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Manusmr.ti 第 1 章における原理展開

MSの冒頭の第 1章77では、創造説について説かれる。そこには、わずかながらサーン キヤ説の影響が見られる。

まず、黄金の卵(ヒラニヤガルバ)の創造説が説かれる。そこで見られる創造のライン は、暗黒→スヴァヤンブー→精子→水→黄金の卵(ヒラニヤガルバ)→ブラフマーである。

そして、さらにこのブラフマーから創造が始まる。ブラフマーは、黄金の卵の中にまる一 年住んだ後、その卵を二分し、天と地を造り、さらにその中間に空と8つの方角および水

76すなわち「大罪を犯した者」ということ。

77ヴァルナ体制を、創造主による世界創造の一環に組み込んでいる。これは、ヴァルナ体制に先験的な権威 を付与することを意図し、以降のダルマ文献においても見られない。もはや繰り返される必要がないほど 決定的だったと考えられている[渡瀬2013: pp. 513–514]

の永遠の居処(海)を造る。

ここでのブラフマーは以下のように考えられている。

yat tatk¯aran.am avyaktam. nityam. sadasad¯atmakam/ tadvisr.s.t.ah. sa purus.o loke brahmeti k¯ırtyate//MS 1.11

姿が見えず78、常住で、有と非有を本質としている原因—それから生まれたかの者

(プルシャ)はこの世でブラフマン79と呼ばれている。

つまり、ブラフマーは、未顕現(avyakta)、有と非有、そしてプルシャと同一視されてい るのである。

さらに、創造は次のように続く。

udbabarh¯atmana´s caiva manah. sadasad¯atmakam/

manasa´s c¯apy aham. k¯aram abhimant¯aram ¯ı´svaram. //MS 1.14

次いで〔ブラフマン80は〕彼自身から有と非有からなるマナス(思考力)を、そし てマナスから自意識者であり支配者81であるアハンカーラ(我欲)を取り出した。

mah¯antam eva c¯atm¯anam. sarv¯an.i trigun.¯ani ca/

vis.ay¯an.¯am grah¯ıt¯r.n.i ´sanaih. pañcendriy¯an.i ca//MS 1.15

さらに、偉大なアートマン(マハーン・アートマン)82、三グナを有するいっさいの もの、対象の認識者である五感官を順次〔取り出した〕。

ここでは、MS第12章に見られないアハンカーラが登場する。このアハンカーラは主宰神

(¯ı´svara)と同義である。アハンカーラが神格と対応する説はMBh12巻第29183

第327章84でも見られる。しかし、対応する神格が異なり、第 291章ではプラジャーパ ティ神と対応させている。第327章ではアハンカーラとブラフマーとを対応させている が、未顕現(avyakta)には主宰神(¯ı´svara)を対応させている。古典サーンキヤでは迷妄 の原因とも成るであろうアハンカーラが、神格と対応しているのはエピック・サーンキヤ の特徴ともいえる。

また、このMS1章での原理展開は、マナス→アハンカーラ→マハット・アートマ ンとなり、このマハット・アートマンとはマハットすなわちブッディに該当するものであ

78“avyakta”すなわち「未顕現」である。

79ここでは創造神ブラフマーのことである。

80創造神ブラフマーのことである。

81“¯ı´svara”すなわち「主宰神」のこと。

82あるいは「マハット・アートマン」。ここでのマハットは「偉大な」ではなく、単に、「大なるアートマン」

と解した方が妥当であろう。

83本論の第2章 第3.1節 を参照。

84本論の第2章 第5.2節 を参照。

る。こうなるとSKなどのサーンキヤ説で見られるブッディ→アハンカーラ→マナスの説 と逆転してしまう。このような逆転したものは古典サーンキヤでもエピック・サーンキヤ でもあまり見いだせないが、MBh第12巻第326章では類似したものが見出せる85

この第1章は世界創造を説く箇所であるが、黄金の卵ヒラニヤガルバによる古い創造説 と新しいサーンキヤ的創造説に従って述べられる創造物一般とを区別し、2つの矛盾する 説が折衷されていることが指摘されている86。そのため、サーンキヤ説を取り込む際に、

誤って逆転させてしまった可能性もある。あるいは、独自のサーンキヤ学派の説が説かれ ているとも、当時このような思想が流布していたとも考えられる。

これ以降の偈は不明な点が多い。6種のものの微細な分子とブラフマー自らの分子とを 結合させることによって万物を作ったとされ、さらに、7種のプルシャの微細な身体分子 からこの世界が生じるとされる。この6種のものと 7種のプルシャとは一体何を指すの であろうか。そもそもこの章自体が、当時独立して流布していたいくつかの創造説の小片 をつなぎ合わせたものと考えられている87

このように、第1章は矛盾が多い箇所である。第12章で説かれるサーンキヤ説との矛 盾だけでなく、第1章の中でも矛盾が見られる。しかし、ここでの主題は、世界の創造に ついて語ることを目的としているのではない。この世界のすべてはブラフマーによって創 造されたのであり、それはヴァルナ制も同じである。そして、この世界の繁栄のために は、各階級の人々に課せられたカルマを正しく行われなければならない88。あくまでも、

ダルマによる世界の秩序の構築とその理論付け、さらに言えば、4ヴァルナ制への神的権 威の付与を目的としているのである。

85そこではマナスからアハンカーラが生み出される。詳しくは本論の第2章 第5.3節 を参照。

86[渡瀬1978: p. 561]

87[渡瀬1978: p. 559]

88[渡瀬1978: p. 572]

第 4

Carakasam . hit ¯a および

Buddhacarita における世界構成 原理

第 1 Carakasam . hit ¯a における 8 種の根本原因と 16 種の