第 4 章 Multi-Path Model による核種移行挙動評価の高精度化
4.3 各パラメータが計算結果に及ぼす影響
4.3.5 Multi-Path Model による計算結果の実験値への適用
76
図4.13 標準偏差が中程度の浸透率分布における不飽和条件に対する物質移行計算結果
77
図4.14 流出方向のセグメント数により規格化した無次元時間による計算結果
図4.15に,Multi-Path Modelによる計算結果を,定圧流動系の不飽和条件におけるセシウム イオンの流動実験結果に対して適用した結果を示す.表 4.1に示すパラメータを用いた計算 結果のうち,流動実験の飽和率(Sw≒0.9)近傍でもっとも実験値によく当てはまった計算条
件は,KS=0.5,f=0.5,KL=1.5の分布であった.このとき,Multi-Path Modelの計算結果を実
験値にフィッティングして得られた遅延係数は3.7であった.この遅延係数は,第2章にお いて収着試験で取得した収着分配係数を用いて計算した遅延係数に近い値となった.このこ とは,Multi-Path Modelにより幾何学的な浸透率分布を数値解析に反映することで,多孔質 層や不飽和条件における流路の迂回効果や局所的な流速の低下による見かけの分散係数の増 大を適切に再現できたことを意味する.さらに,このような移流と分散に伴う遅延効果への 寄与を,固相への核種の収着による遅延効果と分けて評価することができた.これらのこと は,地下環境の浸透率分布が把握されているならば,バッチ式の収着試験により収着分配係 数さえ取得すれば,流動場における核種の移行挙動を推定できる可能性を示唆する.
また,一次元移流分散方程式による実験値へのフィッティングにおいて,図 4.1 の様に二つ のペクレ数を用いて実験値を表すと,その精度は本モデルによる計算結果よりも高く見積も られる.しかし,トレーサーの流出開始近傍と収着が平衡に達する領域におけるペクレ数の 変化は,トレーサーの流れる多孔質体の条件(間隙率,平均粒子径,流路の形状)や地下水 の流動条件(水頭圧力,単相流または二層流)といった条件に大きく左右され,トレーサー 試験を行う前に,この変化を予測することは困難である.一方で,Multi-Path Model はこれ らの二つの流動条件を浸透率分布と飽和率分布によって再現することが可能である.そのた め,地下環境を表す情報(例えば,等水量係数分布や亀裂開口幅分布など)より浸透率分布
78
が近似的に求まれば,標準偏差と歪度とをパラメータとすることで,物質移行挙動の最大値 と最小値を推定可能となる.
図4.15 Multi-Path Modelによる計算結果を不飽和条件の実験値へと適用した結果
79