第 2 章 事例分析
2.4 ルワンダ
2.4.1 基礎情報
表2.4.1 ルワンダ基礎情報表
障害を持つ元戦闘員の社会復帰のための技能訓練プロジェクト 2005年12月〜2008年11月 トゥンバ高等技術専門学校強化支援プロジェクト 2007年7月〜2012年6月
紛争の 背景・
特徴
紛争の期間 ž 1990年10月〜1993年8月(アルーシャ和平協定)
ž 1994年4月〜1994年7月(ジェノサイド終結)
紛 争の ステ ー タス (事 業開始時)
ž アルーシャ和平協定から12年4か月後、ジェノサイド終結後から、11 年5 か月後。しかし、2002年のプレトリア合意に基づき、コンゴ民残 留ルワンダ兵の動員解除及び帰還作業が行われ、現在に至るまで活動は 継続されている。
紛争の形態 ž ツチ族とフツ族の対立が全国規模の武力紛争に発展。
紛争の要因 ž ベルギーは植民地における間接支配を効率的に行うため、ツチとフツの 差別化を行い、ツチの支配による中央集権化を図った。このツチ優遇政 策は、フツの不平等感や不当差別の感情を増大させ、政治的にツチとフ ツの対立構造が醸成された。
ž フツ至上主義を掲げる政党やメディアの出現による対立構造の悪化。
ž 小さな国土に多くの人口を有し、耕作地の不足が土地争いに発展してい った。
ž 一次産品の国際価格下落に伴う経済不況は開発援助への依存を招いた が、一般市民には届かず、飢饉や失業率が増大し、人々の不安を掻き立 て、社会を不安定化させる要因となった。
ž 1990年10月にルワンダ愛国戦線(RPF)がルワンダ北部へ軍事侵攻し ルワンダ政府軍との内戦に発展した。フランス、ベルギー、コンゴ民が 軍事介入しルワンダ政府を支援したものの、RPFを制圧することはでき なかった。
ž 1994年 4月にハビャリマナ大統領とブルンジのンタリャミラ大統領の 乗った飛行機が撃墜され、翌日からほぼ全土にわたってジェノサイドが 始まった。
紛争当事者 ž フツ急進派がフツ市民を動員し、ツチ市民及びフツ穏健派を攻撃。
ž フツ政権・急進派 vs RPF 案 件開 始・
実 施時 の不 安定要因
ž ルワンダ自由民主軍(FDLR)はコンゴ民へ逃亡後ルワンダへの越境と 攻撃を繰り返し、またその掃討のためルワンダ軍がコンゴ民東部に侵攻 する等、国境を巡り不安定な関係にあった。また、鉱物資源の不法搾取 を巡って、コンゴ民との関係が悪化する可能性がある→2009 年末頃か ら両国の関係が改善した。
ž 慢性的な土地不足は国家的な課題となっている。
ž 強力な野党はいないものの、中央政権への反対派は存在している。
ž ハビャリマナ大統領の飛行機事故の真相がわかっておらず、裁判の結果 次第で、フランスとの関係悪化の材料となる可能性がある。
案 件開 始・
実 施時 の安 定要因
ž 政権の基盤が安定しており、長期的な計画を立て、実施していく素地が ある。
ž 順調に経済成長が続いており、マクロ経済が安定している。
政治・
行政
政治動向 ž 2003 年の国民投票で、一党独裁の予防、民族憎悪の禁止、議会におけ る制限付き言論の自由などを基調とする新憲法が成立した。
ž 2000年よりツチのカガメが大統領を務める。
ž RPFと連立政党(キリスト教民主党、イスラム民主党)が多数派となっ ている。普通選挙枠が抑制され、政府の影響力の強い地方行政組織や国 立の団体から多くの議員が選出されるシステムであるため、RPFに有利 になっており、対抗勢力が排除されている。
ž 政権内でツチ、フツの区別は行っていないが(ID カードの民族名記載 を廃止)、省庁の要職クラスに占めるツチの割合は高いと言える。
ž 国民融和・和解のための政策が1994年より行われている。
行政動向 n 地方行政システム
ž 2006 年頃から本格的に地方分権と公社再編が開始された。地方行政に 関して計画立案は中央、実施は地方自治体や中央省庁の外局という役割 分担になっている。
n 雇用・生計向上に係る行政組織の状況
ž 職業訓練センターに関しては、教育省(MINEDUC)傘下の職業開発庁
(WDA)が政策を策定する。
ž 地方自治省(MINALOC)傘下のルワンダ動員解除・社会復帰委員会
(RDRC)が元戦闘員の職業訓練プロジェクトの監督と進捗管理を行っ ている(職業訓練自体は一般の職業訓練センターで実施)。
復興計画 ž
2000 年7 月策定。重点目標は①グッドガバナンス、②人間開発と知識 集約型経済、③民間主導経済、④インフラ開発、⑤商品作物及び市場志 向型農業、⑥国内と国際経済の統合となっている。
VISION2020
経済・
産業
マ クロ 経済 動向
n 主要経済指標(出典:IMF)
年 2005 2006 2007 2008
GDP(国内総生産・100万USD) 2.4 2.9 3.3 4.3 インフレ率(%) 9.0 8.9 9.1 15.4 失業率(%) NA NA NA NA
産 業・ 技術 者育成政策
n 産業構造
ž 農業 39.8%、農業が GDPの約 40%を占めており、多くの農民が小規模 農地である。主要作物は、コーヒー及び茶(輸出収入の 34%)、鉱山 資源のスズとコルタン(輸出収入の約30%)である。
n 技術者育成政策
ž 教育セクター戦略計画(2006-2010)において、科学技術教育の強化を 重点課題に位置付けている。政策に合わせて、トゥンバ高等技術専門学 校(TCT)を設立した。
経 済・ 雇用 面 での 紛争 の影響
ž 1987 年頃からゼロ成長、もしくはマイナス成長であったが、内戦、特 に1994年の大虐殺で経済は壊滅的打撃を受けた。
ž 紛争期間中、人材が国外に流出するとともに、国内でも教育や技術者育 成の機会が失われ、産業界では実践力のある技術者が不足する事態とな った。
技 術教 育・
職 業訓 練に 係る諸制度
n TVET(Technical and Vocational Education and Training)システム
・ 初等教育を終えた若者を対象にした職工レベル(A4)の技術者を育成 する青年訓練センターがあり、その上に技能職レベル(A2, A3)の技術 者を育成する技術学校が存在し、トップにエンジニア(A0)を育成す るキガリ科学技術学院がある。2007年よりトゥンバ及びニャンザに高等 技術者(A1)を育成する高等技術専門学校が開設した。
社会
コ ミュ ニテ ィの特性
n 人口的特性
ž 人口970万人(2008年)。民族の割合は、フツ85%、ツチ14%、トゥワ 1%(2004年)となっている。(1994年に民族分類の廃止)
n 地理的特性
ž 東部では、元々ツチ族が住んでいたが、フツ住民の帰還に伴って、軋轢 が生じている。
ž 南部も比較的ツチの住民が多く、ジェノサイド時に国内で生き延びた 人々が多く住んでいる。
避 難民 ・元 戦 闘員 の動 向
n 避難民の動向
ž UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)の2009年1月時点の数字によると、
ルワンダ難民の総数は、72,550人であり、主に、周辺国(ウガンダ、コ ンゴ民、ブルンジ)やヨーロッパ諸国に滞在している。紛争時1994年の 難民数は200万人以上、虐殺前1993年の時点でも国外に50万人程度の難 民がいた。
n 元戦闘員の動向
ž 2008 年後半1997年にルワンダ政府がルワンダ動員解除・社会復帰プロ
グラム(RDRP)を開始し、2012年3月までに、RPA(ルワンダ愛国軍、
RPFの軍事部門)、1994年以前の旧政府軍の兵士(ex-FAR)、DRCで 活動していた民兵(ex-AG)の3つのグループの計68,418名が除隊された。
ルワンダでは、元来ツチやフツと呼ばれる人々に明確なアイデンティティーはなかったが、旧 宗主国ベルギーは植民地支配の効率化のため、支配階級だった人々(ツチ)を優遇し、ツチとフ ツの境界を明確に引いた。こうした植民地政策が差別される側としてのフツを生み、不平等感を 増大させ、不当差別されているという感情をフツ住民の間に増大させた。そして、RPF の侵攻や 社会不安を背景に、フツ至上主義を掲げる政党やメディアが多く出現し、政府内のフツ至上主義 者とも連携し、1994年のジェノサイドの一因となった。
紛争の背景・特徴
また、ルワンダでは、慢性的に土地不足の状態であり、耕作地の不足が土地争いに発展してい った。さらに、1980年代後半からの経済停滞は貧困や失業率を上昇させ人々の不満を募らせる原 因となった。
2006年から地方分権と公社再編が開始された。地方分権化は進んでいるが、州知事及び県知事 は中央から任命され、大統領とPerformance Contractを結んでいることからもわかるように、ルワ ンダでは中央からのトップダウンの仕組みは強い。また、地方行政の各レベルには議会に相当す るカウンシルが置かれ、行政府の行動を確認する機関が設置された。これにより、中央省庁職員 数が大幅に削減された。行政機関の人員が大幅に削減され、給与が支払われるポストの数が限定 されたことによって財政基盤が強化され、職員のアサインメントが明確化された。しかし、地方 では、事業実施要員が減少したことによって、事業の実施に支障をきたしている。
政治・行政
ルワンダの経済は、1987 年頃から停滞し、内戦、特に 1994 年の大虐殺で経済は壊滅的打撃を 受けた。その後、農業生産の堅実な回復、ドナー国からの援助、健全な経済政策により GDP は 1999年までに内戦前の水準に回復した。
経済・産業
労働人口の84%が農業従事者で農業はGDPの約40%を占めている。主要作物はコーヒー及び茶 であり、主要産物は、鉱山資源スズとコルタンである。また、ルワンダは、国家開発計画2020に おいて、知識集約型経済(Knowledge-based Economy)の実現を掲げ、人的資源開発、とりわけ科 学技術分野の人材育成に取り組んでいる。
ルワンダから出た難民は、1950-60年代に国を出た人々、1960-90年代ツチの流出、94年のフツ の大量流出に分類される。UNHCRの2009年1月時点の数字では、ルワンダ難民の総数は72,550 人で、主に周辺国(ウガンダ、コンゴ民、ブルンジ)やヨーロッパ諸国に滞在している。また、
ルワンダ国内にもコンゴ民、ブルンジといった他国からの難民を抱えている。
社会