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JICA の比較優位性

ドキュメント内 AF KMAUD Project (ページ 162-167)

第 3 章   教訓

3.4 JICA の比較優位性

本調査の実施を通じて、紛争影響国で雇用促進・生計向上に係る事業実施の際のJICAの比較優 位として浮かび上がってきた事項は以下の通りである。

(1) プロセス重視の技術協力アプローチ

国際援助コミュニティに影響を与えた UNDP の報告書である Capacity for Development: New

Solutions to Old Problems(2002)は、多くのドナーが開発途上国の既存の能力を無視して外国で開

発された知識やシステムをそのまま移転する傾向があることを批判している。これに対して、JICA の技術協力プロジェクトでは、現地側関係者のオーナーシップを重視し、パートナー国の既存の

組織と知識を活用しながら、カウンターパート(CP)との共同作業を通じて現地に適合する方法 の構築を図る傾向がある。例えば、コロンビアの投降兵士関連案件では、コンサルタントを派遣 して単独でモデルを構築して一方的に提案するのではなく、CPと共同活動を通じてモデルを作り 上げていくというプロセス重視の手法が、現地で適応性の高いモデルの構築、オーナーシップの 醸成、構築後のモデルの円滑な活用に有効であることが示唆された。パートナー国の既存の組織 とツールを活用して、CPとの協働作業を通じて現地に適合するモデルを開発していったことが評 価された事例である。

(2) 現場で得られた知見の政策レベルへのフィードバック

JICA の技術協力プロジェクトでは、専門家は現場に張り付き、CP との共同作業を通じて業務 を進めていく。また、南スーダンのLIPSの事例のように、中央および州レベルの政府からコミュ ニティといった現場レベルに至るまでアプローチの対象とすることもできる。従って、JICAはこ うした強みを生かし、現場の状況に暗い傾向にある途上国の政策決定者が多い中で、現場で得ら れた知見を政策に反映することが可能となる立場にある。このように、政府レベルと現場レベル 双方に働きかけを行うことのできるJICAの特性は、特に政策や制度、またデータが破壊されてい たり、現場の状況を反映していないことが多い紛争後の国においては重要である。例えば、ルワ ンダのトゥンバ高専案件が実施したものに改良を加えた企業研修に関する方法論について、TVET 統括機関であるWDAが全TCTの実施した企業研修をモデルとして紹介し、全職業訓練機関に取 り組むように促した背景にはこのような事情がある。

(3) 政策実施のための具体的方法論の提示

上記と関連して、JICAの技術協力では、案件実施により得た教訓を基に、パートナー国政府の 政策実施のための具体的方法論を提示することによって、現地政府の政策支援を行うとともに、

プロジェクト効果の面的拡大を図ろうとする。南スーダンのLIPSで作成した農業技術マニュアル は、州農林省の公式マニュアルとして制定された。また、同プロジェクトが作成した農村開発マ ニュアルは農林省農村開発局の公式マニュアルとして位置づけられ、全国の農村開発普及員が利 用することとなるとともに、農村開発訓練機関の教材としても使われる方針となっている。同プ ロジェクトは南スーダン国政府の政策をいかにして実現すれば良いかについての具体的方法論を 提示することができた例で、同国の政策支援として寄与したばかりか、近い将来においてプロジ ェクトの成果が全国に広がることになる。また、コロンビアの投降兵士関連案件では、まずJICA が先駆的に投降兵士家族と受入コミュニティに対する技能訓練を実施し、それがその後の同国政 府の政策にも反映されていった。同様に、ルワンダの除隊兵士案件でも政策支援への貢献がみら れた。

(4) JICAが有する第3国資源の活用

本調査案件の職業訓練案件では、大部分のプロジェクトでこれまでJICAが協力を展開してきた 第3国のリソースを活用していた。こうした南南協力支援は、コストの面だけでなく経済・文化 的背景、技術力の類似性によるメリットを享受でき、紛争影響国で国内に十分なリソースがない 場合にも有効である。また、類似した状況の中で成功した事例をカウンターパート等に見せるこ とによって、将来の具体的な目標をイメージする上でも有効で、その結果モチベーションを高め ることにも繋がる。特に、ルワンダのトゥンバ高等技術専門学校が積極的に行っている南南協力 支援は広範囲にわたり、今後のJICAの支援方法にとって参考になるばかりか、国際的にも十分ア ピールできるものである。

(5) 地域全体の経済成長と雇用促進支援の可能性

3.1.5で指摘したように、紛争影響国・地域に対する今後の支援の方向性として、地域全体の経

済成長と雇用促進支援が有効と考えられる。こうした支援に対してJICAは大きな潜在力を持って いる。JICAには技術協力、政策アドバイザー派遣、有償資金協力、無償資金協力等、多様なスキ ームの統合的活用ができる強みがある。経済的相互依存を通じた信頼醸成という観点から、長期 的な地域全体の経済成長と雇用促進によって多民族間の相互交流の拡大を図るための戦略を策定 する地域開発調査を実施し、その戦略を実現するために様々なスキームを活用していく。技能訓 練や生計向上・コミュニティ開発も地域全体の戦略の中に位置づけることによって、より大きな インパクトを持つことができると考えられる。

例えば、パレスチナの「ジェリコ地域開発プログラム」では、1)「行政能力・社会サービス強 化サブプログラム」、2)「農業開発、農産加工・流通振興サブプログラム」、3)「観光開発、都市 環境改善サブプログラム」から成り立っており、それぞれのサブプログラムで実施される協力が 相互に有機的かつ効果的に連携し、相乗効果を得られるように協力プログラムが策定されている。

特に、農業や観光などのセクターの振興では、パレスチナ経済とイスラエル経済が相互に依存し ている同地域の経済構造を考慮に入れ、一義的にはパレスチナの産業育成に目標を置きつつも、

同時にイスラエルとの関係進化を図り、双方が便益を受けられる経済構造を醸成していく等、信 頼醸成支援の視点を重視している。こうした開発計画と技術協力、あるいは資金協力の連携は JICAが優位性を持っている点であり、今後の紛争影響地域における有効な平和構築支援の一つと して積極的に進めていくことが考えられてよい。

付属資料

付I-1

ドキュメント内 AF KMAUD Project (ページ 162-167)