第 3 章 一次元移流分散方程式による 遅延係数の評価
3.3 一次元移流分散方程式による計算結果の実験値への適用
3.3.3 セシウムイオンを用いた定流量流動系における実験結果に対するフィッティング
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表 3.4 より,定流量流動系の場合には,不飽和条件における遅延係数は飽和条件のものよ り大きく見積もられた.これは,定流量流動系においては気相の存在による迂回効果がより 大きく表れたことを示唆する.定圧流動系においては,気相の存在による流動抵抗は浸透率 の低下として表れ,これにより流量が低下する.一方で,定流量流動系においては,気相に より閉塞した流路では局所的に圧力が高くなり気相を押し流して移流が生じるが,その近傍 に圧力が逃げやすい流路(径が大きく浸透率の大きい流路)が存在する場合には,流れやす い流路へ優先的に移流が生じる.このような効果により,定流量流動系においては,特に不 飽和条件において流路の迂回が生じやすいと考えられる.
表 3.4 より,ペクレ数に着目すると,低い流量の場合には,同じ流量における飽和条件お よび不飽和条件において見積もられたペクレ数は同等か,若干大きくなった.一方で,流量 が大きい場合(120 mL/h以上)には,不飽和条件におけるペクレ数は飽和条件より減少し,
見かけの分散係数が増大した.このこともまた,定流量流動系の不飽和条件においても,流 路迂回などに起因した分散の増大により核種移行が遅延する可能性を示唆する.
ここで,最も大きい流量条件である流量 140 mL/h の場合の遅延係数について考える.表 3.4に示すように,流量140 mL/h(2.33 mL/min)の条件では,飽和条件における遅延係数が 4.9 と他の流量条件より小さな値が見積もられた.この理由として,流量が大きいために,
セシウムイオンと固相の間に局所収着平衡が成り立っていない可能性が考えられる.しかし,
この遅延係数は,収着試験より得られる遅延係数(Rd=4)よりも大きい.これらのことは,
核種収着が低下するような流動場においても,前述した流路迂回などによる分散が一定の遅 延効果を示すために,収着分配係数から予想されるよりも大きな遅延係数が得られたと考え られる.このような分散の効果が期待できる流量の上限については本研究で確認できていな いが,少なくとも流動実験を実施した140 mL/h(2.33 mL/min)程度の流量においては,収着 分配係数から予想される以上の核種の遅延効果が期待できると言える.また,同じ流量 140 mL/hの場合の不飽和条件においては,遅延係数が5.55と飽和条件よりも 1.13倍大きく見積 もられており,前述の通り不飽和条件において分散効果に起因した遅延効果がより大きくな ることが同様に確認できた.これらのことは,実環境の多孔質層において,降雨などによる 急激な流量の増加が生じた場合にも,流路の屈曲に伴う分散の効果が遅延効果に寄与し,不 飽和条件においてはそれらがより大きく発現する可能性があることを示唆する.
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表 3.4 定流量流動系におけるセシウムイオンの移行挙動におけるパラメータの推定結果
No. Q
[mL/h]
Q [mL/min]
Sw
[-]
Pe
[-]
Rd
[-]
R2 [-]
1 80 1.33 1.0 12 5.9 0.998
2 80 1.33 0.92 12 6.5 0.999
3 100 1.67 1.0 10 5.45 0.998
4 100 1.67 0.91 13 5.55 0.998
5 120 2.0 1.0 11 5.85 0.999
6 120 2.0 0.88 8 5.9 0.999
7 140 2.33 1.0 13 4.9 0.998
8 140 2.33 0.85 10 5.55 0.999
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