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第 8 章

8.4 ITZO-TFT の光信頼性評価

8.4.4. ITZO-TFT の光信頼性結果

次に、光照射有無ならびに照射波長の影響を考慮した信頼性評価を行った。信頼性評価 の手順を図8.10に示す。ゲート電圧Vgs= -20V、Vds=0Vとして、室温で積算10,000秒の ストレスを印加した。ゲート電圧ストレス印加時にそれぞれ異なる波長(λ= 460, 530,

590nm)の光を照射した 。伝達特性は 光照射下のスト レス 印加を中断し、暗状態に て

Vds=0.1Vを、次にVds=10.1Vという順番で、Vgs=-10〜20Vの範囲において測定し、その 特性変化を確認した。

図8.11にITZO-TFTの光信頼性(Negative bias illumination stress、NBIS)の結果 を示す。暗状態 (Dark)で測定した伝達特性の変化も示している(図 8.11(a)、(e))。興味深 いことに、Vdsが0.1Vと10.1Vで異なる伝達特性の変化となっている。Vds=0.1Vの時には、

照射光のエネルギーが増加すると伝達特性ではON 電流の低下が発生している。具体的には 波長が530nmと460nmの場合、ドレイン電流Idsが100pAを越えたところから、伝達特性 曲線はON電流が低下する形に変形している。Vds=10.1Vの際は暗状態では立ち上がり電 圧は負にシフトしていたが、照射光のフォトンエネルギーが増加すると正の方向にシフトしている。

NBIS

Vds=0.1V Vgs= -10~20V Vds=10.1V Vgs= -10~20V

測定 暗状態

ストレス 印加

Vgs= -20V 印加

光照射

Time counts

初期 10000秒までの繰り返し 最後

Vds=0.1V Vgs= -10~20V Vds=10.1V Vgs= -10~20V

測定 暗状態

Vds=0.1V Vgs= -10~20V Vds=10.1V Vgs= -10~20V

測定 暗状態

図8.10 ITZO-TFTの光信頼性評価(NBIS)の流れ

照射波長 λ=460,530,590nm

133

次にTFTパラメータ変化の時間依存性を調べた。Vds=0.1Vの場合はIds=100pA前後か ら、伝達特性が変化しているために、パラメータを次の様に定義して考察を行った。第 6 章で述 べたとおり、しきい値電圧は特定な電流値(Ids=1nA)における Vgs の値、 S 値はしきい値電 圧以下のゲート電圧に対するドレイン電流の変化率として 10pA から 100pA の値で計算して いる。今回、しきい値電圧を 2 種類とし、Vg1 として Ids=10pA の Vgs の値を、Vg2 として Ids=1nAの値を定義した。さらにS値は、SS1は1〜10pAの値、SS2は1〜10nAの値で それぞれ計算した。図 8.12 に移動度μ変化率、図 8.13 に S 値(SS1,SS2)の変化を、図 8.14にしきい値電圧の変化(ΔVg1,ΔVg2)を示す。

1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V)

1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V) 1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V)

initial 100s 1000s 5000s 10000s

1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V)

initial 100s 1000s 5000s 10000s

1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V)

1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V) 10-12

10-10 10-8 10-6 10-2 10-4

Ids(A)

10-14

10-12 10-10 10-8 10-6 10-2 10-4

Ids(A)

10-14

1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V)

1.E-14 1.E-12 1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02

-10 -5 0 5 10 15 20

Ids(A)

Vgs(V)

Dark 590nm 530nm 460nm

(a)Vds=0.1V (b) Vds=0.1V (c) Vds=0.1V (d) Vds=0.1V

Dark 590nm 530nm 460nm

(e) Vds=10.1V (f) Vds=10.1V (g) Vds=10.1V (h) Vds=10.1V

図8.11 ITZO-TFTの光信頼性評価(NBIS)の結果(Vgs=-20V)

134

図8.12 ITZO-TFTの光信頼性評価(NBIS)の結果(Vgs=-20V) 移動度μ変化率 (a)Vds=0.1V、(b)Vds=10.1V 0.2

0.6 1.0 1.4 1.8

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04

μ変化率

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=0.1V

100 101 102 103 104

0.2 0.6 1.0 1.4 1.8

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04

μ変化率

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=10.1V

100 101 102 103 104

(a) (b)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04

SS1(V/dec.)

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=0.1V

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04

SS2(V/dec.)

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=0.1V

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04

SS1(V/dec.)

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=10.1V

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04

SS2(V/dec.)

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=10.1V

100 101 102 103 104 100 101 102 103 104

(a) (b)

(c) (d)

図8.13 ITZO-TFTの光信頼性評価(NBIS)の結果(Vgs=-20V) S値(SS1、SS2)の変化 (a)(b)Vds=0.1V、(c)(d)Vds=10.1V

135

まず、Vds=0.1Vの場合の伝達特性変化について述べる。図 8.11より、波長530nm の場 合は、1000sを越えると伝達特性曲線の形状は変化が始まっている。これが波長460nmにな ってフォトンエネルギーが高くなると100sを越えると、変化が始まっている。図8.13から、530nm の場合、SS2は1,000sを越えたあたりから値が大きくなって劣化し始めたことを示しており、これ が460nmでは100sを越えるとSS2の値が大きくなって劣化し始めたこと、つまり捕獲準位(欠 陥準位)が形成されたことを示唆している。図 8.14 に示したしきい値電圧シフトにおいても、波 長530nmでは1,000sを越えたあたり、波長460nmでは100sを越えるとからΔVg2のみ正 方向に大きく変化をしており、SS2 と同様の傾向を示している。これは、伝導帯近傍に捕獲準 位が形成されたことが推定される。

次に、Vds=10.1V の場合の伝達特性変化について述べる。図 8.11 より、波長 530nm の

場合は1,000sを越えると伝達特性曲線は正方向にシフトしている。これが波長460nmになっ

てフォトンエネルギーが高くなると100sを越えると、正方向にシフトしている。530nmの場合は、

-3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0

1 10 100 1000 10000

ΔVg1@10pA

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=0.1V

-3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0

1 10 100 1000 10000

ΔVg1@10pA

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=10.1V

-3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0

1 10 100 1000 10000

ΔVg2@1nA

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=0.1V

-3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0

1 10 100 1000 10000

ΔVg2@1nA

Stress time(s)

Dark 590nm

530nm 460nm

Vds=10.1V

100 101 102 103 104 100 101 102 103 104

(a) (b)

(c) (d)

図8.14 ITZO-TFTの光信頼性評価(NBIS)の結果(Vgs=-20V)

しきい値電圧の変化(ΔVg1、ΔVg2 (a)(b)Vds=0.1V、(c)(d)Vds=10.1V

136

ほぼ平行に正方向にシフトしているが、460nm の場合は正方向にシフトしているだけでなく、

ON電流が大きく低下している。これは図8.13のSS1とSS2を比較すると、Darkと590nm の波長ではは SS1も SS2も大きく変化していない。しかし、460nm の場合、SS2 は 1,000s を越えたあたりより、劣化している。さらに、図8.14に示したしきい値電圧シフトのΔVg1とΔVg2

は530nmでは1,000sを越えたときから負から正方向に、460nmでは100s を越えたときから 正方向にシフトしている。530nm では 1,000s を越えた時から正孔の捕獲準位から電子の捕 獲準位が支配的になり始めたことを示唆している。