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第 4 章 Multi-Path Model による核種移行挙動評価の高精度化

4.4 結言

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80 第4章において用いた記号

Fber Bernoulli試行列を示す関数

KS Bernoulli試行列における小さい無次元浸透率 [-]

KL Bernoulli試行列における大きい無次元浸透率 [-]

f Bernoulli試行列におけるKSの頻度 [-]

δ デルタ関数

K* Bernoulli試行列の算術平均値 [-]

σ Bernoulli試行列の標準偏差 [-]

Sk Bernoulli試行列の歪度 [-]

K 無次元浸透率 ( = k/k*) [-]

k 液相の浸透率 [m2]

k* 液相の代表浸透率 [m2] μ 流体の粘性係数 [Pa・s]

p 圧力 [Pa]

x 距離 [m]

d セグメント(流路)の幅 [m]

d* 代表セグメント(流路)の幅 [m]

D 無次元セグメント(流路)幅 ( = d/d*) [-]

Vpath 流路となるセグメントの体積 [-]

Vfull 全セグメントの体積の総和 [-]

Sw 飽和率 [-]

α 平行平板における奥行き [m]

P 無次元圧力 [-]

U 無次元ダルシー流速 [-]

u* ダルシー流速の代表値 [m/s]

x1 代表距離 [m]

l セグメント長さ [m]

C 無次元濃度 ( = c/c*) [-]

c 濃度 [mol/m3]

c* 代表濃度 [mol/m3] X 無次元位置 ( = x/x1) [-]

x 位置 [m]

T 無次元時間 ( = t/t*) [-]

t* 平均滞在時間( = εx1/ u*) [s]

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Pe Multi-Path Model全体の平均的なペクレ数 [-]

Pe, Seg. セグメントにおけるペクレ数 [-]

m 流出方向のセグメント本数 [-]

De 分散係数 [m2/s]

a 分散長 [m]

DM 等モル分子拡散係数 [m2/s]

82 第4章における引用文献

[1] 核燃料サイクル開発機構:わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼 性 ―地層処分研究開発第2次取りまとめ― 分冊3, (1999).

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[5] Yuichi Niibori, Ryohei Nakata, Osamu Tochiyama, and Hitoshi Mimura: Evaluation of Solute Transport through a Fracture by Considering the Spatial Distributions of Retardation Effect in Grain Scale, Journal of Hydrologic Engineering, 14(11), pp.1214-1220 (2009).

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[17] 核燃料サイクル開発機構:わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼

性 ―地層処分研究開発第2次取りまとめ― 分冊3 (1999).

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85

5

結論

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本研究は浅地中ピット処分施設や中間貯蔵施設のような浅地中において形成される不飽和 層に着目し,カラムを用いた流動実験,一次元移流分散方程式による解析および Multi-Path

Modelの構成により,核種の移行挙動を評価した.

第 2 章においては,カラム内に調整した飽和条件および不飽和条件に対して,セシウムイ オンおよび硝酸イオンに対する物質移行挙動の測定を行った.また,流動系を圧力が一定な 系と流量が一定な系を用いてカラム通液試験を行った.セシウムイオンを用いた実験におい ては,定圧流動系と定流量流動系の双方において,飽和条件と不飽和条件における移行挙動 に差が生じなかった.これは,従来の不飽和層における遅延係数の定義における,遅延係数 は不飽和層において飽和のものよりも大きくなるという関係を満たさないことを示す.一方 で,セシウムイオンの破過曲線は,バッチ収着試験による収着分配係数より導かれる遅延係 数よりも明らかに大きな遅延係数を持つことが示唆された.また,ケイ砂に対して収着しに くい硝酸イオンを用いた実験結果においても,遅延効果が生じた.このことは,多孔質体中 の移流の迂回や局所的な流速の減少などにより生じる浸透率の空間分布が,流動場における 物質移行の遅延に寄与する可能性を示唆する.

第3 章においては,第2章において行った流動実験に対して,一次元移流分散方程式を適 用することで物質移行におけるパラメータである遅延係数とペクレ数を導出した.これによ り,浅地中における動水勾配に支配された流れのような定圧な流動場においては,従来の定 義による不飽和層における遅延係数を用いることは,遅延係数を過大評価することを示した が,その値は最大でも1.15倍程度であった.また,流動場における遅延係数は,多孔質層を 通過することにより生じる移流の迂回効果や局所的な流速の低下により見かけの分散係数が 増大することに加え,不飽和条件においてこの効果がさらに顕著になることを明らかにした.

この見かけの分散係数の増大は核種遅延効果に寄与し,これにより流動実験における遅延係 数はバッチ収着試験により求めた遅延係数よりも 1.5 倍程度大きな値を示した.このことは,

これまで用いられてきたバッチ収着試験による安全評価が十分に保守的であることを示した.

また,ほぼ固相に収着しない硝酸イオンの大きな場合においても,同様に 1.5 程度の遅延係 数が見積もられたことより,非収着性の核種に対しても浸透率分布などの水理的な要因によ り,見かけ上の遅延効果が生じ得ることを示した.

また,浅地中において生じる,降雨などによる急激な地下水の流量の増大は,核種と固相 の収着平衡が成り立たなくなる可能性がある.しかし,そのような流動場においては局所的 に上昇した圧力が,地中において移流の迂回効果を生じやすく,気相を押し流す効果よりも 移流が迂回する効果が卓越する可能性を示唆した.このことは,局所的に流量や流速が大き い場においても,迂回効果が核種の遅延効果に寄与することを意味する.

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第4 章は,第3章において物質移行におけるパラメータの導出において生じた,時間経過 に従って破過曲線の見かけの分散係数が増大することにより生じる実験値と計算値の乖離を,

Multi-Path Modelを構成することにより考察した.Multi-Path Model は幾何学的に浸透率分布

を表すことで,不飽和層における流路の迂回や屈曲を表し,物質移動における水理的な遅延 効果と物質と固相との相互作用による遅延効果とを分離して計算するモデルを示す.

Multi-Path Model は,流路として用いるセグメントの本数が少ないほど,計算結果に飽和

率を反映しやすいことを示した.これは,セグメント数比が大きくなることで,幾何学的に 不飽和層を表す際に卓越した流路分布が生じやすいことによる.

また,Multi-Path Model における物質移行の計算結果は,浸透率分布によって支配され,

Bernoulli 試行列によって与えた標準偏差と歪度に対して感度を示した.分布の標準偏差が小

さな場合においては,モデルにおける浸透率分布が均一な場合に近い浸透率分布となるため に,歪度の変化による二つの浸透率分布の頻度に変化を加えても計算結果に差異が生じなか った.一方で,分布の標準偏差が大きい場合においては,歪度を変化させることで,物質移 行挙動が大きく変化した.これは,標準偏差の大きな分布においては,二つの浸透率(KSお よびKL)の差が大きいために,どちらの浸透率が卓越するかによって流量が大きく変わるこ とによる.

計算結果の実験結果への適用において,Multi-Path Model により見積もられた遅延係数は 3.7であり,第2章においてバッチ収着試験により見積もられた遅延係数と近い値を示した.

このことは,Multi-Path Model において浸透率分布を幾何学的に表したことにより,不飽和 層における水理的な遅延効果への寄与と核種と固相との相互作用を分離して表すことができ たことを示す.

以上より,本研究の総括を以下に示す.

従来から用いられてきた不飽和層における遅延効果の定義式は,不飽和層における収着分 配係数の減少を考慮していないため,遅延係数を過大評価することを示した.しかし,浅地 中における多孔質層においては,飽和率や浸透率の空間的な分布により地下水の流路が迂回 することに起因する見かけの分散の上昇が生じる.それは核種遅延効果に寄与するために,

バッチ収着試験により求めた収着分配係数により遅延係数を評価することは,不飽和層にお いても十分に保守的な値を示すことを明らかにした.さらに,浸透率の局所的な分布を考慮

する Multi-path Model は,バッチ収着試験による遅延係数および従来の実験から評価された

分散係数を用いて,核種移行挙動を表すことができる.このことは,一次元の移流分散モデ ルにおいてフィッティングパラメータとして得られた遅延係数やペクレ数の値の物理的な意 味を説明することに寄与し,不飽和層における物質移動のより詳細なモデルの基盤となる.

88 謝辞

本論文の主査を務めていただき,また,学部時代から長い期間にわたり懇切丁寧なご指導 ご鞭撻を賜った,東北大学大学院工学研究科 新堀 雄一教授に拝謝申し上げます.

本論文の審査員を務めて頂き,多くの貴重な助言を賜りました東北大学金属材料研究所 秋山 英二教授,東北大学多元物質科学研究所 桐島 陽教授に厚く感謝申し上げます.

東北大学大学院工学研究科 千田 太詩講師には,日頃より懇切丁寧にご指導いただき,

ひとかたならぬお世話になりました.深謝申し上げます.

研究室生活において,日頃より大変にお世話になった新堀研究室秘書 奈須野 朋子様に 深く感謝申し上げます.

新堀研究室の先輩,同輩および後輩の皆様には,ゼミにおける議論や日々の生活におい て,多くの示唆をいただきました.ありがとうございます.

長い学生生活において,博士後期課程の進学を後押しして頂いた祖母,父,母,妹,ラッ キー(犬)にはお礼の言葉もございません.

最後に,研究活動のみならず私生活においても多大にお気遣いいただいた新堀 雄一教授 と千田 太詩講師に再び心より感謝申し上げます.

令和2年1月5日 小堤 健紀