第 6 章
6.4 酸化物 TFT の基礎物性と特徴
6.4.1 酸化亜鉛系半導体の基礎物性
酸化亜鉛(ZnO)は図 6.4 に示すように、ウルツ鉱型構造で六方晶の結晶を持ち、その比抵 抗は Al3+やIn3+ドープ時には10-4Ω・cm、Li1+ドープ時には 1010Ω・cm と、10 の 14 乗も 変化する。導電膜としても誘電膜としても開発が進められている興味深い材料である。また、室 温で 3eV 以上のバンドギャップを有するワイドバンドギャップ材料である。従って、電子デバイス 用材料として、特に透明性や高耐圧を必要とされるものへの応用に適している。表6.1のZnO
103 の諸物性値を示す。4-5)
表6.1 酸化亜鉛(ZnO)の諸物性値
結晶構造 六方晶系(ウルツ鉱型構造)
a=3.250Å c=5.207Å Zn-O間 1.99Å イオン半径 Zn2+ 0.74Å O2- 1.24Å
融点 1975℃
密度 5.7 g/cm3
屈折率 1.9〜2.0
比誘電率 8.12
有効質量 0.318m0(電子) 0.5m0(ホール) バンドギャップ 3.37eV(RT) 最大移動度 >200cm2/V・s(電子)
スパッタリング法で形成されたZnO薄膜は一般的に多結晶構造を有し、基板に垂直にc軸 配向した柱状構造をとる。ZnO に代表される酸化物半導体は酸素欠損(Vo)や格子間亜鉛
(Zni)といった真性欠陥がシャロードナーとなり、不純物をドーピングしない状態においても、製膜
条件や熱処理により導電率、特にキャリア濃度が大幅に変化することが報告されている。
Zn O
Interstitial Zinc, Zni Zinc vacancy, VZn Interstitial Oxygen, Oi Oxygen vacancy, VO Zn-on-O antisite, ZnO
図6.4 酸化亜鉛(ZnO)の結晶構造と主な結晶欠陥
104
ZnOの欠陥形成に関しては、図6.5に示すように第一原理計算を用いた理論計算が報告さ れている。6-7) Obaらはn型ZnOがZn-rich 条件で形成された場合に格子間亜鉛(Zni)や 亜鉛のアンチサイト欠陥(Zno)、酸素欠損(Vo)が生じやすい事を計算している。この報告からも ZnOの電気特性の制御には欠陥制御が非常に重要であることが分かる。
6.4.2 酸化物TFTの特徴
本節では酸化物 TFT(Oxide TFT)の特徴について説明する。酸化物 TFT は現在までに 様々な酸化物材料でのTFT 応用の試みがなされてきたが、FPD への適応を試された材料に ついては、多結晶構造を持つ ZnO と InGaZnO に代表される非晶質酸化物半導体 (amorphous oxide semiconductor, AOS)が多く、FPDや太陽電池の透明電極として使 われている透明導電酸化物(transparent conductive oxide, TCO)と共通点が多い材料 系である。以下にSiと比較して酸化物半導体が異なる点を要約する。1)
酸化物半導体は室温で作成しても半導体として機能する。またソース電極・ドレイン電極 を金属オーミック電極でとっても反転動作せず、オフ電流が低く抑えられるために、高温プロ セスを必要としない。⇔ poli-Siではソース領域・ドレイン領域のpn接合と活性化に高温 が必要。a-Siの最適な製膜温度は250℃程度で、温度が下がると特性が劣化する。
特別な欠陥不活性化処理を必要としない。⇔poli-Si、a-Si を半導体と使う場合には、
Si の未結合手がつくる捕獲準位が問題となる。特に a-Si の場合は、未結合手を終端化 することは必須である。
高 い 電 子移 動度 が得ら れ る。TFT に 使用 され る低 温多 結晶 ZnO の 移動 度 は 10cm2/(V・s)程度との報告が一般的であるが、単結晶では室温で〜200cm2/Vs が得ら
図6.5 第一原理計算から求めたn型ZnOの欠陥形成エネルギーとエネルギー準位 (a) 各欠陥の形成エネルギー (b) 各欠陥のエネルギー準位
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れており、将来的にはさらに高い移動度が期待されている。AOSでは、アモルファスにもかか わらず、10 cm2/Vsの移動度が容易に得られ、TCO材料では60 cm2/Vs近いホール移 動度が報告されていることから、さらに高い移動度も期待されている。⇔a-Siの移動度は1 cm2/Vs以下で低い。
以上のような特徴を持つために新しい低温大面積用デバイス材料として、LCD、OLEDにと どまらず電子ペーパー駆動用素子や、次世代透明デバイスへの応用が期待されている。