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第 6 章 結論および今後の課題

6.2 今後の課題

付録

SK成長モードを用いた自己形成量子ドットにおけるcoarsening過程

相転移による粒子の析出後,系が平衡となると粒子の析出反応は終結する.この時,臨 界半径を超えた色々な大きさをもつ粒子が析出しているが,系の温度を保持しておくと,

析出粒子の粗大化(coarsening)現象が起こり,より大きい粒子は成長し,小さい粒子は逆に 溶解して消滅する.このような粒子の粗大化過程をオストワルトライプニング(Ostwald

ripening) または単にライプニングとよぶ.

SK成長モードを用いた一般的な自己形成量子ドットの成長過程におけるcoarsening過程 は観察されている[1].coarsening過程には,ドット間の吸着分子の拡散を介して生じるライ プニングと,隣り合ったドット同士が接触して合体し巨大ドットとなるコアレッセンス,

そしてドットそのものが表面に沿って拡散し,隣接したドットとの合体によって巨大ドッ トとなるコアレッセンスがある[2].自己形成量子ドットの coarsening は,Si(100)基板上の Geドット[3, 4]や,SiGeドット[2]などのIV族材料,ZnSe上のCdSeドット[5]などのII-VI 族材料,そしてGaAs(100)基板上のInAsドット[6, 7]などのIII-V族材料において観察されて いる.

量子ドットの全エネルギーEtotalは,次式に示すように均一核形成の自由エネルギーを基に,

表面エネルギー(第1 項),自己緩和エネルギー(第 2項),そして近隣のドットから受け る弾性相互作用エネルギー(第3項)により表される[1].

β tan ∑ , .

(1)

ここで,添字a, bは近接するドットを表している.

V

はドットボリューム,

ρ

はドットの

半径,

R

abはドット a, b 間の距離である.第 1 項の表面エネルギーの中の係数βは 2 3 cot sec 0 で表され, は濡れ層とファセット面のなす傾斜角, と 0 はそれぞれ傾斜角 をもつファセット面と平らな表面の表面エネルギーである. が小

さいほど は大きくなるので,例えばGaAsバッファ層上のInAs量子ドットで形成される高 指数面の{136}ファセット(基板表面との傾斜角28°)の表面エネルギーは低指数面の{101}

ファセット(基板表面との傾斜角45°)のそれよりも大きくなる.第2項の自己緩和エネル ギー の中の係数 は 1 1 である.ここで, は基板-薄膜間の格子定数 差, と はそれぞれヤング率とポアソン比,Jは数的因子である.ドットボリュームが大き くなり,ドットの傾斜角が大きくなるほど自己緩和エネルギーは高くなり,ドットのエネ ルギーは低下する.第3項の弾性相互作用エネルギー の中の補正係数Fは,

,

∑ ∑

(2)

で表され,ドット a, bがそれぞれ他のドットと相互作用を及ぼさない単一のドットと見な せる時に 1 となり,近づくほど急速に大きくなる.それぞれのドットボリューム , が大 きくなり,ドット間距離 が小さくなるほど弾性相互作用エネルギーは大きくなりドット は不安定化することが分かる.

参考文献

[1] D. E. Jesson, T. P. Munt, V. A. Shchukin, and D. Bimberg, Phys. Rev. B 69 (2004) 041302.

[2] J. A. Floro, M. B. Sinclair, E. Chason, L. B. Freund, R. D. Twesten, R. Q. Hwang, and G. A.

Lucadamo, Rhys. Rev. Lett. 84 (2000) 701.

[3] F. M. Ross, J. Tersoff, and R. M. Tromp, Phys. Rev. Lett. 80 (1998) 984.

[4] M. R. McKay, J. A. Venables, and J. Drucker, Phys. Rev. Lett. 101 (2008) 216104.

[5] S. Lee, I. Daruka, C. S. Kim, A.-L. Barabasi, I. L. Merz, and J. K. Furdyna, Phys. Rev. Lett. 81 (1998) 3479.

[6] T. J. Krzyzewski and T. S. Jones, J. Appl. Phys. 96 (2004) 668.

[7] D. M. Schaadt, D. Z. Hu, and K. H. Ploog, J. Vac. Sci. Technol. B 24 (2006) 2069.

謝辞 謝辞 謝辞 謝辞

本論文をまとめ上げるにあたり,懇切かつ多大なご指導・ご鞭撻を賜りました電気通信 大学大学院 情報理工学研究科 先進理工学専攻 山口浩一教授に深甚なる謝意を表します.

本論文の審査において,ご討論とご助言を賜りました電気通信大学大学院 情報理工学研 究科 先進理工学専攻 田中勝己教授,水柿義直教授,一色秀夫准教授ならびに中村淳准教 授に厚く御礼申し上げます.

Sb照射GaAsバッファ層上のInAs量子ドット成長過程のその場STM観察を行うにあた り,貴重な装置を使わせていただき,ご指導・ご討論を賜りました阿南工業高等専門学校 寄 附講座 塚本史郎特別研究教授に厚く御礼申し上げます.また,Sb照射GaAsバッファ層表 面の再構成構造について,ご討論とご助言を賜りました鳥取大学大学院 工学研究科 機械 宇宙工学専攻 石井晃教授に御礼申し上げます.その場STM観察実験を進めるにあたり,

ご協力を賜りました本間剛博士と磯村暢宏氏に感謝いたします.

Sb照射GaAsバッファ層上のInAs量子ドット成長過程のその場XRD測定を行うにあた り,貴重な装置を使わせていただき,ご指導・ご討論を賜りました日本原子力研究開発機 構 量子ビーム物性制御・解析技術研究ユニット コヒーレントX線利用研究グループ 高橋 正光博士に厚く御礼申し上げます.その場XRD測定および解析を進めるにあたり,ご指導・

ご討論を賜りました東京大学 先端科学技術研究センター 新エネルギー分野 海津利行特 任助教に厚く御礼申し上げます.その場XRD測定の試料作製についてご協力を賜りました 藤川誠司博士に御礼申し上げます.

Sb照射GaAsバッファ層上のInAs量子ドットの試料作製,評価,議論を行うにあたり,

ご協力を頂きました山口浩一研究室の皆様に感謝いたします.

最後に,学位取得にあたり著者を支えてくれた家族に感謝いたします.

関連論文ならびに参考論文の印刷公表の方法および時期

関連論文

(1)全著者名:Naoki Kakuda, Shiro Tsukamoto, Akira Ishii, Katsutoshi Fujiwara, Toshikazu

Ebisuzaki, Koichi Yamaguchi, and Yasuhiko Arakawa 論文題目「Surface reconstructions on Sb-irradiated GaAs(0 0 1)

formed by molecular beam epitaxy」

印刷公表の方法および時期: 平成19年(2007年) 4月 Microelectronics Journal, 巻:

38 号:4-5 (第3章と関連)

(2)全著者名:N. Kakuda, T. Yoshida, and K. Yamaguchi

論文題目「Sb-mediated growth of high-density InAs quantum dots and GaAsSb embedding growth by MBE」

印刷公表の方法および時期: 平成20年(2008年) 3月 Applied Surface Science, 巻:

254 号:24 (第4章と関連)

(3)全著者名:Naoki Kakuda, Toshiyuki Kaizu, Masamitu Takahasi, Seiji Fujikawa,

and Koichi Yamaguchi

論文題目「Time-Resolved X-ray Diffraction Measurements of High-Density

InAs Quantum Dots on Sb/GaAs Layers and the Suppression of Coalescence by Sb-Irradiated Growth Interruption」

印刷公表の方法および時期: 平成22年(2010年) 9月 Japanese Journal of Applied Physics, 巻:49 号:9 (第5章と関連)

参考論文

全著者名:A. Ishii, K. Fujiwara, S. Tsukamoto, N. Kakuda, K. Yamaguchi, Y. Arakawa 題目「Structure of GaSb/GaAs(0 0 1) surface using the first principles calculation」

印刷公表の方法および時期: 平成19年1月 Journal of Crystal Growth 巻:301-302