第 2 章 カラム流動実験による不飽和層における 核種移行挙動の評価
2.4 カラム流動実験の結果と考察
2.4.1 定圧流動系におけるセシウムイオンを用いたカラム流動実験結果
表 2.2 に定圧流動系におけるセシウムイオンを用いたカラム流動実験の実験条件を,図 2.6 に定圧流動系におけるセシウムイオンの移行挙動を示す.表 2.2 に示すように,流動系 の水頭圧力差は10,15および20 cmとした.また,表2.2に示した流量は,カラム出口にて 採取した溶液の体積(重量測定による)を,実験に要した時間で除した平均値であり,10サ ンプルごとの平均値が大きく変動していないことを確かめた.表 2.2 に示す平均滞在時間
(t*)は,カラム内を通過する流体の流量が一定の場合において,間隙体積を交換するのに 要する時間を意味する値である(後述する式2.5を参照).図2.6の縦軸は,各サンプリング 時のセシウムイオン濃度を,カラムに注入する前のセシウムイオン濃度で除した無次元濃度 である.図 2.6 より,水頭圧力差の増加,すなわち流量の増加に伴い,セシウムイオンの流 出にかかる時間が短くなることがわかる.一方で,飽和条件と不飽和条件におけるセシウム イオンの移行挙動に大きな違いは表れなかった.この結果は,不飽和条件における従来の遅 延係数の定義を勘案すると,不飽和条件における遅延係数が飽和条件の値より大きくなると いう関係を満たさず,矛盾が生じる.また,図 2.7 には実験時の流量(Q [mL/min])と水頭 圧力差(h [cm])の関係を整理した.図2.7に示した流量は,ダルシー流速(u [m/s],式 2.2)
およびカラムの断面積(A [m2])より式2.3から算出した.なお,式2.2において,kewは水の 有効浸透率 [m/s],μwは水の粘性係数 [Pa・s],pは液相の圧力 [Pa],xは距離 [m],ρwは液 相の密度,gは重力加速度 [m/s2]を意味する.なお,i相の有効浸透率(kei)は,単相流にお ける浸透率を意味する絶対浸透率(k)および相対浸透率(kri)より,kei=kkri と表される(例 えば,[12]).図 2.7 からわかるように,同じ水頭圧力差にも関わらず,不飽和条件において は飽和条件よりも流量が小さくなった.この流量の変化は,式 2.2 より,不飽和条件におい て水の浸透率が小さくなったことを示唆する.しかし,式 2.4 に示す,二相流における濡れ 相および非濡れ相のそれぞれの相対浸透率を各相の飽和率によって表した実験式の一つであ
るCoreyの式を用い[13],不飽和条件における流量を計算すると図2.7の一点鎖線に示す直線
となり,実験値よりも小さくなった.これらの結果は,本研究で用いた実験系においては
Corey の式は成り立たないことを意味するとともに,仮にCorey の式により不飽和条件の浸
透率を計算することは実際の浸透率を大幅に過小評価する可能性を示す.
ew ew w
w w
k dp k g dh
u dx dx
(2.2)
QAu (2.3)
4
rw w
k S (2.4)
21
* Sw V
t Q
(2.5)
表 2.2 定圧流動系におけるセシウムイオンを用いたカラム流動実験の実験条件 水頭圧力差 (h)
[cm]
飽和率 (Sw) [-]
流量 (Q) [mL/min]
平均滞在時間 (t*) [min]
10 1 0.78 2.92
10 0.9 0.72 2.86
15 1 1.38 1.65
15 0.91 1.32 1.58
20 1 1.92 1.19
20 0.89 1.62 1.25
図2.6 定圧流動系におけるセシウムイオンの飽和条件および不飽和条件における移行挙動
22
図2.7 定圧流動系におけるセシウムイオンを用いたカラム流動実験の際の流量
ここで,水頭圧力差による流量の差異を排除してセシウムイオンの移行挙動を比較するた めに,流動実験における時間を無次元化する.実験における時間(t)を平均滞在時間(t*) により除した無次元時間(T)を用い,図2.6の横軸を無次元化したグラフを図2.8に示す.
なお,平均滞在時間の定義は[12, 14]らに則り,飽和率(Sw)を考慮することで,不飽和条件 に適用した.図 2.8 に示すように,実験結果を無次元時間により整理することで,セシウム イオンの移行挙動に水頭圧力差やカラムの飽和状態の依存性が生じないことがわかる.これ は,前述のように,従来の定義による遅延係数を勘案すると矛盾が生じる.そこで,2.3.1項 に述べた収着試験により得た収着分配係数(Kd = 0.8)を用いて式2.6より遅延係数を計算し,
その遅延係数から得られる理論曲線(第1章の式1.1)と実験値とを比較した結果を図2.9に 示す.なお,式2.6中のεは単位体積当たりの固相が成す空隙の体積である間隙率[-],ρは固 相の密度 [g/cm3]であり,ここでは ε=0.4,およびρ=2.5 とした.図 2.9から分かるように,
収着試験に基づく理論曲線と流動実験の実験値とは大きく異なり,実験値の遅延効果が大き く表れる.これらの違いについては,これまで詳細な議論はなされていない.本論文では,
これらの違いについても後述する第4章において改めて取り上げ,Multi-path modelによって 詳細な考察を行う.
d, saturated d
1 1
R K
(2.6)
23
図2.8 無次元時間により整理した定圧流動系におけるセシウムイオンの移行挙動
図2.9 収着試験により求めた収着分配係数による理論的な破過曲線と実験値の比較
24