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K. Lynchは,「都市の姿はその中に住む人々にどのように写っているであろうか」,「その イメージはどんな意味をもっているであろうか」,「人々が求めるイメージはどんなものだ
ろうか」,rそのイメージを与える環境のあるべき姿はどんなものだろうか」,rそのために 都市計画家たちに何ができるだろうか」といった,イメージ・アビリティ(lmageAbility イメージされる可能性)の重要性について述べている。そして,イメージ・アビリティを 高めることが美しく楽しい環境にとって最も重要な条件であるとしている13。
Lynchは次のように述べている。
観察者を訓練して,それらがどのように互いにかみ合っているのかを観察することを教えることは,
イメージを改良するのも同様に有益だろう。このような教育は,都市のイメージを育てるためばかり ではなく,変動によってかき乱された人々の心を再び環境に適応させるためにも用いられうるだろう。
つまり,都市のイメージを豊かにもたせることができれば,まちを総合的・批判的にと
らえ,その後の生活において人々が主体的にまちの変化に対応したり,まちをつくってい
第∬章第4節
くのに参画したりすることにつながるとしている。
また,寺本氏は「子どもの生活の学校化」によって,我が国の子どものように生活の中 で学校という世界が大きく占める国では,どうしても知覚環境形成と学校教育との関係を 無視することはできないとして,学校教育を通して,子どもたちのまちに対する認識がど のように形成され,それがどのようにその後の生活に影響を与えているのかを考察してい る14。そこで,遊び場や自宅の様子,通学路,野,山などの場所についての記憶,そのい ずれかの体験の思い出の背景としての原風景という心理空間を取り上げている。この原風 景とは,誰でも自分の幼年期の忘れられない光景として記憶の奥底に沈殿しているもので ある。『子どもの権利条約』の発効によって社会全体が大人とは異なる子どもという存在を 意識し始めたことが背景となり,このような原風景に関する研究が重要視されてきている15。
子ども期における原風景の重要性を考えると,総合的にまちをとらえることや,まちに存 在する諸事象を批判的にとらえることが必要となってくる。寺本氏もこの点について,ま
ちづくりを組み込むことによってそれが可能となるとして,次のように述べている。
【表1−4−11】まちづくりを組み込む意義
・暮らしや地域を調査し,具体的事実や情報をもちより,付き合わせ検討し,地球規模で課題を明ら かにし,対策の多様な選択肢を発見したり,新たなあり方を創造したりしていくことが求められる。
その時,子どもたちは自分の暮らしを検討の対象に捉えなおし,暮らしを見つめなおすとともに,暮 らしを規定している社会経済活動や政策を批判的に検討し,環境の保全に向けて行動できるようにな ると考えられる。
・現在の暮らしを問い直すためには,まちとは何であり,どのように暮らしているのか,どこに問題 があるのかを具体的に捉えることが必要である。
・ まちづくりを考えるとき,人間の都合だけを考えていては環境悪化は避けられない。しかし,自然 環境保全だけを考えていても,住みよい生活は実現できない。この学習を通して,子どもたちは環境 問題についていろいろな角度から総合的に考える必要性を学ぶことができる。
(寺本潔・山田綾『エネルギーを軸にした総合学習』,明治図書,2002,pp.30−32 寺本潔・豊田市堤小学校『エコ総合学習』,東洋館出版社,1999,p,19を基に作成)
このようにまちづくり学習においては,まちを総合的・批判的にとらえることができる
という点に,社会科学習の中で行っていく意義がある。そして,子ども期にこのような能
力を高めることにより,新しい社会をつくろうとする将来の市民としての資質を形成する
ことにつながる。第∬章第4節
そこで,社会科学習における子どもの参画の資質形成を目指すまちづくり学習は,以下 のようなものであるべきだと考える。
まちを総合的・批判的にとらえることができるようにするために,過去と現在における自地域のまちづ くりの要素を複数組み込む。そして,参画の重要性をとらえること力簗きるようにするために,他地域に おける先進的な市民参画のまちづくりを組み込む。さらに,これらを基にして合理的意志決定を行うこと 力簗きるようにするために,社会的論争問題としてこれからのまちづくりを組み込み,それに対して価値 判断・未来予測を行うことか驚きるような学習過程を設定する。
【註】
1澤田義宗『総合の考え方を生かした中学校社会科地理的分野における教材開発』,兵庫教育大学大学院修 士論文,1989,p.2
2小原友行r社会的な見方・考え方を育成する社会科授業論の革新」,社会系教科教育学会『社会系教科教 育学研究』第10号,1998,pp,5−12
3同上書,p.8
4佐長健司r議論による社会的問題解決の学習」,社会系教科教育学会『社会系教科教育学研究』第13号,
2001, pp.1−8
5平山明彦「学校ビオトープと参画」,子どもの参画情報センター編『子ども・若者の参画』,萌文社,2002,
pp.109−117
6峯明秀「社会科教育における社会参加の意義と位置」,目本社会科教育学会『社会科教育研究』別冊,2003,
PP.37−49
7小学校の教科書は東京書籍・大阪書籍・教育出版・日本文教出版,中学校の教科書は東京書籍・大阪書 籍・教育出版・目本書籍・清水書院・帝国書院のものを使用した。
8吉田正生氏は「中学年社会科『まちづくり学習』の教科書記述について」(社会系教科教育学会『社会系 教科教育学研究』第13号,2001,pp,51−59)において,「都市社会学の成果を参照するなら,児童に社会 の一員として何をなすべきか,行政や市民は何ができるのかを考えさせるとき,学問的な成果に基づいた 視点を提示できる」として,まちづくりに関する論を「都市計画」,「活性化」,「コミュニティ」に分類し
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ている。
9北原啓司r地域におけるまちづくり教育の可能性」,『弘前大学教育学部研究紀要』第82号,1999,
pp.113−124
10寺本潔氏は子どもを「小さなまちづくり人」,っまり「まちづくりのエージェント」と位置付け,「まち に住む次世代の育成」,「生活環境を主体的に理解し,改善に向けて動き出す資質の養成」の必要性を述べ ている。(寺本潔「子どもの参加による町づくり学習と社会科学習」,目本社会科教育学会『社会科教育研 究』別冊,2003,PP.61−68)
11新谷周平「参加・参画論の展開と理論的課題」,子どもの参画情報センター編『子ども・若者の参画』,
萌文社,2002,PP.28−41
12延藤安弘「まち育ての中の子どもの参画」,子どもの参画情報センター編『子ども・若者の参画』,萌文 社,2002,PP。174−187
13Lynchは,イメージ・アビリティとはアイデンティティ(ldentity同一性),ストラクチャー(Structure 構造),ミーニング(Meaning意味)から成り立つとしている。そして,アイデンティティ,ストライクチャ ーは形そのものがもたらし,ミーニングは社会的,歴史的,個人的等の要因で生まれるものであるので,
アイデンティティ,ストラクチャーに絞ってイメージ・アビリティを追究している。さらにLynchは,そ の中でも,パブリック・イメージ(Public Image集団のイメージ)を重視している。なぜなら,パブリッ ク・イメージには一貫性があり,多くの人々が住むための都市をつくるためには,あるいはつくりなおす ためには,パブリック・イメージにおけるイメージ・アビリティを高めることが重要だからだとしている。
(K.Lynch著,丹下健三・冨田玲子訳『都市のイメージThe Imageof theCity』,岩波書店,1968,pp.244−245)
14寺本潔「子どもの知覚環境研究の展望」,『愛知教育大学研究報告』No.43,1994,pp.75−88 15寺本潔『子供の眼でまちづくり』,KTC中央出版,1999,p。85
第皿章第1節