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第 4 章 Multi-Path Model による核種移行挙動評価の高精度化

4.2 モデルの構成

図 4.2 に Multi-Path Model の構成手順を示す.以下に項を分けて,モデル構成の詳細を示

す.

4.2 Multi-Path Modelの構成手順

4.2.1 流路の座標関係

本研究において,Multi-Path Model は三次元でなく二次元のモデルとした.これは,三次 元モデルにおいてはパラメータ数が多くなり,モデルの設計が困難になることや計算結果に 任意性が生じるため,パラメータ数の抑えられる二次元モデルとした.

Multi-Path Modelにおいては,物質が移行する流路をセグメント,セグメントを結節する

点をノードと呼称する.図4.3にMulti-Path Modelにおけるセグメントとノードの座標関係 を示す.

58

図4.3 Multi-Path Modelにおけるセグメントとノードの座標関係

4.2.2 流路の浸透率分布

Multi-Path Model では,各セグメントに一次元移流分散方程式を適用し,物質移行挙動を

計算することとした.そのためには,各セグメントにおける流速を定義する必要がある.本 モデルの場合には,多孔質体内の流路における流速の分布に起因した見かけ上の分散の上昇 を再現するために,それぞれのセグメントに異なった浸透率を与え,その浸透率から計算し て流速を与えた.地下における浸透率の分布は間隙径や亀裂幅の分布と相関があることが知 られており[1],地下の物質移動を扱う場合には一般的に何らかの確率密度関数として与えら れる.

本研究においては,浸透率分布を決める確率密度関数にBernoulli試行列を用いた.既往の 研究によると,物質移行計算における平均的な値は浸透率分布の確率密度関数に依存せず,

その分布の算術平均値および標準偏差,歪度に従うとされる[2, 3].このことは,地層の構成 要素や深度によって異なる浸透率分布を持つ地下条件においても,物質移行モデルにおける 浸透率分布の確率密度関数によって表される統計量のみを設定し,モデルと着目する地層に おける浸透率分布の統計量同士を等価に設定することで物質移行計算を行うことができるこ とを意味する[4-6].Bernoulli 試行列は式 4.1 のように,2 つの値をとる離散的な確率密度関 数として表される.式4.1の,浸透率分布のBernoulli試行列(FBer)においては,fの頻度で 小さな無次元浸透率(KS),1-f の頻度で大きな無次元浸透率(KL)をとる.なおδはデルタ 関数を意味する.

Ber

( ) (

S

) (1 ) (

L

)

F KfK K    fK K

(4.1)

このBernoulli試行列の算術平均値(K*),標準偏差(σ)および歪度(Sk)を式4.2から式

4.4に示す.なお,添え字iはKSの場合に1,KLの場合に2とした.また,無次元浸透率の

59 算術平均値は,値が1になるように定義した.

* 0 Ber

0 Ber

( )

1 ( )

F K KdK K

F K dK

(4.2)

 

2

2 *

i 1

1 n

i

K K

n

(4.3)

* 3 i k

1

1 n

i

K K

S n

  

  

 

(4.4)

さらに,無次元浸透率(K [-])は,代表浸透率(k* [m2])と浸透率(k [m2])を用いて,式 4.5により定義した.この代表浸透率k*の定義は次項に後述する.

*

K k

k (4.5)

ここで Bernoulli 試行列のパラメータが KS,KLおよびfの3 つであり,さらに算術平均値 は1となるように設定したことから,Multi-Path Modelの浸透率分布を決める際にはKSとそ の頻度fの二つを決めるとKL,σおよびSkは一意に定められる.

4.2.3 流路の幅の決定方法

本研究において,流路の形状は平行平板を仮定した.平行平板における流速分布は平面ポ アズイユ流として知られ,その平均流速(umean)は式4.6に示す式で表される[7].

2

mean 12

d dp

u    dx (4.6)

なお,dは平行平板間の幅 [m],µは流体の粘性係数 [Pa・s],pは圧力 [Pa],およびx は距 離 [m]を表す.

また,動水勾配に従って流れる地下水の平均流速はダルシーの式に従い,式4.7で与えら れる.

60 u k dp

dx

  (4.7)

これらの,式4.6および式4.7は相似性を持ち,Multi-Path Modelのセグメントにおける流速 分布がダルシー型であることを考えれば,セグメント幅と浸透率は式4.8のように定義でき る.

2

12

kd (4.8)

この浸透率と流路幅の関係より,無次元化した流路の幅(D)と無次元浸透率(K)との関 係を導出する[8].

まず,セグメント(流路)の幅を式4.9のように無次元化する.なお,d*は流路の幅の代 表値 [m] を意味する.ここで,代表浸透率を式4.10のように定義する.

*

D d

d (4.9)

*2

*

12

kd (4.10)

以上の式4.8,4.9および4.10より,代表浸透率は式4.11のように変形され,無次元セグ

メント(流路)幅は式4.12により決定される.

2 *2

2

12 12

d d

K D (4.11)

DK (4.12)

4.2.4 流路パターンの決定方法

次に,二次元平面上に不飽和条件を再現するために,計算に使うセグメントを選択するこ とで流路パターンを形成した.流路パターンは飽和率と関連して設定し,さらに飽和率は計 算に用いるセグメントの体積(Vpath)と全セグメントの体積の総和(Vfull)との比により計算 した.すなわち,Multi-Path Modelにおける飽和率は式(4.13)により定義した.

61

path w

full

S V

V (4.13)

流路パターンの決定方法は,図4.4に示すフローチャートに従った.流路パターンは,モ デルの下部から毛管圧力により水が浸透して形成されることを仮定した[9].そのため,フロ ーチャートの初期にはモデルの下部が液相に接しているとし,液相に接しているセグメント のうち最小の幅を持つものを次の流路として採用した.セグメント数が10×10の場合にお ける流路パターンの例を図4.5に示す.

図4.4 流路パターンの決定フローチャート

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図4.5セグメント数比10×10における流路パターン例(黒色:水で満ちたセグメント,

灰色:水の含まれていないセグメント)

4.2.5 圧力分布と流速の決定

Multi-Path Modelにおけるセグメントの流速は,まず,式4.7に示したダルシー流速に従う

ものと仮定した.このダルシー流速によってセグメントの流速を決定するためには,セグメ ントの両端のノードにおける圧力を設定し,その圧力差を計算する必要がある.圧力分布は,

モデル全体における流量のバランスから計算した.あるノードに着目した場合,そのノード に接するセグメントの流速と幅の関係について,図4.6に示すように0 ~ 4の番号を振って考 えることで,中心のノードにおける流量の収支式は式 4.14のように表される.なお,αは平 行平板における奥行き [m]を示す.式4.14に式4.10を代入し,式4.9および式4.15により無 次元化を行うと,ノードにおける流量収支の無次元化式が式4.16のように得られる.なお,

式4.15および式4.16におけるPは無次元圧力を意味し,添え字のinは系の入り口における 圧力,outは出口における圧力を意味する.

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図4.6 ノードにおける流量収支のバランス

1 1( 0 1) 2 2( 0 2) 3 3( 3 0) 4 4( 4 0)

u d p p u d p p u d p p u d p p

        (4.14)

out

in out

p p

P p p

 

 (4.15)

       

3 3 3 3

1 0 1 2 0 2 3 3 0 4 4 0

D P P D P P D P P D P P (4.16)

この式4.16の流量収支式をすべてのノードに適用し,圧力について計算した.圧力の境界 条件は式 4.15 により無次元値とし,Pin=1.0,Pout=0.0 と与えられた.この圧力計算は,その 値が収束するまで繰り返し行う反復法によって行った.本モデルにおいては反復法にヤコビ 法を適用し,変動値の相対誤差が10-10以下に収束するまで反復計算を継続した[10].

次に,得られた圧力分布より各セグメントにおける流速を計算した.流速は式4.7に示し たダルシー流速を無次元化した式4.17によって計算した.Uは無次元ダルシー流速 [-],u* はダルシー流速の代表値 [m/s]を意味し,式4.18により定義した.また,lはセグメントの 長さ [m],x1は代表距離を意味し,溶液の流出点間距離(カラム長さなど)の値を用いるこ ととした.

* 1

u l

U K P

u x

   (4.17)

*

* in out

1

p p u k

x

   (4.18)

64 4.2.6 物質移行計算式の適用

Multi-Path Model においては,前述したように,各セグメントに一次元移流分散方程式を

適用し核種移行挙動の計算を行った.この一次元移流分散方程式は,Amin Sharifi Haddad et.al, Tianwei Qian et.al., James E. Saiers et.al. らの計算方法に則って行った[11-13].ただし,セ グメントによって流速が異なるために,一次元移流分散方程式を適用する際には第 3 章とは 異なった無次元化が必要になる.Multi-Path Model における一次元移流分散方程式では,移 流項に流速が残り,各セグメントにおけるuSeg. [m/s]を移流項に当てはめると式4.19になる.

ここで,Multi-Path Model 全体におけるダルシー流速 u*により無次元化したセグメントの流 速を,式4.20のように定義する.

2

Seg. e 2

c c c

u D

t x x

     

   (4.19)

Seg.

Seg. *

U u

u (4.20)

これにより,Multi-Path Modelにおけるペクレ数と空間時間は式4.21および式4.22のよう に定義できる.なお,無次元数 X,CおよびT の定義は第3 章に示した無次元化式と同じ定 義である.

* 1 e

e

P u x

D (4.21)

* 1

*

t x u

 (4.22)

ここで,Multi-Path Modelにおけるペクレ数の定義について見直す.式4.21に示したペク レ数の定義は,Multi-Path Model全体における平均的なペクレ数を意味する.そのため,セ グメントにおけるペクレ数は,セグメント長(l)および代表長さ(x1)により補正する必要 がある.式4.23に,これらによって補正した各セグメントにおけるペクレ数を示す.

e, Seg. e 1

P P l

x (4.23)

Multi-Path Modelにおける一次元移流分散方程式の計算は差分法によって行った.この

65

際,移流項の差分には一次精度風上差分を適用し,一つのセグメントにつきメッシュは20 に設定した.

4.3 各パラメータが計算結果に及ぼす影響