されている.施設名にある放射光と は,加速器で光速に近い速度に加速された電子を蓄積リングの中でシンクロトロン円運動 させ,電磁石による磁界を掛けた時,電子の進行方向がローレンツ力により曲げられる時 に発生する電磁波のことであり,例えば偏向電磁石を用いた場合,X線から赤外線までの連 続した波長の光が得られる.放射光は指向性が強く,極めて明るく,単色性が高いといっ た特徴をもつ.
図2.9はXRD装置とMBE装置の合体装置の外観(a)と概略図(b)である[9].MBE装置全 体がXRD装置のゴニオメータ上に設置されている.一般のXRD装置のX線光源では,得 られた回折ビーム強度を積分してスペクトル解析を行うために,MBE成長中の薄膜の測定 には時間が掛かるが,本装置では,SPring-8の極めて強い強度のX線を用いることで,MBE 成長中の時間分解XRD測定を行うことが可能(1回の回折測定に要する時間は約9 s)であ る.回折計は4+2軸(試料の位置調整4軸,検出器の位置調整2軸)であり,MBE成長室 にはX線を試料に入射・出射させるためにBe窓が付いている.また,MBE成長室の中に
はRHEED装置も設置されており,XRD測定を行いながらRHEEDパターン観察を行うこ
とができる.
MBE
XRD
X線
MBE成長室
試料
搬入室
Kセル
検出器
X線
Be窓
(a)
(b)
ゴニオメータ
図2.9 XRD装置とMBE装置の合体装置の外観(a)と概略図(b)[9].
参考文献
[1] 権田俊一, “分子線エピタキシー”, 培風館 (1994) 92.
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